NewsPicksで5000picksオーバーと大反響!「#ビジネスモデル図解シリーズ」の作者「チャーリー」こと近藤哲朗さんを直撃取材。どんな職種でもビジネス理解は大切? どうすれば楽しみながら学べる? そのコツを徹底解説してもらいました!
[目次]
・ビジネスモデルを見える化する! 近藤哲朗の図解術
・ビジネスの仕組みは「図」で、ぐっと理解が深まる
・たとえば『財務3表』を図解にしてみると…?
・まずは「図解」の前に知っておきたいポイントとは?
・たったの3ステップ!? チャーリー式 カンタン図解
・「おもしろい!」と思った理由を言葉にしていく
・勉強しなきゃではなく、やらずにはいられない「趣味」
・クリエイティブの現場で感じた無力感から、ビジネスを学びはじめた
ディレクターも、デザイナーも、エンジニアも…ビジネスの理解はとても大切なもの。ただ、楽しみながら学ぶ&自分のものにするってなかなかむずかしいですよね。
ビジネス書を手にとってみるものの…積んどくだけというのは「あるある」。
そんな悩みを「チャーリー」こと、近藤哲朗さんにぶつけてみました。なぜなら彼は「ビジネスモデル」をわかりやすい図にし、わくわくするようなアプローチで伝えるクリエイティブディレクターだから。
教えて、チャーリーさん!
どうすればビジネスの仕組みを楽しみながら学べますか?
(ちなみに「チャーリー」さんの愛称は『スヌーピー』に出てくるチャーリー・ブラウンに似ているからだとか、そうじゃないとか)
noteにまとめてみた。
— チャーリー (@tetsurokondoh) 2017年11月6日
2017年後半に感動したビジネスモデルまとめ10個 #ビジネスモデル図解シリーズhttps://t.co/Yj4sGu6sAm
彼の書いたnoteは『NewsPicks』5000picksオーバーと大反響
ー今日はチャーリーさんの「ビジネス図解シリーズ」をマネできるようになりたいと思って取材に伺いました。まず最初に、この発信を始められたきっかけから教えてください。
図解をはじめたのは、ぼく自身がビジネスへの理解を深めるためだったんですよね。もともとビジネスに詳しかったわけではなかったのですが、浅い知識のままに終わってしまうのがイヤだと感じていました。
特に今の時代は情報量が多い。どうしてもひとつひとつの情報や知識に対し、深く理解しづらい状況があるという問題意識がありました。「深度が浅い」といってもいいのかもしれません。
たとえば、学校の勉強に例に考えてみましょう。「教科書に並んだ単語をひたすら覚える」というのは、物事の20%くらいしか理解できていないとします。
そこから箇条書きにし、要点をまとめると40%くらいに理解が進んでいく。そこから重要なポイントを抜粋し、関係性を言葉にしてみる。これで60%くらいになる。さらに80%くらいにするために関係性を網羅的に「図解」してみる。
こういうプロセスを踏むと、よどみなく人に話せたり、教えたりできるようになるんですよね。何度も人に話して自分の中で構造を咀嚼すると100%に近づいてくる。そこまでの状態になってようやく「理解できた」といえる。
ー 図解することで知識として定着していくということですね。もうひとつ、なぜ「ビジネスモデル」をテーマに図解しているのでしょう?
