テック業界の女性コミュニティ『Geek Girls Carrots Tokyo』キックオフイベントの模様をレポート!
ポーランド・ワルシャワ発の女性テックコミュニティ『Geek Girls Carrots(以下、GGC)』がついに東京での活動をスタートさせた。
WEB・IT業界における女性コミュニティとして、欧州を中心に世界7カ国26都市で活動しているGGC。各ローカルコミュニティには、数百から数千人レベルのメンバーが在籍しているという。東京でもテック業界における女性の活躍を様々な面で支援していく取り組みをスタートし、4月末にキックオフイベントが開催された。
まずはジャパンローカルリーダー・Kim Kyuyonさんから、GGC Tokyoが担う3つの役割が紹介された。
①ミートアップの開催(ローカルコミュニティの拡充、互いにサポートできる仕組みづくり)
②女性エンジニアを増やす(非エンジニア向けイベント、ワークショップの開催)
③女性のロールモデルを輩出(メディアと連携し、身近で多様なロールモデルの提示)
「Geek Girls Carrotsはテック業界の女性が互いにサポートし合えるハブのような存在になる。横のつながりを強めて、コミュニティとして活発なものにしていきたい。また、プログラミングに触れる機会を非エンジニアの女性に提供したり、多様なバックグラウンドを持ち、異なるキャリアを歩んでいる女性を身近なロールモデルとして積極的に紹介できる場にしていく。将来的にはグローバルな仕事をしたいと思っている女性や企業への進出支援や相談窓口としての機能を果たしていきたい。」(Kim kyuyonさん)
続いて、Geek Girls CarrotsのファウンダーKamila SidorさんからSkype越しにコメントが寄せられた。
「日本・東京でGGCをスタートさせるのが私の個人的な夢でした。26都市でコミュニティが展開しているGGCはお互いが学び合い、刺激しあっています。東京でも同様に、テック業界の女性たちにとってGGCが少しでも有益な場となり様々な情報を発信していくことを期待しています」(Kamila Sidorさん)
続いて、テック業界で活躍する2人の女性がスピーカーとして登壇した。
一人目は生活密着型クラウドソーシングサービス「Any+Times」を手掛ける株式会社エニタイムズ代表取締役Founder,CEOの角田千佳さん。野村証券、サイバーエージェントを経て2013年に起業した女性アントレプレナーだ。起業に至った経緯を中心にスピーチを行なった。
「私は小さな頃から途上国の街づくりに関わる事業をやりたいと考えていました。新卒で証券会社に入社した理由は、ファイナンスの知識や経験を身につけたかったからです。ただ社会人になると、途上国に目を向ける前にずっと生まれ育った日本、東京でも街づくりや地域のつながりを生み出す事業をしようと考え、サイバーエージェントを経てエニタイムズを創業しました。
いまは決済の際の手数料でビジネスモデルを立てていますが、ゆくゆくは限りなくゼロに近づけ、サポーター(ワーカー)できるだけ多くのお金を回していきたい。エニタイムズは商品のパッケージ化やtoBサービス、リアルな場でのビジネスを展開していこうと考えている。」(角田さん)
40人ほど女性が集まった会場にはエンジニア職に就いている方も目立つ中、二人目のスピーカーとして登壇したのはサイバーエージェントのアドテク本部エンジニア、井上ゆりさん。「女性エンジニアのリアルな1週間」をテーマに自身の働き方を中心にオーディエンスに紹介した。
「エンジニアって聞くと、インドアなイメージがあるかもしれませんが、カンファレンスや勉強会などで外に出る機会は結構あるんです。いまは広告配信の事業を行なっているのですが、1時間サービスが止まるだけで何百万円の損害が出てしまう。そのため交代でエンジニアがサーバーを1年365日24時間監視する必要があります。夜中に監視携帯が鳴ると、すぐに復旧させなければならないような、タフな業務もあります。」(井上さん)
エンジニアにとってキャリアの分かれ道となるのは、現場のスペシャリストとしてコードを書き続けるのか、それともマネジメントラインに乗るのかという問題。井上さんは熟考の末、スペシャリストの道を選んだという。
「私は何度も何度も悩みました。いろんな年代の方に話を聞いてみると、ポイントは”結婚・出産を経ても続けられるか”という女性ならではの悩みだったんですね。
スペシャリストとマネジメントのメリット・デメリットを比較してみました。私の体感値ですが、女性はマネジメントを選ぶ方のほうが多いと思います。理由は人それぞれですが、男性よりも女性のほうがコミュニケーション力が高い場合が多いですし、スーパーエンジニアの男性には技術力ではかなわないと思う女性が多いからなのかなと。
そんな中でも、私はスペシャリストを選んだんです。なぜかというと、詰まるところ、モノづくりやコンピュータが好きなんですね(笑)。プログラミングはスゴく楽しい。将来はわかりませんが、仕事には困らないという安心感をいつも技術が私にもたらしてくれているんです。
料理を毎日する人は料理上手ですよね。私はできる限りの時間をプログラミングに充ててきました。最低でも毎日30分は技術の勉強をしています。結局のところ、自分が費やしてきた時間が自分を作るんだと思います。」(井上さん)
日本のWEB・IT業界でも女性のコミュニティが次々と生まれてきている。Geek Girls Carrotsのように、すでに海外で成功しているコミュニティ運営のノウハウが日本にも活かされることは業界全体にとって大きな影響を与えるだろう。
また、テック業界の女性活躍はいち企業内の努力だけではなく、横と縦のつながりをもつコミュニティが大きな役割を果たすことが必要になってくるはず。
「WEB・IT業界で働く人々の人生を少し豊かにするメディア」CAREER HACKでも、女性ロールモデルの提示など、テック業界における女性の活躍に少しでも役立てるようにしていきたい。
[取材・文] 松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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