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CAREER HACK

失敗を、経験として捉えよ―Growthathonから始まる、日本のWEBビジネスのイノベーション。

2013-04-05

失敗を、経験として捉えよ―Growthathonから始まる、日本のWEBビジネスのイノベーション。

去る3月17日、growthhacker.jpの高橋雄介さんらを中心に開催された、グロースハッカーのためのハッカソン「Growthathon(グローサソン)」。密着レポートを通じて、日本のWEB業界に現在進行形で起こっているイノベーションをお伝えする。

いま、なぜ“Growthathon”なのか?

以前CAREER HACKで「グロースハッカー」について語っていただいた、growthhacker.jpの高橋雄介さんらが中心となって、あるイベントが開催された。グロースハックの施策を競い合うハッカソン「Growthathon(グローサソン)」だ。

チャレンジ・スポンサーと呼ばれる企業が、実際のプロダクトをもとに、そのグロースを加速させるための“課題”を出題。参加者がチームを組み、限られた時間内で、その解決策を導き出すというもの。2012年末にシリコンバレーで開催され、日本では今回が第1回目の開催となる。ちなみにシリコンバレー以外では、世界初の開催とのこと。高橋さん達の尽力のおかげで、最先端のトレンドを日本でも体験することができるわけだ。


Growthathon Tokyo #1 発起人の高橋雄介氏。


今回は第1回ということもあってテスト的に小規模での開催となっていたが、それでも参加者は40名近くに。中にはロフトワークやリブセンス、schooといった注目のWEB企業で企画やマーケティング、開発に携わる方々も。グロースハックのノウハウを深めていくことが、ここ日本のWEB業界においても極めて重要視されている、何よりの証拠だろう。

グロースハックはまだ確立しきった概念ではなく、現在進行形で議論が深まっていきつつある考え方である。そういう意味でも、Growthathonのように実践形式でグロースハックのプロセスを経験するのは、WEBビジネスに携わる人にとって極めて重要なこと。また、さまざまな企業でグロースハックに関わる人たちの“横のつながり”を作る場としても、貴重な機会と言えるだろう。


Growthathonは、参加者によるブレックファースト・ネットワーキングからスタートした。

出題企業、メンターともに豪華な顔ぶれ。

先ほどテスト的な開催と記したが、とはいえ関係者の顔ぶれは非常に豪華だ。まずチャレンジ・スポンサー(出題企業)は、次の3社。

● Increments株式会社 (日本最大級のエンジニアコミュニティQiitaを運営)
● 株式会社ビットセラー(世界2500万DLのカメラアプリFxCameraを運営)
● NECビッグローブ株式会社(言わずと知れた、日本を代表するプロバイダ)

またメンターとして各参加者のサポートを行なうのも、主催者である高橋さん、神田卓也さん(ソーシャルゲームプロデューサー)、海野弘成さん(Increments)のほか、川村亮介さん(ビットセラー)古川健介さん(nanapi)金山裕樹さん(VASILY)など、日本を代表するWEB起業家の名前が並ぶ。

さらに、「500 Startups」のメンターも務めるJames Hollow氏や、本家のGrowthathonをオーガナイズする、Ken Zi Wang氏(Fandrop CEO)など、 シリコンバレーのネットワークをも活用することが可能だ。

彼らの協力を受けつつ、参加者は3名~6名のチームを組み、出題されたお題に対して、実現可能性の高いグロースの施策を立案することになる。


nanapi けんすう氏も積極的に参加者とディスカッション。

チャレンジ・スポンサーが抱える“リアルな課題”に挑む。

チャレンジ・スポンサー3社から出されるのは、コンテストのための課題ではない。各社が実際に抱えている“リアルな課題”が出題される。

● Increments プログラマ向けメモ用Macアプリ『Kobito』のダウンロード&アクティベーション増加
● ビットセラー 外部のソーシャルグラフを使った、『FxCamera』の新しいユーザ獲得チャネルの開拓
● NECビッグローブ 写真のスクラップブックアプリ『MIRU PHOTOBOOK』の利用者数拡大

各チームに与えられるのは、約5時間。非常に短い時間だが、施策を立案しプレゼン資料に落とし込むことはもちろん、必要に応じてHTML+CSSでプロトタイプを作ったり、テスト的な実装を行なうことも。評価のポイントは、当然ながら施策のユニークさと、何より”実現可能性”があることだ。


