2016.06.17
BizDevってなんだ?メルカリ・マネーフォワード・WiL・トレタの BizDev Night!

BizDevってなんだ?メルカリ・マネーフォワード・WiL・トレタの BizDev Night!

BizDev・事業開発とは何か?どんなことをやっているのか?メルカリ・マネーフォワード・WiL・トレタのBizDev担当者が集結した「TORETA BizDev Night」をレポート。語られた内容からその実態を紐解く。

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[記事ハイライト]
[1] そもそも事業開発(BizDev)って何?
[2] 「事業未満を事業に変える」それが「事業開発」
[3] 各社が考える、事業開発の定義とは?
[4] BizDev担当者が抱えている悩みとは?
[5] 他者の協力を得るためにやっていることは?
[6] 事業開発の「面白さ」とは?

[1] そもそも事業開発(BizDev)って何?

「事業開発(Business Development)」という言葉を耳にしたことがあるだろうか?

国内では、まだ馴染みのない言葉だが、LinkedInで検索するとBusiness Development職の求人を多数見つけることができる。海外や日本にある外資企業では一般的な職種だという。

実はこの事業開発を、仕事や職種として認識している企業が、日本でも徐々に増えている。
先日開催された「TORETA BizDev Night」でBizDev担当者が語った事業開発の裏側をお伝えしながら、紐解いていきたい。


[登壇者]
株式会社メルカリ 事業開発部 マネージャー 小野 直人
株式会社マネーフォワード 執行役員 MFクラウド本部長 宮原 崇
株式会社WiL パートナー 難波 俊充
株式会社トレタ 事業開発室 マネージャー 進藤 学

[モデレーター]
株式会社トレタ 代表取締役 中村 仁

[2] 「事業未満を事業に変える」それが「事業開発」

トレタ 中村さん

トレタ 中村さん


事業開発の捉え方は、企業ごとに異なっていて多種多様である。前提を理解するため、トレタの代表取締役である中村さんが、その捉え方について整理し説明してくれた。

事業開発を一言で表すと、「事業未満」を「事業」に変えることです。
サービスやプロダクトを作っている過程で、「機能が足りない。ユーザーが足りない。連携が足りない。販路が足りない」などといった色んな足りないものがでてくる。そんな、一人前の事業を育てるために足りないものを発見し補うことだと考えています。

また、事業の成長フェーズによっても事業開発の解釈は異なってくる。各フェーズにおける役割をわかりやすくまとめられた図がこちら。役割は事業フェーズによって変化していく。

使用されたスライド

今回参加したメルカリ・マネーフォワード・トレタは真ん中の急成長期に。メルカリの子会社であるソウゾウは立ち上げ期に当たる。

[3] 各社が考える、事業開発の定義とは?

事業開発をどう定義し、また、どのような取り組みを行なっているのか。各社のBizDev担当者が話してくれた。

まずはメルカリの小野さん。「2×3」という式を用いて解説した。

メルカリでは事業開発を「外部の事業者様との結びつきにより事業を拡大していくこと」と定義をしていますね。具体的には「既存事業の拡張」「新規事業の開発」と「ビジネス・パートナーシップ」「アライアンス」「M&A」この掛け合わせです。前者が2つ、後者が3つなので「2×3」と呼んでいます。

特に「2×3」における「3」のほうはBizDevの要となる部分です。「ビジネス・パートナーシップ」は、ライトなつながりではありますが力を入れて取り組んでます。というのもメルカリでは、決済サービスといった一般的なサービスを導入する場合もそれがC2Cを前提としていないケースが多いので、一緒に新しくスキームを作りなおしてもらう必要があります。「アライアンス」はより一歩踏み込みんだ関係性の構築です。データ連携を可能にするために新たなAPIを共同で策定したり、料金やスキームをメルカリ用に大きくカスタマイズしてもらいます。ヤマト運輸様と提携した「らくらくメルカリ便」などが直近のアライアンス例ですね。「M&A」は言わずもがな、ですね。


マネーフォワードでは、基幹事業を軸に複数の事業へ展開しながら、掲げるミッションに挑戦していると宮原さんは話す。現在、個人向け自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」とビジネス向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」の2つのサービスを提供している同社の中で、宮原さんがフォーカスしているのは「クラウドサービスを軌道に乗せる」という点だ。

事業開発の考え方で見てみるとマネーフォワードのミッションは、個人や企業の「お金の課題」を解決すること。個人事業主や企業などの「お金の課題」を解決するために、クラウド型会計ソフト「MFクラウド会計確定申告」を最初にリリースして、その後は、会計業務に付随した業務にも事業を拡大しているところです。具体的には、請求書や経費精算のサービスを展開し、成長曲線を何度も何度も積み重ねていくようなプランで事業開発しています。

