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民主主義のもやもやについて、鈴木健とドミニク・チェンがPizzaXで語ったこと|TWDW2015

2016-01-19

民主主義のもやもやについて、鈴木健とドミニク・チェンがPizzaXで語ったこと|TWDW2015

TWDW2015のプログラムとして開催された、よいテクノロジーを味わうピザパーティー「PizzaX(ピザックス)Vol.5」に潜入。スマートニュース社CEOの鈴木健さん、ディヴィデュアル社共同創業者/NPO法人コモンスフィア理事のドミニク・チェンさんが語ったことは?

社会問題×テクノロジー…そしておいしいピザ「PizzaX」

勤労感謝の日、前後7日間で開催される”働き方の祭典”「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2015」(TWDW)のなかでも、異彩を放っていたプログラムが【PizzaX Vol.5「民主的に生きるための技術」 とピザ】だ。

PizzaXはスマートニュースやgreenz.jpなどの若手が中心になって主催しているイベントで、「よいテクノロジーを味わうピザパーティー」というコンセプトで開催しているそう。

なぜ「ピザ」なのか?

思想・歴史・哲学・社会・テクノロジー…重厚なテーマを扱うのだが、おいしいピザがそこにあることでちょうどよく肩の力を抜くことができ、リラックスして参加ができる。

まずは当日、会場の様子から紹介していきたい。一般的なトークイベントではセッション後に参加者同士の交流時間が設けられることが多いが、同プログラムでは前半パートがその時間に。

会場ではDJが音楽を流しており、リラックスできる空間を演出していた。

PizzaX

提供されたビール。

PizzaX

どんどん無くなっていくピザ。この日提供されたのは、雑誌などでも取り上げられ、話題になっている代官山「PIZZA SLICE」。

PizzaX

PizzaX


会場が温まったタイミングで、後半のトークセッションへ。


PizzaX

「民主主義のもやもや」の解像度を上げたい

今回登壇したのは、鈴木健さん(スマートニュース社CEO)と、ドミニク・チェンさん(NPO法人コモンスフィア理事/ディヴィデュアル共同創業者)。

モデレーターは「PizzaX」運営メンバーである望月優大さん(スマートニュース)が担当し、「民主的に生きるための技術」をテーマにセッションがはじまった。

PizzaX


まず望月さんが、「民主的に生きるための技術」というテーマ、そしてゲストに鈴木健さんとドミニク・チェンさんを招いた理由について語った。

今日は「民主主義のもやもや」についてみんなで考えたいと思っています。この社会は民主主義だと言われているけれど、実際には世の中で起きている大半の問題はよくわからなかったり、関心が持ちづらかったりする。インターネットが発達して、日本だけでなく、世界中の様々なニュースが目に飛び込んでくるようになりました。けれど、関心を持ったとしてもどうやったら関われるか、変えられるかわからない。多くの問題について関心を持ち続けることも難しい。そういういろいろな「もやもや」をぼくも持っているし、今日ここに来ているみなさんも持っているんじゃないでしょうか。


健さんとドミニクさんをお招きしたのは、それぞれ社会や技術について抽象的な思考と具体的な取り組みの両方の視点から取り組んでこられた方々だからです。お二人の話を聞くことで、いまという時代における「民主主義のもやもや」の解像度が少しでも上がればと思っています。


今回のトークセッションが行われたのは、パリでの同時多発テロ事件が起こってからちょうど1週間後というタイミング。自身もフランス国籍であるドミニクさんの話からイベントが始まった。

パリのリアリティを伝えることはできるか

ドミニク・チェン:
最初に説明しなければいけないことがあって、僕、よく間違えられるんですけど、ドミニク・チェンという名前なんですが、芸名じゃなくて本名なんですね。何人なのかと言うと、国籍がフランスなんですが、台湾とベトナムと日本が混ざっていて、東京でフランス人として生まれるという、自分でも謎の出生を遂げているんです(笑)。その後パリに5年間住んで、向こうの高校を出て、アメリカの大学を出ました。


PizzaX


今回のパリの同時テロ事件で一番衝撃的だったのが、7〜8カ所とかで、同時多発的にテロが起こったんですけど、その1カ所に約20名ほどの方が殺害された通りがあって、そこに今も僕のおじさんといとこが住んでいるんですね。

子どものときからずっとその通りに遊びに行ったりしていた、すごく想像ができる場所で、そういうようなことが起こったと。で、この話を今週いろんな人にしてきたんですけれども、やっぱりこの僕が感じている感覚というのは普通に説明してもなかなか伝わらないんですよね。

