2017.02.20
アメリカ政府がGitHubを活用する狙い。真のグローバリゼーションに向け、オープンソースが担う役割

アメリカ政府がGitHubを活用する狙い。真のグローバリゼーションに向け、オープンソースが担う役割

国家レベルでGitHubを導入!?ホワイトハウスでテクノロジーアドバイザーを務めるアルヴァンド・サーレヒー氏はアメリカ政府の事例を紹介した。政府がオープンソース化に取り組む意義とは一体?

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アメリカ|大幅なコストカットを実現するオープンソース化

※サンフランシスコにて2016年9月に開催された「GitHub Universe 2016」よりレポート記事をお届けします。

アメリカ政府における、GitHubを使ったオープンソース化政策について語ったのは、ホワイトハウスにてテクノロジーアドバイザーを務めるアルヴァンド・サーレヒー(Alvand Salehi)氏。アメリカ政府は2016年夏、ようやくソースコードの公開にこぎつけたという。


「2016年8月に業務ソフトのオープンソース化政策の草案を発表したとき、ホワイトハウス史上最多のパブリックコメントが寄せられました。この2000を超えるコメント数は、誰でも参加できるGitHub上に草案を公開したからこそ、成しえた数です。そうした背景もあり、我々はGitHubを使用したソースコードの公開に挑戦したのです(アルヴァンド氏)」


アメリカ政府が業務ソフトのオープンソース化政策に踏み切った要因のひとつに、毎年かかる莫大なソフトウェアの開発・購入費がある。アメリカ政府は毎年42,000ものソフトウェアを購入し、60億ドルもの出費になっている。しかも、なかにはいくつかの機関が重複して購入しているものがあるというのだ。

オープンソース化政策を実施すれば、アメリカ政府全体でソフトウェアの共有やコードの再利用ができるようになり、現状の非効率な税金利用から脱却できる。

また、真の意味でのオープンソース化を実現するためにも、今回のGitHub導入は大きな転換点だったという。


「今後3年間で、アメリカ政府が開発したコードの少なくとも20%がオープンソースに公開する予定です。なぜすべてを公開しないのかと疑問に思う人も多いでしょう。実際、GitHubにはそういったパブリックコメントが多数寄せられています。ただ、多くの人が知っているように、政府は巨大で、スタートアップのように一夜にして何かを変えることはできないのです。

しかし、今回のGitHub上への公開というオープンソース化の実現は大きな一歩となりました。真の意味でのオープンソース化を実現するためのスタート地点に立ったのです(アルヴァンド氏)」


たしかに、たとえ一般企業であっても、それまでの慣習を一変させることは難しい。それが国家機関である政府であればなおさらだ。今回のGitHubの導入とオープンソース化の実施がどれだけ画期的なことだったのかがわかる。

政府のカスタムコードは国民のためにある

アメリカ政府が実際にGitHubでソースコードを公開しているWebサイトのひとつが「analytics.usa.gov」。アメリカ政府のポータルサイトにどれだけのアクセスがあるかリアルタイムでわかるサイトだ。実はこの「analytics.usa.gov」のAPIは、すでにフィラデルフィアやサクラメントなど、アメリカ州政府や地方自治体でサイトの管理に利用されている。


「オープンソース化政策が全面的に実施されたとき、どんなことが起こるのか。その瞬間を待ちきれません(アルヴァンド氏)」


アルヴァンド氏によると、これまで何度も繰り返し議論されてきたオープンソース化政策は、ついに実行の段階にうつるときが来たという。そのために開発が進んでいるのが“Code.gov”というWeb サイト(2016年11月にローンチされた)。政府が開発したカスタムコードを公開し、誰もがいつでも利用することができるプラットフォームだ。もちろん、このWebサイトに公開されているソースコードはGitHubでも公開される。


「私はみなさんに“Code.gov”というプラットフォームを作りあげるのを手伝ってほしいのです。もし、この画期的なムーブメントの一端を担いたいと思っている人がいたら、これは絶好の機会です。みなさんの議論やサポートが必要なコードがまだまだたくさんあります。私は、みなさんの協力で、数ヶ月内のローンチ後、“Code.gov”が世界でもっとも素晴らしいオープンソースプラットフォームになっていることを願ってやみません(アルヴァンド氏)」


多くの機密情報を扱う国家機関である政府が、オープンソース化に踏み切るべきかどうか、これまで数え切れないほどの議論がなされてきた。いまだに反対の声も根強い。しかしアルヴァンド氏は、政府のカスタムコードは「人々のためのコード」であり、公開されてしかるべきだと語る。


「”This is your code. This is our code. This is the people's code." -これは、あなたのコードです。私たちのコードです。そして、人々のためのコードです-

アメリカ政府をはじめとする国家のオープンソース化は、とてつもないポテンシャルを秘めていると信じています(アルヴァンド氏)」

(おわり)


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文 = 近藤世菜
編集 = CAREER HACK


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