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ガラパゴスはむしろ武器。日本人起業家がシリコンバレーを目指すべき理由|Vivaldi 冨田龍起

2015-06-08

ガラパゴスはむしろ武器。日本人起業家がシリコンバレーを目指すべき理由|Vivaldi 冨田龍起

元OperaのCEOが立ち上げた新ブラウザ「Vivaldi」。その右腕として世界中からアイデアとエネルギーが集まるスタートアップの最前線・シリコンバレーを拠点にビジネスデベロップメントを推進する冨田氏に、多忙なワークスタイルと現地の様子を伺った。

ワクワクするスタートアップをまたやってみようかなと

WEB・IT業界で生きる人間にとって、毎日欠かさず使っているツールといえば「ブラウザ」だ。

Chrome、IE、Firefox、Safari、Opera……といったソフトがシェアを占め、既に成熟した市場というイメージもあるが、WEB開発者やインターネットのヘビーユーザーをターゲットとした新しいブラウザ 「Vivaldi」がテクニカルプレビュー版を公開し、注目を集めている。

「クルマに例えるとわかりやすいですが、ドライバーはそれぞれ目的に合ったメーカー、モデル、グレード、オプションを選択しますよね。いま世に出ているメジャーブラウザたちは、基本的な方向性は同じ。我々は既存のモノでは飽き足らない、自分のスタイルにあったインターネット体験を求めている人に向けた製品を開発しています」

と、語ってくれたVivaldi COOの冨田氏。

冨田氏は元Opera Software CEO、ヨン・スティーブンソン・フォン・テッツナー氏と共に、2014年より新しいスタートアップVivaldiを立ち上げた。

「ヨン(・テッツナー)は、Operaで一緒に苦楽を共にしてきた戦友のようであり、人生に対する考え方とかで強く影響を受けた人でもある。人間的な信頼関係が強くあって、そんな彼から『また昔みたいに、自分たちでワクワクする、自分たちで誇りに思えるものを作ろうよ!』……と声がかかり、また一緒にスタートアップをやってみようかなと思った」

そんな冨田氏に、スタートアップにおけるCOOの役割とは?そしてシリコンバレーにおけるスタートアップシーンの現状について話を伺った。


【プロフィール】Vivaldi Technologies COO 冨田龍起
鹿児島高専 機械工学科卒業。北海道大学 経済学部卒業。UC Berkeley MBA Executive Class of 2015。中部電力で、エンジニアとして数年間働いた後、ノルウェーのオスロに本社があるOpera Softwareに参画。経営チームのメンバーとして、OperaのIPO、日本を含むアジア各国、北米での現地法人立ち上げやジョイントベンチャー設立、M&Aなど13年間に渡って、統括指揮を行う。2014年、 Vivaldiをco-founderとして設立。

やらなくちゃならないことは、全部ひとりでやる

Vivaldi_Technologies_COO_冨田龍起


― 冨田さんは現在VivaldiのCOO(Chief Operating Officer = 最高執行責任者)として、ご活躍されていますが、具体的にはどのような業務を担当されているのでしょうか?


プロダクト開発に関すること以外の全てをやっているような状況です。

具体的には、GoogleやFacebookといったテクニカルパートナーシップを結んでいる企業との折衝窓口、そして収益化していくためのビジネスデベロップメントが主な役割です。加えて人材採用、マーケティング、WEBサイト関係全般の管理・運営、ソーシャル対応……etcをまとめて担当しています。


― 本当に多岐にわたる業務内容ですね!


まだ立ち上げたばかりの小さな会社なので、やらなくちゃならないことは全部ひとりでやるような感じです。先ほど「プロダクト開発以外の全て」と言いましたが、世界中のユーザーからSNSやコミュニティサイトに寄せられた声を開発スタッフにフィードバックするのも私の役割ですし、ユーザーさんの中からボランティアベースで我々に協力してくれる方と連携し、コミュニティ・マーケティングも積極的に行っています。

あと契約書関連、例えばプライバシーポリシーや、エンドユーザーのライセンス契約書のドキュメントづくりなども私が担当しています。


― 現在はアメリカ西海岸のシリコンバレーを拠点にされているんですよね。


そうです。Vivaldiのプロダクト開発スタッフはノルウェー、アイスランドにいまして、私もひと月に1回~2回はそちらのオフィスに行きますが、基本的にはシリコンバレーが拠点です。パロアルト市内に北欧のスタートアップ企業を支援する"NORDIC INNOVATION HOUSE"という、コワ-キングスペース的な施設がありまして、普段はそこに行って、他の北欧のスタートアップ企業の人たちに混じって仕事をしています。

シリコンバレーと北欧では時差があるので、普段は朝5時頃に起床し、自宅でメールやチャットを使って働いて、それから朝食を食べ、犬の散歩をしてから今度は現地時間で働く……みたいな感じですね。朝9時くらいまでが一番忙しい時間帯かもしれません(笑)

ゼロ・フェーズからみんなで何かを作りあげていく時のエネルギーが好き

― スタートアップのCOOってハードな役割ですね……


確かに大変ですが、現場のひとつひとつのプロセスに携われているので、非常に楽しいですよ。

CEOのヨンは、どちらかというとエンジニアサイドの人間で、製品開発の方を軸に動いているので、彼のビジョンを実現するために、会社全般のもろもろのことを私が全て担っています。もう少し組織が大きくなってくれば、マーケティングはCMOが担当したり、ビジネス開発の専任者をつけることになると思いますが。


― スタートアップの魅力とは、どういうところにあるのでしょうか?


