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エンジニアのイントレプレナー挑戦は、キャリアにどう影響を与えたのか?|ノハナ 田中和紀氏に訊く。

2013-11-19

エンジニアのイントレプレナー挑戦は、キャリアにどう影響を与えたのか?|ノハナ 田中和紀氏に訊く。

SNS「mixi」を超える規模の新規事業創出を目的にした『イノベーションセンター』。同センターから生まれ、子会社化を果たしたノハナのエンジニア・田中和紀さんに、「イントレプレナー挑戦が、自身のキャリアにどう影響を与えたのか?」というテーマのもと話を伺った。

▼ミクシィ イノベーションセンター長・石井瞬さんへのインタビューはコチラ
ミクシィ イノベーションセンターにみる、エンジニアが“イントレプレナー”になる可能性。

ノハナのエンジニアが語るイントレプレナーの道

日本でも、アントレプレナーとして、幾度の起業を経験する人物が増えてきた。

今回、取材に伺ったのは、ミクシィが昨年8月に設立したイノベーションセンター(以下、イノセン※ミクシィ社内呼称)だ。センター長・石井瞬さん曰く、ミクシィに在籍するエンジニアに期待し、エンジニアドリブンなサービスづくりを目指してきたという。

既にDeployGateやPlannah(プランナー)など注目のプロダクトを生み出した同センターで唯一、子会社化を果たし、最も期待を集めているのが、毎月1冊無料でフォトブックがもらえるアプリ・ノハナ


nohana

家族にターゲットを絞ったノハナ。
季節サービス『ノハナ年賀状2014』もスタートしている。


WEB企業の新規事業として、“モノ”を届けるサービスはどのようにして生まれたのか?

ノハナのアプリ開発を担うのが、田中和紀さん。大学院時代には、IPA未踏ソフトウェア創造事業ユースで「思いが伝わる情報デザインツール」が採択された実績を持ち、インターンの期間を含めると、既に6年ミクシィに在籍しているという。彼はなぜ、イノセンに応募し、エンジニアとしてイントレプレナーに挑戦するに至ったのか?そこでどんな経験をし、自分のキャリアにどう影響を与えたのだろうか?

外では出会えない仲間と出会える

― ずばり、なぜ田中さんはイノセンに参加されたのでしょうか?


イノセンが設立される前から、家族向けサービスの開発をしたいという思いがあったんです。また、入社して3年で起業にチャレンジするつもりでいたんですが、ミクシィでの面白い仕事もあり、なかなかタイミングがなく…。そんな時期にイノセンが設立されて、「もう、これしか無い!」という思いで参加を決意しました。


― どうして家族向けだったのでしょうか?


個人的な経験と思いが元になっているのですが、両親とSNSでつながっていることで、実家に帰らなくても、親は私のことを何でも知っているんですよ。例えば、新しい彼女ができたとか(笑)自分も親になったら、こういう家族関係はよりいっそう広まっていくのではないかという思いもあって。


― イノセンは一人でも応募ができるそうですが、事業を始める際に一番難しいとされるのは“仲間集め”。田中さんはどのようにしてメンバーに加わったのでしょうか?


私の場合、ノハナの代表である大森に誘ってもらったんです。入社以来ずっと「家族向けサービスを手がけたい」と社内で言い続けていたことを聞きつけてくれて。ノハナの初期メンバーはマーケティング担当も兼ねている大森とアプリ・プロダクトのデザイン全般を手掛ける馬場、そしてエンジニアの辻と私の4人。全員で企画から練り上げていったんですが、皆、“家族向けサービス”を手がけたいという思いを共有していたんです。


田中和紀さん


― 温めていたアイデアもあったと思うのですが、すんなり企画は通ったのでしょうか?


