2015.06.10
元ド営業会社がLaunch Padで優勝して「WEB系」スタートアップに!?akippa 金谷元気

元ド営業会社がLaunch Padで優勝して「WEB系」スタートアップに!?akippa 金谷元気

IVS Launch Pad 2014 Fallの優勝者・akippa代表の金谷元気さんへインタビュー。実はakippaは大阪を拠点に販売代理店業からスタートした会社。もともと営業に特化した会社はいかにして「WEB系」なスタートアップになったのか。

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スタートアップの登竜門IVS Launch Padの前回覇者

出場した企業は大型資金調達を実施したり、急激な成長を遂げていることから、WEBベンチャー・スタートアップの登竜門とも言われるIVS Launch Pad。

過去優勝したプロダクトは、クラウドソーシング・クラウドワークス、知育アプリ・スマートエデュケーション、クラウド会計ソフト・freee、パーソナルモビリティ・WHILLなどなど。

その前回大会【IVS Launch Pad 2014 Fall】で優勝を果たしたのが、大阪を本拠とするakippa(当時ギャラクシーエージェンシー)。駐車場の空きスペースを使ったシェアリングエコノミー事業を展開し、全国に4万7千台の駐車場スペース(業界3位クラス)を確保。DeNAやジャフコから約4億円の資金調達を完了している注目株だが、akippaはもともと携帯電話や求人広告の販売を行なっていた企業でもある。

「業績は順調に伸びていたが、ド営業会社を経営しながら、このまま淡々と事業を続けていくべきか悩み、より世の中にインパクトを与える事業を興そうと思った」

そう語る、akippa代表の金谷元気さんにお話を伺った。

販売代理店からWEB企業への転身方法

― akippaはもともと、求人サイト事業を中心に事業展開されていたそうですね。


創業は2009年です。akippaに社名変更する前は、ギャラクシーエージェンシーという社名で求人広告や携帯電話の代理販売を手掛けていました。社員の9/10が営業だったので、文字通りのド営業会社でした。


― 2014年からは自社事業のakippaに注力されています。


会社の業績も順調でしたが、自分たちは何がやりたいのかを経営陣で改めて考え直したんですね。そこで出た結論が、「なくてはならないモノを作る」だったんです。

そこでまず、社員全員で悩んでいること、困っていることを200個ピックアップしました。その中の一つがakippaの構想につながったんです。

ある女性社員が外出中の駐車場に困るってことを書いていて、それを見た社員が「実家の家の前のスペース、余ってて何も使ってない。活用したいな」ってつぶやいたんです。

面白いなと思い、社員と一緒にどんなシチュエーションでその課題が顕在化しているか考えてみたんです。その一つが甲子園球場周辺。くまなく甲子園の周りを調べてみると、空いてる月極駐車場が目立っていて、1日単位でネット予約できるようにして有効活用できればいけるんじゃないかとなりました。つまり空いている駐車スペースと需要をマッチングさせるシェアリングエコノミー事業です。さらに自分たちの強みを活かせる予感もありました。


― 強みとは?


「営業力」ですね。もともと純粋なIT企業ではないので、テクノロジーに強みを持っているわけではありませんでした。一方でakippaが他のIT企業に負けないと確信できるところは他ならぬ営業力。

WEB企業、特にスタートアップなどでは営業を抱えず、スマートにユーザーを集めたりするところが多いかと思うんですが、「営業」こそakippaに活かせる。というのも、akippaってC2Cにみえて、90%は月極駐車場などの一定規模のスペースを持った個人事業主、法人なんです。

開拓方法は泥臭いテレアポから始まって訪問してサービスの魅力を伝え共感してもらうこと。まさにこれまで培った社員のスキルをそのまま活かせるんじゃないかと。

akippa 金谷元気

有限実行を続けていく

― 強みが活かせるとはいえ、商材やビジネスモデルが変わると、組織に歪みなどが生まれたりしなかったんですか?


