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総務省、ベンチャー、Google…組織の大小に関わらないPMの役割。グーグル 徳生裕人

2016-11-16

総務省、ベンチャー、Google…組織の大小に関わらないPMの役割。グーグル 徳生裕人

総務省、製造技術ベンチャー、起業、ウェブサービスベンチャー、そしてGoogle。大小の組織を見てきた徳生裕人さんが、偉大なPMの先駆者からの言葉を借りながら、自身の経験について語った。

「組織の大きさが変わっても、PMが果たすべき役割は変わらない」

※2016年10月24日に開催された「Japan Product Manager Conference 2016」よりレポート記事をお届けします。

総務省をファーストキャリアに、製造技術のコンサルティング会社、Google、買収後のYouTube、起業、クラウド翻訳サービスのベンチャー、そして再びGoogleへ。

プロダクトマネージャー(PM)としての徳生裕人さんは、当時30万人の大所帯である総務省から、3人での起業までを経験してきた。徳生さんは「大企業とスタートアップのどちらも経験したのは財産」であるというが、しかしながら、「(組織の大きさによって)自分がどこまでやるかは変わっても、踏まなければいけないステップや、PMが果たすべき役割は大きくは変わらないと思います」と話す。

どうやら絶対不変の方法というよりは、PMにはどこにいても果たすべきキーポイントがあるようだ。

徳生さんがGoogleで知り合った敏腕PMたちにヒアリングした言葉を交えながら語ったポイントのうち、3点をピックアップした。


[プロフィール]
徳生裕人/グーグル株式会社製品開発本部 製品開発本部長
日本における検索をはじめとする基幹製品の製品開発を統括。 2005年にGoogleに入社。プロダクトマネージャーとしてGoogleブックスや経路検索等の開発に携わり、2008年からは、アジア太平洋地域におけるYouTubeの製品開発責任者として米国YouTube本社に勤務。YouTubeモバイル等の日本向け製品や、音声認識技術による字幕機能等の開発を担当。その後、国内の複数のベンチャーに経営に携わり、製品開発を統括。2014年より現職。

いちばん大事なのは、プランをつくって、ロードマップを描く

徳生さんが「個人的には、PMにとっていちばん大事な仕事」と考えているのが、プロダクトのロードマップを作り、誰にでもわかる形で共有すること。例えば1年を四半期(クオーター)に分け、何をゴールとして、どの機能を優先的に開発し、逆に何を今しないのかを決めていく。その実現のために、多くの人、あるいは最適な人の協力を得ていく。

会場にいるPMのみなさんもロードマップを書かれると思います。理想はロードマップに並んでいる項目や順番を、関わるチームの誰もが理解し、関わるチームの誰もが説明できる状態にするのが(PMの)役割かと思っています。

ある機能を優先的に開発するとしたら、重要な仮説を試したいからやるのか、その機能がないと他の機能が作れないからやるのか、KPIを達成や納期などがあるからやるのか、今開発することが最も有利だからやるのか。「なぜ、この順番で取り組むのか」という戦略をたて、共有するのが、PMにとっての大きな機能なのではないでしょうか。

徳生さんは、YouTube時代の同僚であり最も優秀なPMの一人として名を馳せたShishir Mehrotra(シシール・メロートラ)さんの決断を例に挙げる。動画プラットフォームで筆頭になった頃のYouTubeがアルゴリズムを大きく変えたことに触れ、ロードマップを書くためには「PMはどこへ向かうのが正しいのか指針を定める」必要があると言う。

当時の YouTube は短い動画が溢れていましたが、それは必ずしもクリエイターやユーザーが短い動画が好きだからではなく、単にYouTubeのKPIが視聴回数(ビュー数)だったため、結果として全てのアルゴリズムが短い動画に有利になっていました。

それを彼は、ユーザーやクリエイターが本当に YouTube を楽しんでいるかを表すKPIは総視聴時間(watch time)であるべきだと考え、その前提でロードマップを書きました。新たなゴールに基づくアルゴリズムの最適化が進むにつれ、短い動画、長い動画のどちらも楽しむことができる今の YouTube へと徐々に変化していきました。

