2019.10.03
GoogleもAppleも「AR」に本気?!押さえておきたいAR最新動向

GoogleもAppleも「AR」に本気?!押さえておきたいAR最新動向

ARは、今後どうなっていく?ARといえば、GoogleやAppleも注力領域のひとつ。アプリやサービス開発に携わる人なら押さえておきたいARの最新動向について、MESON 代表 梶谷健人さんに解説いただきました!

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[連載]
[1]ARの進化が止まらない! 2019年 AR活用の最新事例 12 選
[2]GoogleもAppleも「AR」に本気?!押さえておきたいAR最新動向

2020年が「AR市場の転機」になる4つの理由|MESON 梶谷健人

2020年は大きなブレイクスルーが4つ起こって、AR普及の大きな一歩になるはずです。

その4つのブレイクスルーとなるのが、「5G」「グラス」「AI」「ARクラウド」。ひとつひとつ解説していきたいと思います。

■5G

5Gになると通信速度が従来の100倍になると言われています。メディアの次元は、間違いなく上がるでしょう。3Gから4Gになったときも、インスタグラムなどの画像メディアが多かったところから、SnapchatやTikTokのような動画メディアが出てきましたよね。

次は、4Gから5G。たとえば、LINEのスタンプが3Dになったり、ECサイトで買い物するときに立体データで確認できたり。通信の容量や速度が圧倒的に上がるので、ARを含め大容量のデータを使った表現や体験が、今後新たに登場してくるはずです。

■ARグラス

性能も高く、デザインもイケてるグラスの開発が進んでいます。すでに今年の9月から開発者向けに「nreal light(エヌリアル ライト)」というモデルが発売されていて、来年末ぐらいには一般消費者向けに発売されるでしょう。しかも、わずか5万円。手の届かない価格では、ありません。惜しいのは、スマホとグラスをコードで繋がなければいけないところ。ただ、近い未来間違いなく、ワイヤレス、更にはスマホが必要ない形になっていくはずです。

+++nreal(エヌリアル)

もうひとつ、日常使いできるグラスという観点で注目しているのが、写真・動画共有アプリ「Snapchat」の開発元であるスナップが出している「Spectacles 3」というモデル。スタイリッシュなデザインでありながら、ARの基本機能を搭載したものです。こちらはBluetooth対応しているので、ワイヤレス。値段は4万円くらいです。

どちらも今年から来年頭に一般向けに発売される予定です。デザイン的にも機能的にもあと一歩で日常使いに耐えるクオリティのものばかり。、ここ最近の進化のスピードを考えると来年末あたりにはイノベーター層が毎日使いたいと思えるようなデバイスが出るのではないかと思っています。

+++Spectacles 3

グラスといえば、2012年にGoogleが発表した「Google Glass」を覚えていますか?話題になったものの、2015年に一般消費者向けの販売を中止して、「失敗に終わった」と思っている方も多いのではないでしょうか。

じつは数年前から「産業向けのデバイス」として再定義され、ビジネスの現場で導入が進んでいるんです。主に工場や倉庫、医療機関などで、現場作業をアシストするデバイスとして活用されています。2019年5月には新モデル「Glass Enterprise Edition 2」も登場し、ToB AR市場に関しては順調にマーケットが立ち上がっていることが伺えます。

Glass Enterprise Edition 2

■AI

理想的なAR体験をつくりだすためには、AIの「現実世界を正しく認識する」技術が必要になります。とくに画像認識においてAIが、ARを次のステージに引き上げているんです。

たとえば、2019年にAppleが発表したAR機能「ARKit3」。これまでスマホ単体では不可能だった、現実世界の人の輪郭を正しく認識してARのオブジェクトがその後ろを隠れるようになりました。より正確に現実世界を理解して自然な表現ができるようになったのです。

これはARの事例ではないですが、画像認識という点では、Googleがリリースした「Google レンズ」も見逃せません。画像から情報を読み取り、検索することができる機能です。

