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『ボケて』を成功させた最強チームとは?|“三足のわらじ”を履きこなすWEB演出家、イセオサムに訊く!

2014-09-25

『ボケて』を成功させた最強チームとは?|“三足のわらじ”を履きこなすWEB演出家、イセオサムに訊く!

一体何者!?と思わずにいられない、ユニークな働き方を実践するイセオサムさん。『ボケて』アプリの仕掛け人だが、ある時は株式会社ハロのCOO、ある時はオモロキの最高戦略責任者、ある時は個人で暗躍…二足ならぬ「三足のわらじ」を履く。そんなイセさんが考える最強チームの作り方、そして理想の働き方とは?

ハロ、オモロキ、個人…3つの顔を持つ、WEBの演出家

会社で働きながら個人でも活動をしたり、複数のプロジェクトに携わったり、「2枚目の名刺」や「パラレルキャリア」が注目されている。

年功序列や終身雇用はもう過去の話となり、先の見えない時代。自らキャリアを切り拓くための新しい働き方や価値観が少しずつ広まってきた。

ただ、「新しい働き方」のロールモデルはまだまだ多いとは言えない。そんな中で今回取り上げるのがイセオサムさんだ。スマホアプリは350万DL超、全体で月間2.5億PVを突破した『ボケて(bokete)』をプロデュースした人物だ。

週刊少年ジャンプやAKB48とのコラボでも話題になった『ボケて(bokete)』だが、面白いのはハロ、オモロキという2社が中心となり、複数の会社を巻き込んだプロジェクト形式で企画・開発され、成功したこと。

イセオサムさんは同2社で取締役を担うが、個人でも『ViRATES (バイレーツ)』などメディアやアプリのプロデュースも手がけている。

二足ならぬ“三足のわらじ”を履くイセさん。その独自の働き方や考え方は『ボケて』のヒットにどう影響したのか?また、イセさんが考える幸せな働き方とは?

『ボケて』は二足のわらじのメンバーが集結して大ヒット

― スマホアプリ版『ボケて』350万ダウンロードおめでとうございます!まず『ボケて』の運営体制についてなのですが、イセさんが取締役を務めるハロとオモロキが携わっていることはわかるものの…裏側があまり見えないというか。会社ごとに役割を分けているのでしょうか?


イセオサム

株式会社ハロ(HALO)Co-Founder COO/株式会社オモロキ取締役兼最高戦略責任者 イセオサムさん


外から見るとよくわかんないですよね(笑)。

ざっくりデザインとマーケティングはハロで、WEBの開発はオモロキ、アプリの開発がブレイブソフトで…という感じなんですが、実はどの会社が何しているかあまり関係なくて。というのも、ハロ、オモロキ、ブレイブソフトだけじゃなくて色んな会社から集まった10人くらいが参加しているプロジェクトになっています。

オモロキの全員が『ボケて』には携わっていますが、全員が2つ以上別の仕事をするというスタイルがあって。6人いるメンバー全員が役員で、市議会議員や弁護士やりながら、PR会社をやりながらというメンバーで運営しているんです。


― なぜ、またそういった体制で?


最強メンバーを一つの会社で抱えるのは難しいから、パートナーシップを結ぼうと。全員が100%オモロキにコミットするというよりは、雇用しないカタチで組むのが自然なんですよね。

で、それぞれが持つスキルやリソースに紐づけてチームを組む。「オニオンストラクチャー」と言ったりするんですけど、玉ねぎみたいに芯があって、外のレイヤーがどんどん多層化していくイメージです。

一つの会社に人を集めたほうが効率的なのはわかるんですけど、その効率は「資金をドカンと入れてイグジットします」みたいな時に大切なもので、そういうのはあまり得意じゃないというか…。別のスタイルを示して、「こういうやり方もある」と広めてみたいんです。

オモロキは「利潤追求よりも価値提供を最優先します」と掲げていて…もうアンチ資本主義に近いですね(笑)。だから、毎月の予算目標もないんです。面白いものを作れば利益がついてくるという思想でやっていく。会社が成長するのも、結果でしかないんです。もちろん、それぞれがメインでやっている仕事で食べていけるからそれができる、という部分はありますが。

よくVCさんなどからは「会社を一つにまとめて、投資させてほしい」と言われるんですけど、「いや、そういうことじゃないんです」と。お互いプロフェッショナリズムを持ちながら刺激を与えられるチームで、リスペクトできる仲間で。みんな、別の場所をメインに活躍しているからこそ、それがオモロキにも反映され、いいフィードバックが生まれているんです。

これは実験。ヘンな働き方をする人になりたい

― イセさんの場合、ハロ、オモロキ以外にも、個人でメディアやスマホアプリのプロデュースもしていますよね。一体どんなスケジュールで働いているんですか?


イセオサム

ぎっしりと詰まったイセさんの一週間のスケジュール


そうですね…コレとかわかりやすいかな…赤がぼくのスケジュールで。

月曜はハロの役員会で戦略を作ったり、火曜はわりと『ボケて』が多くてAKBとコラボしているので(※取材時)、その打合せですね。で、その夜は個人プロジェクトでLINEの谷口さんと一緒にリリースしたアプリについて…ってけっこうメチャクチャですね(笑)


― すごい多忙っぷりじゃないですか!混乱しないんですか?


混乱することもありますよ。たまに「あれ?いま自分はどこの人だっけ?」みたいな(笑)。


― 気持ちもそうですが、プロジェクトごとに自身の役割を切り替えるのも大変そうですね。


切り替えられないので、もう切り替えないことにしています(笑)

自己紹介も、携わっているサービスの話はしますが、所属の話はほとんどしないんですよ。ハロの何々とか、オモロキの何々とか、個人でやっている会社の代表とか、もう肩書きを話しても意味不明なんで(笑)

もともとぼくは新卒で日テレに就職したんですけど、放送作家さんに憧れてて。たとえば、秋元康さんってテレビ番組を10本やって、アイドルもプロデュ―スして、作詞もして。WEBの世界でも、そういったやり方はできるな、と。実験に近いんですけど、ぼくに限らず、変な人がいてもいいじゃないですか。

100%ひとつの会社にコミットするのではなく、リモートで働きながらそれぞれがパフォーマンスを発揮していくとか、多様な働き方を許容しようというのが、ぼくの思想としてはあって。

ミュージシャンのm-floに例えると、MCのVERBALはソロ活動をしたり、テリヤキボーイズというユニットでRIP SLYMEやNIGOと組んだり。

バンドでも同じだと思うんですけど、いくら売れてても、ソロ活動やユニットを始めるメンバーっていますよね。みんなで演奏したり、曲を作ったり、もちろん楽しいけど、自分一人のエクストリームなものづくりをやってみたい時もあって。で、ソロをやってみると新たに気づくことがあって、それぞれの活動に良いフィードバックが起こる。こっちで得たものが、あっちに活きるとか、その逆があるとか。

ぼくはあまり経営者という感じでもないので、アプローチが違うのかもしれませんが、プロジェクトベースで考えることが多くて。

皆がちゃんと会社を経営するのも素敵ですけど、そういうのは優秀な人に任せて、ヘンテコな動きをする。そのほうが、次の世代に希望じゃないですけど、「そういうやり方もアリなんだ」と思ってもらえる気がして。絶対、今の社会の仕組みがおかしいと思っている人がいるはずで。

ただ、「もっとこのプロジェクトに集中してコミットしてくれ」と言われることはあって、そこはもうパフォーマンスで返すしかないんですけどね。

エンジニア、デザイナーの次は「演出家」が活躍する時代

― エンジニアやデザイナーのスキルってどちらかというとわかりやすいと思うんです。出来たものを見てもいい。ただ、イセさんはどちらでもないですし、経営者でもなく…言葉は良くないですが、何者なのでしょう?


イセオサム

(笑)確かにいろいろやっているので、職種名を付けるのがむずかしくて。

いわゆるディレクターとか、プロデュ―サーになると思うんですけど、そことは、もう少し別の価値で仕事をしたいと思っていて。

じつはエンジニアに対するコンプレックスがあったんですよ。インターネット業界って今はエンジニアが命だから。でも、時代によって変わっていくと思っています。

たとえば、新しい技術が出たばかりの頃は、その技術に長けたエンジニアが活躍しますよね。その人しか作れないという理由で。でも、だんだん皆が作れるようになると、差別化の要素がデザインになる、そして、デザイナーが活躍していって。