また、PMは常に「オーナーである」という意識も必要だ。徳生さんはアメリカのトルーマン大統領による有名な言葉 “The buck stops here.(最終責任は私にある)” のとおり、「リサーチや実験の実施であれ、他の部門への要請であれ、CEOとの調整であれ、あらゆる自由度を与えられているPMは、本来言い訳が出来ないはずのポジション。意図的に『しない』選択肢を取ることはできても、『仕方なかった』と思ったのなら、どこかに改善の余地があったはず」と述べている。

「重力」をうまく利用し、たどり着けるプランを見据える

プランを立てるときには外的要因を考慮する、徳生さんの言葉では「惑星探査機の重力によるスイングバイ航法(惑星の重力を利用して探査機が軌道を変える方法)のように、外力を利用して加速する」も肝心だという。

(PMは)ゴールにたどり着く道の作り方はいっぱいありますが、外的要因の変化があって初めて可能になる道筋、遠回りに見えても外力をつかってモメンタムを得た方が早くたどり着ける道筋もあると思っています。

YouTubeは、カメラ付き携帯電話の普及やインターネットの帯域拡大という外的状況がなければ成り立ちませんでしたし、まずは誰もが容易に投稿できるにサイトとして地歩を築いだことで、結果としてプレミアムコンテンツも含めた世界最大の動画サイトとなりました。優れたロードマップは、遠回りしてでも世の中のモメンタムを利用し、開発のハードルを乗り越えていくべきものだと考えています。

徳生さんはChromeOSに携わったCaesar Sengupta(シーザー・セングプタ)さんの長期的な視座に立った戦略に触れた。ChromeOSを搭載したノートPCのChromeBookは、セキュリティの確保や管理の容易さに特化した設計が、差別化を好む機器メーカーに歓迎されず、一般での利用が進まなかったが、教育機関等での採用をモメンタムとして普及が進み、いまでは米国での販売位台数が Mac を凌ぐまでになっている。

また OS 開発という性格上、最終的な開発体制は複数オフィスに跨るものになることを開発初期から予測して、各国から人材をアメリカに1年間集め、彼らが自国へ戻ったときにアンバサダーとなれるような道筋を作ったそうだ。

アイデアジェネレーターではなく、良きシナプスになる

小さな組織、あるいはスタートアップであれば、一人のPMがあらゆる製品アイデアを生み出すこともある。徳生さんもスタートアップにいた頃は「朝にシャワーを浴びていて浮かんだアイデアを皆に話して、一気に実装することもあった」と言うが、組織が大きくなればそうはいかない。Googleのような大きな組織、検索のように歴史のあるチームでは、新人PMが思いつくアイデアの99%は、過去に何らかの形で既に検討されている。

では、大きな組織でのPMの役割とはなんだろう?徳生さんは「良きシナプスになることだ」と話す。

(Googleのように大きな組織で)優秀な人に囲まれている場合は、PMがすべてのアイデアを出すのは非効率的です。だからこそ、周りのアイデアを聞き、つなぎ合わせることが大事だと思います。

GoogleでAndroidの製品管理担当副社長を務めたBrian Rakowski(ブライアン・ラコウスキ)は、「社内でも最も優秀なPMのひとり」と言われますが、彼がなぜそう呼ばれるのか理由を話し合った時に、出てきた声は「彼は組み合わせる能力が非常に高い」でした。

すべてのアイデアを一からひねり出すのではなく、すでにあるもの/起きていることを俯瞰し、誰も気づかなかった視点でアイデアやチームをつなげていく。ともすると、さまざまなプロジェクトが同時並行的に進んでいる大きな企業であれば、社内に目を向けることが良き仕事につながるかもしれない。

PMは着実に世界を変えていく仕事

日本の大組織と、世界的なGoogleとで現場を見てきた徳生さんの知見は講演を聞いた多くのPMにとっても励みになったことだろう。徳生さんの講演タイトルは『世界を変えるプロダクトマネージャーになるために』だったが、PMである自らのスキルを研ぎ澄ませることで、それは世界を着実に変える仕事になっていくというエールのようにも感じられる。

最後に、徳生さんはこの言葉のスライドと共に、講演を締めくくった。

PMs are, by definition, incredibly important.
Life is short; make it count.

「短い人生、悔いのないように、学びを活かして一緒に頑張っていきましょう」

(おわり)



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