マネーフォワード 宮原さん

マネーフォワード 宮原さん


続いて、WiLの難波さんは、事業開発の取り組みとして2つの事業を紹介した。

定義は中村さん、小野さんの整理していただいて通りで、WiLで事業開発の取り組みとしてはファンド出資企業(LP)に対する、新規事業の企画・構想・推進と、ベンチャーとLPとの提携アレンジをやっています。

具体的には2つあります。1つ目は「インベストメント事業」です。投資先や投資検討先に対し、提携などを見据えたご紹介をしています。2つ目は「ビジネスクリエーション事業」を通じた、LP内での新規事業やジョイントベンチャーの提案です。後者の事例としては、ソニーさんと一緒に進めているQrioがあり、現在も他のLPさんと複数プロジェクトがインキュベーション段階(育成段階)にあります。


トレタは、機能拡張とアライアンス提携に注力していると進藤さんは話す。

まず1つ目は、トレタという飲食店予約台帳サービスの機能拡張です。常に機能拡張の可能性を探り、開発をしています。2つ目のアライアンス提携ですが、トレタは仲間を増やすことが大事だと考えています。我々と一緒に、飲食店という50万店もある大きな市場を開拓していく仲間づくりを、アライアンス提携によって進めています。

[4] BizDev担当者が抱えている悩みとは?

BizDev担当者が抱えている「悩み」とは何なのだろうか?

各社、口を揃えて話されていたことは「リソース不足」だということ。特に人手が足りないという。事業開発を進めることで新たな提携先が見つかれば、自ずと仕事は増える。しかし、まだまだ従業員数が少ない企業では、事業開発者が運用までを担っているケースも少なくない。

嬉しい悲鳴のようだが、スピード感をもってドライブしたいスタートアップにとっては深刻な問題なのである。

メルカリ 小野さん

メルカリ 小野さん


その他にも、スピードが重要なスタートアップならではの悩みを、メルカリの小野さんは語った。

パートナーである大企業とスタートアップであるメルカリとのスピード感/文化の違いですね。「らくらくメルカリ便」で提携をさせていただいている、ヤマト運輸様やクレディセゾン様は、大企業の中でもかなりテキパキとスピード感を持って動いていただいていますが、他の企業では、大企業ゆえに弊社側のスピード感とズレを感じることもあります。

一方、スタートアップ側としては、大企業の感覚を「肌感」として理解できる社員ばかりではない。社内と社外の回転数、温度感を調整しながら、二つの組織の間で舵取りしつつ。かつ前にドライブしていかなければならない。そこはすごく苦労しています。

[5] 他者の協力を得るためにやっていることは?

アライアンスの提携はもちろん、事業開発を進めるためには「他者の協力」を得ることが必要不可欠である。各社のBizDev担当者は、いかにして他者の協力を得ているのだろうか。

トレタ 進藤さん

トレタ 進藤さん


事業開発において、関わる人の数は多く、その人たちが担っている役割や立場もバラバラである。トレタの進藤さんは、相手によって伝え方を変えているという。

相手に合わせた伝え方を意識しています。自分が思っている以上に、人って自分の発言とか態度とか見ていたりします。開発現場での話し方と、営業での話し方とか、その場に適した話し方ってそれぞれ全然違いますよね。あとは、そもそもなぜやらないといけないのかということをきっちり伝える。「何となく分かってくれるんじゃないかな」なんて曖昧な形で話すと、指摘されるのでそこは気を付けてます。


マネーフォワードでは、営業以外のメンバーも顧客の話を直接聞くことで、顧客の課題解決へのコミットメントを、より深くしているのだそう。

開発のメンバーにも営業現場に出てもらったりしています。お客様の声というものをビジネスメンバーからではなくエンジニアに直接聞いてもらうっていうのが、最も理解が早いんじゃないかなと思っています。それぞれ自分の仕事でみんな忙しいんですけど、幸いにもエンジニアや各サービスのリーダーはそれに対してすごく理解してくれていて。ユーザーを見ながら、一緒に作っていくことが結果的に、エンジニアの協力を得ることに繋がると考えています。


