2020年1月に総額40億円を調達、テレビCMでもお馴染み「くらしのマーケット」を運営する「みんなのマーケット」。働き方も、120名のメンバーがほぼリモート、ジョブ型/メンバーシップ型が選べるなどユニークだ。新型コロナワクチン接種も進むなか、リモートをどうしていくか?代表の浜野勇介さんに伺った。
どうする?リモートワーク
新型コロナワクチン接種も進むなか、テック企業を中心に「これからのリモートワークをどうするか?」を聞いてまわるこの企画。リモートか、オフィス出社か、両立するハイブリッドか。新しい時代の組織、働き方について深掘り取材した記事をお届けします!
【もくじ】
・リモートワークの良さは「組織の雰囲気」をメンテナンスしなくていいこと
・良いカルチャーは、透明性・ルール・行動規範から生まれる
・人間は、ついサボってしまう生き物だから
・ジョブ型か、メンバーシップ型か、選べる働き方へ
「職位グレード」と「定量目標」
会社は、「空港」のようなハブ的な存在に
以前、浜野さんのリモートワーク関連のツイートがすごく話題になっていました。もし、ツイートされたきっかけがあれば教えてください。
リモートワークになって良かったのが「組織の雰囲気」が消滅したこと。オフィスは良くも悪くも「雰囲気」が広がるから、雰囲気のメンテナンスに労力を割きがちだけど、リモートになって「良い雰囲気」と「良いカルチャー」は全くの別物であると気付かされた。必要なのは「良いカルチャー」。
— Yusuke Hamano🐱minma, Inc. (@yusukehamano) May 24, 2021
ツイートそのままなのですが、オフィスの出社がメインだった時は、組織の雰囲気のメンテナンスに労力を割いていたな、と。それが無くなったのが良かったと思っています。
一般論として、リモートワークが合わない人もいて。たとえば、仲のいい人がいるから会社に行く、サークルのたまり場に行く、みたいな感覚の人とか。上司がとなりに座ってるから「がんばってる感」だけ出す人とか。
そういった人に、リモートで「このレベルのアウトプットを個人でお願いします」と標準化された業務を任せると、成果が出せなかったりするんですよね。
また、オフィスで働いている時は、とてつもなく雰囲気が合わない人、陰でネガティブな噂を広める人がいると、会社全体の雰囲気が悪くなっていた。でも、リモートだと「業務でいいアウトプットをする」が一番になる。
そういう意味で、リモートだと「雰囲気のメンテナンス」の重要度は相対的に下がる。会社として、そこへの取り組みにあまり時間を割かなくなった、というイメージです。
リモートだからこそ、社員同士の仲の良さ、雰囲気が大切に…といった考え方もあるように思うのですが?
会社が画一的に「仲良くなるための雰囲気づくりを」とオンラインで何かするのは、あまり意味をなさない気がします。やっぱり業務でちゃんとアウトプットできるか。ここが一番大切。なので、人によってそれが必要だと考えるなら、本人がその動きをすればいい。
成果のために必要な環境も、人間関係も、パフォーマンスを出すための心と体のコンディションも、それぞれ個人が自ら整えにいく。会社としては、そのために必要な情報にアクセスできて、柔軟にアレンジしやすい仕組みと、カルチャーをつくることが大切だと思っています。
良いカルチャーはどう定義されていますか?
カルチャーは、ルールと行動規範によって作られると思っています。たとえば、コミュニケーションも「必要な時は、自ら積極的にとっていく」とか「オンラインでのミーティングに遅刻したらマイナス評価」など明文化し、そういったことからカルチャーが作られるのかなと思っています。
2020年3月から9割以上のメンバーがリモートワークをしていると伺いました。はじめからうまくいったのでしょうか?
はじまった当初は「家でもがんばらなきゃ」という人が多かったせいか、全体の生産性は上がっていきました。ただ、数ヶ月もすると、少しずつ全体の生産性が下がっていって。
アンケートを取ってみると「生産性が上がりました」とか、「自己投資の時間が増えました」とか、ポジティブな意見は多い。ただ、モニタリングしている数字には表れてこない。
隠れてサボっちゃう人がいたり、なじまない人が出てきたり。コロナ前からの制度、雰囲気を引きずって、うまくいかないところもあったと思います。メンバーがストレスなくアウトプットを最大化できたほうがハッピーなので、そうなるための本質を追求していったら今のスタイルになりました。
具体的には、何を変えたのでしょうか?