まず大前提として、ぼくはおもしろそうな仕組みが好きなんです。出会うとわくわくする(笑)「図解心」がくすぐられるというか、どんな構造になってるんだろう?って解き明かしたくなるんですよね。
図の大きな特性って、なかなか文章だと伝えづらい「関係性を可視化」できること。たとえば、「A」と「B」という別々の事象があったときも、つながりを図にすると、ひと目でわかったりしますよね。
具体的があったほうがわかりやすいと思うので、企業経営の基本『財務3表』というものがあって。図解で考えてみましょう。
まず『財務3表』というのは、企業の経営状態を可視化するツールなんですね。大きく3つに分けられています。
・損得計算書(P/L)
・賃借対照表(B/S)
・キャッシュフロー計算書(C/F)
ふむふむ…と、この単語を覚えたところであまり役立たない。本当に理解ができているかというとそうじゃないですよね。
では簡易的ですが、図にしつつ、それぞれの概念を補足してみます。するとどうでしょうか。
まずここまでで、財務3表のそれぞれの定義がおおよそわかります。
そして「B/S」について詳しくみてみます。
例えば、500万円を銀行から借金し(負債)、500万円は自分たちがお金を出したとします(純資産)。そうすると合計1000万円(図右)にあることになります。
企業が得た毎年の利益は、純資産にたまっていきます。また、お金の使いみちとして現金のまま持っておく、ということも一つの方法です。
ここで初めて「B/S」と「P/L」と「C/F」、財務3表の関係性がわかってきます。
最初の定義で書いた通り、「B/S」はある一時点の企業の状態を表したもの。企業は1年間という会計年度の中で、いろいろな活動をしていく。その1年間の利益の変動を「P/L」で表し、1年間の現金の変動を「C/F」で表していきます。
・B/S … お金の出どころと使いみちがわかる(一時点の企業の状態を表す)
・C/F … B/S上にある現金がどれだけ増減したか、1年間での現金の変動を表す
・P/L … B/S上の「お金の出どころ」における1年間での利益の増減を表す。
すごく合理的につくられていて、おもしろいですよね。
ここまでくると、単に「財務3表」という言葉を覚えていたところから、図で関係性がわかり、より理解が深まります。
しかも、世の中に存在するすべての企業は基本、財務3表で測れます。これを見比べればある意味企業の「元気の良さ」がわかる。ビジネスの世界で共通するカルテのようなものだと思ったら、すごくワクワクしませんか。
ー「図解」の世界に少しずつ引き込まれてきました。ぜひ自分でやってみたい…と思いつつ、どうやっていけばいいのでしょう?
では、参考にしていただけるよう、ぼくがいつも行なうビジネスモデルの図解のプロセスをご紹介できればと思います。
まずはじめに、すごく大切なのは「ビジネスモデル図解」によって何を明らかにするのか。さまざまな手法や考え方があると思いますが、ぼくのアプローチはそのビジネスの主体と、その関係性を明示するというもの。ビジネスにおいて必ず存在する主体は、そのビジネスの価値を享受する「利用者」と、ビジネスを提供する「事業者」の2つです。なので、基本的にはこの2つのつながりをどう明らかにするか?が図解の肝になってきます。
あえてビジネスモデル図解の定義を言葉にするなら、以下の3つになります。
1.そのビジネスの主要な関係者がわかること
2.関係者同士が何をやり取りするか繋がりがわかること
3.上記2つを満たすことでビジネスの全体像がわかること
じつはこの「ビジネスモデルの図解」には弱点があります。
それは「時間」の概念がないということ。利用者と事業者の間はどうつながっているのか、つながっていくか、本来は順番がある。ただ、それを1枚の図解にしようとすると複雑になりすぎてしまう。なので一旦は時系列を無視し、まずはスナップショットのように関係性を図示します。
ぼくの普段の仕事の場合、その弱点を克服していくために時系列でビジネスモデルがどう変化していくのかを表す図を作成したりもします。「ビジネスロードマップ」と呼ばれるようなものです。たとえば、半年や1年、長ければ3年といった期間で、ビジネス上重要な観点を記載していきます。そうすることにより、時間軸でもビジネスの仕組みが見えてきます。
それではより具体的に「ビジネスモデル図解」のやり方について説明させてください。大きくわけて、3つのステップに分解することができます。そこまで難しいものではないので、多くの方が実践いただけるはずです。
Step1:ビジネスの主体を書き出す。
ビジネスを提供する事業者や、そのビジネスによって恩恵を受ける利用者、その他ビジネスを語る上で必要な関係者を書き出します。
ここでのポイントは、どこまで誰をビジネスモデルの中に入れるかということ。そのビジネスにおいて重要じゃない関係者は思い切って書かない、ということも必要。書きすぎると具体的すぎて図解が複雑になり、かえって言いたいことが伝わりづらくなります。適度に抽象化することで、よりシンプルな図解ができ、そのビジネスモデルのユニークなところが浮かび上がってきます。
Step2:関係性を書きだす。
1で書いたビジネスの主体の関係性を書き出します。関係性は矢印で表します。基本的には、お金とモノの流れを書きます。下図の場合、お金は黄色で、モノは緑色で表しています。
Step3:コメントを添える
注意点や、面白い点などをコメントとして書きます。読んだ人が、仕組みや構造をより理解できるようにするために、なるべくビジネスモデルの特徴的な部分を書き出すとわかりやすいと思います。
例えば下の図でいえば、与信がない、というのは持ち物をすぐに現金化できるための重要なポイントです。
大切なのは「どんなビジネスモデルになっているのか」を、よどみなく人に説明ができるくらい、自身のなかに落とし込むことだと思います。
ー 図にするプロセスはシンプルなんですね。私にもできそう。同時にビジネスのユニークポイントを発見されるのもすごいなと思いました。
これも図解をしていくなかで、少しずつ自分のなかで「こういうことかも?」と言語化ができるようになっていったと思います。
はじめは直感でいいのですが、新しいサービスやビジネスの概念に出会った時、なるべく感動を自分の中で言語化していくことが大事だと思うんです。「感動する」という基準を自分の中に持つ。
ー 感動する基準といいますと?
なぜ感動するビジネスモデルと、そうでないものがあるのか?そこを突きつめていったら、「逆説がどれだけ効いてるか」が自分にとっての感動ポイントなんだと少しずつわかってきました。
たとえば、先に挙げた『CASH』について。
ふつうはこうだよね、といえるのが定説です。それに対する「逆説」は何か?と考えられている。
例) CASH
起点 「中古品を売る」
定説 「売る」が先にあって、現金が入ってくるのは後(みんなが思うあたり前)
逆説 「現金が入ってくる」が先にあって「売る」が後(…え?そんなのあり?)
定説が「みんなが思うあたり前」の常識だとすると、逆説が強いほど(非常識なほど)、それを成り立たせるための仕組みは難しい。
「現金が先だと、ものすごく大量の現金(キャッシュ)が必要だよな」とか、「現金を先にするためには、品物の金額をすぐに計算するためのロジックが必要だよな」とか、いろいろと懸念事項が思い浮かびます。
だから、強い逆説によって成り立つサービスの仕組みはものすごく面白いし、成り立っているということ自体に、感動するのです。
じつはこれも一つの「フレームワーク」として、他のサービスにも当てはめて考えることができます。ビジネスモデル図解の「感動ポイント」を自分なりに図解したものが下図です。
ぼくは勝手に「逆説の構造」と名付けています。
▼起点から定説を捉えていく
▼定説に対する逆説を生み出す
▼起点と逆説を組み合わせる
ぜひ先の『CASH』の例と照らし合わせて、参考にしてみてください。
ー もし日々の生活のなかでも「感動ポイント」を見つけるために意識したほうがいいことなどあれば教えてください。
琴線に触れるというか。それは日ごろの好奇心を積み重ねていくもので。なにに心揺さぶられるのか、なにがおもしろくて、どんなことが楽しいのか。自分の「心の声」と向き合う。そういう感覚みたいなものって、無視しているとどんどん曇ってしまうので、できるだけそれに敏感でいられる状態をつくることが大切だと思います。
自分の興味関心をシリーズ化する、という方法はおすすめです。「ビジネスモデル図解」もそうですけど、僕の場合はなんでもシリーズ化していて(笑)
たとえば、8年前から続けている「昼食会」もその1つ。友人、仕事で出会った人、イベントで出会った人たちなど、「すてきな人と1対1でランチをする」という個人プロジェクトなのですが、この趣味を続けてきたことで、いろんな人の考えや価値観に触れることができて、常に自分自身に好奇心をかきたててくれます。
いま、278回終わったところなんですけど、自分の興味関心をもとにしてシリーズ化しているのでこれだけ続けられているんだと思います。自分の興味関心や感動を普段からかたちにしていると、自ずと感動する基準もわかってくるのかなと。
「ビジネスモデル図解シリーズ」にしても、じつは「ビジネスを勉強している」という感覚は全然なくって、むしろ「趣味」に近い。10日間連続でビジネスモデルを図解したのは、疲れて眠くても、図解したい衝動が抑えられなかったからなんですよね。できあがるとすごいすっきりして、よく眠れるんです(笑)
ーそもそも、近藤さんはどうしてビジネスを勉強しはじめたのですか?
