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CTCが『先端技術LAB』を立ち上げたワケ

2014-04-18

CTCが『先端技術LAB』を立ち上げたワケ

変化の激しいIT業界の中で、SIer・SEはどんな危機感を感じ、いかなる自己改革を行なっているのか?CTCが設立した「先端技術LAB」の取り組みから、その一端を探る。

技術に対する危機感と飽くなき好奇心

IT業界の黎明期から、その成長を牽引してきたSIer。彼らが数多くのエンジニアを抱え、様々なイノベーションを成し遂げてきた結果、いまの業界が成立していると言っても過言ではないだろう。

一方で、業界の構造問題などが各所から指摘され続けている。例えば「ゼネコン型ピラミッド」や「技術のことをほとんどわかってない“エンジニア”でも生きていける」というような。

変化の激しいIT業界の中でいま、SIer・SEはどんな危機感を感じ、いかなる自己改革を行なっているのか?

今回CAREER HACK編集部が注目したのは、大手SIer伊藤忠テクノソリューションズ(略称、CTC)が今年1月末に設立した「先端技術LAB」。エンジニアの技術力向上と先端技術のキャッチアップ、ノウハウの共有・習得を目的とした社内インフラだ。

このラボが主に提供するのは、「コミュニティサイト」と「実践環境」の2つ。

コミュニティサイトでは、すでに「Java」や「OCP(Open Compute Project)」「VDI」「PaaS」など数十個のコミュニティが立ち上がり、実践環境として「クラウド」「セキュリティ」「モバイル」「アジャイル」、4つのラボが現在用意されている。

グループ全体で5,000人以上のエンジニアを抱える国内屈指のSIer・CTCが、先端技術LABを立ち上げた背景とは?プロジェクトのオーナーを務める小泉利治氏に話を伺った。業界のリーディングカンパニーが始めた新たな活動を通して、SIer・SEの抱える危機感や好奇心の表れをレポートする。

SEに最新の技術情報を届け、技術力を強化する

― 先端技術ラボを設立するきっかけは何だったのでしょうか?


最初のきっかけは、現場エンジニアの声です。昨年2月に働き方や社風、CTCの強みなどについて意識調査を行なったのですが、「技術力のさらなる向上」や「技術の共有」を求めるエンジニアがかなり多くいたんです。そしてその声を受けた経営陣の強い意向で、その問題を解決するために具体的な行動を早急に起こそうと。


― ボトムアップで上がってきた課題をトップダウンで解決していこうと、タイミングと意向が合致したんですね。


小泉利治氏

小泉利治氏

実際、業務内で技術に触れる機会がほとんどないSEもいますし、すべてのSEが最先端の提案をできるわけでもないと。CTCとしても成長していかなきゃいけない。古い技術にすがっているだけでは、お客さんにも魅力的なより良い提案ができなくなる。システムエンジニアの抱える危機感と、先端技術に触れたいという好奇心を汲んで、プロジェクトが走りだしました。


― 共有の場、そのものがなかったのでしょうか?


共有される情報は、検証済みの“絶対に間違っていない情報”がほとんどでした。極論、そのままお客様のシステムに導入できるような情報だけです。また、情報セキュリティへの配慮もあり、社内向けにも積極的に情報共有がされていたとはいえません。実際に“技術を試せる場”というのも利用しにくい状況で、使いたい時に使える環境をなかなか用意できていなかったんです。


― 情報セキュリティと発信のバランスに苦しむIT企業も多いですよね。


本当に難しいですね…。私たちも四苦八苦しながらやり続けています。

でもやっぱり、共有の場は絶対に必要なんですね。いろんな部署が、様々な案件を手掛ける中で、いろんなノウハウをそれぞれの現場が持っているはずなんです。その共有の仕組みをつくって、無理なく自由に情報がインプット・アウトプットでき、最新の技術を試せる環境をつくろうと。

技術のライフサイクルを生み出す

ラボで提供しているのが、《コミュニティサイト》という情報共有するための場と《実践環境》という実際に使ってみられる環境です。

コミュニティサイトは社内SNSのようなものですね。エンジニアそれぞれが興味のあるテーマに対してコミュニティを立ち上げたり参加して、その中でディスカッションしていきます。実践環境や日々の業務で得られた知見や検証結果を共有したりして、組織としてノウハウを蓄積しています。

実践環境は、社内のエンジニアが使いたいときに、製品・技術に直接触れて試すことができます。ハードウェア・ソフトウェア、OSS技術やパブリックサービスなどの常設環境に加え、4月末には個人で自由に使える個人環境をIaaSとして提供していきます。

まずは4つの技術テーマにおいて実践環境を準備しましたが、“先端”技術ラボなので、ラボ自身も常にアップデートされます。今後、様々な技術情報から特定のコミュニティが生まれ、ラボに発展するような「技術のライフサイクル」が回ることを見込んでいます。


先端技術ラボの活用イメージ

共有環境があるだけで、エンジニアは成長する

― 立ち上がってまだ数ヶ月ですが、利用状況はいかがですか?


小泉利治氏

現時点ではCTC本体の正社員エンジニアのみの運用で、参加者が750名程度。割合で言うと30%くらいですので、少なく聞こえるかもしれませんが、先端技術LABの参加は申請制にしているんです。情報の取得や発信、技術の探求はそももそ自発的に行なうものだと考えてのことです。

強制的に参加させても逆効果。コミュニティが活性化したり、社内でいい噂や活用事例が草の根で浸透してきて、毎日着実に追加の申請がきています。

コミュニティが育ってきていると実感する傾向の一つに、登録ユーザー数とアクティブユーザー数がだんだんイコールになってきていることが挙げられます。目的通り、技術情報のインフラになっている証拠だし、きちんと使われ始めていると肌で感じていますね。


― 運用をはじめて気づけたことは?


“場”があるだけで、情報がどんどん出てくるということでしょうか。部署を超えたエンジニア間のコミュニケーションがすごく円滑になりました。

アメリカ拠点に赴任しているエンジニアもいるのですが、彼らのミッションは日本に持ってくる製品・技術を目利きすること。

これまでは、最先端の技術情報を知っている彼らと国内のエンジニアがつながる機会ってあまりなかったんです。でも、先端技術ラボのコミュニティサイトを用意しただけで、どんどん情報共有が生まれた。

また、海外出張やセミナー情報って、当然レポートは提出されるんですけど、なかなか共有されていなかったんですよね。それは他部署の人が見れるものはありませんでした。しかし、コミュニティサイトはすべてオープンに情報のやりとりができます。それこそミーティングの情報もオープンに流れる。そういうのはすごくいいなと思いますね。


― 最後に、今後どう先端技術ラボを発展させて、活かしていこうとお考えですか?


まずは、確固たる社内インフラに成長させるべく、エンジニアのニーズを汲み取りながらコミュニティ・実践環境を整えていきます。特に個人環境は昔からニーズが高いものだったので、一層注力していきます。

当然、事業への還元も視野に入れていますよ。CTCにとっての理想のエンジニア像とは、技術を理解し、お客さんとのコミュニケーションから要望にあった提案までできる、バランスのとれたエンジニアです。そんな人材を育てる原動力となれるよう、先端技術ラボを成長させていきたいと思っています。


(おわり)


[取材・文] 松尾彰大



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