インターネットでそういうことが伝わるのか伝わらないのか、みたいなことで言うと、今週の月曜日、フランス人の男性で、奥さんを今回のテロによって亡くされた方がいて、それを受けて彼が書いた手紙というのがありまして。その内容に僕は非常に心を動かされたんです。

彼らには、1歳5カ月の子どもがいて、お父さんと子どもで2人きりになってしまったと。彼が書いた手紙というのは、実はそのテロリストたちに宛てた手紙で「あなたたちは私の憎しみを得ることはできない」という内容だったんです。それがフランス国内で、Facebook上で発信された。それを読んで、これはぜひ日本の友人たちにも伝えたいなと思って、もうエイヤで翻訳をして昨日の朝公開したんですね。

私はTwitterのフォロワーが4000人程度なんですが、公開してからもう24時間たっているんですけれども、今もずっとリツイートされ続けていて、日本の方たちにすごくいろんな反応を引き起こしている。だから、言葉の境界はあれど、心の部分を翻訳することができれば、すごく伝わるんだなというのが、今リアルタイムで感じていることなんですね。

正気を取り戻すための情報

ドミニク・チェン:
その彼が国営放送でインタビューされていて、とても気丈に答えているんですけれど、そのなかですごい強調していたことがあって。「絶対に僕をヒーロー視しないでくれ」と。そういう短絡的な思考こそが、今回の状況を生んでいると。

「僕は、1人のただの父親にすぎなくて、あした、もしかしたら、あさって、また次の日になったら、もう怒りがこみ上げてきて、あの手紙のことを忘れてしまうかもしれない」と。だけど、彼が一番恐れているのは、それをやってしまった結果自分の息子がそういうことに巻き込まれることだと強調していて、自分を戒めるためにあの手紙を書いたというんです。

僕がテロが起きたことを知った土曜日の朝に真っ先に考えたのが、自分の子どもが殺されたら果たして正気でいられるかということでした。そう思っていた矢先に、あの手紙を読んで、正気に戻してくれたんですよね。正気に戻らないとスパゲッティのように絡んだ東西の歴史のもつれというのはほどけない。彼の言葉がスターティングポイントになったと思っています。

もう一つ、いまフランスで起きていることがあって。去年の10月ごろ、フランスの一般市民が、アルジェリアの山奥でテロリスト集団に殺害されたという事件がありました。それを受けて、1年前のフランスですごい議論が巻き起こったんですね。難民受け入れはどうするんだみたいな。その当時の、ドミニク・ドビルパンという元首相で元外相の政治家の6分間のインタビュー動画があって、それが今フランスでバズっているんですね。

彼が言っているのは、テロに対する戦争というのは、不可能なんだと。テロリズムのような実体のない対象に対して、戦争というものは仕掛けることができない。じゃあ、どうすればいいんだと。イスラエルみたいに、どんどん閉鎖的になるべきなのか。我々は、2000年代にイラクやアフガニスタンで戦争をやって、そういうことをしてきた。その結果がいま自分たちにはね返ってきている。だから別の道を探らないのは、おかしい。

ドビルパンがそういう話をしている動画なんですが、その動画を誰かが違法リップしたものが、デイリーモーションとかに上がって何百万回も再生されている。テロの被害に遭った一市民も、政治家も、同じことに気づき始めていると思います。そして、そのことが報道や新聞というものを介さずに、ネットを介して伝搬していっているというのが、2001年9月11日の時と比べても、新しいと思うんですよね、状況として。ひとつの微かな兆しに過ぎませんが、こういうマスメディアが伝えられない現実像の形成というものをネットが確実に媒介していることが感じられるようになったと思いますし、世界の複雑さを受け入れる姿勢がネットによって広がるのを見ると、旧来の民主主義の限界を突破するヒントがあるように思ったんです。

主権者の感覚を持ちづらい理由

次に、鈴木健さんが、現代の民主主義がもやもやする根本的な理由について語った場面を紹介したい。


鈴木健:
今日のテーマは「民主的に生きるための技術」ということですが、「民主的」も「生きる」も「技術」もそれぞれがもやもやしていて、もはや「もやもや三銃士」ですね。まずは、僕が思っている民主主義的ということのイメージを話したいと思います。

僕の民主主義のイメージは、みんなが「自分自身が統治者であり、権力者である」と思えている状態。そしてそれが実際に実行されている状態です。政治学風の言葉で言うと主権者ですね。みんなが、であって、自分だけがじゃないですよ。自分だけが権力者になっちゃったらまた別なので。みんなが主権者であると信じられていて、しかもそれが実行されている状態、これが僕の民主的であるということの定義なんですね。


