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「やらざる得ない環境こそが、クリエイターを育てる」|『BIRDMAN』築地ROY良と考える人材育成。

2014-03-07

「やらざる得ない環境こそが、クリエイターを育てる」|『BIRDMAN』築地ROY良と考える人材育成。

BIRDMANがつくるコンテンツは人々を惹きつける。それは単にデジタルを使うだけでなく、驚きやワクワクなど「体験」が根底にあるからだろう。海外でも高く評価され、数々の広告賞を受賞。どうすれば彼らのような作品がつくれるのか。また、前人未到の地点に立つクリエイターは育成できるか。代表の築地氏に訊いた。

▼築地ROY良氏のインタビュー第1弾
「誰も味わったことのない体験を」|築地ROY良が語るクリエイターに問われる覚悟。

前人未到の地点に立つために大切なこと。

『BIRDMAN』が生み出すコンテンツは、いつも驚きに満ちている。「WEB」を軸としてきた彼らだが、近年ではデジタルを駆使したインスタレーションなど活動領域を拡張。ソフトとハードを連携させた作品も活発につくりだしている。

もはや「オンライン」と「オフライン」といった区分さえ、意味を成さないのかもしれない。人々が参加し、どう楽しめるか。そのユニークな視点から生み出されるクリエイティブは、海外でも高く評価され、名だたる広告賞を受賞してきた。

そんな彼らのように、前人未到の地点に立つために大切なことは何か。そして次世代を担うクリエイターはどう育成していけばいいのか。

このような問いへのヒントを探るべく『BIRDMAN』を率いる築地ROY良氏にインタビューした。

「このアイデアは実現できるか否か」を瞬時に判断する。

築地ROY良

BIRDMAN 代表 築地ROY良氏


― デジタルの進化が加速して、クリエイティブの世界でも次々と新しい表現が生まれていますよね。世の中になかった表現を生み出す。そういった意味で、クリエイターの役割は変化していくのでしょうか。


あくまでも、広告やプロモーションのプロとして考えた時、クリエイターの役割としては本質的にそれほど変わらないと思います。モノを売ることだったり、商品やブランドの価値を高めることだったり。手法や表現がなんであれ、広告の役割を果たすためにやる、その本質的な部分は変わらないと思います。

ただ、おっしゃるようにアウトプットは次々と新しい表現がどんどん増えてきていますよね。特にインタラクティブをやっている我々のような制作は、それに伴いどんどんやることが増えてきていると思います。

BIRDMANにしても、もはや、デザインだけでも、WEBだけでもないし、何屋か分からない状態になっていて。だから、デザイナーにしても、ディベロッパーにしても、どれだけ枠を越えて多くの“引き出し”が持てるか?というところが勝負になるのかもしれません。もちろん一人ひとりに得意な領域があり、できることも違うので、そこはチームで補う。というか相乗効果を発揮していく感じですよね。

「やることが増えている」のではなく、むしろ「出来ることが増えている」とポジティブに捉えられる人はインタラクティブに向いているかもしれません。


― 多くの“引き出し”を持つというと具体的にはどういった状態のことなのでしょう。たとえば、デザイナーがプログラミングもできるといったことでしょうか?


はい、そうです。実際にプログラミングができなかったとしても、技術的には何ができて何ができないか、それくらいは分かっていないと、インタラクティブの業界で上は目指せないと思います。デザイナーはデザイン周りのことしか出来ない、プログラマはプログラムの事しかわからない、とかではダメなんです。プログラムの仕組みなどを理解しているデザイナーの方が遙かに優れたUIを提案できるし、デザインできる。逆に分かっていないと、ディレクターなどが作った構成やワイヤーフレームをキレイにすることくらいしか出来ない。

それに“引き出し”が少ないということは、ひとつのスキルで何とかしようするということ。「このアイデアを実現するにはどうしたら良いのか?」という判断は、引き出しの数が少なければなかなかできません。その判断のスピードも遅くなってしまいます。

『Kirin Dream Race』の例では、「ユーザーのFacebookやTwitterプロフィール画像を、瞬時にボトルカーの上のモニターのデバイスに映す」というアイデアがあって。それをハードに強いメンバーに「できるかな?」と相談したんです。そうしたら、「あぁ、たぶんできますよ。あれとこれの技術を使えば」とほぼ即答で返ってきたんです。その判断スピードの早さは“引き出し”に比例すると思います。