スタートアップにとって、アライアンスを結ぶ相手は大企業であることが多い。突破が困難な大企業を口説くテクニックについて、小野さんは以下のように話してくれた。

キーワードは、キーマンへの「夢」、そして企業への「ご飯」ですね。

まずは相手先である大企業のキーマンを見つけて「夢」を語ります。その企業と事業におけるメリット、意義みたいな部分ですね。大企業のキーマンの中には、現実に囚われながらも「新しいイニシアチブを起こしたい、変革したい」という高い意識を持ってる人がたくさんいます。そこを上手く「くすぐる」ってあげる。そうすることによって、彼らが大企業の中のエバンジェリストというか、「触媒」になってくれるといった効果が見込めるかもしれません。

また、キーマンは「夢」で動かせますが、企業は夢だけでは動きません。そこで、対企業には「ご飯」を見せることも重要です。そのために僕はいつも、数字、特にP/Lインパクトを全部シミュレーションして見せています。アップサイドとダウンサイド、今これぐらいですっていうのをなるべく具体的に話して、意思決定者が成功をイメージできるようにしています。

もうひとつ、個人的なマインドセットとして大事なのは、相手の言葉を鵜呑みにして引き下がらないこと。「出来ません」と言われてそのまま引っ込んでいたら、何も前へ進まないです。誰が「出来ない」と言っているのか。出来ない理由は何なのか。そういったことを食い下がり掘り下げていけば、時間はかかったとしても突破口は必ず見えます。

[6] 事業開発の「面白さ」とは?

最後に、各社のBizDev担当者が、事業開発の面白さについて語った。そのまとめをご紹介する。


メルカリ|小野さん

事業開発は、ともすると何でも屋になりがちではあるんですが、逆に自分のコアスキルを活かせるような会社で事業開発ができれば、すごく面白いと思います。メルカリの場合、初物の案件がすごく多く「CtoCで初の導入」といったものが多くあります。既存の事業者さんに普通に申し込めば提携できるという世界ではなくて、そもそも規約に「CtoC業者は受け付けません」って書いてあるようなところもある。そこに穴を打ってそれをこじ開ける。そうして動かしていったものが事業としてカタチに残る、っていうのが事業開発の醍醐味でもあります。


マネーフォワード|宮原さん

世の中の課題を解決するための役割の1つが事業開発だと考えています。仕事の9割9分はキツイことだと思いますが、一人ひとりが「僕はこれを成し遂げないと産まれてきた意味がない」という力強い想いを持って働くと、多くの企業がミッションとして掲げている課題解決が実現されるのではないでしょうか。企業がミッションを実現することで成長すると、日本経済の成長にもつながり、日本という国がさらに良くなるんじゃないかなと思います。課題に対して事業で解決していきたいですね。こういった経験することって正直なかなか難しいと思っています。皆さんの中にある好奇心をどんどん膨らませていくともっと何か大きなことができるんじゃないでしょうか。


WiL|難波さん

立場によって異なると思いますが社長やプロデューサーなどプロジェクトのトップであれば、その事業を成長させることとあわせて、仲間や共感者を増やしていくことが面白さでもあるでしょう。プロジェクトのメンバーとしてやるときは社長やプロデューサーが考えているフワっとしたビジョンをカタチにしていく面白さと、出来上がってみたら想定以上にもっと良くなっていて、お客様や仲間に喜ばれた等、自らの創造性を試すところにも、面白さがあると思います。どの立場での事業開発もそれぞれの醍醐味があると思います。

WiL 難波さん

WiL 難波さん


トレタ|進藤さん

社内メンバーはもちろん、クライアントになるお客様に対しても、新しい価値を提供していくところに楽しさがあります。やっぱり生みの苦しみはあるんですけど、その中で新しい価値を提供し続けられるかが大事です。BizDev担当者が100人居たら、その仕事の捉え方は100通りある職種だと思います。自分だけの事業開発を形作っていくことが面白いです。


主催者であるトレタの中村さんはこう締めくくった。

今日の話を聞いてわかったことは、やっぱりビジョンが重要ということ。ビジョンをきちんと伝えて、いろんな人たちとうまくコミュニケーションを取りながら、周りの人たちの協力を取って引き出す。さらに、社内外のリソースを借りながら、一緒に協働していくことが事業開発なのかなと思っています。そういう意味では個別のスキルというよりも、「総合力」「人間的な魅力」がある人が向いてるのかな、と思います。

事業開発って仕事自体、まだ国内では認知されていない、新しい職種だと思います。今日登壇していただいた皆さんと「事業開発をやる仲間を増やしたいよね」という話をしていました。まさにそんな思いからイベント開催に至りました。今日の話を聞いて、事業開発って面白そうだなと興味を持つ人が増えたなら嬉しいです。

(おわり)

文 = 大塚康平


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