大きく変えたのは、働き方を選べるようにしました。具体的には「ジョブ」にコミットする「ジョブ型コース」をつくりました。このコースは、時間も、場所も、縛られない働き方ができます。明確な果たすべき「ジョブ」があり、それを実行するために手を動かす。成果を出すことに集中できる働き方です。
もうひとつは、どちらかいうと、それまで全員が目指していた「メンバーシップ型コース」です。こちらは意思決定が業務の中心にあり、上流を担っていく人向け。横の繋がりもあったほうが意思決定しやすいので、オフィス出社が基本となります。
海外だと主流の「ジョブ型」を実際に運用されているイメージですね。自由&成果主義だと思うのですが、成果はどのようにして評価していくのでしょうか?
アウトプットを数字に置き換えられる職種に関しては、できる限り仕事を標準化し、定量目標を置いてモニタリングしていきます。ちなみに、データで生産性を見ていく仕組みは以前から取り入れていたもの。そこに、いわゆる職位グレードの整備をどんどん進めていて。「あなたのグレードだと、このレベルのアウトプットを求められる。それができたらこの給与額です」とクリアになる仕組みにしています。何をやるべきか明確になり、アウトプットと、もらえる給与額が紐づくため、納得度が高いと思っています。
自分のやっていることに対して、もらってるお金が割に合うかどうか?より重要な仕事に挑戦できるか?優秀な人をつなぎとめる上でもシンプルな判断になると思います。
たとえば、エンジニアなど、アウトプットが定量化しにくい仕事における目標設定はどのように評価するのでしょうか?OKRのようなものを入れたり?
職種に限らず、ジョブ型で働くメンバーに対して、OKRではやっていないですね。シンプルに、できているか/できてないか、ジャッジができる目標設定にするようにしています。そういう意味では、むしろOKRと逆の方向性。
ただ、いただいたように、エンジニアの仕事だとアウトプットを定量的な数字での目標に落とすことが難しい。なので、リーダー的なポジションの人を増やし、より小さな単位でマネジメントし、細かい作業アウトプットを見て、評価できるようにしています。小さなチームが増え、「ジョブ」を見る人も増えた。ここもリモートワークになってから変えた部分だと思います。
リモートだと、社員の働きすぎが把握できなかったり、メンタルの状態が見えづらかったりも。そのあたりはどう考えますか?
まず、先ほどの小さなチームでのオンラインでは日々のコミュニケーションがあるので、パフォーマンスを重視して見ていけると思っています。
また、当然、オフィスで一緒に働いていれば、何となく「なんか今日元気ないね」ってわかってもらえるけど、そうはいかない。前提として、好きな場所と、好きな時間に働くことを選択している以上、メンタルも含め、自分でコンディションを整えることも、基本的なスキルに含まれるもの。オフィスで働く以上に求められるところだと思います。
2021年6月現在、新型コロナのワクチン接種も進んでいます。今後、オフィスでも働けるとなった時、どうされていく予定ですか?
リモートワークは、ルールや規範を明確化した上でこれからも導入していこうと考えています。
ジョブ型コースの完全リモートで募集するようになってから、海外含め、いろいろなところの人から応募が集まるように。採用のペースもあがってきています。採用がしやすくなったので、リモートのメリットの方が大きいですね。
とはいえ、弊社は全メンバーがリモートをしているわけではありません。オフィスで働くメンバーもいるにはいる。どちらか?ではなく、単純に働く場所が自由。家でもいいし、オフィスでもいいし。そういったカタチになっていくのかなとは思っています。
会社という存在の捉え方も、自分のなかではコロナ前と後で変わっていて。
コロナ前だと、物理的にオフィスに集まるので、会社に対してイメージ的には「人を囲い込む工場」のような感覚もありました。ただ、世の中も、働き方も、変化して行く中で、その時々で「たくさんの人が行き来する空港」のようなイメージになった気がします。
それぞれの目的をもって、その瞬間、その場所に、必要に応じている。貯め込むストックじゃなく、フローというか。そんな風に会社をつくっていくのかなと思っています。
副業などもまさにですね。
そうですね。ちょっと世の中のルールが追いついてないところはありますが、どんどん広がっていった方がいいなと思います。「今、この会社に、やりたいプロジェクトがあるから、半年だけいこう」そういう働き方が増えてきてもいいと思いますし。うちの会社も準備をしていきたいなと思います。
※2021年7月12日、記事タイトルを変更いたしました(キャリアハック編集部)
取材 / 文 = 白石勝也
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