いえ、全く(笑)応募から承認まで3か月かかりました。一時はもう、これで通らなかったら、メンバー全員で辞めて起業しよう、と話したほどです(笑)

何度も挫折しそうになりましたが、センター長に出しては、練り直しを繰り返し。ほんとにこのサービスはユーザーに響くのか?どこで収益を上げるか?もう企画書と言うより、きちんとビジネスになるかを精査していくような感じでした。その間、2度ほどの大きなピボットを経て、いまの形になりました。


― WEBで完結しないところが面白いですよね。フォトブックという“モノ”を毎月ユーザーに届ける。しかも1冊は無料で。


私たちはサービスの切り口より、家族というターゲットを重視していたので、あらゆる可能性を探ったんです。

大森と馬場は自身が子どもを持つ身から、日常で困っていることを、チームで他愛もなく話していました。すると、「家族写真をたくさん撮ると、データは大量に残る。けれど、印刷してもどんどん積み重なって全然整理されない…」という一般のご家庭でも想定できる問題が浮かび上がってきたんですね。その考えもとに事業に落としていきました。

結果、サービス開始から約9か月で約50万人の利用者が1650万枚の写真をアップロードし、約55万冊のフォトブックを発行しています。

社内起業における事業的メリットとは?

― 実際の開発はどのように進めていったのでしょうか?


イノセンのルールの一つに、立ち上げから3ヶ月で、ユーザーを獲得しなければならないというものがあります。

私たちはWEBでの展開はなくし、アプリ一本でいくと決まっていました。まずiOS版の開発を目指したのですが、プラットフォームの審査も考えると、2ヶ月でイチからアプリをエンジニア2人で作るということ。それなのにiOSの開発は、2人とも初めてで…もう必死になって作りましたが、意外となんとかなるもので(笑)いまとなってはいい思い出ですね。

無事にリリースでき、当初想定の10倍以上の方に利用いただけたんです。


― それはすごい。最初から順調だったんですね。


それが一口に喜べなかったんですよ。WEBサービスだとユーザーが増えても、サーバーは増設できますが、フォトブックというモノを提供するノハナは、印刷所と提携しています。印刷機を増設するのはそうたやすいことではなくて…(笑)さらに、カスタマーサポートも充実させる必要が生じてきたんです。

この時、イントレプレナーのメリットを肌で感じることができたんです。


― 具体的には?


私が感じている、イントレプレナーのメリットは2点です。まずは創業メンバーを見つけやすいこと。これまで一緒に仕事をしてきた社員の中からメンバーを集め、事業をすぐにスタートできました。次に、社内のメンバーの力を最大限に借りられたことです。ローンチをする際は法務や広報に、お客様の大切な写真を管理する際にはセキュリティチームに…。ミクシィを支えているバックエンドのエンジニアやバックオフィスのサポートを全面的に得ることができ、ビジネスの企画・開発に専念することができました。

ノハナが子会社化され、これまで成長し続けているのは、ミクシィ社全体のサポートあってのことだと思っています。

エンジニアの新たなキャリア形成としてイントレプレナーを選択する

― イントレプレナーとしての挑戦を田中さん自身のエンジニアキャリアとしてみると、どんな感想を?


働き方、で見るととにかく判断する機会が圧倒的に増えました。ビジネスサイドを仕切っている大森に限らず、エンジニアである自分自身もそういう環境に身を置いていることを実感しますね。例えば、テレビでノハナが紹介されるときは、予めトラフィックの増大を予想して、サーバ-の増強だけでなく、機能を一時的に切る決断をしたり。


田中和紀さん


役割としてはエンジニアだけでなくCS(コンシューマサポート)も兼ねています。例えば、フォトブックがお客様のもとに届かない事例にどう対応するか、クレジットカードの登録がうまくできないお客様にどのように説明するか。そこでの経験もエンジニアとして働いているだけでは経験できないもだったと思います。

キャリア…、私の人生計画という視点で言うと、少なくとも、選択肢は広がってますよね。イントレプレナーには、なろうと思ってなれるわけではないので。

目標は若い人に夢を与える存在になることなんです。現代はインターネットを使うことで、どんな人でも活躍できる環境が生まれている。元々入社後3年で起業にチャレンジするつもりで入社したとお話しましたが、私は2,3回起業した後、学生にインターネットや起業について語れる人になりたいと思っていたんです。その過程を踏むために意識的にルートを選んできました。そう考えると、自分の思い描いていたキャリア形成にベストマッチしてます。

ミクシィの人はこのままミクシィを終わらせないぞと本気で思ってる。mixiの“m”の次は“n”じゃないですか。その“n”はノハナの頭文字。mixiに代わるミクシィグループの一員として、必ず成功させますし、エンジニアだからなれる、イントレプレナーという道を、後進の人に示すことができる事ができればと思っています。


(おわり)


[取材・文] 松尾彰大 [撮影]城戸内大介




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