2017.11.09
16歳の起業家、山内奏人が語る「世界を獲る」ビジョン。日本発 FinTechを全人類に届けたい。

16歳の起業家、山内奏人が語る「世界を獲る」ビジョン。日本発 FinTechを全人類に届けたい。

衰退しつつある日本を復活させ、世界で戦える国に。16歳の起業家、山内奏人のビジョンを「子どもの夢」と大人たちは見るだろうか。ただ、彼は小学生の頃から抱いてきた夢を、今、本気で叶えようとしている。クレカ決済アプリ「ONE PAY」をリリース。1億円を資金調達。世界へと羽ばたこうとする彼の勇姿に迫った。

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「天才」と呼ばれることに抱く違和感|山内奏人


「日本を世界で戦える国にしたい」


私の目をまっすぐ見て、彼は語ってくれた。山内奏人、16歳。起業家だ。

「クレカ決済」という今、一番ホットといってもいいFinTech領域において自身で開発したアプリをリリース。1億円の資金調達を実現し、大きな注目を集めている。

10歳でプログラミングを学びはじめ、11歳の時にはプログラミングの国際大会で最優秀賞を受賞。中学生のうちからさまざまなスタートアップ企業に参加してきた。

そんな彼だが、15歳で選んだのは自ら起業し、経営者になるという道だった。

周囲の大人たちやメディアは、彼を「天才」と称する。ただ、本人のなかにはずっと違和感があったという。「若いのにすごい」という年齢で見られてしまう現実があったからだ。彼には夢がある。実現したいことがある。そこに年齢は関係ない。


「ぼくは自分がつくったプロダクトを世界中の人たちに使ってもらいたい。やりたいことをただやっていく。それだけなんです」


その先にあるのは、日本を復活させていくというビジョン。信念を貫き、挑戦する。そんな彼のまなざしには「希望」が満ちている。チャレンジする全ての人々へ。彼の勇姿をお届けしたい。

プロダクトの写真

15歳のときに自身の会社ウォルト(現:ONE FINANCIAL)を創業。2017年8月にクレカ決済アプリ「ONE PAY」をリリース。1億円の資金調達をした。お金の受け取り側がアプリをインストールして、支払う人のカードをスキャンするだけで決済が完了できる。個人間の売買、小規模のお店や塾などの支払い、海の家などポップアップストアや屋台など利用シーンはさまざま。

日本を復活させたい。小学生の頃からずっと考えてきた。

山内奏人

― 「日本を世界で戦える国にしたい」と10代で考える方は多くないと思います。なぜそのように考えるようになったのでしょう?


僕は東京で生まれ育って、日本が好きなんです。けれど、世界で見たときに、日本の存在感はどんどん薄くなっている。強い危機感を抱くようになりました。

中学3年生の頃、ある企業に支援いただいてアメリカに行ったんです。そこに日本人はほとんどいませんでした。シリコンバレー在住のエンジニアの方は、「いまやここでは、日本人は絶滅危惧種だよ」と表現していて、衝撃的でした。AppleやMicrosoftの本社へ伺った時も日本人をあまり見かけない。最近でいえば、さまざまな海外発のWebサービスにおいて日本語対応が後まわしになっている気もします。

この状況に気づいている人はごく一部。「まだまだ日本は大丈夫」といった声を耳にすることもあります。それってもう幻想だとぼくは考えています。だから、本当になんとかしなくちゃいけない。世界から大幅に遅れを取っている日本をどう復活させるか。小学生くらいの時から考えていたかもしれません。


― 小学生で「日本を変える」という発想を持ち、ずっと持ち続けられるってすばらしいですね。大人たちは「子どもの戯言」と本気にしてくれないこともありそう。


そうかもしれません。ただ、ぼくのなかでは「日本を世界で戦える国に」というのは揺るがない目標でもあり、夢でもあるんです。いつも頭の片隅にあるのが、孫正義さんの存在です。今でも覚えているのですが、小学生の頃、孫さんが「カンブリア宮殿」に出演しているのを観ました。大きなビジョンを掲げ、どんな苦境に立たされても世界を舞台に挑戦し、次から次へと実現させていく。その姿勢に圧倒されました。


― 孫さんが起業家としての目標?


孫さんはぼくのヒーローであり、そして圧倒的に影響されている起業家ですね。目標でいえば、delyの代表取締役・堀江裕介さん。すごくお世話になっている方でもあって。

堀江さんとの出会いがなければ、ぼくは事業をスタートさせていなかったと思います。12歳のとき、たまたま友人たちと一緒にシェアオフィスで作業をしていたら、隣の席が堀江さんで。「暇なら、うちにおいでよ」と声を掛けてもらって、開発を手伝わせてもらうことになりました。


― ここに居ない方の話をするのも恐縮ですが…堀江さんの尊敬するところは?


ものすごく優しいです(笑)「相談したいです」と連絡をすると、忙しいなかでも時間を作ってくれる。リーダー像としても、彼のあり方に大きく影響を受けています。行動力がある、ビジョンが明確…尊敬しているところは挙げたらキリがないですね。

世界に挑む、日本発の決済アプリ「ONE PAY」

山内奏人

― そして自身で開発されたのが「ONE PAY」ですね。開発からローンチまで1ヶ月と伺いました。かなりのスピードかと。なぜ「クレカ決済アプリ」だったのでしょう?


