「delyの堀江さんやFiNCの溝口さんは、勝手に師匠だと思っています」。家具のサブスク『airRoom』を立ち上げた大薮雅徳さん。少しでも早く経営を学びたいと、大学を飛び出しスタートアップへ。24歳で手にした起業家の夢。礎となったのは、「ナンバーワンになれ」という在りし日の教えだった。
全2回の連載でお送りいたします。
[1]IKEAじゃ買えない家具のレンタル体験を。『airRoom』の戦い方
[2]「1番になれ」── dely 堀江さんの教えを忠実に。24歳、家具サブスクでの大勝負
── そもそも、起業はいつ頃から考えていたのでしょう。
「いつか起業したい」というのは、高校生の頃から思っていたんです。1日でも早く経営者になりたくて。大学ではファイナンスや経営を学びながら、インターンもしていました。
最初のインターン先は、当時まだ5~6人だった立ち上げ期のdely。「クラシル」のサービスはなくて、フードデリバリーの事業をやっていた頃ですね。営業からマーケティング、メディア運用、それに配達業務まで……何でもやりました。
CEOの堀江裕介さんから言われた言葉で、今でも覚えていることがあって。
「起業して成功したいならナンバーワンになれ」
ナンバーワンじゃないと、人も集まって来ないし投資もしてもらえない。「これだ」と胸を張れるものがないなら、お前は起業しないほうがいい。絶対失敗するから。
そう言われたんです。
その頃は、ちょうどdelyがフードデリバリー事業を撤退するタイミング。堀江さんは、身にしみていたのかもしれません。
そこから堀江さんは飛躍するわけですが、僕はヘルステックベンチャーFiNCのインターンへ。プロの経営を間近で学びたい。そして、ナンバーワンになりたい。FiNCは優秀な人材をたくさん集めて注目を浴びていたので、ここだ、と思ったんです。
【プロフィール】大薮雅徳(おおやぶ・まさのり) 1995年7月生まれ。法政大学中退。delyにてフードデリバリーサービス『Dely』の立ち上げ経験。その後、FiNCにてダイエットアプリ『FiNC』のiOS/Web開発に従事する。2018年5月、Elaly創業。 「テクノロジーで世界中の人々のライフスタイルを、より良いものに」というビジョンのもと、家具のサブスク『airRoom』を運営する。
── FiNCのインターンは、すんなり入れたのですか?
それが……いざFiNCの求人を調べたら、エンジニアしか募集してなかったんです。
経験も知識もいっさいありませんでしたが、申し込むのは自由だ!と応募。そしたら、なぜか選考に通って(笑)。
ただ入ってみたら、やっぱり周りがすごく優秀だった。東大早慶の学生しかいないわけです。地頭で比べたら、もう負けですよね。そんな中で勝たないといけない。ナンバーワンにならなければここに来た意味がない。
朝から1日中フルで会社にいて、泊まり込みくらいの勢いで働くことにしました。結局、大学もそれで辞めたんです。学校に行く時間さえ惜しい。とにかく量で周囲と差をつけるしかない、と腹をくくって。
だいたい3年くらい働いて、ようやく社内の年間MVP賞がもらえた。なんとか「1番」になれたんです。このタイミングで独立しようと、心を決めました。
「影響力を持った人になりたかった」と大薮さん。生まれや育ちに左右されず、努力でなれて、影響力が発揮できる存在として「経営者」の道へ。「家具サブスクのマーケットを作り上げていく上で、リーディングカンパニーとなる。上場も絶対条件」と語ってくれた。2019年の7月には1億円の資金調達を実施。ブランドバッグレンタルの『Laxus』児玉昇司氏、カメラレンタル『Rentio』に出資しているSmartly.ioの坂本達夫氏、メルカリ元CTO柄沢聡太郎氏などにも協力を仰ぎ、成長を目指す。
── 経営者を目指す、原体験はあったのでしょうか?
そもそも僕が経営者を目指したのは、経済力に関係なく誰もが平等に「機会」を得られる社会をつくりたい、と思ったのがきっかけで。
お金がないって、本当に何もできないんですよね。経済力がないと、いかに人生の選択肢が減るか。
僕自身、家庭環境に恵まれているとは言えない幼少期を過ごしてきたので、強く感じます。どんな家庭に生まれるかで、人生は決まってしまうのか。ホントにそれでいいのかって。
お金が原因で体験できないことがあるのは、悲しすぎる。じつは「家具サブスク」をやろうと思った原点もここにあります。信用さえあれば、経済力に関係なく、心が豊かになる生活を誰もが送れるようにしたいんです。生き方を選びとること、理想とする生活ができること、少なくともここは平等にしたい。
なので、僕らがやっていくのは「家具レンタル」じゃない。ゆくゆくは家具だけでなく生活の全方位をカバーする。「ライフスタイルのサブスク」を実現したいんですよね。そういった意味でいうと、『airRoom』はまだまだ通過点だと思っています。
正直、目指す山が高すぎて僕もまだ見えてはいません(笑)
でも絶対に成し遂げます。そのためには、泥水を啜ろうと何でもする。delyやFiNCでの修行は、その「覚悟」を決めるための時間だったのかもしれません。
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