PizzaX


で、今の日本を見ると、そう信じられている状態というのがほとんどないんですね。もう、こういう言い方をするとちょっと失礼になるかもしれないけど、絶滅危惧種状態になっちゃってるわけですよ。それくらい民主的に生きられていない。この状態は、国とか、時代とかによって違っていて、まあ当然、新しく民主制が導入されましたというような国とか、ものすごく盛り上がるんですよね。投票率とかも95%とかになったりする。そういう状態と今の日本というのは、全く逆。なぜなのかというと、やっぱり自分たちがどうやったら社会を変えられるのかということに対するリアリティとか感覚というのものが、中から何をやっても空気に消えていくみたいな感じがするじゃないですか。その感じってやっぱりすごいあると思うんですよね。

例えば、今僕らが世界の秩序というものを考えるときには、アメリカの大統領選挙がどうなるのかということにすごく影響されるわけです。アメリカの有権者が2億数千万人いて、その投票結果によって、世界の秩序ってすごく影響を受けてしまう。にもかかわらず、僕らはアメリカの大統領選挙に投票することはできないんですね。

じゃあどうするかというと、日本で国会議員の人が内閣総理大臣を選んで、外務大臣がいて、外務省の方々もいて、そこでアメリカと外交を繰り広げて、それからいろんなルートでオバマまでいってみたいな、そういう大変複雑なルートをたどっていかないといけないんです。


ドミニク・チェン:
オバマ遠いっすね(笑)


鈴木健:
遠いですよね。この遠さの感覚はすごいですよね。そこに僕なんかはとてももやもやするわけです。問題は世界が接続しちゃっているということで、自分が何かやったことが世界にどう影響するかもわからないし、世界の裏側の出来事が自分にどう影響するかもわからない。自分の身近な問題を解決したいと思ったときに、何でそんな外国の法律の問題を考えなきゃいけないのみたいなことがあるわけですよ。こういう不自由を感じてしまうというのが、今の政策技術の限界なんだと思っています。

もやもやする社会自体を技術で変えたい

鈴木健:
今の時代、自分の身近な問題を解決するためだけにそこまで人生を費やしたくないなという問題がある。結局、そこで皆さん政治的な行為をするときの覚悟が求められてしまうわけですよね。昔、谷亮子さんが国会議員をやりながら柔道選手に残りたいと言って「そんなの無理だろう、覚悟が足りねえぞ」と批判されていましたよね。

僕は逆に、それだけ覚悟がないと世の中変えられないという社会の仕組み自体がそもそも間違っているんじゃないかと、思うわけですね。テクノロジーの力をうまく使えばそんなことをしなくても、アフター5だけで政治家ができるようになるんじゃないか、むしろそれこそがあるべき仕組みなんじゃないかと思うんです。日本だと、市議会議員とか、区議会議員とか、地方議員もみんなフルタイムでやることを前提にしてますけど、北欧の国ではほとんどがボランティア。報酬がないんですね。


PizzaX


彼らは、働きながら政治家をやるんです。そのために議会も土曜日とか、夕方にする。それでも、政治家はできるんだということなんですよね。必ずしもフルコミットをしないといけないというわけではない。

僕たち全員が政治家になればいいわけですよ。政治家を選ぶんじゃなくて、僕たちが政治家だと。これこそが、民主的に生きるということですよね。自分たちがその当事者であるということですが。ところが、それを可能にする技術的な基盤がまだない。だけど、おそらくインターネットの力によっていつかは可能になるんじゃないか、むしろそれを作らなきゃいけないと思うんですよね。

今のままだと、問題に対してセンシティブであろうとすればするほど、もやもやするわけですよね。自分が何かアクションをしたときに、本当に社会は変わるのかという無力感に苛まれるわけですから。もやもやは大切にしたほうがいいと思うんですけど、もやもやしなきゃいけない社会自体を変えたい。

政治とか、民主制とか、本来は大した問題じゃない。人生にはほかにもたくさんのもやもやがあって、みんないろいろな問題を抱えて生きていると思うんですよ。政治なんてその中のOne of themじゃないですか。だからこういう問題を考えるときに、「ピザおいしいね」というところからスタートするのはすごく大事だと思います(笑)。


PizzaX




いかがだったでしょうか。「これからの働き方」を考える時、自分自身がどんなスタイルで働くのか、どうキャリアを積んでいくかというところに目が行きがち。それと同時に「社会の一員として何ができるのか?」「どう社会的な問題に取り組んでいくか?」なかなか普段向き合うことのないマクロな視点で考えていく、とても刺激的なプログラムでした。今後もCAREER HACKではさまざまな社会問題×テクノロジー分野に注目していければと思います。



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