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CAREER HACK

ゲームエンジニアは「評価」を意識すべき。ヤフー蛭田健司が説くキャリアアップの実践法

2016-08-16

ゲームエンジニアは「評価」を意識すべき。ヤフー蛭田健司が説くキャリアアップの実践法

どうすればゲームエンジニアはキャリアップできるか? 今回注目したのはヤフーの蛭田健司氏における講演。過去、数々の有名タイトルに携わり、実績を築いてきた蛭田健司氏。彼が語った「実践的なキャリアアップの方法」とは?

[記事ハイライト]
[1]キャリアアップには長期的な視点を
[2]キャリアアップにはコツがある
[3]スペシャリストにも対応できる幅が必要?
[4]不満がある時は踏ん張り時。理想的な転職のタイミングとは?
[5]転職活動のコツ
[6]「人を楽しませる」それがゲームエンジニア

蛭田健司氏が歩んできたゲーム業界でのキャリア

蛭田健司氏はゲーム業界の変遷と共に着実にキャリアを築いてきた人物といっていいだろう。

キャリアのスタートはセガでの『サクラ大戦2』。その後、コンシューマゲームにとどまらず『真・三國無双Online』などオンラインゲームでは技術責任者を務め、さらにネイティブアプリなど多岐にわたって携わってきた。そのスキルセットの多様さに驚かされる。


ゲームエンジニアのキャリアアップの道


計7社を経験(うち2社出向)。きっかけの多くは知り合いの紹介やヘッドハント。現在はヤフーのエグゼクティブプロデューサーを務める。

蛭田氏によれば、「事業立ち上げ」「人材開発」「欧米ビジネスのスペシャリスト」が自身のスキルセットだという。

わたしは直接関わってきたプロジェクトとして13タイトルあるんですけれども、そのうちの12タイトルが立ち上げからやっています。これだけ立ち上げからやる人ってそんなに多くない。事業立ち上げはいつも人材開発とセットです。なので、採用や育成などにも長く関わってきました。

蛭田氏はキャリアアップに自覚的になることの重要性を語る。

毎日、目の前の仕事に集中してしまって、なかなか振り返る時間が取れない方が多いと思います。ただ、今までの経歴やこれからどこに向かって自分がキャリアアップしていきたいのか、考える時間はぜひ取っていただきたいです。

こう語った蛭田氏。より実践的な「ゲームエンジニアのキャリアアップの方法」について紹介してくれた。

※今回は7月に開催された、ギークス株式会社主催「ゲームエンジニアのキャリアアップの道【TECHVALLEY#8】」での講演内容を書き起こし形式でお送りします。


[プロフィール]蛭田 健司(Kenji Hiruta)
セガでプログラマとしてキャリアをスタート。コーエーテクモ、クルーズ等で技術責任者、ディレクター、プロデューサー、ゼネラルマネージャー等を勤めた後、ヤフー入社。2015年GameBankの立ち上げメンバーとして出向。執行役員CTO、人材開発室室長ほか。2016年ヤフー帰任。事業立ち上げ、人材開発、欧米ビジネスのスペシャリスト。

[1]キャリアアップには長期的な視点を

まずご承知いただきたいのが、ずっと上にだけキャリアがあがり続ける、これはあり得ないということです。特にマジメにポジションを積み上げてきた方の場合、降格などあるとすごくがっかりして「こんな会社にはもういられない」となってしまう場合が多いです

けれど、落ち込む必要はありません。特に上になればなるほど自分のチカラではコントロールできないところで責任を取らなきゃいけない場面が出てくるんです。これは誰でも同じ。人間ですから目の届かないところもあります。不幸な事故もあります。それでも責任者が責任を取らないといけない。ポジションが下がることだってあります。でもそれは一時のこと。気にせず、「もう1回がんばればいい」と思っていただきたいです。

[2]キャリアアップにはコツがある

また私はめちゃくちゃ出来の悪いプログラマでした。一緒に仕事をしたグラフィックデザイナーさんにも面と向かってなじられたり、先輩プログラマには「もう質問に来ないでくれ」と言われたり。でも、幸いにもこうやってキャリアを重ねてくることができました。

つまり最初できなくても、コツを掴めばキャリアアップできるということ。キャリアアップにはコツがあります。そのコツをぜひつかみ取っていただければと思います。

まずキャリアアップとは何か?キャリアアップって人それぞれですよね。給料を上げたい、ポジションを上げたい、あるいは信頼を積み重ねたい、あとはメディアに名前が出て取り上げられたい、それもひとつです。

