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海外で戦うために”英語力”より大切なコト。メルカリとdpdcのクリエイターが語る、グローバル生存戦略

2018-03-01

海外で戦うために”英語力”より大切なコト。メルカリとdpdcのクリエイターが語る、グローバル生存戦略

過去に「Google cloud vision API発表イベントのデモ」でデザインを担当したdpdc.design 代表の玉木穣太氏、メルカリUS・UK版プロダクトデザイン担当の鈴木伸緒氏の特別セッションをお届け。デザイナーがグローバルで戦うために「英語力」はそこまで大切ではない?その真意とは?

英語が下手でも海外で戦える。活躍に必要な条件とは?

※2018年2月に開催された「Creative X #1 session 4 C × グローバル 『デザイナーが海外で戦う、とは」よりレポート記事としてお届けします。


「僕、TOEIC350点しかないんですよ。英語なんて全く喋れないです」


“グローバル”がテーマのセッションであるにも関わらず、玉木穣太氏がいきなり発した言葉。セッション開始早々、会場は笑いに包まれた。

「英語ベタ」を象徴するこんなエピソードも披露してくれた。彼はある時、仕事でミスをしてしまい上司にものすごい形相で怒られたという。まわりにいる多くの人は「ヤバいぞ、ヤバいぞ」という顔をしていたが、本人は英語の意味が分からず、困惑。

激高する上司に対し、まずは落ち着いてもらおうと苦し紛れに放った言葉は「Good boy」。日本語にすると、人間が飼い犬に対して「よしよし」となだめる時に使うもの。本人は「Calm, down」と言いたかったそうなのだが、言葉が出てこなかったのだとか。上司はさらに逆上してその場を出ていってしまった。

このように当時は英語力には自信がなかったという玉木氏。ただ、つまりクリエイターとして働くときに英語力はあるに越したことはないが、それ以上に大切なものがあるということ。

今回は、US版・UK版「メルカリ」のデザインを担当している鈴木伸緒氏とのセッションレポートを通じ、その海外でいかに戦っていくか、グローバルで活躍するためのヒントを探っていこう。

「デザイナー同士で蹴落とし合うのは、もうやめませんか?」

セッション冒頭、玉木氏は自分の中に溜め込んでいた思いを口にした。それは「デザイナーはどうあるべきか」という本質的なスタンスについてだ。


「日本、海外、さまざまな相手に仕事をしていく中で感じたことがありまして。特に日本がそうなのですが、何か比べる対象がある。たとえば、デザイナーにしても『あの人に負けたくない』とコンペを勝つことに仕事の意義を見出したり、賞を狙って躍起になっていたりする人もいます。デザイナー同士が敵視して蹴落とし合っていることさえある。もしデザイン市場の拡大・デザイナーのポジショニング構造の変化を改善するのであればそういうのはやめた方がいい」(玉木氏)


たとえば、海外だと「生活で感じる世の中の不合理、不条理を解決するためのデザイン」という意識を強く持つことがデザイナーの価値を向上させていくという共通の認識を感じることが多いそうだ。さらにそれこそがデザイナーの仕事の幅を広げていくことにもつながっていくのだという。

玉木さん Ph.D(博士号)を持った博士や天文物理学の博士、物理学、工学、統計学博士など、海外から精鋭たちが集まってくるAIスタートアップ「Cogent Labs(コージェントラボ)」に所属していた頃には、Google cloud vision APIの発表イベント「GCP Next 2016でのデモセッション」にてデザインを担当。現在はdpdc.designでクリエイティブディレクタを務める玉木穣太氏。

なぜ、日本では賞や蹴落とし合いともみえる構造があるのか。

玉木さんは「社会的品位を保ちたいというマインドがあるのではないか」と語る。本来的には「プライド」とはまた別の意味なのだという。

東京大学 教授、池谷裕二氏の著作「脳には妙なクセがある」の中の言葉を紹介してくれた。

(引用)『脳には妙なクセがある』
日本語と英語に見られる「プライド」の差は、興味深いと思います。当人の立ち位置が正反対だからです。日本語の場合は「品位を保つ」という行為そのもの、あるいはそこに至る努力に主眼が置かれます。(中略)つまりプライドは他者の存在によって相対的に規定されるもの、いわば、他者に勝るプロセスこそがプライドなのです。一方、英語では、あくまでも本人の「感情」が主体です。自分に尊厳を感じる、あるいは尊敬を集めることで、喜びを味わうことがプライドです。

