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オンラインデーティングサービスに学ぶ、WEBサービスを流行らせるための3ステップ。

2014-08-19

オンラインデーティングサービスに学ぶ、WEBサービスを流行らせるための3ステップ。

Facebookページの「いいね!」数800万を超えた恋愛・婚活マッチングサービス「pairs」。WEBサービスづくりのヒントを探るべく、成功にいたるまでのストーリーに迫った。

「出会い系」とは違うオンラインデーティングサービス「pairs」、成功の秘訣を探る。

Facebookを利用した恋愛・婚活マッチングサービス「pairs」が人気だ。Facebookページの「いいね!」数は800万を突破(※国内最多)。サービス自体の利用会員数は日本、台湾合計120万人を超え、日々増加を続けている。

恋愛・婚活マッチングと聞いて、いわゆる「出会い系」を想像する人もいるだろう。しかし「pairs」を運営するエウレカは、同じ文脈で語られることを良しとしない。その理由のひとつに、海外での恋愛事情が挙げられる。

アメリカで結婚するカップルの実に35%以上が、「pairs」のような「オンラインデーティングサービス」(※海外での恋愛・婚活マッチングサービスの呼称)で出会ったという調査があるそうだ。4000を超えるサービスが展開され、市場規模は2000億円に上るという。いわゆる「出会い系」とは一線を画し、パートナー探しのツールとして市民権を得ているのだ。

学術的には愛情欲求と呼ばれる、「結婚したい」「パートナーを得たい」「誰かを愛したい」という衝動。『本能的で避けがたい欲求』をビジネスの中枢に据えたサービスである「pairs」は、如何にして生まれたのか。

WEBサービスづくりのヒントになる成功までの3ステップを、COOの西川氏と事業責任者の中村氏に聞く。

あらゆるサービスから探す|エウレカの強みを活かし短期間でマネタイズ可能な分野。

― 受託開発から新たな事業の柱を模索するなかで「恋愛・婚活マッチングサービスでいくぞ!」と決意されたわけですが、どのようにして勝機を見出したのですか?


西川:元々私も代表の赤坂もECの分野にいたので、そこでのマーケティングやプロモーションの知見が活かせて、かつマネタイズプランが明確なものという軸で考えたんです。国内外の事例をウォッチする中で、ちょうどアメリカでオンラインデーティングサービスが大流行してるのを見つけて。こういうサービスって、課金モデルが明確じゃないですか。自分たちの持つマーケティング力を活かせば成功させられる自信があったので参入しました。

エウレカ西川さん

取締役副社長 西川 順さん

国内に同様のサービスはあったので、公表されている情報を基に単価や広告費などを算出して、「会員数で上回るためには、費用をいくらかけて、何ヶ月プロモーションすれば良いか」などを弾き出したんです。それで、勝てると。自社サービスをつくろうと話し合ってから、3日で決めるというスピード感でした(笑)。



中村:ローンチ後のマーケティング的な面でいうと、一番初めに取り組んだのはFacebookファンページを100万人にしようっていうところですね。スマホアプリで成功している企業は、マネタイズのアプリ以外に集客用のアプリを多く保有しているじゃないですか。それを参考にしました。

エウレカ中村さん

pairsチーム 事業責任者 中村 裕一さん

「pairs」の場合はFacebookが出発点だからファンページだよね、ということから、「いいね!」数をKPIに置き社内に専任をつけて運用したんです。勝っているサービスは何を持っているかという観点で、自分たちに置き換えて、噛み砕いて落とし込んだという流れですね。すると、一気に獲得数が伸びていきました。



― とはいえ、後発であることに加えて、「出会い系」として敬遠される可能性のあったサービスです。リスクについては考えなかったのですか?


中村:そこは逆です。リスクがあるということは大企業が参入してこない。また、このビジネスモデルは継続的な広告出稿がカギになるので、広告費を捻出できないベンチャー企業は参入できないだろうと。

一方で、受託開発という収益源があるから、私たちは出稿ができる。リリース当時でも月間1000万円くらいは出稿していました。リスクがあったとしても、それをどうやってポジティブに捉え、勝つための施策に落とし込むかが大事なのではないでしょうか。

同業のサービスを調べ尽くして使い倒す|知らなかった、で許されないこともある。

― 狙うべき市場を定めたところで、具体的なサービス内容を検討していくと思うのですが、どんなところに注力したのでしょうか。


エウレカTOP

会員数120万人を突破したpairs


中村:最初はありとあらゆる同業のサービスを利用しました。課金してないサービスがないんじゃないかというくらいです(笑)。で、実際に利用者と会ってみるんですよ。どんな人が使っていて、どんなことを期待しているのか、どうして僕と会ってみようと思ったのか…。社員全員でやってみて、男女それぞれのリアルなユーザーに意見を聞きまくりました。


― 下心ではなく、純粋な好奇心で聞くんですが…結構会えるものですか?


