2013.09.13
MUGENUPはクラウドソーシングの“先”に何を見ているのか?一岡亮大CEOの狙いに迫る。

MUGENUPはクラウドソーシングの“先”に何を見ているのか?一岡亮大CEOの狙いに迫る。

急成長を続けるイラスト特化型クラウドソーシング《MUGENUP》代表の一岡亮大氏へのインタビュー第1弾。「属人的なデザイン業務を可視化し、そのノウハウやデータを取得して効率化する」という一岡さん。その真意の裏には、クラウドソーシングの“先”に見据えるデザイン領域の効率化があった。

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デザイン特化のクラウドプラットフォーム

WEB・IT業界で働くエンジニア、クリエイターにとって様々な働き方が可能になってきた。中でも、注目度が高まっているのが”クラウドソーシング”だ。

CAREER HACKでも「ランサーズ」「クラウドワークス」といったクラウドソーシングサービスを取材してきたが、今回は《MUGENUP》というサービスにフォーカスしてみたい。


MUGENUP


MUGENUPは、ローンチから1年半で登録クリエイターが1万人を突破、顕著な成長を遂げているイラスト特化型のクラウドソーシングプラットフォームだ。

着実な成功を収めつつあるMUGENUPだが、一方で、代表の一岡亮大さんは「“イラスト”はひとつの取っ掛かりでしかない」と語る。

MUGENUPが本当に実現したいものとは一体何なのだろうか?また、それによってクリエイターの仕事はどのように変わっていくのだろうか?

一味違うクラウドソーシングのカタチ

― まず、MUGENUPの仕組みを伺えますか?


MUGENUPは1万人以上のイラストレーターの方々とSAPなどのデザイン制作物の発注者をつなげるデザイン制作のクラウドソーシングプラットフォームです。

一般的なクラウドソーシングサービスと異なるのは、発注者とクリエイターを単につなぐのではない、ということ。我々の場合、発注者との契約をMUGENUP自身が行ないます。そしてその制作を、MUGENUPに登録しているクリエイターの方々に我々から依頼する形をとっているんです。

依頼の形式には2つのパターンがあります。一つは、ひとりのクリエイター完結型。 この場合、仕事を受けたクリエイターは、一つのデザイン制作をすべてひとりで行なうことになります。

そしてもう一つは、工程分離型。受注した案件を、まずMUGENUP側でデザインや線画、塗りといった工程に分解します。その後、各工程ごとに得意なクリエイターの方にお任せし、MUGENUP社内のアートディレクターがディレクションするというものです。


MUGENUP_Office


― 複数のクリエイターで分業し、MUGENUP側がとりまとめるわけですね。とすると、一岡さんたちは、MUGENUPに登録しているクリエイターの得意分野をすべて把握しているんですか?


MUGENUPでは、クリエイターの方に会員登録してもらう際、自分のポートフォリオや得意分野、得意工程の情報も登録していただいています。それらをすべてMUGENUP内のアートディレクターがチェックし、一人ひとりにタグ付けしていくんです。例えば“萌え系”が得意とか、“キャラクターデザイン”や“背景”が強みとか。

一方で、案件のほうにも同様のタグをつけます。そのタグをもとに、案件とクリエイターとをマッチングさせるわけです。

デザイン業務を可視化する

― そうしたサービスを、“イラスト”や“デザイン”という領域で展開しようと考えた理由は?


ソーシャルゲーム等の爆発的な伸びを背景に、“デザインコンテンツのファスト化”という大きな需要があったからです。

例えばカードバトル系のソーシャルゲームを作ろうとすると、ローンチ時には数百枚のデザインコンテンツが必要になりますよね。市場として、クオリティの高いデザインが、大量ロットかつスピーディに求められるようになっているわけです。


― なるほど、その需要に応えるサービスだと。


そうですね。たしかに、現段階では「イラストのクラウドソーシング」と認識されることが多いのですが、我々としては、「ITと人のデザインクラウドプラットフォーム」をテーマとしたサービスだと考えています。


― 単なるクラウドソーシングサービスではないと?


そもそもデザインって、属人性の高いものですよね。MUGENUPが行なっているのは、その属人的な部分をデータをもとに解き明かしていくこと。膨大な数の制作物を”データ”として扱って、それをもとに、属人的なノウハウを体系化し、デザインワークそのものを効率化しようとしているんです。

これはイラストだけに限ったことではなく、他のデザイン分野に関しても、すでに取り組みを始めています。毎月300%の勢いで成長している3Dプリンタデータや金型データの収集と提供がその一例ですね。


― 金型ですか?


MUGENUPはそんなことまで視野に入れているのか!とよく驚かれます(笑)

金型って結構問題が多い分野なんですよ。素材によって収縮度が違ったりして、作るにはかなりのノウハウがいる。で、誰がそれを持っているかというと、引退間際のおじいちゃんなワケです。

これは伝統工芸の後継者問題とまさに同じ問題。これまで限られた人だけのものだった金型のデザインを、データ解析によってある種のオープンソースのようなものにすることで、より生産性を高める必要があるのは間違いないんです。

データ解析していくと、金型制作といっても工程によっては誰でもできることもあって、本当に職人技が必要なところは2割程度だということもあります。であれば、データさえあれば誰でもできる8割の仕事は他の人に任せて、職人さんは、残りの2割を集中してやれるようにすればいい。

それが可能になるとどうなるか。一つの仕事にかかる時間が短くなることで、クリエイターや職人さんが数多くの仕事をこなせるようになります。そうすると、当然ながら彼らの収入は増える。企業にとっても、一つのプロダクトを作るスピードが上がるため、新しいことにチャレンジしやすくなります。

MUGENUPを通じて、まずイラスト・ゲームの分野で、こうした状況が実現しつつあります。その成果をもとに、次は3Dや金型を使ったモノづくりの分野に挑戦しようと、そういうことです。


― なぜMUGENUPではそれが可能になったんですか?


今、デザイン業務がデジタル化・オンライン化されたことで、その全てをデータ化できるようになっているんです。

MUGENUPでは、実際のクリエイターさんの仕事を、手がける案件ごとに、細かくログデータとして取得しています。どれくらいの精度のデザインを、どれくらいの時間をかけて制作しているか。こうしたデータをとることで、デザイン業務を可視化したわけです。

そこで初めて数字という強力なロジックの素ができた。その素は、クリエイター各々の価値を証明できるものでもあります。

今後はもしかすると、建築デザイン分野などへの進出もあるかもしれません。MUGENUPというプラットフォームを、あらゆる分野のデザインクリエイターが活躍できる場所にしていきたいんです。


(つづく)▼《MUGENUP》一岡氏へのインタビュー第2弾
MUGENUPは“吉本興業”を目指す ― CEO 一岡氏が描く、クリエイターの価値の再定義。


[取材・文] 松尾彰大 [撮影] 梁取義宣


編集 = 松尾彰大


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