すごく無力感があったから…というのが正直な理由です。これまで僕の会社では、障害に携わる支援とか、子どもの貧困とか虐待とか、社会課題に向き合うNPOなどをクリエイティブで支えてきました。ただ…まずお金がない。クリエイティブに予算が避けない。
たとえば、子どもたちの貧困をテーマにしているNPOの場合、子どもやそのご両親にそもそもお金を持っていないわけです。サービスを受ける人と、サービスにお金を払える人が別なんですよね。行政が負担するのか、寄付で負担するのか。どこかから財源を持ってこないといけない。
他のNPOにしても「あと2ヶ月でキャッシュアウトしてしまう」という逼迫した状況も少なくありません。長期的な戦略を考えたくても、目の前に団体がなくなってしまうかもしれない恐怖と戦いながら、それでも走っている。
わずかな予算でできることってなんだろうって。そう考えたとき、僕らがクリエイティブだけでなく、「ビジネス」の観点を持つことができたら、もっと持続的なNPO活動の継続のために力を発揮できるんじゃないかと思ったんです。C
ビジネスのわかるクリエイターはほんとに少ないし、ビジネスマンはクリエイティブへの理解は乏しい。その二つの役割は本来は二項対立じゃない。お互い壁を感じるがために分断されちゃってることが多い。さらにNPOは、クリエイティブには疎かったり、ビジネスへの理解がなかったりもする。
もちろん、各々の領域のスペシャリストは尊敬しています。ただ、僕のような領域を横断してつなげる存在もいてもいいんじゃないか。そんな思いで、僕の経営する株式会社そろそろでは、社会課題を解決するソーシャルの「S」と、経済合理性の伴うビジネスの「B」と、クリエイティブの「C」の3つが重なる領域をつくることをミッションにして、それぞれの架け橋になれることを目指しています(上図)。
…という背景もあって、ビジネスの勉強をしはじめたのですが、おもしろさを知って趣味としてハマっているというのもあるんですけどね(笑)
ー最後に、ビジネスの仕組みを勉強し、実際に活かせた場面について教えてください。
もう、活かされたことばかりですね。まず実利として「ビジネスモデル図解シリーズ」をはじめてから、企業の方々からご相談いただくことが増えてきました。多いのは採用であったり、新規事業であったりのご相談ですね。
ぼくは前職が面白法人カヤックという会社だということもあり、クリエイティブをつくる役割におかれることが多かったのが事実です。つまり「何をつくるか」に特化していた。
ただ、最近はソーシャルとビジネスとクリエイティブの相互関係をつくる仕事が増えてきました。それは例えば、ビジネスレイヤーから入っていって、ビジネスモデルを図解したり、プロダクトをつくるクリエイティブ側の意見を聞きながら、企業の総合的な戦略をつくるようなお仕事です。
僕らの言うソーシャルとビジネスとクリエイティブの領域に限らずですが、複数の領域を横断して話ができる役割は、キャリアという視点でも、すごく求められていると感じますし、同じようなロールの若い人たちも増えてほしい。図解を通して、たくさんの人がビジネスのおもしろさを知ったり、領域を横断するような動きが出てきたらもっと社会はおもしろくなっていくはず。そんな思いも伝えていければと思います。
(おわり)
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