ちょっとおバカだったり、ファンキーだったり、一風変わったWEBプロモーション・動画制作で注目される『おくりバント』。クライアントワークだけでなく、自社プロジェクトも強化中(むしろメイン?)。じつは小学校の同級生3人組でスタートした彼ら。大人になりきれない彼らのクリエイティブのスタイル・源流とは?
WEBプロモーションの世界で異質な存在感を放つ『おくりバント』。
DeNA『レボスタ』のプロモーション動画「きれいなボレーお姉さんは好きですか?夏子篇」、DMMオンラインゲームプロモーション「体験型ゾンビイベント|オフィスオブザデッド〜屍!ゾンビ商事株式会社〜」などを手がけたクリエイティブカンパニーだ。
じつは、彼らは小学校からの同級生。足立区立江南中学校では3年B組の2班。幼なじみのメンバーなのだ。
最近では、アーティストMVの制作、新宿ロフトプラスワンでのトークイベント参加、TEISONS(定礎ンズ)なるアーティスト活動、キラキラ広報ならぬギラギラ広報の採用と歌手デビュー…と、もう何が何やらわからない活動ばかり目立つ。
はたしてちゃんと仕事をしているのだろうか?…というか彼らにとって仕事って何だろう?アドウェイズの子会社なのにこんなに破天荒でいいの?彼らが貫くクリエイティブのスタイル、そして源泉に迫ります。
― 突然で失礼ですが、その格好は何でしょう。
高山:野球のドラフトって知ってますか?スーツの上からユニホームを着る「ドラフトスタイル」ってぼくらは呼んでいて。特に昭和の野球選手が好きなんですよね。なので正装というか、勝負服というか。
小沼:アニマル、ポンセ、バース、ランス、キーオ…
― なぜヒゲの助っ人外国人ばかりなのでしょうか。
小沼:僕たちの世代ってヒゲに対する憧れが強くて。映画俳優のブロンソンやチャックノリス、プロレスラーのスタンハンセンとか。そのヒゲ好きがこうじて髭剃り動画を撮影しちゃったりもしてます。
高山:そういう意味で、たぶん子どもの時からやりたかったことを、いま現実でやろうとしているのかもしれませんね。例えば、子どものときからゾンビ映画が好きだったので、ゾンビのイベントやりたいとか。
小沼:…こう言っちゃ何ですけど、お客さんの商材に合わせるより、もともと子どもの頃からやりたかったものを、お客さんの商材にのっけさせてもらっていることもあって。
高山:子どもの頃から考えているので企画・構想30年です(笑)ぼくらに仕事を依頼してくれる方も、そういう強みに頼ってくれたり。逆に自分たちから営業に行くと、難しいことを言われてしまって「…あ、そういうのはできないんですよね」とかなっちゃって。
小沼:自分たちの好きな企画じゃないとなかなか頑張れないというか…魂がこもらないんです。10年前くらいですけど、受託をずっとやってた時期がありまして。もういい加減、人が考えた企画ってやりたくないんですよ。それをやるぐらいだったら本当に死んだほうがいいかも(笑)お互いのためにもいいですよ、ちゃんと魂を込められるものを作ったほうが。
― 皆さん幼なじみで、大人になってから何か一緒にできるって羨ましい気もして。青春が終わらない感じというか。
高山:よし悪しなんですよ。同級生だから言いたいことは何でも言えるんですよね。ただ、言い過ぎる。とことん言える。普通のビジネスシーンで見られないケンカがあったりもしますから。
小沼:僕らお互いどう童貞を喪失したか知ってて…まあそれはいいんですけど、昔からずっと映画が好きで。いつかPVとか映画とか3人で作ってみたいと。で、大人になって、ウチの実家の工場とか、好きなスナックとか、地元近くの路地とかで撮影したりすると感慨深いというか、青春っぽいところはあるかもですね。
高山:そうそう。地元に伝説のレンタルビデオ屋『ビデオポップ』というのがあって。TSU◯AYAに押されちゃって潰れたんですけど、その店長の映画愛がすごかったんですよね。「おまえこれ見ろ」と子どもの頃から教えられてきた。
小沼:店長、毎日磨いていたもんね。VHSのケースを。
高山:そう。それでぼくの日課もVHSのケースを磨くことになったんです。心を磨く修行みたいなもので。ここ10年ぐらいで、1年以上毎日続けられたことってタバコと飲酒ぐらい。でも、VHSのケース磨きは1年続いてる。ビデオポップのおじさんに、大人になったぼくの姿を見せたいです。
― すみません。まだ上野さんが一言も話されていないようで。
― 『おくりバント』のなかでは高山さんが営業で、小沼さんがディレクター・企画ですよね。上野さんは何しているんですか?
