2017.07.20
26歳の次世代CTO、大谷真史のキャリア論。トライアスロン選手、東大、ベンチャーを経て見つけた生き方

26歳の次世代CTO、大谷真史のキャリア論。トライアスロン選手、東大、ベンチャーを経て見つけた生き方

Technology x Realを組み合わせた事業を展開するバイセルテクノロジーズ。同社のCTOが大谷真史さん(26)だ。じつはトライアスロン元日本Jr選手から東大大学院に進学したという異色の経歴の持ち主。スポーツ・学業でトップクラスの世界で戦ってきた大谷さん。なぜ、彼はベンチャーCTOの道を選んだのか?

0 0 60 0

26歳、バイセルテクノロジーズCTO 大谷真史のキャリア論

テレビCMなどでも知られる『スピード買取.jp』。このサービスを運営するのが、バイセルテクノロジーズだ。

同社にて、取締役CTOとして活躍しているのが大谷真史さん(26)。20代で技術責任者を務める注目の人物だ。


「CTO就任当初は、プレッシャーで押し潰されそうになりました」


こう語る彼だが、現在、技術面における戦略的な意思決定を指揮し、事業面においても大きなインパクトを与えている。

そんな大谷さんだが、じつは異色の経歴を持つ人物。

過去、トライアスロンの日本Jr選手に選出され、アジア大会3位になるなどトップクラスのアスリートだった。その後、東京大学の大学院へ進学。新卒では『FiNC』で働き、たった1年で海外エンジニアチームのマネジメントを一手に担うまでになったというから驚きだ。

なぜ、彼は分野にとらわれず、誰もが認める「高い能力」を発揮してこれたのか。そして結果を残してこれたのか。彼が人生において大切にしてきたことに迫ってみたい。


【プロフィール】バイセルテクノロジーズ 取締役CTO 大谷真史
東京大学大学院工学研究科卒(工学修士)。在学中に人工物工学の研究分野にて東大最優秀賞、スウェーデンへの研究留学などを経験。卒業後は『FiNC』にて、エンジニアマネージャーとして多くのアプリケーションの立ち上げ/開発、インターナショナルチームのリード、エンジニア採用などに従事。2016年12月に同社に参画。2017年3月に取締役就任。

スポーツが教えてくれた「失うこと」の怖さ

― もともと、オリンピックを目指すほどのトライアスロン選手だったと伺いました。なぜ、やめてしまったのでしょう?


20歳ぐらいまでトライアスロンに熱中して取り組んでいたのですが、ケガをしてしまったんです。2年ぐらいリハビリをすれば、復帰できる可能性もあったのですが、「2年も休まないといけないのか」と、心が完全に折れてしまって。


― ケガは…どうしようもできないことですよね。


いや、僕はそこで逃げたんですよね。ロンドンオリンピックを間近に控え、リオがあって、その次は東京だ…という一番大切な時期。「2年、がんばればいい」という考え方もあったはずなのに、向き合うことができませんでした。

そして、スポーツをやめたら、自分には本当に何もなくなってしまった。当時、高専の学生でもあったので、試しに就職活動フェアにいってみたら「君には何があるの?」と聞かれて、なにも出てこなかったんです。

選手時代にちやほやしてくれていた人たちもスッと自分から離れていく。忘れ去られていく。一生懸命積み上げても、ひとつのミスで全てが崩れていく。そんな怖さを学びました。これが人生における一番の挫折だったかもしれません。


― そこから、どのように立ち直ったのでしょう?


トライアスロンをやめた次の日から、ひたすら勉強だけに集中しました。ちょうど逃げた先に「勉強」があったんです。狙うなら日本のトップ、東京大学の大学院を目指すことにして。24時間、トライアスロンのことばかり考えていたのがゼロになったので、その時間を全て勉強に向けました。

…たぶん勉強にすがっていたんだと思うんです。「自分には何もない」といった焦りがあった。すべてを失ってゼロになってしまう、あの感覚は二度と味わいたくないですね。

分野問わず、目的を必ず達成するメソッドとは?

バイセルテクノロジーズCTO 大谷真史


― トップレベルのアスリートになればなるほど、練習は過酷なもの。選手時代、勉強はどうしていたのでしょうか?


感じのわるい奴に見られるかもしれませんが、もともと勉強はけっこうできたほうだったんですよね(笑)結局、スポーツも、勉強も、仕事においても本質は一緒だと考えていて。スポーツって目標を決めて集中すること、効率よくトレーニングすることが非常に重要。これは勉強でも同じです。

また、確実に指標をクリアし、目的を達する方法に関して、トライアスロンから学んだといっていいと思います。

実業団やプロチームと一緒に練習をしていたのですが、結果が出なければスポンサー契約が終了してしまう非常に厳しい世界。確実に結果を残すための「目的志向」を大切にしていました。

まず目的を明確にする。あとは、それを細分化し、クオーターごとにタスクに取り組んでいくという方法。かなり緻密に組み立てられたプログラムがそこにはあります。

たとえば、トライアスロンの練習にも、年間スケジュールのようなものが仕事と同じようにあって。狙った大会から逆算し、いつまでにこのタイムを達成しないとダメ、じゃあこういう計画でいこう、といった感じ。結果に対するフィードバックは毎日行う。目標が達成できなかった場合は、その原因を特定し、つぶしていく。

これって完全に仕事と一緒ですよね。

グーグルが採用している「OKR」という評価の仕組みがあるのですが、その考え方が非常に近いです。チームの目標、個人の目標を設定し、それらを細分化し、3カ月ごとにレビューしていくという流れです。

参考:https://careerhack.en-japan.com/report/detail/781

「キャリアの掛け算」で切り拓く。実力主義の世界で見つけた居場所。

― ちなみに、技術的なバックグラウンドは高専時代に?


そうですね。関西では有名な高専で、高校1年生からプログラミングをやるような学校でした。ただ、東大に入ってから特に研究レベルの技術を志向する人たちと、自分との志向性の差をすごく感じていて。僕はどっちかというと、技術そのものより「技術をどうビジネスに役立てるか」が好きなんだと気づきました。

プログラミングができる、そして事業が好き。これを掛け算すると「エンジニアを束ねるマネージャー」みたいな仕事がいいんじゃないか?と。


― 掛け合わせで居場所をつくっていく。キャリア論としても重要ですね。


1社目で働いた『FiNC』で学ばせてもらったことが非常に大きいですね。ものすごく成長させてもらえて、感謝してもしきれません。


― 大谷さんほどのスキル・考え方を持っていれば、大企業や、官公庁など、いくらでも就職の選択肢はあったと思うのですが、なぜベンチャーだったのでしょう?


もともと防衛省に行くつもりで国家公務員試験も受け、インターンにも行っていたのですが、自分にはフィットしないと感じていました。他にもいろいろ見ていくなか、「この人たちと一緒に働きたい」と思える場所がなかなか見つからなくて。

そんなときに『FiNC』をたまたま見つけたんです。大学院を卒業する一ヶ月前というギリギリの時期で(笑)

当時はまだ数十名の会社だったのですが、話を聞く中で、一緒に働く人たちが魅力だった。「優秀な人たちと働きたい」これが大きな理由ですね。


― 実際、入社してみてからはどうでしたか?


めちゃくちゃ鍛えられましたね。成長真っ只中のベンチャーなので、もちろん楽な環境ではありませんでしたが、成長を感じながら働くことができました。夢中になれるモノを再び見つけることができたんだと思います。

そんな環境のなか、迷惑をかけながらも周りに助けていただき、いろいろと任せてもらうことができました。入社後間もなくして「このプロジェクトをよろしく」と振ってもらえて、プロジェクトオーナーに。

すこし落ち着いたころには採用も手伝わせてもらえ、チームの立ち上げに関わるなど、普通は入社1年めでは出来ないようなかなり濃い経験をさせてもらいました。

「世界を変えたい」とは思わない。とにかく確実に事業を成長させていく。

バイセルテクノロジーズCTO 大谷真史


― そして、バイセルテクノロジーズのCTOになられたわけですが、どういった決断があったのでしょうか?


エンジニア組織の新規立ち上げに携われる、ここが大きかったですね。自分が『FiNC』においてCTO直下で見てきたことを、今度は自らCTOという立場でやってみたい、と。

ただ、今まさにCTOという仕事の大変さを痛感しているところ。技術的な細かい部分は実質的に自分が最終意思決定者になります。自分が間違うと、会社全体が間違った方向に向かってしまう。

入社してからの3カ月間は、夜中に急に目が覚めることもありましたね。「誰が辞めた」とか「プロジェクトが止まった」とか「外注さんが急に撤退した」とか…現実味のある夢ばかり見てしまう。会議に行こうとするとお腹が痛くなるというのもありました(笑)

今注力しているのは新規事業であるM&A仲介サービス。いまでは順調に立ち上がっていますが、自分がCTOになったことで、あらためてCTOという存在の重要さを思い知りました。


―お話を伺うなかで、かなり自身を追い込むというかストイックさをお持ちだと思いました。何が大谷さんをそうさせているのでしょうか?


まだ自分のなかに明確な答えはないのですが、困難な課題にチャレンジし、達成したい。ここに尽きるんですよね。

私の場合、スポーツを行なっていたこともあって、「目標管理」があたり前でした。そのとき、あえて3年分の計画表しか作らないようにしているんです。なぜなら、5年後とか、10年後の未来のことなんてわからないから。

この3年のサイクルをずっと続けていく。困難な課題にチャレンジし続ける。これが僕の夢ですし、それが継続できたら凄く楽しい人生になるんじゃないかな、と。もちろん「世界を変えたい」といった思いはありますが、そういった大それた目標もより、まずはこの3年、という感じですね。

掲げた目標に向かってしっかり努力している限りは、良い出会いが必ず訪れるはず。一生懸命やればやるほど、それだけ出会いの確率だって高くなりますよね。

そう思うと…これまでの人生の中で、3年後すら思い通りになったことはありません(笑)それでいいんです。3年後、いま想像できるような仕事をしていたら、自分としては全く面白くない。ずっと、いま想像できないようなことをやっていたいですね。


― 先を見すぎない、これって意外と大切なポイントなのかもしれませんね。その間に思いがけない出会いがあったりして、人生が変わっていったりすることもある。すごく大切な視点をいただけたと思います。本日はありがとうございます!


文 = 勝木健太
編集 = CAREER HACK


特集記事

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから