2014.10.24
ケータイ小説から考えるスマホ時代のコンテンツ。|LINE 谷口マサトに聞くネイティブ広告の話<後編>

ケータイ小説から考えるスマホ時代のコンテンツ。|LINE 谷口マサトに聞くネイティブ広告の話<後編>

LINEの谷口マサト氏へのインタビュー第2弾。「コンテンツづくりに必要なのは”ムダ”である」と語る谷口氏に、コンテンツを取り巻く環境のこれからについてうかがった。果たして、ネイティブ広告は一過性のものなのか。それとも、これからも求められ続けるのか――。

0 0 22 0

ネイティブ広告におけるスマホの可能性。

前半のインタビューで、ローコストで始めるならスマホ層に合わせたコンテンツづくりからという話も出ましたが、谷口さんがコンテンツをつくるときはやっぱりスマホを意識しているんですか?


そうですね。私は最近実際には起こるはずのない妄想みたいな記事ばかり書いているんですけど、PCユーザーからみると痛々しく感じるでしょうね(笑)。ただ、それはPCユーザーが書き手に近い存在だからじゃないかって思っています。自分が妄想した記事を書くって考えれば恥ずかしいでしょ?ただ、スマホユーザーは、妄想記事もそうですけど、広告だからとか、タイアップだからとか、PCユーザーほど気にしない。おもしろければいいというタイプが多いです。書き手の意識が減って、素直に読んでくれる。ですから今は、スマホユーザーにウケるためにっていうのは意識していますね。PCウケだけ考えるとリアリティがあるものに限定されますから。

あと、持ち歩けるっていうのが最強で。PCは離れちゃえばコンテンツを見ることはできないけど、スマホならだらだら見ることができる。コンテンツにおいて実に可能性を秘めたデバイスだと感じています。

また、スマホのユーザーっておもしろくて、パッと読むか、だらだら読むかに二極化しているんです。たとえばlivedoorニュースに「ざっくり言うと」っていう3行で要点をまとめたものがあるんですけど、そこで興味をもつと延々と読むんですよね。実際に私が書いた記事を見ていてもわかるのですが、1ページ目から2ページ目までは離脱する人も少なくないんですけど、2ページ目まで読むと3ページ目まで読むんですよ。だから、大長編のコンテンツなんかもできるんじゃないかって。連載形式で源氏物語のスマホ版とか。


― そういう未来ってケータイ小説からも感じられましたよね。


おっしゃるとおりですね。ケータイ小説でも、あれだけのテキストをケータイで読むのかって驚いたんですけど、物語性のあるコンテンツをスマホ向けに提供できる可能性があるということですよね。撮りおろしの写真を載せて、テキストだけじゃないリッチなコンテンツをつくれば、スマホだったら充分に見られると思いますよ。


谷口マサト

ネットはまだまだ可能性を秘めている。

― スマホは、ローコストで始められて、さらに可能性も秘めている。となると、「やりたい」って人も増えてきそうですね。それこそ、インターネットのコンテンツって個人でつくれちゃう人もいるわけじゃないですか。そういう“セミプロ”みたいな人が入ってくることも、これから増えてきそうですね。


そうですね。ライターの青田刈りは始まってますよ。ネットで注目されたら声が沢山かかる。ネットでウケるライターってまだまだ少なくて取り合いです。あとは、他のメディアのプロが移ってくる流れがもっと激しくなると思っていて。ただ、TVっていう比較的パブリックなものと、PCっていう若干自分に近いけど離れているもの、そしてスマホというさらに近いものというように、メディアとの距離感によってつくり方が異なるので編集が必要ですが。


― たとえば映像や音楽という人たちもネットに寄ってくる可能性はある、と。


個人的には、紙媒体のライターにもっと入ってきてほしいなって思っています。今は私自身も写真を多用するフォト紙芝居を中心にやってますけど、ネットの場合、テキストでも画像でも動画でも何でも使えるっていうのが一番の利点なので。

映像は映像で良いんですけど、不自由な点もあって。たとえば状況説明や内面描写なんかも役者がいちいち声を出して説明しないといけない点とか時間のムダだと思うんですよね。ネットだとテキスト一文です。一方で小説だと、風景描写とかをいちいちテキストにしなきゃいけない。ネットだと写真を撮ればいい。

そういった風に、ネットなら表現の特徴を組み合わせることができる。だから、ネット以外のメディアでやってきた人が力を発揮する場所はなにかしらあると思います。まだまだウェブコンテンツの文化とか文脈とかができていないのですが、TVでいえば何十年もかけてつくってきたことなのでネットもこれからかな、と。


谷口マサト

メディアパワーとコンテンツの重要度は反比例する。

― 今後、ネイティブ広告はどのような広がりを見せていくと思いますか?


不易流行を平たく言うと、“過去はいつも新しく、未来はなぜか懐かしい”っていうことだと思いますが、映画やテレビの黎明期についていろいろ調べてみたんですけど、近いことが今起こっていますね。

というのも、テレビの黎明期は一社提供の番組がほぼメインでしたが、今は一社提供から複数社提供に切り替わっていますよね。「この番組を見てくれているんだから、このブランドも好きだ」って関係ができていたのに、効率化を追求することでCMと番組が切り離されていったんです。しかし皮肉なことにその結果、CMスキップ機能のように、そもそもはしごをはずされることも多くなった。

でも、ネットの場合まだ黎明期なので、一社提供のコンテンツっていうのはまだつくりやすい状況です。一社提供の何が良いかというと、独自の価値観をもったコンテンツがつくりやすいんですよ。スポンサーの価値観とコンテンツが合えば、必ずしもPV至上主義じゃなくても良い。そこに多様なコンテンツを産み出す鍵があるし、実際にテレビも黎明期はそうやってコンテンツが生まれてきていました。

たとえば「ムーミン」はカルピスが一社提供だったのですが、もっと視聴率が取れそうな他のアニメ案もあったのに、価値観が合うからということで「ムーミン」は誕生しました。今のネットで言えば、ネットでウケやすいコンテンツだけだと、自分も含めてワンパターンになってしまう。しかし理解あるスポンサーがいれば、多様なコンテンツをつくれるはずで、そういった提案をしていこうと思っています。誤解して欲しくないのは、PVを無視するということではないです。たとえば通常の記事に比べ、コンテンツをつくりこんだ記事は10倍のPVになることは珍しくありません。これを5倍でも良いので、ユニークなコンテンツを作れないかという話です。


― 何か今考えていることってありますか?


たとえば音楽のプロモーションってだいたいポシャるんですよね。お金がないって。でも、ネットなら歌詞をもとに記事をつくってもいいですし、逆に記事をもとにタイアップの曲をつくってもいいですし。「この音楽を聴きながらこの記事を読むとヤバイ!」って、紹介するのもアリですよね。あとはテレビのヤラセ問題とかが話題になっていますけど、ネットだとああいうことも笑いにしやすい。誰がヤラセかを当てる“ヤラセハウス”みたいなのも前々から提案しているんですが、なかなか…(笑)。

まぁ、この先どうなるかわからないですけど、現状では企業とコラボする機会は年々多くなってるし、未来は全然明るいなと思っていますね。ネイティブ広告が騒がれ始めたのは本当にここ数年のことですし。さらに今はSNSでみんなが自衛するようになったので、コンテンツと一緒に広告を運ばないとユーザーには届かないので。

要は、メディアパワーが落ちて、相対的にコンテンツの重要度が高まってきているということですね。たとえば独裁国家でメディアが絶大なパワーをもっていれば、コンテンツをつくらなくてもガンガンとメッセージを流せば良い。しかしメディアのパワーが落ちてくれば、まずコンテンツがないと見てもらえない。たとえば1950、60年代の広告は自由で面白かったという話をよく聞きます。これはメディアパワーがまだ小さかったからじゃないかなと思います。ところがメディアが力をもつと、単純に商品を褒めた広告の方が効果が良い。しかし今はユーザーに主導権が移っているので、そういった意味では、コンテンツ重視の時代はしばらく続くんじゃないかと思います。その先はまた逆転するかもしれませんが(笑)。


― 広告という話でいくと、ネイティブ広告って企業からの出稿があって制作されることが多いと思うんですが、谷口さんが考える今後の課題があれば教えてください。


企業側では、やっぱり“現場はやりたいけど上が通さない”というのはいっぱいでてきますね。

コンテンツはユーザーの反応によって結果が異なるので、成果をコントロールしにくい面があります。できるだけ確実に数値を積み上げたいマネージャー以上の層にとってはリスクに見えてしまう。

ただその場合は、ちょうどほぼ同じ時期に出版された、LINEの上級執行役員の田端信太郎とベストセラー『戦略PR』を書いた本田哲也氏による共著『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』を上司に渡してもらうと良いと思います。

私の本は現場の担当者向けの本なのですが、この本は経営層やマネジメント層に向けて書かれていて、乱暴にまとめると「広告をコントロールできない現状にビビるな」という本です。

ただコンテンツをつくりたくない気持ちもわかります。時間と手間とお金もかかるし、前半でもお話した、効率化と一見反する話なので短期的にはムダですから。


― ムダ探しばっかりしていると、楽しいものをつくろうという方向に向かわないんですよね。


そう。仕事が楽しいかどうかっていうのからは離れていく感じがしますね。やっぱりコンテンツをつくると楽しいですからね。大変ですけど。編プロやテレビ制作会社の人達ってよく働きますけど、あれもどこか楽しくなければやってられないでしょうね。ただ現在のネットは、「プラットフォームをつくるのが優先」で正解です。私が言うのもなんですが、コンテンツはまだまだこれからの分野なので、力をかけるのはまずプラットフォーム開発です。影響範囲が大きいのでそれもまた楽しいですね。


― 谷口さんもプラットフォームの開発に携わっているんですか?


もともとは大手コマースサイトの設計やサービス開発をやってました。最近はコンテンツ以外にアプリ「LINE」の開発にも携わっていまして、広告事業部のプロデューサーとして、LINEの公式アカウント、企業や芸能人のアカウントを紹介するコーナーのメディア化を進めているところです。たとえば企業が単純な新商品紹介ではなく、コンテンツを作ったPRをしていれば優先的に紹介するようにしています。まだはじまったばかりですが、将来的にはそこでもネイティブ広告を展開できると思っています。


― コンテンツを届けるプラットフォームの進化とともに、コンテンツの重要度は増していく。コンテンツづくりとプラットフォームづくりの両方の目線で向き合っていくことが大切だとわかりました。ありがとうございました。


谷口マサト


[取材] 松尾彰大 [文] 田中嘉人

LINEが積極採用中!

谷口マサトさんと一緒に働くチャンス!LINEが広告プランナーをはじめ、様々な職種で積極採用中です。

「LINE CONFERENCE TOKYO 2014」で発表されたLINEの事業戦略も記憶に新しいところ。興味のある方は是非、チェックしてみてください。

LINE 採用情報はコチラ


文 = 松尾彰大
編集 = 田中嘉人


関連記事

特集記事

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから