2015.03.12
デザインスプリントのメリットとNGパターン|THE GUILD 深津氏など実践者が語る

デザインスプリントのメリットとNGパターン|THE GUILD 深津氏など実践者が語る

注目を集めるデザインスプリント(Design Sprint)の実践者から学ぶ、Design Sprint Night!がDeNA社で開催された。Microsoft Venturesの馬田氏、THE GUILDの深津氏の講演を中心にレポートをお伝えします。

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デザインスプリントとは?

昨年からにわかに注目を集めているデザインスプリント。その方法論と、実践者から実施におけるポイントを共有する場として『Design Sprint Night』が開催された。

デザインスプリントとは、デザイン上の問題を解決するために、5日間という短い期間で高速にプロトタイピングと検証を行う方法論(フレームワーク)のこと。Google Venturesが、投資先で実践しているこのフレームワークを1月末に公開したことは、国内のスタートアップ、デザイナー界隈でも話題になった。

200名近い参加者が集まった本イベント。まずMicrosoft Venturesの馬田氏がデザインスプリントの概要を、THE GUILDの深津氏(@fladdict)がGoogle Ventures、Google Xのデザインスプリントセッションに参加した際の経験を共有した。さらにDeNAの坪田氏とサイバーエージェントの大塚氏が大規模組織でデザインスプリントを実践した経験を、ココナラの新明氏とStandard Inc.の鈴木氏からスタートアップ、小規模組織での実践談がそれぞれ語られた。

デザインスプリントは銀の弾丸ではない

まず登壇したのは、日本のスタートアップ企業でデザインスプリントのコーディネートを何度も担ってきたMicrosoft Venturesの馬田氏。

デザインスプリントのバックグラウンドにあるコアコンセプトは4つ。

・制限を設けて短いスプリントを何度も回すこと
・問題発見と解決のプロセスを分けること
・UXをストーリーボードで表すこと
・プロトタイプまでつくりユーザーインタビューを通して学習すること

そして、5日間で行なわれるデザインスプリントの各日タイムラインはこちら。

・Day0…Preapre(準備する)
・Day1…Understand(理解する)
・Day2…Diverge(発散する)
・Day3…Decide(決める)
・Day4…Prototype(試作する)
・Day5…Validate(検証する)

デザインスプリント 馬田氏


「デザインスプリントはプロセスにフォーカスをあてたフレームワーク。また、1度で完結するものではなく、何度も繰り返すことで、効果やプロダクトの理解は進む。時に集団は創造性を殺し、衆愚にも陥りやすい。デザインスプリントでは制限時間を設けて個人のアイデアを優先しながらも、意思決定は重み付けされた集団で行なう。」(馬田氏)

「デザインスプリントはあくまでもUXなどに特化したフレームワークで、すべての問題を解決できる銀の弾丸ではない。もっとも重要なのは、適切な問題設定ができるかどうか。設定次第で効果は大きく異なる。まだ実践段階で適切な解は生まれていないが、正しく、そこそこ大きく、フォーカスできる問題を設定できると良いのではないか。基本的なポイントを抑えつつも、自分たちにあったプロセスを模索していくべき。」(馬田氏)

デザインスプリントの概要は馬田氏がまとめたスライドを是非参考に。

デザインスプリントの勘所

続いて、Google I/Oで複数のデザインスプリントセッションとワークショップに参加したTHE GUILDの深津氏がデザインスプリントのメリット、そしてうまく機能しないポイントを語った。

デザインスプリント 深津氏


「デザインスプリントがもたらす大きなメリットはプロジェクトのブレをなくし、政治でひっくり返ることをなくせること。デザイナーやエンジニアだけでなく、CEOや財務、マーケティング、ユーザーサポートなど、部署や役割をまたいだチーム編成ができれば、スプリントを通して共通認識が形成され、どんでん返しや硬直化を避けられる。」(深津氏)

GoogleVenturesが提唱するデザインスプリントは5日間で完結するフレームワークだが、ステークホルダー全員のスケジュールをすべて抑えるのはなかなか難しいと感じる方も多いのではないだろうか。

「5日間メンバー全員のスケジュールを押さえるのは正直厳しい面もある。現実的にデザインスプリントを行なう場合は、全員が集まるべきと判断できる重要度の高いテーマで活用する、もしくは参加者に必ず権限移譲を行なってひっくり返らないという前提のもとで実施するべき」と深津氏は語った。

深津氏の講演で印象的だったのは、デザイナーだけ、エンジニアだけでスプリントを実施しても効果は期待できないという点だった。

「デザインスプリントのコアコンセプトは見落としをなくすこと、全体を俯瞰するという意味合いが強い。うっかりミスや事故をなくし、安定して85点、90点を出すメソッド。プロセスは最適化していけるが、デザインスプリントを行なう条件や前提、共通認識の形成を怠れば、効果はあまり期待できない」(深津氏)

深津氏はGoogleVenturesが公開しているデザインスプリントのメソッドの翻訳記事を公開している。プロセスごとの具体的な取り組みに関しては、非常に有益な資料となっているので実施する際は是非参考にしていただきたい。
http://labs.theguild.jp/

プロダクト開発の現場で使えるか、試してみる価値はある

このあと行なわれたセッションでは、DeNAの坪田氏とサイバーエージェントの大塚氏が比較的大規模な組織でデザインスプリントを実践した経験、ココナラの新明氏とStandard Inc.の鈴木氏からはスタートアップ、小規模組織で実践談がそれぞれ語られた。

本イベントはschooでも放送されており、アーカイブも公開されているので、気になる方はぜひこちらからチェックして欲しい。
Design Sprint Night! 〜 先駆者たちから聞くDesign Sprint の実際|schoo

近年、WEBサービスやアプリの企画・開発・運用それぞれのフェーズで様々なフレームワーク、たとえばリーン・スタートアップやグロースハック、DevOpsやAgileなどが登場している。デザインスプリントは主に顧客解発見から開発、そして運用・改善のセグメントで活用されるものだ。

どんなフレームワークであっても、自ら体験してみないとその効果、メリット・デメリットは実感値としてわからないもの。「決してルール通りにしなければいけないものではない、一回やってみよう」と各登壇者は口を揃えた。

「デザインスプリント」と検索すれば多くの事例を見ることができる。みなさんの開発現場でも機をみて実践してみてはどうだろうか。

[取材・文] 松尾彰大


編集 = 松尾彰大


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