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PMはスタートアップCEOに学べ!200枚超えスライドで贈る馬田隆明の白熱教室

2016-10-28

PMはスタートアップCEOに学べ!200枚超えスライドで贈る馬田隆明の白熱教室

日本マイクロソフトを経て、東京大学本郷テックガレージでディレクターを務める馬田隆明さんは、数々のスライド資料や自身のMediumでスタートアップに関する知見を共有し、人気を集める。今回発表したのはプロダクトマネージャー(PM)にも有用な「初期スタートアップが成功するための5つの要素」だ。

PMが知っておくべき、スタートアップCEOの知見と鉄則

※2016年10月24日に開催された「Japan Product Manager Conference 2016」よりレポート記事をお届けします。

用意したスライドが200枚を超えていますので、パパッ!とお話していきます。

スクリーンに映し出された『ゼロからはじめるプロダクトマネージャー生活』のスライドを前に、馬田隆明さんは軽快に話し始めた。スライドタイトルの元ネタになったアニメ作品なら主人公は何度でもタイムリープできるが、現実世界で僕らは前にしか進めない。だからこそ「知識も経験もゼロの人が知っておくべき前例や鉄則」は、無駄な時間を費やさないためにも必要なことだろう。

数多くのスタートアップを支援し、動向を見つめてきた馬田隆明さんは、アメリカのベンチャーキャピタル「Y Combinator」の知見や、成功を収めた起業家たちの言葉を参照しながら、今回のスライドをまとめ上げた。

発表では、しばしば例えられる「PM=mini CEO」であるという前提に立ち、プロダクトマネジメントにスタートアップ企業のCEOの知見を活かすべく、「初期のスタートアップが成功するために必要な5要素」が語られた。本レポートでは5要素をまず取り上げた後、中でもPMの仕事に直結する「プロダクト」の部分を掘り下げていく。


[プロフィール]
馬田隆明/東京大学産学協創推進本部 東京大学本郷テックガレージ ディレクター
日本マイクロソフト株式会社にて Visual Studio のプロダクトマネージャーを経験後、テクニカルエバンジェリストとしてスタートアップ支援等を行う。2016年より現職。

スタートアップが成功するために必要な5要素

スライド資料

発表の冒頭で、馬田さんは「スタートアップ」の定義を補足した。今回の発表におけるスタートアップとは「急成長を狙うプロダクト」であり、着実なスモールビジネスはひとまず脇に置いている(もちろん、どちらのビジネスが良い悪いの話ではない)。また、あらゆる「起業のケース」における一形態でしかないため、すべてのプロダクトには適用できないという。その上で、馬田さんは「初期のスタートアップが成功するために必要な5要素」を以下のように挙げた。

1.アイデア
2.プロダクト
3.実行
4.チーム
5.運

このうち「プロダクト」「実行」については後にも詳述するが、これら5要素のキーポイントをざっくりまとめると、次のようになるだろう。

1.アイデア:現状は「悪く」見えるが、大企業が進出しにくく、市場独占の可能性がある
2.プロダクト:戦略的観点で、ローンチ・ファースト/リーンスタートアップを志向する
3.実行:モメンタム(勢い)を第一に、ボトルネックを解消し、適切な指標を大事にする
4.チーム:各部署とオーバーコミュニケーションで連携、状況が悪くなっても共に戦える
5.:挑戦回数の多さと“アンチフラジャイル”の理論で自ら引き寄せる

自分が置かれている企業の環境や、どのようなプロダクトを進めていくかによって、必要なPMの知識は異なっていく。小さな組織、あるいは小規模プロジェクトを率いていくのであれば、馬田さんが話す「スタートアップ的」発想は一見の価値があるだろう。

気になった項目があれば、本記事末にも掲載している馬田さんのスライドを参照してみてほしい。ここでは中でも「ゼロからはじめる」PMにとって心得ておきたいと感じられる2つのポイントがあったので、ピックアップしていこう。

「ゼロからはじめる」PM(1):「プロダクト」から一歩引いて考える

Y Combinator社長のサム・アルトマンは次のように話す。

“プロダクト”という言葉にはユーザーと会社とのインタラクションのすべてが含まれる。あなたは卓越したサポートや素晴らしいセールスなどを提供する必要がある。

スライド資料

そのため、コミュニティやサポート、セールス、マーケティングも“プロダクト”の一つとして捉えることで、PMが打てる一手は格段に増えるという。つまり、プロダクトそのものから一歩引いた目線を持つことは、成功に近づく可能性も高めるということだ。言い換えれば、PMはプロダクトにおける「戦略」を考える立場とも呼べる。

しかし、手を打てる事柄が多いからこそ、馬田さんは「やらないことを決めよう」と勧めている。自動運転車などの研究開発を手がけるX(旧社名Google X)の標語は「How are we going to try to kill our project today!(今日はどうやってプロジェクトを殺そう!)」であることに触れ、殺す対象は「最もリスクのあるもの(=顧客に価値を提供できるプロダクトかどうか)」に絞るとよいそうだ。

「ゼロからはじめる」PM(2):ゆとり、勇気、体力が必要

馬田さんはPMを「例外処理班」と例える。クレーム処理、取材対応、予算調整、“荒らし”の対処、突然の方針変更など、プロダクトそのもの以外に数多くの厄災に見舞われるため、PMの存在がボトルネックになることさえあるという。

そこで、PMは「意図的にスラック(ゆとり)を持つことが大切」と馬田さん。例外や割り込み業務にも対応でき、チャレンジや改善に当てる十分な時間を確保するためにも、スケジュールや精神面にはゆとりを常に確保しておくのだ。

そして、そのためにはあらゆることに「No」を伝える勇気がいる。再び、サム・アルトマンの言葉が後ろ盾になる。

残念なことに、素晴らしい実行のためのコツは「No」とたくさん言うことだ。100回のうち97回は「No」と言わねばならず、多くの創業者はそうするのに意識的な努力を必要とする。

スライド資料

あらゆる機会に「No」を告げなければいけない上に、関係部署やユーザーからのプレッシャーとも戦わなければならないため、肉体的にも精神的にも疲労しやすいのがPMの悩みでもある。そこで、馬田さんは「メンタルの健康を保つためにも運動しましょう!」と呼びかけた。たしかに、その関連性は厚生労働省も認めるところでもある。

一人前のPMになるには、一日でも早くPMになること

スライド資料

ハーバード・ビジネス・スクールが開講しているPM向け講義では広範な履修項目に挙げていることに触れ、馬田さんは「PMには多くのスキルセットが必要である」と述べた。そして、Y Combinator共同創業者であるポール・グレアムの言葉を参照しながら、「PMになるための最良の方法は実践である」と結論づけた。

PMとしての経験を積む一番いい方法は、PMを始めることなのだ。だから、逆説的ではあるが、PMを始めるために十分な経験がないなら、今からPMを始めるべきなのだ。

そして、「PMはプロダクトを通じて、誰も想像できなかった未来を創る仕事」であると、馬田さんは話す。

スタートアップやプロダクトは“未来に関する自分だけの仮説”の具現です。「こういう未来を作ってみたい」と思うならば、一度でもPMに挑戦するとやり方が見えてくるはずです。そして、起業において製品や戦略だけでなく「ビジョン」にまで関わりたくなった時は、PMではなくスタートアップとしての起業が最もよいかもしれません。

馬田さんの200枚超え発表スライドは下記から参照できる。注釈も多く書かれているため、このスライドを読み込むだけでも、数多くの知見を得られるはずだ。

使用された「209ページ」に及ぶスライド資料



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