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「志村、後ろ」に学ぶ、コンテンツづくりの極意。|LINE 谷口マサトに聞くネイティブ広告の話<前編>

2014-10-22

「志村、後ろ」に学ぶ、コンテンツづくりの極意。|LINE 谷口マサトに聞くネイティブ広告の話<前編>

バズワード的に耳にする機会の増えた「ネイティブ広告」や「コンテンツマーケティング」。今回、国内におけるネイティブ広告の第一人者・谷口マサト氏に、コンテンツづくりの極意についてインタビューした。「コンテンツづくりに必要なのは”ムダ”」、「私のコンテンツはボケっぱなし」と語る、谷口氏の真意とは?

ネイティブ広告に、正攻法はあるのか。

最近耳にする機会の増えた『ネイティブ広告』という言葉。コンテンツマーケティングの手法の一つとしてバズワード的な広がりを見せている。

しかし、まだ注目され始めたばかりの手法であり、方法論については誰もが模索しているのが現状だ。そこで今回、国内ネイティブ広告の第一人者であり、2014年8月28日に『広告なのにシェアされるコンテンツマーケティング入門』を出版したLINEの谷口マサト氏にお話をうかがった。谷口氏はなぜこのタイミングで筆を取ることを決めたのか。その真意を紐解くと、コンテンツづくりの極意だけではなく、ネット業界の課題、そして谷口氏の描く未来予想図が見えてきた。


谷口マサト

【Profile】
谷口マサト LINE株式会社/広告事業部・チーフプロデューサー

1972年滋賀県出身。横浜国立大学の建築学科卒業後、単身渡米。建築ではなく、空手の修行に励む(主にヌンチャク)。空手や柔術の大会で優勝した後、帰国。1996年に、ネット業界に入る。制作会社を経て外資系のITコンサル会社へ。IA(情報設計)の専門家として、大手コマースサイトのリニューアルを多数担当し、ライブドアへ入社する。現在はLINEにて、企業のタイアップ広告企画を担当。

まだプロと呼べるプレイヤーの少ない世界。

― なぜこの本を出版しようと思ったのですか?


ここ3年くらいで、ネットのオリジナルコンテンツがより求められる傾向にあるからですね。SNSの浸透で、小さなコンテンツでもシェアされることで充分に採算が取れるようになってきたので、コンテンツマーケティングに興味を抱く人が増えてきたのではないかと考えています。しかし、いざつくろうとしても、他のメディアから二次情報を持ってきてもおもしろくないし、個人でできることにも限界がある。そこで、広告を特にスマホユーザーにも届けたい企業とコラボして、オリジナルコンテンツをつくる流れになってきているんじゃないかと思います。


― コンテンツをつくりやすい環境があるのに、つくるものがおもしろくない、と。


プラットフォームはあるものの、「どんなコンテンツを載せるんだ」ってところに頭を抱えている人が多いんでしょうね。たとえば紙芝居のように写真を掲載するだけでも目立てるのにそれすらやろうとしない。ネットのオリジナルコンテンツをつくるってこと自体が黎明期に近くて、儲ける手段がなかったので仕方ない部分もあるんですけどね。でも、逆に言えばプロと呼ばれる人たちはほんの一握りで、体系的な方法論もまだない。であれば、自分の経験もどんどん共有していって、みんなができるようになればいいなと思って、出版させていただきました。お笑い記事の事例ばかり載せていたら、真面目な例はないのかと指摘されましたが(笑)。


鈴木優輔


― いやいや(笑)。著書のなかにも“ネット業界の多くの企業が広告をつくりたがらない”とありましたね。これは、何が原因なのでしょう?


PV至上主義による部分が大きいと思います。PVが伸びるのなら、コンテンツは何を集めてきちゃってもいいという、要は徹底的な効率化思考ですよね。でも、効率化思考も突き詰めると差別化しにくくなるし、広告の展開にも限界があって未来がないんですよ。だったらきちんとコンテンツをつくっていったほうが企業からお金ももらえますし、今後市場を広げていくうえでの種まきになると思います。そもそも、コンテンツづくりって効率化とは相反するものですからね。

コンテンツづくりとは、ムダをつくること?

― 「コンテンツづくりが効率化と相反する」とは、どういうことなのでしょう?


たとえばバナー広告とかって、結果が数字でわかりますよね。最終的な購入に近い広告の方が数字がでやすい。でも、逆に数字に翻弄されるというか、数字だけに意識がターゲットされていくと売り場に近い販売促進に限定されてくる。そして売り場から遠い、ブランド認知のための広告を展開できないのがネットの現状です。ただ、ネットの世界で効率化は進んでいるのですがやり尽くされた部分も多く、あらためて効率が悪いはずのメディアに注目が集まっているんですよ。スマホの浸透で若者へのリーチが広がってきたのも大きいです。従来ではできなかったユルい広告をできる環境になってきている。

実際、CMとかを見ていればわかると思いますが、認知される広告ってユルいものが多いですよね。例えば「そうだ、京都行こう。」ってCMをもし現在のネットで展開したら、「行かねーよwww」「一人でいけwww」ってツッコマれるかスルーされるだけです。しかしマスメディアで大規模に“ムダな”展開をすることで「行こう!」と思うムードになってくる。ネットのリーチがさらに伸びれば、そういった一見ユルくてムダに見える広告にも意味が出てくる。


― ムダというのは、どういう種類の“ムダ”を指しているんですか?


つまり、短期的な刈り取り用ではないということです。短期的な視点に立つと一見ムダだけど、長期的な視点で見れば人を惹きつけることができているものですね。PV至上主義の話ともつながるんですけど、ネットの場合は“記憶に残る”っていっても効果がわからないじゃないですか。で、結局今購入したっていうコンバージョンだけに注目が集まる。でも、たとえば、生命保険のCMだとしたら、生命保険に加入するタイミングと広告を見たタイミングって必ずしも一致しませんよね。加入するときに覚えてもらえていたらいい、というものです。

こういったブランド認知や、先ほどの「そうだ、京都行こう。」といった需要の喚起が広告の面白い所なのですが、ネットだとまだまだ販促バナー時代なんです。なので、ネットでもムダをつくる仕組みによって、そこを開拓していきたいと思っているんです。そしてそこには人を惹きつけるコンテンツが必要になります。

だからこそ、コンテンツづくりとはムダを目指すことだと言えるのではないかと。私も3年前くらいは周囲からは「何やってんの?」って感じだったんですけどね(笑)。あとは、そういうムダなことをする技術って真似しにくいことでもあるんですよね。センスというか、何回もスベるなかで身につくというか。そのプロセスを考えるとマネしにくいので他社と差別化しやすいですね。


― なるほど。とはいえ、効率化とも向き合っていかなくてはいけないと思うんですよね。コンテンツをつくるにしても、時間がかかったり、つくり手が限定されるようでは汎用性が低いのではないかと思うのですが。


コンテンツって聞いて結構大掛かりに考えてしまう人が多いのかなと思っています。ただ、実際にスマホで見るものってそんなに大掛かりなものでもないので、いかにローコストで大量生産していくかが肝かなって思っていまして。スマホネイティブと言いますか、スマホ層に合わせたコンテンツづくりというのは従来のコンテンツづくりから余計なコストを下げていく作業でもあると思います。


― スマホネイティブに合わせたコンテンツづくりとは、具体的には?


小さく、薄く、ですね。朝ドラのように15分の話をつなげていくというか。ネットの場合はどうしても接触できるリーチがまだまだ狭いので、継続しないといけないなと思っていまして。そこをローコストでどんどん続けていくっていう方法を今模索しているところです。まだネットは単発の記事が多いのですが、連載形式のコンテンツを各社模索している段階でしょうね。また、ネイティブ広告は記事タイプ以外にも様々です。例えばLINEで企業がスポンサーしている無料スタンプは、人気になれば1000万人にダウンロードされて8億回使われることもあり、CM並みに認知や売上増加につながる事例も多くなっています。

ボケっぱなしにして、ツッコミを誘うこと。

― 谷口さんにとってのコンテンツづくりの極意とはどのようなことですか?


私の場合は、映像でいうところの第三者視点というか、観客だけが知っている真実を設定するということですね。まぁつまり、ドリフの「志村、後ろ」みたいな感じなんですけど。幽霊に翻弄される志村けんを見ている観客は、志村の後ろに幽霊がいることを教えてあげたくなる。要はあれって、幽霊がいることを観客だけが知っているという目撃者に仕立てて、舞台に巻き込もうとしているわけなんですよね。これをネットに置き換えると、コンテンツでボケっぱなしにしてツッコミを誘うことがシェアされる方法の一つだと考えています。TVだとボケとツッコミがセットなんですが、そうするとネットではツッコミにくいんです。

具体的な方法論については本の中で整理していますが、パターンを知れば誰でもできると思うんですよね。例えば先ほどの「志村、後ろ」も演劇や映像をつくる人にとっては一つのパターンです。例えば「家政婦は見た!」も、「家政婦が見ているのを視聴者は見た!」という構造で、同じパターンを使ってるんです。ただ歴史ある映像や紙媒体には様々なパターンが研究されているんですが、ネットだとまだまだこれからなんですよ。なのでそういったパターンはどんどん共有していかないとネット自体が進まない。

この本のなかでも紹介させていただきましたが、ヤマハ発動機の方が私の「大阪の虎ガラのオバチャンと227分デートしてみた!」を参考にフォト紙芝居に挑戦してくれたことがあって。とってもカンタンにバズらせることができた、という話をしてくれています。


谷口マサト


― ちょっと失礼かもしれませんが、谷口さんが『広告なのにシェアされるコンテンツマーケティング入門』のネイティブ広告をつくるとしたら、どんなコンテンツにしますか?


「これはいい本ですよ」ってポジティブなアプローチをしても受け入れられないんですよね。ですから「この本を真似してやってみたら、とてもカンタンすぎた」的なコンテンツをつくるかな、と思いますね。この本はアホらしすぎるとか、カンタンすぎるとか、そんなイジり方をするんじゃないかって。一見ネガティブなんだけど、よく読むと実は良い話だったっていう。「~すぎる」っていうのはよく使われますね。


― ボケっぱなしにしてツッコミどころをつくるというのが、ポイントですね。本の中には他にもさまざまな事例があって、非常に興味深かったです。それでは、後半では谷口さんの考えるネット業界の課題、そして未来についてお聞かせください。引き続き、よろしくお願いいたします。


[取材] 松尾彰大 [文] 田中嘉人


※インタビュー後編はこちら
ケータイ小説から考えるスマホ時代のコンテンツ。|LINE 谷口マサトに聞くネイティブ広告の話<後編>

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