じゃあ、デザインでも差別化ができなくなったら、最後は誰が活躍するか?それはサービスをまとめたり、演出によって見せ方を変えたりできる人だと思うんです。

それができるのは「演出家」で、この業界にはほとんどいないんです。ぼくは演出や調整で整えることを「魔法をかける」と勝手に呼んでいて、そこが自分の強みかな、と。

テレビのディレクターも一緒ですけど、テクニカルにカットを割れる人はいるんですけど、気持ちいいカット割りができる人は少ない。わかりやすいとか、心地いいとか、没入感があるとか、それってすごく細かい差なんですけど、すごい大事で。


― イセさんも自己紹介に「プロデューサー」ではなく、「WEB演出家」と書いていましたね。その「魔法をかける」という部分は体系化したり、言葉で説明したりしづらいからこそ、価値が高いとも言えそうですね。


言葉にできないけど、あいつがプロジェクトに入るとうまくいく。成功するみたいなイメージを作りたいですね。

ただ、起業して最初の3年は鳴かず飛ばずで、ぜんぜんサービスが当たらなかったんですよ。それこそ、全く魔法が効かなかった。

エンジニアリングにしても、デザインにしても、バックグラウンドがないから、ディレクションもグッチャグチャだし、グダグダで。事故りながら、修行して。やっとエンジニアとも会話ができるようになっていって。


― 演出をする上でも、技術の話はわかったほうがいいのでしょうか?


そうですね、ここもテレビの世界で働いていたから思うんですけど、テレビってやっぱり自分でカメラをまわさないとダメで。ちゃんとした映像を撮る時はカメラマンがつくんですけど、自分で撮ることも多い。で、編集までやるんですよね、ディレクターが。だから、僕も全部はわからないけど、興味を持って、やってみることでコミュニケーションが円滑になると考えています。

全員じゃないですけど、ネット業界のディレクターってほとんど進行管理しかしないじゃないですか。そこだけには価値はなくて。細かい文言一つ、てにをはの調整とかもですけど、そういうところまでやってプロダクトの責任者なんで。


― ある意味ではテレビのディレクターのように現場の作業をやることで見えてくる部分も多いのかもしれませんね。最後の質問になるのですが、イセさんにとって幸せな働き方とは、どういうものだと思いますか?


マルチに働くっていうのは手段でしかないんですよね。そうじゃなくて、一緒に働く仲間が素敵であること。あとは作っているものが素敵であること。それがファンに受け入れられていること。すごくベタですけど、その1つ1つが満たされたらいいかなと。で、意外と全部が揃っている環境は少ない。

テレビ局で働いていた時、新卒でも年収1,000万円くらいもらえるとか、世間からみれば良い環境に見えるのかもしれないけど、すごくギャップがあって。じつは月400時間くらい働いてるとか(笑)。その先に何があるのか。10年後にプロデュ―サーになって、20年後にもうちょっといい給料もらって。人に見せるとか、楽しんでもらうとか、いわゆるエンターテインメントの仕事がしたかったから、もちろん、創りたい番組、コンテンツがあるという思いを叶えるにはそこしかなかったのかもしれません。

でも、テレビで自分の番組をやろうとすると、少なくとも10年くらいは掛かってしまう。その10年間、会社の都合で、「次は報道やって」とか、「次はバラエティやって」とか、自分でやりたい事を選べないのがすでに嫌で。その判断を会社に委ねるわけにはいかないな、と。

いくら給料が貰えようが、使う時間もないし、時間のコントロールが効かないし。それだけだとあんまり面白くないなって。普通に考えたら「悪くない」んですけど、「悪くない」で終わるのか?だったら、先の見えないことをやる方が何倍も楽しい。

で、年収だけでみれば半分以下になるような転職をして、さらに年収を下げて起業して…一時は全身ユニクロを着て、食事はカップラーメンという生活になったりもしたんですけどね(笑)

結局は、自分の基準で考えた方がいいということかもしれません。その当時、サイバーエージェントの藤田さんの本を読んでいて、キツそうだけど、何か楽しそうにやってんなーと。結局は、自分が何を大切にするか。それが今の仕事や環境で実現できているか?というところに尽きるのかもしれませんね。


― 何を大切にして生きるか、その選択肢を広げるのも、自分の行動次第かもしれませんね。先がなかなか見えない時代ですし、不安もありますが、同時にチャンスも多い。そんな勇気も貰うことができました。本日はありがとうございました!


[取材・文]白石勝也




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