ここではまず「企業におけるポジション・役割におけるキャリアアップ」と定義させてください。図にするとこんな感じになります。


ゲームエンジニアのキャリアアップの道


ここでのポイントはマネージャー寄り、スペシャリスト寄りの方というのがいること。それぞれにメンバーレイヤー、リーダーレイヤー、チーフレイヤーがあるとご認識いただき、だいたいこれに沿って話をしているとイメージしてください。

さっそく社内におけるキャリアアップから。まずは社内で上へとあがっていくには「能力」と「評価」が重要になります。キャリアアップというと「自分の能力を磨きましょう!」という話が多くなると思いますが、このセミナーはそうではないです。

じつは社内でポジションを上げていくためには「評価」が大事です。「能力は高いのに評価されてない人」って思い浮かびませんか?逆に能力が低いのになぜだか周りから評価される人がいる。つまり「能力」と「評価」どっちも大事なんです。両方を磨いていくことが正しいキャリアアップだと認識いただければと思います。

そして「評価につながる能力の上げ方」についてお話をさせてください。評価を上げるために身につけるべきスキルをまとめています。

ゲームエンジニアのキャリアアップの道


ここには一般的なものを書かせていただきました。まず、メンバーレイヤーは当たり前ですけど、コーディングができないといけません。それからコミュニケーションスキル。よく採用のページとかに書かれていますが、チームで仕事をするのですごく大事になります。

次、リーダーレイヤーになると「いろいろよく知ってる」「どんどん発信してる」という「技術知識」「情報まとめ、発信」が大事です。その先は「設計、提案」です。リーダーレイヤーになるとフワッとした仕様が下りてきます。それをしっかりプログラムとして設計できる人が求められる。さらに「この仕様だと難しいのでこうしたらどうですか?」といった「提案」がリーダーに求められる資質です。あとは育成も関わってきます。

さらにその上、チーフになると先見性や経営判断への貢献が求められます。たとえば、今年はVR元年と言われていてバーチャルリアリティが流行っていますね。これを3年前に予測できた人はいたでしょうか。CTOレイヤー、チーフレイヤーはそれが求められるということ。誰も取りかかっていない段階で、ここに経営リソースをつぎ込もうと判断ができる。その判断は責任がすごく重い。だからチーフレイヤーはいろいろ勉強をしてなきゃいけないですし、経験がなきゃいけません。

さて、自分がどのレイヤーにいて、何を求められているのか。まずはしっかり把握すること。それが評価を上げる第一歩です。これってじつはすごく忘れやすい。やっぱり毎日忙しいので目の前の仕事をこなすことに注力してしまいがちです。私は自分のレイヤーと求められていることをタスクリストの一番上にいつも書いています。そのポジション、その時々で何に気をつけるべきなのか、リマインドが大切。それがコツの1つです。

ただ、求められることの中で「全部やれ」って言われて困りますよね。私からのオススメは「技術知識」と「情報まとめ、発信」です。

ゲームエンジニアのキャリアアップの道


これができると頼りにされます。「ちょっとこれ経営判断に迷うんだけど、あの人の意見を聞いてみよう」と頼りにされることがあります。「発信」にしてもメンバーに伝えてくれるのはすごくありがたい。「あの人にカンファレンスへ行ってもらおう」と勉強の機会につながることもあります。新規事業にアサインされやすくなるといったメリットも出てきますね。

[3]スペシャリストにも対応できる幅が必要?

次はプログラムの分野です。技術寄り、スペシャリスト志向の方についてお話させてください。これは実際に私が経験したプロジェクト例です。

成功したプロジェクト、苦戦したプロジェクトのメンバーの実務経験を表にしました。

ゲームエンジニアのキャリアアップの道


数字は人ですね。プログラマ1、プログラマ2、と言う意味です。「○」が付いているところが「実務経験あり」です。「△」は「実務経験はないが、多少は知識がある」というもの。空欄は「何もなし」です。もう一目瞭然ですね。上のプロジェクトはほぼ全ての分野で、誰か経験があるプロジェクトです。新人が入ってはいるんですけれども、経験者がいてカバーができました。

一方で苦戦したプロジェクトは誰も経験していない分野が2つもあったんです。「モーション、アクション」が全然進まないねっていうのと、「カメラ」のところも何度もつくり直しに。プロジェクトの進捗にすごく影響を及ぼしました。さらに12人いる中の6人がほぼ未経験です。頭数だけ揃えてもうまくいくわけがない。これを見てデスマーチが…まぁご想像のとおりです。

この「苦戦したプロジェクト」に、もし広く経験したことがあった方がいたらうまくいったはず。つまりリード、サブリード、パートリード、それぞれのプログラマくらいになるとやっぱり幅がほしい。スペシャリストでも幅が大事なんです。だから、対応できる分野はぜひ意図的に広げていきましょう。

[4]不満がある時は踏ん張り時。理想的な転職のタイミングとは?

続いてお話するのは、転職を通じたキャリアップです。社内でキャリアアップするだけではなくて別の環境を探す。これも選択肢としてありますね。

ただ、すごく注意してほしいです。一般的に転職を考えるタイミングって想像がつくでしょうか?人間関係、給料、将来性、この環境じゃスキルが伸ばせない、残業時間が長過ぎる…私が面接をしていて本当によく聞く理由です。要は不満なんです。「もうやってられない」と皆さん転職される。でも、ぜひ認識してほしいのは、次の会社でも不満は出てくるかもしれないということ。同じ不満かどうかわからないですが、次も不満が出てきたらまた会社を移りますか?もっと言うと、不満があるから転職するのではなく、不満があるときは踏ん張り時だと思っていただきたいです。

では、理想的な転職のタイミングとはいつでしょうか。 こちらをご覧ください。

ゲームエンジニアのキャリアアップの道


まずプロジェクトは最後までやり遂げましょう。「or」じゃなくて、「and」条件です。成果をあげて社内評価が高まった、人間関係も良くなった、それでも社内に目指すポジションがない場合に転職を考えてください。「迷惑をかけてもいいから」と辞めてしまう場合、必ず悪い評判が広がります。

人間関係が良いなかで転職すると、その人たちはずっと仲間です。前職の仲間が助けてくれる場面もきっと出てきます。やっぱり同じ苦労をした人は、かけがえのない戦友になる。だからその人間関係はぜひ壊さないようにしていただきたいと思っています。

そして、社内での発言力が高まっているときに「こんな新しいポジションを私にやらせてください」と提案したら、それが通るかもしれないじゃないですか。それが一番いい話ですよね。どうしても叶わない時に社外を考えればいいのではないでしょうか。

転職は人生の分かれ道になります。怖じ気づく必要はありませんが、慎重を期して、考え抜いて、後悔しないくらい悩んでから決めてもらいたいです。

[5]転職活動のコツ

そして「さあ、転職をしよう」と決めてしまったら、あとはもう進むだけ。終身雇用はとっくに崩壊しています。動きの速い業界でもありますし、あまり心配は無用です。ただ、同時に転職活動にもコツがあります。

まずはリサーチしましょう。Webサイトや記事、ネットの情報、または知り合いの意見なども参考にしてください。あとはいろんな会社に知り合いがいると話が聞けていいですね。

それから「企業が採用活動を行う目的」を把握してください。中途は即戦力の雇用です。これは第二新卒でも同じなんです。ポテンシャル採用だったら新卒を採るんですよ、正直な話。なぜなら新卒は給料も一番下から始まるじゃないですか。しかも何も色に染まってない。すごく貴重な存在なんです。会社としてはやる気のある人であるならば新卒を雇います。

ここがすごく重要なのですが、中途採用における面接では「やったことはありませんが、やる気があるのでがんばらせてください」と言うのではなく、もっといいアピールの仕方を考えてほしいということです。やる気をアピールするのではなくて、それまでの業務で何を成し遂げたか。やったことがない部分であっても同じようにチャレンジできるか。意気込みではなくて実績をアピールしましょう。

それから書類です。これも本当に多いのですが、「完璧な応募書類」を一種類だけつくって、同じものをいろんな会社に送ってしまう人がいます。これも止めたほうがいいです。なぜなら各社の募集要項には「差」があります。「英語力があるといい」「デバックが得意な方」「AIに明るい方に」などその「差」がその会社が求めている人材だと認識しましょう。つまり5社受けるのであれば書類は5通りつくるべきです。自分が言いたいことを言うのが面接や応募の活動ではありません。相手が聞きたいことを言ってあげる、これが転職活動だと思ってください。

[6]「人を楽しませる」それがゲームエンジニア

最後、原点について考えてみたいと思います。ゲームエンジニアとは何でしょうか。技術は目的ではなく、手段です。人を楽しませるのがゲームであるとするなら、人を幸せにするために技術を磨いていってください。技術は「色のついていない力」です。これは良いことにも悪いことにも使えるということ。ハッキングやクラッキングがあったり、内緒で裏技を仕込むことだってできてしまったりします。

さらに他の職種から見ると何やっているのかよくわからないですよね。たとえば5日でできることを「10日かかる」と言えてしまう。そういう風にしてしまうと、キャリアアップにはつながりません。もし5日でできたのなら、次は「3日でやります」と宣言してほしい。志を高く持ち、常に挑戦していくということがキャリアアップにつながるというふうに思っています。

※2016年7月に開催された、ギークス株式会社主催「ゲームエンジニアのキャリアアップの道【TECHVALLEY#8】」の講演内容を書き起こし形式でお送りしました。

▼参考資料はコチラ



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