審査基準も明確に示された。

アイデアの質は「“実現可能性”をいかに示すか」で決まる。

今回参加していたのは全部で9チーム。前述した3社からの課題に対して、1社あたり3チームが挑戦することとなったのだが、今回の参加者の多くはWEBサービスの企画者、あるいはUI/UXデザイナーやWEBデザイナー。エンジニアが少ないことによって、結果的に各チームの最終的なアウトプットは、「PowerPoint/Keynoteベースの企画書」がほとんど。LPのレイアウト案をまとめていたチームもあったが、プロトタイプや、デザイン案にまで落とし込んでいたチームは見受けられなかった。あえて言うなれば、ハッカソンというよりは、アイデアソンに近かったのかもしれない。もちろん、5時間というチームでの準備時間の短さも要因の一つではあるだろう。このあたりは、運営がこなれてくる2回目以降に期待したい。

ただ、そんな中でも、Increments(Qiita/Kobito)の課題に挑んだチームから、きらりと光るアイデアが出てきた。


海野氏にヒアリングを行なう、Increments賞を受賞したチーム。


Qiitaを社内での情報共有ツールとして利用してもらうことで、既存のKobitoユーザーを基点にして未利用者にも利用してもらえるようにする、というものだ。

プロトタイプ等のアウトプットはなかったものの、トラッキングから計測までのプロセスや、KPIの設定、計測方法まで細かく考えられており、その点で最も“実現可能性”が感じられた施策の一つだったと言える。

実際、Qiita/Kobitoの開発者でありGrowthathon主催者の一人でもある、Increments代表の海野弘成さんが、会場にて「この機能の実装を行なう」と宣言。その進捗と効果については、5月に開催予定の第2回Growthathonで発表されるそうなので、引き続き注目していきたい。

Growth Hackにおいて、“アイデア”は無価値である。

今回のGrowthathonは、前述したとおり、ハッカソンというよりは、アイデアソンに近い形に落ち着いてしまった感があった。

グロースハックの施策の価値は、その“実現可能性”で決まると言っても過言ではない。企画書だけではなく、実装のイメージがリアルにわくようなプロトタイプやデザインイメージにまで落とし込んだアウトプットを見ることができなかったのは、少々物足りない部分があったというのも正直なところかもしれない。

各チームによるアウトプットのプレゼンが終わったあと、ビットセラー代表 川村亮介さんによる、同社での実践を通じて導き出された、Growth Hackの定義に関する講演が行なわれたのだが、その内容が示唆に富んだものだったので、概要をご紹介したい。

まず、川村氏はGrowth Hackを「優れたユーザー獲得のための方法」と定義。「リーンスタートアップが正しく実行できる環境」こそが、Growth Hackを行なうための前提だという。具体的に言えば、「アジャイル開発」と「数値にもとづく実証主義的な事業活動」だ。


ビットセラー川村氏による基調講演。

そしてここが最も印象的だったのだが、スピード感のあるアジャイル開発を実践する上で最も留意すべき点として川村氏が挙げたのが、「やらないことを明確化する」こと。スタートアップに許された時間は有限で、短い。もちろんアイデアの数を出すことも重要ではあるが、それ以上に重要なのは、そのアイデアの中で何に取り組まないか、選択と集中をきちんと行ない見極めることだという。

Growth Hackにおいては、アイデアそのものに価値があるわけではない。むしろ数あるアイデアの中からその実現可能性をシビアに見極め、スピーディな開発・実装・検証を行なうことこそGrowth Hackの本質だと認識すべきなのだろう。

日本のWEB業界に、“失敗”を“有益な経験”と捉えるカルチャーを。

今回の第1回Growthathon、客観的にみて課題点も見受けられたものの、それでも非常に大きな意義のあるイベントだったと言って間違いないと思う。何より、「Growth Hacker」というキーワードのもとで、コミュニティが形成されたというのは大きい。冒頭で述べたとおり、Growth Hackは現在進行形の概念だ。その動向をキャッチアップし、自ら深めようとしている企画者やエンジニア、クリエイターが、横のつながりを形成しつつあるのは、日本のWEB業界にとっても非常に良いことだと言えるだろう。

最後に、主催者である高橋雄介さんの言葉をご紹介しておきたい。高橋さんによると、シリコンバレーでは何らかのトライをした結果、失敗してしまった人のことを、“失敗者”ではなく、“経験者”と呼ぶのだという。成功と同じく重要なのは、実践を通じていかに数多く学ぶか、だ。失敗を経験と捉える文化を、日本のWEB業界にも根付かせていきたいという高橋さん。その一つの手段としてのGrowthathon、今後の開催にも引き続き注目していきたい。

ちなみに、第2回Growthathonは2013年5月に開催予定。次回は企画者だけでなく、エンジニア・クリエイターの参加も増えてほしいところ。より具体性あるアウトプットが導き出されるハッカソンイベントとなることを期待したい。



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