2020.03.12
BANK解散を経て、Takramへ。デザインに向き合うためにーー河原香奈子が選んだ次なるキャリア

BANK解散を経て、Takramへ。デザインに向き合うためにーー河原香奈子が選んだ次なるキャリア

2019年9月、型破りなスタートアップ「BANK」が解散した。即時買取アプリ『CASH』や、後払い旅行アプリ『TRAVEL Now』で衝撃を与えた。それらのUI/UXを担ってきたのが河原香奈子さん。BANK解散後、彼女は、デザイン・イノベーション・ファーム「Takram」へ。「デザインに向き合いたい」そう語る彼女のキャリア選択を追った。

0 0 6 6

※2020年1月に開催された「UI Crunch 5th Anniversary Party - UIデザイン業界の軌跡 -」よりレポート記事をお届けします。この5年間で大きく変化したデザイン業界。活躍するデザイナーたちは、どのような場面でキャリアの転換を考えるのかーー。
※UI Crunchに関する記事一覧はコチラ

プロフィール

制作会社からスタートアップへ

もともと美大の情報デザイン学科に通っていました。十数年前なので、まだスマホも普及していない頃。今でいうUI/UXや、サービスデザインなどの概念を学んでいたので、デジタル系のデザイナーになるのは自然な流れでした。

卒業後は、学生時代にアルバイトしていた出版社でそのまま働くことに。Webの部署でインハウスデザイナーとして働いた後、Web制作会社に転職し、3年ほどクライアントワークの経験を積みました。

次は事業会社で働いてみたいなと思っていた時に、ちょうどリリースされたのが「STORES.jp」だったんですよね。良いサービスだなと思っていたし、どんな人たちが作っているんだろう?とオフィスに遊びに行ったのがきっかけで、ジョインしました。

当時、まだリリースされて半年くらいの時期で。社員のデザイナーは自分が1人目。全員で7人という規模感でした。

その前はデザイナーばかりの制作会社にいたので、はじめの頃は、事業会社での仕事の進め方に悩んでいましたね。エンジニアさんとどう協業すると良いものが出来るのか。経営者は何を求めているのか。しばらくは手探りだったように思います。

CASH騒動の渦中で

スタートアップのデザイナーになって、3年半ほど事業の成長フェーズを経験したタイミングで、次は新しい事業やプロダクトをゼロイチで立ち上げる経験がしたいと思いました。

ちょうど会社のMBOなどいろいろなタイミングが重なり、2017年頃に当時のSTORES.jpの代表とエンジニアと3人で、BANKを創業することになりました。

そして、2017年6月に『CASH』をリリース。

皆さん覚えているか分からないですが、『CASH』というアプリがリリースまもなく大変なことになりまして、、毎日、せまいワンルームのオフィスに、ユーザーさんがキャッシュにした荷物が大量に届く。

アプリをリリースしてからしばらくは「ひたすら段ボールを運ぶ人」でしたね。落ち着いてデスクで仕事をすることもできず、荷物を運びやすいようにジャージを着て出社したり、とにかくカオスな毎日でした。

その後、2ヶ月のサービス休止期間はもどかしさでいっぱいでした。様々な角度からのご意見をいただきましたし、ほんの一瞬ではありましたが、社会的にも大きな影響を与えてしまった。作り手としての責任を強く感じた出来事でした。

多くの方に使っていただけるポテンシャルがあるからこそ、本当に世の中の役に立つ事業にしていかなければいけない。個人的にはそんな想いで、再開時の準備をしていました。大変なことばかりでしたが、モチベーションは高かったです。その後、サービス内容の見直しなどを経て、CASHは無事に再開することができました。

2018年に入る頃になると、どんどんメンバーが増えていきました。CASHリリース時は7名だったのが、数ヶ月で50名程に。デザイナーも自分だけだったのですが、4名になりました。ちょうど2018年は『TRAVEL Now』をリリースしたタイミング。たくさんの優秀なメンバーと仕事ができて、エキサイティングな日々でした。

BANKの解散

2019年頃は粛々と事業に向き合っていたのですが、いろいろな事情が重なり、2019年9月にBANKのチームは解散することになりました。2017年~2019年は、BANKの状況と一心同体で自分の感情も連動するように上下してきた気がします。

解散後の自分のキャリアについては、正直かなり悩んでいました。しばらくは、フリーランスで仕事を続けて行こうかとも考えたんですよね。ただ、自分はそんなに器用なタイプでもないし、なんとなく未来が想像できてしまって。「数年後、こういう仕事しているのかな」と、自分の限界が見えてしまうような感覚。それならば、あらためてどこかの組織にジョインして、チームで大きなことを成していく選択肢もあるのかもしれないと思い始めました。

Takramへ

BANKでは、あえて再現性がないことを狙ってやっていたんです。とにかく何もかもが型破り。そんなこともあり、ここでもう一度「デザイン」に向き合い、様々なプロジェクトに関わるなかで、自分の型を見つけアップデートしていくのも良い経験かもしれない。そう思って、次は事業会社ではなくデザインファームに行くことにしました。

Takramには、様々なデザイナーがいます。もちろんUIデザイナーだけではなくて、デザインエンジニア、ビジネスデザイナー、プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナーなどなど。領域を横断しながら、常に新しいものが生み出されている現場に興味がありました。

Takramに入ってまだ日が浅いのですが、みなさんのものづくりに対する熱量と精度に日々刺激を受けています。

また、若手の頃も制作会社でクライアントワークに携わっていましたが、事業会社で立ち上げなども経験したことで、自分の中でのクライアントワークの見え方は以前から変わったような気がしています。

直近ではスタートアップにいた期間が長いので、今回は意識的に、ちょっとだけ自分のコンフォートゾーンからずれる選択をしました。今までの経験も活かしつつ、新人になったつもりで、新しいことも学びながら自分を成長させていきたいなと思っています。


取材 / 文 = 白石勝也


関連記事

特集記事

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから