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『ポケモンGO』のナイアンティック社・河合敬一が語った、プロダクトマネージャー論

2017-02-13

『ポケモンGO』のナイアンティック社・河合敬一が語った、プロダクトマネージャー論

『ポケモンGO』のヒットが記憶に新しいナイアンティック社。同社にてプロダクトマネジメントを統括しているのが河合敬一さんだ。河合さんが語った「プロダクトマネージャー(PM)論」とは?

日本におけるプロダクトマネジメント全体の底上げを

※2016年10月に開催された「Japan Product Manager Conference 2016」よりレポート記事をお届けします。

ヒットするプロダクトを作るには、技術力の高いエンジニアやデザイナーはもちろん、優秀なプロダクトマネージャー(以下、PM)が必要だ。

しかし、日本において特にWebにおけるPMの重要性が語られるようになったのはここ最近。教育の場も、正しい評価制度も、きちんと整備されているとはいえないだろう。

そんな現状を打破し、日本のPM業界全体の底上げをはかるため開催されたのが「Japan Product Manager Conference 2016」だ。

その中から、『ポケモンGO』のヒットが記憶に新しいナイアンティック社、河合敬一さんがイベント主催者である及川卓也さんと行った対談の模様を前後編でレポートする。

かつてGoogleで同僚として働いたという2人が語ったPMが担うべき役割、求められる資質とは? 前編では河合さんが語ったことを中心にお届けする。


《登壇者》
河合敬一 Niantic, Inc. Product Management Director
及川卓也 Increments株式会社 Qiita Product Manager

テクノロジーで冒険を後押ししたい

PM論の話に入る前に、河合さんがプロダクトマネージャーを務めるナイアンティック社(以下、ナイアンティック)について整理しておこう。おそらく多くの人が「『ポケモンGO』を作った会社だ」ということは知っているものの、あまり詳細はつかめていないはずだ。

そもそもナイアンティックは2011年にGoogleの社内スタートアップとして立ち上がった。CEOのジョン・ハンケは、もともとKeyholeというベンチャー企業のCEOを務めていたが、Googleに買収されたという背景がある。

このKeyholeが提供していたサービスこそが後のGoogle Earthなのだ。


「彼(ジョン・ハンケ)はスタートアップにルーツがあるので、たぶんGoogleのなかにいるうちにムズムズしてきたんでしょうね。ナイアンティックはそもそも独立することを前提に作られたんです。だから当初から、プロダクトにGoogleのインフラをあまり使わないようにしていました。今はGoogleのクラウドサービスが充実しているので『ポケモンGO』にはそれを活用していますが……(河合)」


2015年8月、Googleは持ち株会社アルファベットを新たに設立し、その傘下に関連会社をぶら下げるかたちに経営組織を再編したが、そのタイミングでナイアンティックはGoogleから独立した。


「ナイアンティックはGoogleからもアルファベットからも完全に独立した組織です。個人の単位で言うと、Googleを退社してスタートアップに移ったということ。及川さんと同じ道ですね(河合)」


ナイアンティックのヘッドクオーターがあるのはサンフランシスコ。ほかに、開発チームの拠点がシアトル、小規模のオフィスが東京とヨーロッパ、オペレーションの拠点がインドに点在している。

『Ingress』や『ポケモンGO』と、ゲームプロダクトを作っているイメージの強いナイアンティックだが、決してゲーム会社という位置づけではないという。


「ナイアンティックは『Adventures on Foot (アドベンチャーズオンフット)』という標語を掲げています。多くの人を日常生活の中で冒険に連れ出すというのがビジョンなんです。毎日の暮らしって習慣にとらわれて同じように過ぎていくじゃないですか。

でも、たとえば会社に行くとき通る道を一本ずらしてみようとか、通学路とは違う裏道を通って帰ってみようとか、それだけで新しい発見があると思うんです。こんなところにおもしろそうな店があるとか、実は家の近くに神社があったとか。日常生活の中に埋もれている小さな発見に気付いて、外に出るとちょっとおもしろいなって思うきっかけにしてほしいんです(河合)」


日常生活の中の小さな発見に気付き、外に出かけて冒険をはじめるきっかけにする。その後押しをテクノロジーの力で行うのに、最適なかたちがゲームだった。


「目指すべき目標が先にあって、それを達成する手段としてゲームがある。そういうふうに考えてやっています(河合)」


ポケモンGOで、次に追加するのはどの機能か。実装の判断はPMの仕事

ここから、PMに求められる役割やスキルに関する話題に移っていく。

前述のナイアンティックのビジョンについての話を受け。及川さんは「さっき控室でも話しましたが、PMはプロダクトが目指すべきビジョンをしっかりわかっていないとできない仕事ですよね」と話を切り出した。


「そうなんです。PMって要するに『ものを決める人』なんですよ。プロジェクトのなかでなにか迷ったらとりあえずPMに相談すれば決めてくれるっていう。右にするか左にするか、黄色にするか緑にするか、何の機能を先につけるか、どの修正を優先するか、いろいろな判断をしなきゃいけない。そのとき、判断の軸としてビジョンや長期的な目標をしっかりわかっていないと、気分で判断したり、『社長に聞かないとわからない』ってことになったりしてしまうんです(河合)」


プロダクトの開発において、PMのもっとも大きな役割のひとつが意思決定をすること。その判断は独善的ではなく、プロダクトが目指すべきビジョンや長期的な目標を軸に行わなければならないのだ。

PMの意思決定が実際どのように行われているのか、『ポケモンGO』の実例をもと河合さんはこう語る。


「たとえば『ポケモンGO』で次にどの機能を追加するかについて、優先順位を判断するのってすごく難しいんです。だからエンジニアにアンケートをとったり、コストがどれくらいかかってどの時期に出せるのか外的要因を探ったり。一つひとつの要素を精査したうえで、並べて比べるしかないこともあります。

また、問題改善の優先順位づけも大変でした。『ポケモンGO』もずいぶんいろいろ細かい部分を改善してきたうえで、なるべく数字を見てデータドリブンの判断をしようとしています(河合)」


PMの役割についてさらに紐解いていくと、それはけっして画一的なものではなく、個人の特性や扱うプロジェクトによって変わるという。


「PMに期待される役割や人物像はある程度決まっていますが、その表現方法は扱うプロダクトや人によってさまざまです(河合)」


河合さんも及川さんもGoogleでのPM経験があるが、世界的なヒットプロダクトを続々と生み出すGoogleだからといって、効果的な方法論や決められたプロセスがあったわけではないという。


「Googleで僕が担当していたプロダクトは『Google マップ』。最初の仕事は、東京の2年前の航空写真と大阪の5年前の航空写真、どちらを先に更新するかという判断でした。それからストリートビューを撮影するとき、プリウスのレンタカーに穴を開けていいですかって交渉したこともありました。もちろん『ダメです』って言われましたが(笑)

僕はオペレーションからパートナーシップにストラテジーまで、何でもやっていました。そういう何でも屋みたいなPMがいる一方で、マップに表示する川をどんな青色で表現するかとか、道路はどんなふうに描けばいいかとか視覚表現の部分をずっと考えてるPMもいました。

それからビジネスサイドで事業責任者みたいなことやってるPMも、テクノロジーに近いところで力を発揮してるPMもいます。意思決定っていう役割は同じでも、実際にやってることは人それぞれぜんぜん違うんです(河合)」


たとえ、同じプロダクトに関わっていたとしても、PMが行う意思決定の幅は個人によってまったく異なる。プロダクトが変われば、役割が変わることは明白だろう。


「ナイアンティックに入ったころは、すでに配信していた『Ingress』の改善やアップデートと、『ポケモンGO』の開発を同時に行っていた時期でした。今目の前にあるプロダクトと、1、2年先の未来に向けて作っていくプロダクト、どちらにもフォーカスしなければならなかったので意思決定の幅は広かったですね。『プロダクトをこういうふうにユーザーに使ってもらいたい』というイメージをしっかり持っているエンジニアが多かったので、プロダクトマネジメントにそこまで苦労しませんでした。」


▼後編はこちらより
プロダクトマネージャーはどう評価されるべき?元Google PM対談|河合敬一×及川卓也




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