まず最初に考えたのは、日本が世界で戦える領域は何か?ということ。いろいろな領域を分析して、辿り着いたのがFinTechでした。

GDPでいえば「東京」はまだ世界一(2017年11月現在)です。つまり経済流通、決済を全てオンラインデータ化し、活用することができれば、また「日本」も世界一になれる可能性が充分にある。


― 「世界を獲る」を、実際に狙っていくということですね。


はい。世界の動向を見ても、日本の決済領域には今とても注目が集まっています。たとえば、Appleがおもしろい動きをしています。Apple PayをSuicaに対応させるためにわざわざ新しい端末、新しい製造ラインを作りました。そしてわざわざ日本で展開する。リリース前にティム・クックが来日して実演した意味合いは大きいですよね。

また、プロダクトの作り手としても、Fintechってめちゃくちゃおもしろい領域なんですよね。既存の銀行とチャレンジャーバンク(新世代の銀行)が行なっている業務は、ほぼ変わりがない。ですが、広義の「デザイン」によって、より多くのひとたちが使ってくれる可能性が生まれる。プロダクトで勝負できるビジネスだと思いました。

個人的に「美しいサービスはリデザインから生まれる」と考えています。価格設定、ビジネスモデル、UI・UXなどすべての「デザイン」が重要。


― すごく緻密に考え抜いているというか、企みがありますね。どのようにして身につけていったのでしょうか。


いろんなスタートアップでシゴトをさせてもらえた影響が大きいかもしれません。ゆくゆくは自分で事業をつくりたかったので、社会勉強をさせてもらっていました。どういうタイミングで事業を仕掛けるか。どういう領域を選ぶのか。

同時に「FinTechで戦っていこう」と決めただけでは成功しない。どういう戦い方をするのか。じつは2016年に起業し、1年ほど経つのですが、主軸サービスを決めず、仮想通貨、個人間送金などいろいろな事業をつくってきました。時代の波を読み、自分たちの「戦い方」を見極めていきたかったので。こうして行き着いたのが「クレカ決済」だったんです。

…個人間送金アプリもつくったのですが、すでに「Kyash」や「Paymo」があって。同じ土俵で、同じようなアプリで勝負しても厳しかったですね(笑)自分たちのポジションを明確化できず、クローズしました。

「若さ」は無関係。結局はプロダクト勝負。

山内奏人

― もうひとつ質問が。どうしても「16歳」という年齢にフォーカスされることが多いと思います。ご本人としてはどう捉えていますか?


もちろんメディアに注目していただけたり、いろいろな人に会えたり、得することはあると思います。

ただ、最終的にはプロダクト勝負。誰がつくったかは関係がない。プロダクトに価値があるかどうか。便利なものとして使ってもらえるか。ここだけだと思います。

自分でつくったプロダクトが使われたとき、「あの人そんな若かったんだ」ぐらいがちょうどいい。どちらかといえば「若いのにすごい」と言われると「プロダクトを見てもらえていない」という悔しさのほうがあるかもしれません。若さって賞味期限があるもの。年齢を重ねていけば消えてなくなっていくものですよね。

こぼれ話ですが、「ONE PAY」って一番はじめにプレスリリースを出した時、ぼく個人のことは一切書きませんでした。バイアスをかけないために。それでもプロダクト単体で注目してもらえた。プロダクトとしての可能性を感じられたので、とてもうれしかったですね。


― 「プロダクトで勝負するんだ」という覚悟を垣間見た気がします。最後に、これからの目標について伺わせてください。


短期的なビジョンでいえば、決済市場は一通り足りていないところを全てやりたいと考えています。東京の市場を獲りにいく。そこからは海外ですね。

長期的には次世代のコマース、次世代における「モノの流通」にはものすごく興味があります。農産物にしても、生産者と消費者のもっと健全な関係がつくれるのではないか、と。

たとえば、町の八百屋さんが売っているレタスとかキャベツってどう値段が決まっているんだろう?という素朴な疑問があります。需要と供給のバランスにより、リアルタイムに金額が変われば、農家の方たちも収益を上げられるのではないか。消費者も無駄に高く買わずに済むかもしれない。ぼんやりですが、こういったコトを考えていますね。


― たとえば、事業以外のところ、人生として目指す先はありますか?


そうですね…あまり考えたことがないのですが、「優しい人」でありたいです。まだまだそうなれていない自分がいるからこそ、そうありたいと思っています。やはり経営者ってストイックで、時にドライにならないといけない場面があると経験して。

ただ、一緒に働いているのは同じ人間。ぼくが掲げたビジョンに共感してくれた人たちがいる。だからこそ、ぼく自身は人の痛みとか、気持ちが分かる人間でありたい。

今って時代的にも、ものすごく「諸行無常」だと思うんです。すぐにスキルは陳腐化してしまう。FinTechスタートアップってその道を極めた金融スペシャリストも組織に必要です。ただ、そういった人たちだけが集まっても成り立たない。変化に付いていける組織にするためにも人間味があって、一緒に働きたくなる人、「優しい人」がチームにいたほうがいい。

多様で、いろんな価値観を持った人たちと働いていきたいです。余談ですが、一応、高校にも通っていて。同級生と話をしていてもすごく楽しいんですよね。それぞれの価値観、人生観があって。

そういった意味でも、ぼく自身が尊敬している方々のように、いろいろな価値観や人と出会っていきたい。働き方、自分の価値観含め、会社として何を実現したいか。どうありたいか。発信し、共有できるチームを大切にしたいと思います。

(おわり)


文 = 野村愛
編集 = 白石勝也


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