たしかに求人事業などとはお金のまわり方が違うので、akippa事業は段階を追って注力していきました。営業マンからすると既存の事業は目に見えてお金が入ってくるからすごくわかりやすいし、モチベーションも保ちやすい。でもakippaは投資期間があるし、営業マンが空きスペースの契約を取ってきてもそれがいきなり数字に大きく跳ねることはないわけですしね。

WEB・IT業界や特にスタートアップ企業なんかでは受け入れやすいポピュラーなモデルでも、もともと事業をやっていたakippaではちょっとしたハードルがありましたね。


― 受託制作をやりながら、自社プロダクトに切り替えるWEB企業が抱えるジレンマと似ていますね。


たしかにそうですね。僕個人でやったことは、まずインターネット、スタートアップ界隈のインプットを増やして、社員に伝えるアウトプットを続けていきました。するとakippaの成長とともに社員が会社で話す話題も変わってくるんです。どこどこの会社の出したアプリが面白いってことだったり。

でも社員からすると、まだ不安だったと思います。「ほんとにこのプロダクトはいけてるのか?」って。そんな時どれだけ社長が「大丈夫だ」っていってもなかなか伝わらない。そこで僕は「絶対認められる事業だ」と話し、まずはB Dash Camp 2014 Summer の決勝まで選んで頂き、「次は絶対にIVSのLaunch Padで優勝する」と社員に宣言しました。


― 有限実行だったんですね!優勝して半年程経ちますが変わった点などありますか?


やっぱり組織の意識が一番変わったんじゃないかと思います。自分たちの手掛けているプロダクトのプランに確信をもっています。

akippa 金谷元気

マインドシェアを取るために「大阪のスタートアップ」が気をつけていること

― 少し話題が変わりますが、akippaは大阪を拠点に活動されていますよね。関西ではインターネット業界の起業家が人口・市場規模と比べて少ないと言われることもあるかと思います。


まず気質の違いがあるのかなと思います。商売人気質の方が多いので、「投資を受けて赤字を掘ってサービス伸ばす」という考え方・文化があまりなくて。それが関西・大阪にスタートアップが少ない理由の一つなのかなと思います。ただ、少ないからこそすごく応援してもらえるという側面もあります。「やれば目立つ」といいますか。


― akippaは東京や名古屋にも支社を構えていますね。


理由は2つあります。一つは全国に駐車スペースを広げるための拠点づくり。そしてもうひとつは先ほどの話と矛盾するかもしれませんが、『大阪のサービス』という認知のされ方、ザ・大阪化を避けることなんです。

投資していただいてるDeNAの原田さん(DeNA 執行役員 戦略投資推進室 室長 原田明典氏)がおっしゃっていたことなんですが、地方の人は都会にあるものを、「早く自分たちのところに来ないか」と心待ちにするけど、地方で流行ってるものは東京の人からすると、「田舎のサービス」だからと受け入れない側面がある。

僕たちが気をつけているのは『吉本新喜劇』や『阪神タイガース』のような存在にはならないこと。僕は両方めちゃくちゃ好きなんですが、あそこまで熱狂してるのは関西の人だけで、東京の人からすると全然ピンとこないというか、推されても引いちゃったり。


― なるほど。都内にはどこにでもあるコーヒーチェーン店が地方に出店したら大行列ができるような。たしかにその逆はなかなかないかもしれません。


akippaはまだまだ駐車スペースを拡大していかなければいけないステージなので、いまは台数以上に拠点数を重要視して活動を行なっています。「車で外出する際はakippaで駐車予約する」という行為を当たり前にしたり、マインドシェアを取っていく。もちろんいまではメンバーの50%位を占めている開発陣やデザイナーやマーケターを中心にプロダクトのブラッシュアップも進めています。


― 大阪の営業会社から営業の強いIT企業になったakippaは、一つのモデルケースになるのではないかと思いました。ありがとうございました!


文 = 松尾彰大


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