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チームラボCTOが選んだモノづくりの道―MAKERS時代におけるITエンジニアのキャリアの行方[1]

2013-02-20

チームラボCTOが選んだモノづくりの道―MAKERS時代におけるITエンジニアのキャリアの行方[1]

デジタルツールと3Dプリンタを使って、DIYでモノづくりができる時代――「MAKERムーブメント」が日本でも盛り上がりを見せている。IT・WEBエンジニアにとっても関わりが深いこの新時代をどう生きるべきか。チームラボの元・CTOであり、ロボットエンジニアとして活躍するユカイ工学代表 青木さんに訊く。

MAKERムーブメントの到来。

『MAKERS』という本はもうお読みになっただろうか。日本でもベストセラーとなった『FREE』や『ロングテール』の著者、クリス・アンダーソンの最新作である。

オープンソースのデザインツールと3Dプリンタがあれば、デスクトップ上で誰もが製造業を始められる――。そう、数年前にIT・WEBの世界で起こったイノベーションと同様の流れが、ハードの世界においても起こりつつあるのだ。アトムからビットへ。そして再びアトムへ。

モノづくりの新時代が到来するのに伴い、IT・WEBエンジニアのキャリアはどのように変化していくのか。また、どのような活躍が求められるのか。

答えを探るべく話を伺ったのが、ユカイ工学(株)の青木俊介さん。チームラボの共同創業者としてご存知の方も多いだろう。同社のCTOを務める一方、pixivの立ち上げにも参加した。WEB業界の第一線で活躍した後、ロボットエンジニアに転身。ユカイ工学を立ち上げている。

青木さんは、米国で行なわれているハードウェアベンチャーへの支援プログラム『Haxlr8r』にメンターとして招かれるなど、世界的にも注目され、日本における“MAKERムーブメント”の担い手と目される人物である。

またユカイ工学は、国際宇宙ステーションに滞在するヒト型コミュニケーションロボットの共同研究“KIBO ROBOT PROJECT”への技術協力企業に名を連ねている。

ソフトとハード、両方の視点を持った青木さんに訊く、エンジニアの未来について。まずは青木さん自身のキャリアをひも解くところから始めてみたい。


インタビューは“ガレージ”を改造して作られた、ユカイ工学のラボにて行なわれた。


自動販売機も、実はロボットである。

― 今回のテーマを取り上げるにあたって、青木さんはまさにぴったりな方じゃないかと思っているんです。インターネットムーブメントのときも、MAKERムーブメントが起ころうとする今も、それぞれの分野でエンジニアとして活躍されている。もともとはWEB系の開発をされていましたよね?


はい、大学の同級生である猪子くんとチームラボという会社を作りました。僕自身はそこのCTOとして、主にサーバーサイドの開発をやっていて、独自の検索エンジンを作ったりなんかもしました。


― それがまた、どうしてロボットを?


ロボットを作りたいとは、昔からずっと思っていたんです。そのために大学も工学部を選びました。人工知能の研究で有名な教授がいたので、ロボット作りに関われるんじゃないかと。

でも運悪く、そこに猪子くんがいたんですよね(笑)彼に騙され…誘われて、一緒に会社をやることになったんです。まぁ僕自身も、当時インターネットにも興味津々だったんですが。

2000年当時はネットベンチャーがたくさん出てきていて、ものすごく盛り上がっていましたからね。世の中が変わるんじゃないかというワクワク感がハンパなかった時代です。


― 実際、その後の5年間ぐらいの間にたくさんのWEBサービスが出てきて盛り上がりましたよね。


そうですね。WEB2.0が言われ始めた頃ですね。mixiとか全盛期でしたし、はてなが日本のGoogleになるんじゃないか、とかも言われていました。

ソーシャルネットワークが出てきたり、ケータイでも友達の更新情報が常に見れるようになったりして、みんながインターネット中毒になっていった頃です。



― チームラボには6年ほど在籍されたそうですが、まさにそういったWEB全盛期に辞められたわけですよね?きっかけとなったのは、一体何だったのでしょう?


WEBの世界は非常に面白かったんですが、実際にモノが動いたりしないので…やっぱりどうしても、動くモノを作りたかったんですよね。

それと2004~5年当時、ひそかなロボットブームが起こってたんですよ。一般の人は誰も気づいてないと思いますけど(笑)ロボットベンチャーみたいな企業もちょくちょく出てきていました。DIY雑誌の『Make:』が創刊されたのもその頃で、友達がアメリカから送ってくれたりして。

加速度センサーやサーボモーターなどの部品が随分安くなっていたりと、MAKERムーブメントの兆しはその頃から感じられていたんですよね。

それで、これはもう始めないと乗り遅れてしまうぞと。勝手ながらチームラボの仕事を離れたいとお願いして、上海の大学に3年ほど留学しました。


― また勉強し直し、ということですね。どんなことをされていたんですか?


向こうでは、画像認識ソフトを作ったり、ニューラルネットワークという人工知能の一種を使ったロボット作りを研究していました。

でも学費も稼がなきゃいけなかったので、日本の仕事を請け負ったり、『未踏ソフトウェア創造事業』で採用されたプロジェクトを手がけたりもしていましたね。


― それから帰国されて、ユカイ工学を立ち上げたと。ユカイ工学では、どのようなモノを作っているんでしょう。


コミュニケーションの媒体となるロボットを開発しています。基本的には全て、ソフトとハードの両方を作っていますね。大事にしているのは、「人と関わるロボット」という点です。

自動販売機って、ある意味ではロボットなんです。画像認識技術が入っていて、買おうとしている人の年齢や性別を識別して、その人に合った商品をオススメする。技術的にはロボットと言えます。でもパッと見がロボットっぽくないので、皆さんそういう認識がない。で、僕たちはまさにその“ロボットっぽさ”が非常に重要だと考えています



例えば、その日の予定を把握して毎朝自動的に起こしてくれるロボットが開発されたとしますよね。

でも見た目が四角い金属のハコで、機械音声で起こされるとしたら、楽しくないと思うんです。ヘタをすると、機械に監視されている気分になるかもしれない。そんな家、全然くつろげないですよね。

やっぱり、ソニーのアイボみたいな可愛いロボットが起こしに来てくれたほうが楽しい。そういうロボット作りを目指しているんです。便利なだけじゃない、ユーザーを楽しませるロボットを、と。だから社名も“ユカイ工学”としました。


― 素敵な社名ですよね。


ホントですか?ありがとうございます。僕たちの“究極の目標”は、ユカイ製のロボットが、一家に一台入ること。ファミコンみたいな感じです。ロボットの世界のニンテンドーを目指したいと思っています。


(つづく)
▼インタビュー第2回はこちら
“WEBが“リアル”を求め始めた―MAKERS時代におけるITエンジニアのキャリアの行方[2]



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