上野:いちおうアクションディレクターっていう肩書があるんですけど…。
小沼:俳優です。役者として動画に出る機会が多いので。
― 企業に俳優がいるのも珍しいですね。
高山:「迷ったらいまだかつてないことをする」というのが会社の基本方針なので。
小沼:高山はユニットで今度デビューするんですよ。関わる人、みんなが人気者になればいい。外注のフォトグラファーも初の写真展を開いてもらうし、一緒に動画をつくってくれる若手も新進気鋭の映像作家として売れるようにしたい。ギラギラ広報もスナックでの歌手デビューを目指しています。上野は役者として映画デビューしてほしい。
高山:この前も演歌のMVを作ったんですけど、ITとかWEBの企業で演歌のMV作るって「いまだかつてない」と思うんです。
― クライアントワークだけじゃなく、自主プロジェクトも強化すると。
小沼:そういう仕事ってお金にならないとしても技術力は上がるんですよね。撮影も、機材の知識も、チームのまわし方とかも勉強になる。で、その時一緒にやった人って絆がすごく強くなるから、そのチームが他に展開できる。やっといてよかったよね。
高山:うん、MVはやってよかった。新宿ロフトプラスワンのトークイベントにも参加したのですが、プロモーションとしても良かったですね。
上野:ぼくの場合は、いろいろな動画で気持ち悪い役ばかり役者としてやらせてもらっているんで、どんどん自分の中に眠る気持ち悪さを磨きに磨いて、もっと気持ち悪くなりたいという思いがこの1年間で強まってきました。
小沼:普通そういうのもオーディションとかやらないと出られないらしいんですが、気持ち悪い素人が完全に横入りしている状態です(笑)これからもどんどん横入りさせたいですね。
― 自分たちのカラーや「好き」を打ち出すことで、より仕事に幅が生まれそうそうですね。最後に今後の目標があれば教えてください。
高山:偉い人、成功者って女性にスナックを持たせられる男だと思ってるんですね。ブティックでもいい。それって多分サラリーマンじゃできないんですよ。だから社長がやりたかった。ぼくらが幼い頃に見ていた映画だと「今度スナック持たせてやるからよ」とか成功者は必ず言っていたんです。
小沼:中学校の教頭先生が菅原文太の親友だったんです。それで文ちゃんのことをみんな身近に感じて。「文ちゃんはいいやつ」って教頭が言うから凄い憧れちゃったんですよ、文ちゃんに。その世界ですよね。
高山:あと『タモリ倶楽部』に出たいんですよ。まだ『タモリ倶楽部』にも出ていないし、女性にスナックも持たせられていない。映画も撮ってないし、その映画に田中健も出ていない。
あ、あとジャッキー・チェンを日本に呼びたいです。ライブコンサートがしたくて。もちろん俳優としても尊敬しているのですが、歌手としてのジャッキーもすごく評価しているんで。プロジェクトAの歌とか聴いちゃうと、もうあれ以上のモノはないなって。結婚式でもその曲を流したんですけどね。
小沼:やっぱり憧れなんだよね、あの歌が。
上野:中国の歌番組には普通に歌手として出てる。
高山:CDも出してますから。広東語じゃなくて、北京語で歌手活動してて。ただ、僕らは香港返還前のジャッキー、広東語版のジャッキーが好きです。
― …そんなことばかり言ってて、親会社に怒られないんですか?
高山:…むちゃくちゃ怒られます。
小沼:ただ、実際は親会社にどう尽くすか、忠誠心の強さはありますね。高山はもう9年勤めていますし、アドウェイズの社長に男としてとことん惚れてるんです。これだけ好き放題やらせてくれてますから。僕らがやってることがアドウェイズのPRにもなればと思っているんですよ。
高山:そこのところは裏切りたくない。裏切りたくないと言うか、尽くしたいんですよね。何だろうな、社畜力?
(一同笑)
― 『おくりバント』のコンセプトとして「自己犠牲の精神で、お客様を得点圏内まで送り出す」というのもありますよね。
高山:はい、それはもちろん広告会社というか、プロモーション会社なので。
ただ、『燃えろ!!プロ野球』っていうゲームがあったじゃないですか、あれってバントでもホームランが打てちゃうんですよね。潜在意識の中にはあるのかもしれない、送りバントってすげぇなって。『燃えプロ』で一番簡単なホームランってバントですからね(笑)
小沼:たまに起きるバグみたいなものですね。
上野:バントでホームランを打てた時の「コン、ヴーーーン」って電子音がね。忘れられないんですよ。
― あ、ありがとうございます。「バントでホームランを打つ」なんて一聴すると馬鹿げているようですが、皆さんの話を聞いてると「あり得るんじゃないか…」と不思議と思ってしました(笑)型やルールに縛られない新しいクリエイティブに期待しています!本日はありがとうございました!
[取材・文]白石勝也
編集 = 白石勝也
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