たとえば、お寿司が写った写真も、解析して、何のお寿司かを特定してくれる。あと面白いのはGoogle Photoのアプリで、画像に写っている「文字」検索ですね。たとえば「PORTAL」と検索すると、その文字が写った画像だけを抽出してくれます。AIが現実を認識する力はかなり進歩していて、来年はさらに盤石になってくると思います。

■AR Cloud

最後のひとつが、AR Cloud。これはARでの体験をある場所に紐付けて、他の誰かと共有するための仕組みです。

現状のARでハードルになっているのが、他の誰かと体験を共有できないところ。たとえば「ポケモンGO」だと、AR機能で画面をみたときに「ピカチュー」が登場しているのに、ほかの人がアプリ開いても同じものがみれない。

要はクラウドでつなげることで、他の人と一緒に同じものを見れるようにする技術。この技術が進化してきていて、来年にはさらに精度が上がるはずです。

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梶谷健人 ARクリエイティブスタジオMESONの代表
ARサービスのプランニング・体験デザインを主に手がける。大手グローバルブランドを含む複数企業にサービスデザインとグロースのコンサルティングも行っている。 「いちばんやさしいグロースハックの教本」(Amazon.jpのマーケティング・セールス一般カテゴリ1位)の著者。2015年末まではVASILYでiQONという女性向けファッションサービスのGrowthを担当。 インド・アメリカにて現地スタートアップ向けにサービスデザインとグロースのメンタリング業務も経験。

いよいよ「Mirror World」の時代へ

最近では、GoogleもマップにARを搭載したり、AppleもARを見据えた新機能をiOSをリリースしたり。彼らがAR領域に対して積極的に投資をしているのはなぜなのか?

それは、これからおとずれる「Mirror World(ミラーワールド)」を見据えているからです。今後10年で、デジタル世界とフィジカル世界の距離が限りなくゼロになっていきます。そして、この時代のコアになるインターフェースが、ARになる。だから、ARに注力しているのです。

今までのデジタルの進化の歴史って、いかにデジタル世界とフィジカル世界を近づけられるかっていう試みの歴史なんですね。インターネットが誕生して、パソコンができて、誰もが情報にアクセスできる時代になり、スマホも普及してIoTも進んで現実世界のデータ化も加速している。世界は、デジタルとフィジカルがどんどん近づいてきています。

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デジタルと現実世界がぴったり重なり合うためには、「知覚」「処理」「インターフェース」の3つが必要です。

そのための下支えになる土台が、AI、Could 、Blockchain、IoT、GPSなどのテクノロジー。それぞれの技術はバラバラに見えるようで実は相互につながっています。

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IoTの各種センサーや、自律運転車やARグラスに搭載されたカメラが現実を「知覚」。それにAIが意味を付与し、クラウドで記憶やブロックチェーンで権利関係を扱ったりといった「処理」をする。最終的にソフト的な「インターフェイス」としてARが、ハード的な「インターフェイス」としてドローンなどを含めたロボティクスが利用されるようになる。

そういった大きな背景の中で、新時代のコアなインターフェイスのひとつとして、ARは注目されているのです。

ARは、どこにも正解がないから面白い。

ARを取り巻く、技術的な進化は進む一方で、いかに活用していくのかはまだまだ模索の段階です。というのも、ARの特性として、デバイスや技術の影響を受けやすいので、いつどういった形で、マーケットが立ち上がるのかが読めにくいという背景もあります。

現状ではユースケースが少ない。でも、それって、むしろユースケースをつくった者勝ちとも捉えられると思うんです。グラス時代にこういうものがあったら、こういうアプリがあったら便利だねっていうのを自分たちでゼロからつくれる。

つまり、グローバルでも誰も正解を見つけられてないということ。正解がない中で、自分で正解をつくらないといけない。ARの醍醐味は、ここにあると思います。ものすごい難しいけど、時代のトレンドとして、なかなかそんなチャンスない。稀なタイミングだからこそ、ものすごい面白い領域ですね。

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取材 / 文 = 野村愛


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