2018.05.30
『にじさんじ』仕掛ける22歳の見解|バーチャルYouTuber市場でなにが起こっている?

『にじさんじ』仕掛ける22歳の見解|バーチャルYouTuber市場でなにが起こっている?

2017年末から突如盛り上がりを見せているバーチャルYouTuber*(通称:Vtuber)。いったいなにが起こっているのか? 人気キャラクター『月ノ美兎』が所属する『にじさんじ』。プロデュースしているいちから株式会社のCEO田角陸さん(22)に話を伺った。

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※バーチャルYouTuber(略:Vtuber)とは?
主に3DCGで作成されたキャラクターのYouTuberのこと。動作や音声は人が演じ、動画配信を行っている。キズナアイはチャンネル登録者数が186万人を超えるなど大ブレイクしている。また、グリー株式会社がバーチャルYouTuber市場への参入を表明した。バーチャルYouTuberの発掘・育成などを行なう。ライブエンターテインメント事業に100億円規模を投資することが話題になった。

バーチャルYouTuber、魂の宿ったキャラクターがファンを魅了

― バーチャルYouTuber、この盛り上がりについて田角さんはどう捉えていますか?


今年の2月にはじめたばかりなので、まだ捉えきれていないというのが正直なところですね。ただ、ぼくなりの見解はあって。おそらく「3DCGキャラクター」と「人格」の掛け合わせがバーチャルYouTuberの面白さの根底にあるものなのだと思っています。

言ってみれば「魂の宿ったキャラクター」のように感じられる。例えば、従来のTVアニメはかわいいイラストに可愛い声という組み合わせだったのですが、そこにゲーム実況をしたり、映画のレビューをしたり、バーチャルYouTuberにはそれぞれ個性とネットが掛け合わせっています。

市場として考えた時も、今後、グッズになったりゲームになったり、IPの事業として展開できる可能性もあるはず。さらにタレントやインフルエンサーのように、広告プロモーションを行なうこともできるでしょう。

ビジネスとしても期待ができる。チャンネル登録数や動画再生回数は人気Youtuberと肩を並べるほどに、これからどんどん拡張していくんじゃないでしょうか。

アニメ好きに受け入れられたネットコンテンツ

― どのような人がメインの視聴者になっているのでしょうか?


傾向としては、アニメが好きな人たちが多く視聴していると思います。その中でもインターネットも好き、といった人たちが反応しているような気がして。アニメ好きの層がどんどんネット上の動画コンテンツに流れてきている。そんな流れを感じています。キズナアイなどの人気キャラクターが出てきて、一気に火がつきましたよね。

そして、バーチャルYouTuberにもコアなファンがついています。もともと『ニコ生』のユーザーだった人がコアなファンになっているケースも多い。キャラクターのビジュアルや萌え声が好きだったり、生主(ニコニコユーザー生放送の放送主)のファン層だったり、彼らがブームを牽引したと言っていいと思います。

もうひとつ、バーチャルYouTuberが盛り上がる以前、アニメが好きな人たちが求めるようなコンテンツがインターネット上に足りなかった、もしくは無かったといえると考えていて。そこに見事にハマったと思うんです。例えば、深夜にテレビで放送されるアニメ番組にしても、掲示板やツイッターでネタにするか、コンテンツそのものをNetflixやhuluでの配信を待つしかなかった。それがリアルタイム、双方向で楽しめる新しいカタチのアニメコンテンツとして受け入れられている側面があるのかもしれません。

複数のバーチャルライバーが所属する『にじさんじ』。多様性がより面白くする

田角陸


― 田角さんが展開しているサービスとは?


人気キャラクター『月ノ美兎』をはじめ、20名 (2018年4月末時点)のバーチャルYouTuberが所属しているグループ『にじさんじ』の運営が軸ですね。

バーチャルYouTuberのプロデュース会社、所属事務所のようなカタチを想像していただくとわかりやすいかもしれません。国内でも複数立ち上がっています。

特にぼくらとして大切にしているのが、多様性を重要視した運営。『にじさんじ』は配信内容はほとんど配信者さんにお任せしているのが特徴。例えば、『月ノ美兎』は清楚系委員長というキャラ設定なのにムカデ人間の話をしたり……。いい意味で型を破ってもらおうという方針です。

じつは僕たちから配信内容に対してフィードバックすることもほとんどなくて。同時接続数をKPIとして見ていて、その数値の変動やそのときにどんなコメントがされているのかをウォッチする。あとは配信者さん自身が試行錯誤し、配信をしています。

また、複数のバーチャルYouTuberを所属させ、プロデュースしていることにも狙いがあります。ひとつの動画に複数のキャラクターが登場する。すると「美兎ちゃんと凛ちゃん話している!」と、会話しているだけで萌える視聴者がいたり。そんな、タイアップによる相関関係が、よりファンとの絆を深くしているのだと思います。

いかに個がエンパワーメントするような場所を提供できるか。バーチャルYouTuberが有名になることで、キャラクターデザインをした絵師さん、配信を行なう配信者さんが、別の場所で抜擢されるキッカケになったり、収入を得る場所になったりしていく。それが理想ですね。

だから、キャラクターの裏には誰もいない、という世界観をつくるより、今までのテレビアニメのように、演じた人の活躍につながる世界観をバーチャルYoutuber界につくっていきたいと考えています。


>>> いちから株式会社 CEO 田角陸さんの仕事観を伺ったインタビューはこちら!
事業に失敗した大学生、VTuberで一発逆転――月ノ美兎など『にじさんじ』生んだ22歳の賭け


文 = 大塚康平


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