これまでも新規事業の立ち上げや、新規市場開拓の仕事は、およそ2年ごとのペースで経験してきまして、ヘッドハンティングというか、既存の組織で働いている人に「一緒にこういうことやろうよ!」って声をかけて口説く作業も数多くやってきました。そのゼロ段階のフェーズからみんなで何かを作りあげていく時のエネルギーが好きですね。そういうエネルギーに触れると、自分のパフォーマンスもモチベーションも最高にハイになっていくんです。ちょっとカオス的な雰囲気の中で仕事をするのが、自分には一番合っているような気がします(笑)

シリコンバレーには「コミュニティ」的な独特の空気がある

Vivaldi_Technologies_COO_冨田龍起


― シリコンバレーは、スタートアップ企業の聖地みたいなところですよね。

アクセラレータ・プログラムやインキュベーション組織が数多く出来てきて、まさにスタートアップの中心地という雰囲気を感じます。ボストンやニューヨークなどのアメリカ東海岸、ノルウェーやフィンランドなどの北欧でもスタートアップのシーンが加熱傾向にあるのは間違いないのですが、シリコンバレーにはアメリカ国内の総投資額の約半分が集まっているといわれ、規模的に世界中のどこと比べても他を圧倒している特殊なエリアだと思います。


― サバイバル競争も激しそうですよね。


グローバルなWEBサービスをやっていると、同じようなアイデアを持っている人がたくさんいるので、そういう意味での競争というのはもちろんありますが、すぐ身近に成功体験がたくさんある世界なので、競い合うというよりも、みんながそれぞれ成功を追いかける「コミュニティ」という雰囲気の方が強いですね。これはシリコンバレーならではの特殊な空気かなと思います。

私も時々主催するのですが、起業家向けのイベント、セミナー、ワークショップやミートアップなどがたくさんありますし、世界中からアイデアやビジネスコンセプトが集まってきて、「これを世の中に出していくんだ!」「IPO(株式公開)を狙うんだ!」「GoogleやFacebook、Yahoo、Microsoftといった企業に自分たちの会社を買収させるんだ!」……というエネルギーに満ちています。それがシリコンバレーという場所の雰囲気を特別にしているのかなと思いますね。

また、既に成功を収めた人たちは「自分たちが成功できたのは、シリコンバレーのネットワークが自分たちのビジネスを支援してくれたからだ。だから今度は自分がサポートする側にまわるんだ!」という意識も非常に高いです。

エンジェルとしてスタートアップキャピタルに投資するというサポートもありますし、アクセラレータ・プログラムやインキュベーション施設でメンターとしてサポートするという方法もありますし、そういう仕組み・枠組みは非常にしっかりしていますね。

特殊なアイデアこそ武器。コミュニティを活かし日本モデルの成功例を

― 日本人の起業家も増えてきているのでしょうか?


非常に増えてきていますね。サンフランシスコには、海外にいる邦人子女を、文科省の学習指導要綱に沿って教育する日本語補習校という学校 があり、外務省経由で補助金もでているのですが、現在はおよそ1500人ほどの日本からの子供達が在籍しているんじゃないでしょうか。昔は商社やハードウェア・メーカー系が多かったんですけど、最近はスタートアップのIT系企業が勢いを増していますね。

シリコンバレーには、シリコンバレー起業家ネットワーク(SVJEN)というNPO組織があって、そこでは日系起業家を対象に、資金調達の方法など、けっこう実践的な内容のセミナーやワークショップをやっていますし、ネットワーキングのパーティも開催されていて、コミュニティも充実してきていますね。


― 日本の技術は「ガラパゴス」と言われたりしますが、特殊性は感じますか?


デメリット的な印象はないですね。むしろ特殊性というのは武器になるんじゃないでしょうか。一つの戦略として皆で同じ流行に乗っかるのはアリだと思いますけど、特殊性を強みと捉えて、日本にしかないものを少しアレンジすることで、成功をつかむということは十分ありえると思いますね。シリコンバレーでヒットしたものを、日本仕様にカスタマイズして輸入するパターンというのは既にたくさんあるので、その逆パターンも十分ありえるはずです。

そのパターンが上手くいってくれると、シリコンバレーにおける日本企業の存在感が上がるでしょうし、コミュニティにとっても良いことだと思いますね。そういう仕組み・枠組みを我々がうまく作っていけたらなと思います。

日本の起業家は良いアイデアをたくさん持っているので、あと成功できるかどうかは、勢いも大切だと思いますね。アメリカのスタートアップって、最初に一気にお金をめちゃくちゃ集めて、ドカーンとやっていく。そのへんのスピード感はやはりすごいですよ。そうした資金調達に関しては、シリコンバレーに来てしまえばできる話かなと思います。


― シリコンバレーでのスタートアップ挑戦を考えている人にとって、たいへん励みになるお話が伺えたと思います。本日はありがとうございました。Vivaldiも今夏のベータ版リリースにむけてお忙しい時期になると思いますが、頑張ってください!



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