2019.12.20
IKEAじゃ買えない家具のレンタル体験を。『airRoom』の戦い方

IKEAじゃ買えない家具のレンタル体験を。『airRoom』の戦い方

月額500円から利用できる家具のサブスク『airRoom』。「お届けしているのは家具ではなく、ライフスタイルそのもの」と、CEOの大薮雅徳さん。目指すは「モノのNetflix」だ。サブスクで生活を豊かにしたい ──。24歳の野望に迫る。

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全2回の連載でお送りいたします。
[1]IKEAじゃ買えない家具のレンタル体験を。『airRoom』の戦い方
[2]「1番になれ」── dely 堀江さんの教えを忠実に。24歳、家具サブスクでの大勝負

生活をラフに着替えよう。『airRoom』にできること

インテリアショップでかわいいテーブルを見つけた。
でも、いま使っているものはまだ買い替えるほどでもない。
家具もファッションのように、もっと気軽に楽しめたらいいのに ──。

『airRoom』は、そんな「あったらいいな」を実現するサービスだ。

月額500円からのサブスクリプション。

配送料や返却料、組立、設置はすべて無料。北欧風、アンティーク調などのおしゃれなアイテムを、気軽にレンタルできる。

「『airRoom』では、気に入った家具はその場で購入できるし、なんか違うなと思えば、すぐに返却ができます。洋服を選ぶように、家具もその日の気分に合わせて楽しんでもらえたらいいなって」

やさしく語ってくれたのは、『airRoom』を運営するElaly、CEOの大薮雅徳さん(24)。

「僕たちが届けているのは家具ではなく、ライフスタイルそのものだと思っています。最終的には、“ライフスタイルのサブスク”を実現したいんです」

24歳の彼が抱く野望、そしてライフスタイルをサブスクする未来とは。

2018年10月にローンチした『airRoom』。商品ラインナップは1万点以上におよび、プロのインテリアコーディネーターによるコーディネート提案を受けることも可能だ。

いい家具を、ちゃんと届けたい

── 『airRoom』のサイトを見たのですが、ものすごく種類が多くてびっくりしました。

ありがとうございます!

僕らとしても、ラインナップの豊富さはウリにしていて。今ですと、1万点以上の家具・インテリアを取り揃えているんです。

メーカーさんの数は数十社ほど。定価で買うと10万円~20万円するような上質な家具をつくっているメーカーさんにお声がけして、1社につき数百近くの商品を供給してもらっています。

── なぜ、それほどの数を集められたのでしょうか?

家具メーカーさんの理解が得られた、考え方、やりたいことに共感をいただけている、というのが大きいと思います。

そもそも『airRoom』をやろうと思った理由の一つに、「家具業界の課題」を解決したいという思いがあって。

いま家具と聞くと、ほとんどの人がIKEAやニトリなどを思い浮かべますよね。家具・インテリアという高価なものが「手頃な価格」で手に入るようになって、それが当たり前になりつつある。

結果何が起こっているかというと、大手以外の家具メーカーがどんどん廃業しているんです。2000年頭に3000社~4000社近く存在した国内メーカーは、いま約2/3が倒産したと言われています。

価格勝負になり、マーケティング力や販売チャネルを持ち合わせていないメーカーが負けていく。職人さんが作った質の高い家具が、誰に使われることもなく処分されてしまうなんて、ものすごく悲しいですよね。

そういった国内メーカーの保有する資産を有効活用し、家具産業を再び盛り上げたい。『airRoom』によって、いい家具をつくるメーカーさんに少しでも役立てたら嬉しいです。

【プロフィール】大薮雅徳(おおやぶ・まさのり) 1995年7月生まれ。法政大学中退。dely、FiNCでのインターンを経て2018年5月にElaly創業。 「テクノロジーで世界中の人々のライフスタイルを、より良いものに」というビジョンのもと、家具のサブスク『airRoom』を運営する。

ユーザーの「9割以上」が継続利用

── サブスクリプションモデルだと、継続率が肝になりそうですね。

そうですね。ありがたいことに、継続率でいうと9割以上の方が2ヶ月目以降も続けて利用してくださっています。

じつを言うと、ローンチしてしばらくは継続率があまり高くなくて。これは、シンプルに「家具の貸し出し」しかしていなかったから。機能的なニーズに応えるだけだと、手に入った時点で必要なくなる。つまり解約につながりやすいんです。

その失敗を踏まえてシフトしたのが、家具だけでなくコーディネートを提案するスタイルでした。家具じゃなく、「新しい生活が手に入る」と感じてもらう。

家具やインテリアって、新調にも処分にも手間とお金がかかりますよね。一度買うと、なかなか替えようとは思わない。

一方で人間の根本的な欲求として、「素敵な暮らしがしたい」というのは絶対にあると思うんです。世の中には良いモノが溢れているし、流行もすぐに移り変わっていく。自分の趣味嗜好も当たり前に変わっていくから、家具だって変えたくなるはずだろうな、と。