つまりは、自分が主体であるのか、比較対象が主体であるか。続けて玉木氏は次のように補足する。


「日本だと社会的品位を保つことがデザイナーとしての誇りを得ることにつながっているケースがあると感じます。わかりやすく言えば、まわりに評価されたい、認められたい、わかりやすく、賞などの栄光がモチベーションになってしまう。ただ、もちろん人によるのですが、海外での傾向としては自分が定めた目標値にどれだけ近づけるか。デザイナーとしての誇りをそこに得ている人が多い気がします。で、もう満足を感じている。この感覚がもっと国内に広がっていってほしいという思いはありますね」(玉木氏)

日本基準は捨てた方がいい。文化、品質、配送、何もかもが違う

鈴木氏 フリマアプリ「メルカリ」のUK版のデザインを担当している鈴木伸緒氏。ニューヨークへの留学を経験後、WEB制作会社に入社。コーポレートサイトなどの制作を経て、2015年にメルカリに入社し、日本からリモートでUS版、UK版の「メルカリ」のプロダクトデザインを担当している。

鈴木氏は現地メンバーと一緒にUS版、UK版の「メルカリ」のプロダクトデザインを担当。その際、仕事の進め方に違いを感じたという。


「これまでは1人でデザインを進めた方が早いと思っていたのですが、アメリカのデザイナーは複数人で同時に同じ画面のデザインをして、お互いにレビューしながら進めていく。それも、かなり早い回転でイテレーションを回して改善していく。伝え方も、修正指示を伝えるのではなく、お互いにアウトプットを出して、アウトプットで会話する。それがけっこう衝撃的で……。ただ、実際にやってみるとチーム進めるとお互いのやり方が分かるし、プロセスの共有も簡単にできるので仕事が進めやすい。これは面白い発見でしたね」(鈴木氏)


また、メルカリに関してはアプリを展開している3カ国でデザインが異なるのもユニークだ。国ごとに解決すべき問題、ユーザーのニーズが異なることを感じられる。鈴木氏は日本と海外での違いについて、6つの例を上げて説明した。

1.文化の違い
2.天候の違い
3.配送の違い
4.品質の違い
5.支払い方法の違い
6.コミュニケーションの違い

「やっぱり他の国のプロダクトに関わるといろんなものが見えてきますし、日本のことだけしか知らないと、視野がすごく狭まってしまいます。たとえば、配送に関しては日本にはクロネコヤマトさんがいますが、海外にはいないので、日本とは配送方法も異なります。また支払い方法に関しては、クレジットカードは日本だと大学生から手にできますが、海外は手にするハードルが高いのでデビットカードの使用を前提にしたサービスが多い。日本と海外では違うことが多いですね」(鈴木氏)


3カ国で異なる「メルカリ」のデザイン メルカリのアプリは3カ国それぞれでデザインが異なる

デザインに関しては、UK版はシンプルなデザインを意識。UKは他の2つの国に比べても美意識が高いマーケットで、商品写真や合うアプリのクオリティが低いとそもそも使ってもらえない可能性があったためだ。

また、アメリカでは、晴れてて暖かい地域はビビットな色、寒い地域はシックな色が好まれ、同じ国内でも天候によって好まれるファッションが異なるという。この理由として「国土が大きな国の特徴ですね」と語ってくれた。

言いたいことを率直に伝える=喧嘩ではない

鈴木氏の話を受け、玉木氏は海外の人たちとのコミュニケーションにについて切り出した。端的に言えば、奥手でいたり、引いて構えてしまったりすることは損だという。


「海外の人とディスカッションする際、とにかく率直に言い合うし、強めの語気で話すことも多い。これを日本人は喧嘩みたいになっている感覚を抱くこともあって。ただ、彼らにはそういう感覚は殆ど無いんですよね。むしろ、それが一般的なディスカッションの方法。受け身になってしまうと相手のアイデアが通ってしまうので、何か言いたいことがあるなら、ちゃんと言った方がいい。伝えないのは損ですね」(玉木氏)


こうして赤裸々なトークが繰り広げられた今回のセッション。最後に、海外を志向するデザイナーにお二人から贈られたアドバイスで締めくくりたい。


「今後、デザイナーの役割、ミッションがどんどん増えていく。そうした時代において、何か専門分野を取り入れたり、理解したりするのは大事ですが、それを受け売りとして喋るだけではダメ。そうではなく、デザイナーにしか出来ない咀嚼力から可能性を探って行ってほしいなと思っています。それは個人的に哲学がつくれるかどうかかな、と思っています」(玉木氏)


「僕は1つの領域に閉じこもるのではなく、違う分野を学び、スキルを掛け算していってほしい。たとえば、アメリカはデザイン学科はコンピュータサイエンスの学科の隣にある。コードとデザインの住み分けがほとんどありません。いろんなことを学んでいくと希少価値の高いデザイナーになれるので、デザインを一つのツールだと思い、もう1つの新しいツールを持って成長していったら今後10年面白くなるんじゃないかなと思います」(鈴木氏)



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