2017.11.16
「成功体験」を捨て去るべき。フリークアウト 佐藤裕介が明かす、ヒットプロダクトの鉄則

「成功体験」を捨て去るべき。フリークアウト 佐藤裕介が明かす、ヒットプロダクトの鉄則

創業7年、フリークアウトにおける今期の連結売上は、過去最高の120.2億円!代表である佐藤裕介氏が明かすヒットプロダクトの裏側をお届けします。キーワードは「一貫したプロダクトバリューという幻想を捨て去る」ということ。プロダクト開発に携わる全ての人に贈る、佐藤氏からのメッセージ!

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【プロフィール】佐藤 裕介
フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長。2008年、Googleに入社し、広告製品を担当。2010年末、COOとしてフリークアウトの創業に参画。また、株式会社イグニスにも取締役として参画し、2014年6月にはフリークアウト、イグニス共にマザーズ上場。2017年1月、フリークアウト・ホールディングス共同代表に就任。エンジェル投資家としても活動。

「一貫したプロダクトバリュー」は、ただの幻想。

※2017年11月15日に開催された「Japan Product Manager Conference 2017」よりレポート記事をお届けします。(Twitterハッシュタグ #pmconfjp

フリークアウトにおける今期の連結売上は、過去最高の 120.2 億円。創業から7年を経て、さらにマーケットでの存在感を高めている。

先進的なアドテク製品を生み出してきた同社。プロダクトマネージャー 陣が果たした役割と経営陣からの期待、プロダクト開発の裏側について佐藤氏が語った内容についてお届けしたい。

まず注目したいのが、フリークアウトは「プロダクトバリューを柔軟に変化させてきた」ということだ。佐藤氏はその背景についてこう語った。


「7年間で4回、つまり2年弱に1度の間隔で、プロダクトバリューを柔軟に変化させてきました。技術も、ユーザーの環境も、市場構造も刻々と変化する。そのなかで、プロダクトバリューが一貫することはない。言ってしまえば、一貫したプロダクトバリューはただの「幻想」でしかないと考えています」


2011年から2017年、プロダクトバリューはどう変遷した?

そして、フリークアウトが提供してきた「プロダクトバリュー」の変遷について、佐藤氏は赤裸々に語ってくれた。7年間、提供してきたプロダクトバリューが一貫していなかったことがわかる。

2011年~2012年

スライド1枚目


① プロダクトバリュー:
「複数のアドエクスチェンジ、 アドネットワーク (SSP) の PC 在庫の中から、 サイト来訪済ユーザーだけまとめて買えますよ、 販促系キャンペーンに便利!」


2012年~2013年

スライド2枚目


② プロダクトバリュー:
「オープンなアドエクスチェンジからのリターゲティングインプレッションの買付は、もはやどこの DSP を使っても一緒ですね。ただ、我々であればリッチな広告フォーマットや オフラインの効果測定などを通じて、 ブランド/認知系キャンペーンに使えるよ!」


2014年~2015年

スライド3枚目


③ プロダクトバリュー:
「モバイルも PC も、販促もブランドも、いろいろなんやかんや全部できるといえばできます!(プロダクトバリューが不明確であるため、プロダクトマーケットフィットせず、成長鈍化)」


2015年~2017年

スライド4枚目


④ プロダクトバリュー:
「モバイルの良質な掲載面を独占的に買付が可能であるため、 モバイル向け CPA/CPI が とにかく良いです! 販促系のみなさまどうぞ!」



この「プロダクトバリュー」の変遷について佐藤氏はこう振り返る。


「持続的価値を持ち続けるプロダクトバリュー が発揮できるのは、とても稀なケース。つまり、一番大事なのは、自分たちが「強い変化の波にさらされ続ける」という前提を理解するということ。そして、自分のプロダクトが提供する価値に対して固執したり、こだわりを持ち続けるのではなく、むしろ柔軟に変化していくことが自然だと認識すべき。特定の顧客課題を、より効果的に解決する手段であるプロダクトバリューは、状況に応じて変化してしかるべきなのです」


ほとんどの企業には当てはまらないという前置きのなか、変わらずにプロダクトバリューを発揮できるケース、その「前提条件」についても触れられた。

▼持続的に価値を持ち続けるプロダクトバリューの条件

・バリューチェーンの川上にあること。インフラのレイヤーを担当するような製品がある。
・バリューチェーンの垂直統合
・バリューチェーンの川下
・特定市場の独占(LINE、楽天etc...)

プロダクトバリューが持続的に強度を持ちうる前提は、プロダクトそのものではなく、市場選定や市場ポジションなど、プロダクトの外側にあることが多いことがわかる。

プロダクトバリューを変化させていくポイントは?

そして、佐藤氏が言及したのが「プロダクトバリューを変化させていくポイント」だ。それは「技術」と「ユーザー」、そして「市場構造」の変化の重なり合う部分を見極め、プロダクトを変化させていくということだという。


「市場の構造変化をできるだけ早急に察知する。産業のバリューチェーンを立体的に把握して、いまどのカテゴリーのプレーヤーが強くなっているのか。どのカテゴリーのプレーヤーが交渉力が弱まっているのか。そういったものがリアルタイムに頭の中に入っていて、産業構造自体が今後どういうふうに移り変わっていくのか、どのプレーヤーが力をもっていくのかを予測すべき。

そして、技術の変遷とともに、ユーザーの環境がどう変わっていくのかもしっかりおさえながら、次に自分たちが実行するべきかを明確なビジョンを持って推し進めていったほうがいいと考えています」

これまでのプロダクトの成功・成果にとらわれてはいけない。

最後に、こういった「プロダクトバリュー」を定義し、意思決定していくプロダクトマネージャー(PM)の役割・その重要性について触れておこう。フリークアウトが定義するPM、そして佐藤氏が期待することで締めくくりたい。

▼プロダクトマネージャーの役割

なにをなぜつくるのか。意思決定をする。さまざまな関わるファンクションの人たちとコミュニケーションを図り、それらの理解を促進する。

▼プロダクトマネージャーの責任

特定の顧客セグメントが抱えている、特定の課題を、何をもって解決するのか。プロダクトマーケットフィット。ここをいかに高い次元で実現するのか。

経営者として、佐藤氏がプロダクトマネージャーに期待するのは、ずばり「プロダクトバリューの変化を厭わず、意思決定をしていく」ということ。


「市場でプロダクトが勝ち続けていく。そのためには、常に提供する価値セットというのを変化に合わせて柔軟に変えていく必要があります。これまでのプロダクトの成功・成果にとらわれてはいけない。意図して変化を設計し、各ファンクションの活動指針に落とし込み、チームがそれに向かって走れる体制をつくる。

そして、結果として、変化したプロダクトバリューで、具体的には売上利益をあげる。これがプロダクトマネジャーがやらなければならないこと。ここを私はPMに非常に強く求めます」

(おわり)


文 = 野村愛
編集 = 白石勝也


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