そう考えると、家具とサブスクはすごく相性がいい。家具を「飽きたから替える」って、これまでにない体験ですよね。進学や就職、結婚といったライフスタイルの変化に伴うものだけでない、新しい消費のカタチ。

とくに『airRoom』では普通に買ったら高価な商品を扱っているので、サブスクリプションにより「上質な生活」を「気軽」に実現することができる。そこも、継続率の面で大きな価値になっていると思います。

データ活用により、高精度なパーソナライズを

── いちばん大切にしている指標でいうと、何になるんでしょうか。

やはり「NPS」と「継続率」は重要視しています。お客さまの満足度を上げないと解約率が上がってしまうし、当然、お金にならなければメーカーからの供給も止まってしまうので。

僕たちの強みは商品ラインナップの豊富さ。まずはメーカーさんが『airRoom』を信用し、喜んで商品を増やしてくれる状況をつくるのが事業成長に欠かせないと思っています。

じゃあどうやって満足度を高めるのかというと、やはりパーソナライズされたコンテンツの提供。これに尽きるのかなと。

『airRoom』では、アイテムごとにいくつかのタグをつけているんです。

たとえば「モダン風」だったり、「ナチュラル風」だったり。つまり、商品を選んだ時点でユーザーの趣味趣向が数値化される。そして利用回数が増えるほど、精緻なものになっていきます。

NetflixやAmazonと同じですね。利用履歴や閲覧履歴のデータをもとに「これあなたにぴったりですよ!」と、最適なプッシュを送る。今後も、「求めていたものに出会える仕組み」をブラッシュアップし続けることで、NPSを高めていければと思っています。

運用においても、テクノロジーを活用している『airRoom』。価格や供給量は、エリアや商品カテゴリごとの需要、利用期間データをもとに設定している。オペレーションの部分もできる限りシステム化し、少人数でも強固なロジスティクス体制を構築していると教えてくれた。

スクランブル交差点で、毎日ユーザーヒアリング

── 立ち上げにおいて、一番大変だったことは何でしょうか?

家具のサブスクってそもそも市場がなかったので、「ニーズがあるか分からない」のが精神的にきつかったですね。

じつは開発の前に1ヶ月くらい、渋谷のスクランブル交差点でヒアリングしていた時期があって。たぶん100人以上に声をかけました。スタバの前に陣取って、交差点を渡ってきた人に手あたり次第に声をかける(笑)話が聞けたら、スタバに入ってそれをもとに開発する。ほとんど、自分たちを安心させるためにやっていた。

だから、初めて注文が入った時は、めちゃくちゃ感動して。お客さまのもとには、レンタカー屋で借りたトラックにメンバー3人全員で乗って届けに行きました。

── 家具のサブスクリプションサービスって、他社さんでもやっていますよね。

そうですね。僕らの他にも、2018年にローンチされたものがいくつかあって。

中には、「初代バチェラー」で有名な久保裕丈さんがやっているサービスも。じつは僕らより早くに久保さんがリリースするとわかっていて。内心不安もあったんです。

ただ、結果として「後発」は逆に良かった。僕らには「ないマーケット」を作っていくための資金、マーケティングに予算を割ける余裕がなかったので。

先行サービスのメディア露出が増えれば、「家具サブスク」の認知が増える。検索が増え、広告費を安くおさえられる。結果的には、効率的なマーケティングをすることができましたね。

目指すはモノのNetflix

── 最後に、どういったところを目指していくのか、伺わせてください。

最終的にやりたいこととしては、「ライフスタイルのサブスクリプションサービス」。僕らはこれを「モノのNetflix」と呼んでいます。

家具だけじゃなく、家電だったり、雑貨だったり、洋服だったり……。幅広くラインナップが揃っていて、サブスクという形で使い回せる場所をつくりたいんです。とはいえスタートアップの僕たちがいきなり多種多様な商材を揃えることは難しい。なので、まず第一弾として家具をやろうと。

ゆくゆくは、メーカー商品だけでなく個人宅に眠っているアイテムも並べられたらと思っています。つまり、「C2Cのサブスク」ですね。

一般消費者が安心してアイテムを貸し出せるようになるには、プラットフォームに対する圧倒的な信頼・必要性が求められる。そういった意味でも、できるだけインフラに近い「家具」の領域から入ったんです。

いま国内では、過剰在庫と言われる物の総量が54兆円くらいあると言われています。物が溢れている社会。わざわざ買わなくても、都度利用することで幸福度は上げていける。

サブスクの価値は、これからさらに高まっていくと思っています。

>>>[2]「1番になれ」── dely 堀江さんの教えを忠実に。24歳、家具サブスクでの大勝負


編集 = 白石勝也
取材 / 文 = 長谷川純菜


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