彼は普段からジャンク品や掘り出し物を買ってきて、分解しながら色々とつくるのが好きで。趣味でもあるのですが、そういった個人の活動でも“引き出し”を増やせているのかもしれませんね。

インプットとプロトタイプが、クリエイターの可能性を広げる。

― 「プライベートでも何かをつくり、発信する」ということは今の時代だと、やはり大切になってくるのでしょうか。


みんながみんなプライベートでも発信するべきだとは思いませんが、できればやったほうがいいですよね。デザイナーにしても美術館や芸術祭に行って、いろいろな刺激を受けたり、ディベロッパーもいろいろなプログラムをいじってみたり。それが“引き出し”になってどんどん知識やノウハウは蓄積されていく。また、個人でやらなくても、会社でプロトタイプやモックアップをつくれば、それで知識やスキルは広がりますよね。

それらをブログなどで発信して記録しておくことで、それらは引き出しとして増えていきます。またそれらの記事をみたクリエイターが刺激を受けて相乗効果になったりすると理想的ですよね。

…ただ、一つのことを突き詰めていくのもそれはそれで良いことだと個人的には思っていて。広がりはありませんが、その代わりにとことん深めていく。それで日本一や世界一の職人を目指すという道も素晴らしいと思います。

クリエイターを成長させる一番の近道は…

― 表現領域を超えていかなければならないインタラクティブの世界。正直なところ、これからの時代を担うクリエイターは育成できるのでしょうか。BIRDMANではどう育成していますか。


スキルの有無、できるできないに関わらず、やらざる得ない状況をつくる、ということだと思います。必要に迫られて仕事でやったほうが結局は覚えるんですよね。なんとかカタチにしようと自分で本を買ってきたり、セミナーに行ったり。周りも忙しいですから、手取り足取り教えることはできないので。

この間も、iPadのアプリを作らなければいけない時に、全く触ったことのないメンバーにやってもらったことがありました。数週間でできたので「あ、意外とできるものなんだ」とわかった(笑)。時間は少しかかるかもしれませんが、そういったチャレンジが大事で。本当ならできる人に任せたほうが安心だし、早いのですが、敢えてやってもらう。

とにかくうちのスタッフに言い聞かせているのが、無理難題に対して「なんで出来ないのか」という理由を語るのではなく、「どうやったら出来るか」を考えろ、ということ。出来ない理由を語られても時間の無駄でしかないので、それよりもどうやったら実現できるのか。「こうやったっら出来るかも」「これとこれを組み合わせたら出来るかも」という「提案」が出来るクリエイターであるべきだと伝えています。


― なるほど、ただ、チャレンジさせてもらえるメンバーは嬉しいかもしれませんが、頼む側として不安はありませんか?


…正直なところ、頼んでいる側としては「できるかな」と内心ドキドキしていますよ(笑)。でも、それくらいのリスクは背負ってやらせてみないと育たない。そこは任せる側の覚悟…といえば言いすぎかもしれませんが。

ただ、もう一つ、本人が「やってみたい」と手を挙げられるかどうかがすごく重要ですよね。環境は与えてあげられるけど、あとはその人次第だと思います。「こうなってみたい」とか「これをやりたい」という気持ちがないと、なかなか難しいのかもしれません。本人が嫌ならどうしようもないですから。

結局、移り変わりの早い世界ですから、技術にしても、表現にしても新しいものがどんどん生まれています。Flashディベロッパーとして入社してもらった人も、今は全員がFlash以外の案件もこなせるようになっています。たとえ、Flashを使うにしても、普通のサイトを作るわけではなくて、応用して実験的なアプリを作ってみたり、モックアップを作ってみたり。それで新しいスキルや表現が生まれれば、周りのみんなが「それってどうやるの?」って注目してくれる。そこから新しい仕事なり、おもしろい仕事に派生していくのだと思います。

こういう観点から見ても、広告でいえばインタラクティブが一番おもしろいと思うし、スキルに危機感を持つ人がくるにはいい環境ではないかと。…まぁ異業界でも、先のキャリアに不安を持つデザイナーやディベロッパーはまずはうちに来たらいいですよ、ちなみに絶賛募集中なので(笑)。


― 誰もやっていないことに挑戦し、スキルの幅を広げる。確かに刺激的ですよね。なにより多くの人を驚かせたり、楽しませたりできる。これからの時代を生きるクリエイターやエンジニアがどうキャリアを歩むか?考えるきっかけにもなったと思います。本日はありがとうございました!



(おわり)


[取材]白石勝也 [文]高橋梓




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