中村:簡単に会えるものではないですね(笑)。やっぱり、男性から声をかけて会うっていうのは、ハードルが高いです。でも色々使ってみて、なんだかんだ「pairs」が一番会えるんじゃないかって思います。社内でも実際にデートした社員もいますし、付き合うことになった社員もいます。


― 交際まで進んだ実例が身近にあるってすごい。そういう身体を張ったリサーチが実を結んで(?)、国内はもちろん台湾でも人気ですね。


西川:台湾は20~30代のFacebook利用者が非常に多いってご存じですか?当該人口の90%くらいなんです。で、日本が23%くらい。圧倒的にFacebookが利用されていて、国民のほぼすべての未婚者をターゲットにできるとわかったんです。親日なのでマーケティングもしやすいし、日本発のサービスが受け入れてもらえやすいだろうと。

もちろん参入するには苦労もありました。たとえば法律の違いです。日本と台湾だと、消費者保護法や青少年保護法のような法律が全く異なるので、日本と台湾の法律どちらにも精通している弁護士の先生を探し出し、台湾の法律に準拠するようにしました。あとは、ユーザークレームの温度感も違います。日本より気軽に会社に連絡が来るということも事前に把握して体制を整えておきました。


― そのほかの国への展開も視野に入っているんですか?


西川:まずは日本で圧倒的№1になる。その後、アジア全域へという考えがあります。この先のことを考えたときに、サービスリリース時以上に海外のサービスを調べるようになりましたね。

たとえばアメリカに住んでいるインド系の移民が利用するオンラインデーティングサービスでは、利用者の母親も一緒に相手をチェックするんです。親が認める・認めないが結婚の条件になるらしく、つまり親がオンラインデーティングサービスに介入する文化があり、どんなメッセージを誰に送ったかとか、チェックしてるらしいんですよ。他にも同性愛用はもちろん、ベジタリアン専用など細分化されたオンラインデーティングサービスが無数にあるのが今のアメリカです。

また中東(イスラム圏)のサービスだと、プロフィール欄で、女性は自分が身につけているヒジャーブ(目だけが見えるベール)の種類を入力する欄があります。逆に女性が男性を選ぶ際に、ヒゲのタイプを選択できるんです。私の好みはこのヒゲ、私はこれ、みたいに(笑)。あとは一夫多妻制を許すかとか。カルチャーによってオンラインデーティングサービスのあり方は全然違うので、調べていると本当に興味深いです。

でも調べるほどに、断念する部分も出てきます。例えば親・親戚以外に肌を触れられてはいけない国もあり、自分たちがカルチャーを理解しきらないと、最適なサービスは提供できないと実感しました。

サービスを大きくすることだけ考えろ|社会的な責任やビジョンは芽生えるもの。

― 少し時間を戻してしまいますが、サービスをスタートするにあたり、どんな世の中にしたいとか、業界を変えたいとか、そういうビジョンみたいなものはあったんでしょうか。


西川:最初はとにかく、サービスを大きくすることだけを考えていました。最近になってですね、明確なビジョンを語れるようになったのは。これまで男女が出会う場って、友だちの紹介や職場、合コンだったと思うんですけど、そこに「オンラインデーティングサービス」を入れたいですね。カルチャーを根付かせるというのが今の課題です。

晩婚化、未婚化、少子化が進んでいる日本において、男女が出会って恋愛し、結婚し、子どもを持つというのは非常に重要だと考えています。そういう社会の課題解決にも貢献したいと思っています。


― 一方で、日本だと夫婦の3組に1組が離婚していると言われていますが、オンラインデーティングサービスの普及によって離婚率が上がる、みたいなリスクも考えられませんか?


西川:実は、アメリカの調査でオンラインデーティングサービスで出会った人は離婚率が低いというデータがあるんですよ。理由は、最初に条件をきちんと見てるからだと言われています。恋愛していると、例えば年収はなかなか聞けないじゃないですか。でもプロフィールを公開して出会いが始まれば、条件面のミスマッチが少ないというのが大きいのでは、と考えています。


エウレカMTG


― なるほど!確かにそうですね。では最後に、カルチャーを浸透させていくうえでの取り組み、直近で向かっていく方向性について教えてください。


中村:サービスの拡大と社会的な責任の大きさは比例するので、より安全性や顧客満足度を高めていくことが使命だと思います。真剣なパートナーを探す場所を提供するサービスで、しかも課金していただいている以上、安全性と顧客満足度の追求は常に優先順位高く運営しています。

西川:そこで、カスタマーサポートを拡充しました。クレームを処理するだけではなく、サービスにフィードバックする仕組みの構築です。例えばひとつのクレームだとしても、その陰には何万人の声が隠れているかもしれない。それを判断できて、実行に移せるカスタマーサポートを強化しています。

将来的には、リアルの恋愛相談機能を入れたいと考えています。中国の大手オンラインデーティングサービスはアメリカの大学院で進化生物学と分子遺伝学を学んだ人が、生物としての人間の本質と、心理学を組み合わせて作ったのですが、基本的に全部コンサルティングをするんですよ。どうすれば求める異性と出会えるかを、電話とメールで。デジタルで解決できることはできるだけ解決しつつ、人を介さないとできないサービスは、オフラインを含めた導入をしていきたいと考えています。


― そんな青写真が描けるのも、成長ステージに応じて緻密なリサーチが行なわれたからなんでしょうね。新しいサービスを開発したいと考える人の参考になる部分がたくさんあったと思います。


[取材] 城戸内大介 [文] 田中嘉人




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