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木村新司氏が、ICOコンサル事業に乗り出す狙いとは?AnyPay主催『ICOカンファレンス』に寄せて

2017-10-30

木村新司氏が、ICOコンサル事業に乗り出す狙いとは?AnyPay主催『ICOカンファレンス』に寄せて

仮想通貨やブロックチェーンに注目が集まっている。特に見逃せないのが資金調達の新たな手法「ICO」を巡る動きだ。ただ、ICOはまだまだ一般層にとっては馴染みが薄い。そこで今回、2017年10月に開催された『ICOカンファレンス』を軸に、ICOの概要とイベントを通じて考察した展望についてお届けしたい。


[執筆者 プロフィール]勝木健太
1986年生まれ。書籍『ブロックチェーン・レボリューション』翻訳協力者。ダイヤモンド・オンライン「『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(前篇・後篇)」執筆。

来るか、トークンエコノミーの夜明け。

2017年10月5日、東京・虎ノ門ヒルズにて、AnyPay株式会社の主催により、ICO*(イニシャル・コイン・オファリング)に関する大規模なイベント「ICOカンファレンス」が開催された。

本カンファレンスの詳細部分については、他媒体のイベントレポートを参照いただくとして、本稿においては「ICOカンファレンス」で印象的だったポイントをご紹介。併せて、本イベントに出席したことで得られたいくつかの示唆、今後の見立てについて考察したい。

(当該記事は公開情報に基づいた執筆者の私見・寄稿記事となります)


(*)「ICO」は「IPO」になぞらえてつくられた造語。企業が独自のデジタルトークンを発行することにより、資金調達を行う仕組みのことを指す。

新しい資金調達の仕組み「ICO」とは?

本題に入る前に、ICO(Initial coin offering/イニシャル・コイン・オファリング)の概要について軽く触れておく。

ICOは、ブロックチェーン技術を活用した資金調達を行うための新たな仕組みである。企業が独自のデジタルトークン(*)を発行し、一般の仮想通貨保有者に向けて販売することで、資金調達を行うことができる。

これまでは、未公開企業が資金調達を実施する場合は、自社の株式を発行し、エンジェル投資家やVCから資金を調達したり、IPOを実施したりすることが一般的だった。

しかし、ICOを活用すれば、株式を発行するのではなく、ブロックチェーン上で独自のデジタルトークンを発行し、仮想通貨保有者に販売することで、資金調達を行うことができるのだ。


(*)デジタルトークン
ブロックチェーン上で企業が独自に発行した仮想通貨のようなもの。発行されたトークンが国内外の取引所で取扱いがされると、売買がなされ、価格が形成される。

[参考]DIAMOND online
『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(前篇)
『ブロックチェーン・レボリューション』で予言されたICOの現在(後篇)

AnyPay社がICOコンサルティング事業に新規参入

今回のイベント『ICOカンファレンス』を主催したのはAnyPay株式会社。わりかんアプリ「paymo」や、決済サービス「AnyPay」を提供するフィンテック企業として知られている。2017年9月より、ICOコンサルティング事業を開始している。

具体的な事業内容について、山田悠太郎氏(AnyPay株式会社/ICOコンサルティング事業責任者)より以下のような言及があった。

「通常の資金調達に必要な検討事項に加え、ICOを実施する上で必要とされる法規制・会計面での支援やトークンの発行、国内外へのプロモーションなどの支援をしていく」


本事業と類似の取り組みとして、国内においては、テックビューロ株式会社が展開するICOプラットフォーム「COMSA」が存在する。ただ、まだまだ国内には関連する事業は数少なく、注目すべきモデルといえそうだ。

ICOコンサルティング事業、海外企業の動きは?

まだまだ国内ではめずらしいICOコンサルティング。海外に目を向ければ、ICOプロジェクトに対するアドバイザリーサービスを提供している企業はいくつか存在している。代表的なものをいくつか見ておこう。


Argon Group
ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーをはじめとする外資系金融機関における実務経験を有するプロフェッショナルが中心となって設立された企業。CivicBlockchain CapitalStorjに対するアドバイザリー支援で知られる。

Bitcoin Suisse
スイスを拠点とする企業。OmisegoBancorといったICOプロジェクトに対してアドバイザリー業務を実施。

Zeppelin Solution
スマートコントラクトのセキュリティ監査に特化したサービス「Open Zeppelin」を提供。

Amazix
ICOプロジェクトのコミュニティ運営への支援に特化した企業。


このように、国内外で続々と誕生しているICO関連ビジネス。同時に、解決すべき課題も多い。

その点については、斎藤創氏による「Session2:ICOの法的整理」において、詳細な説明がなされた。

ICOには詐欺的なプロジェクトも数多く存在しており、米SECをはじめとする規制当局の多くがICOに対する警戒心を強めているのが現状である。

その流れを踏まえれば、今後、ICOプロジェクトに対するデューデリジェンスや第三者的な評価を行うサービスがより一層求められる可能性がある。

実際、日本においても、AnyPay株式会社のみならず、上述のCOMSAを展開するテックビューロ株式会社、さらには、ICOに対する格付け業務を開始予定のモーニングスター株式会社など、同様の動きが現れつつある状況であり、要注目の分野と言えそうだ。

ICOコンサルティング事業、そのターゲット顧客は国内企業にとどまらない

『ICOカンファレンス』において、非常に印象的だったのが、AnyPay株式会社が紹介した直近の案件だ。

それは「海外企業によるICOプロジェクト」に対するコンサルティング案件であり、具体的には、

・仮想通貨による分散型銀行を目指す「Bread
・カーシェアリングサービスを提供する「Drivezy

この2つの案件である。ICOによる資金調達を成功に導くカギ。そのひとつは、仮想通貨保有者が数多く存在する地域に対する「マーケティング活動」だと捉えられる。なぜなら、ICOは「世界中の仮想通貨保有者から資金を調達する」という先に挙げた性質があるためだ。

現状、日本は、仮想通貨のマーケットとして世界有数の規模を誇っている。事業者がICOを活用した資金調達を行う際に、日本向けのマーケティング活動を重視するのは言うまでもない。

現状、法規制面が明確に定まっていないことから、トークンの国内投資家への販売は慎重さを要するが、こういった点を踏まえれば、ICOコンサルティング事業に取り組む国内企業は、グローバルなレベルで競争優位性を発揮できる可能性があると筆者は考える。

「エンタメ×仮想通貨」は将来有望な事業領域か。

もう一つ、イベントを通じて印象的だったトピックがある。それは、AnyPay株式会社が今後予定している案件に「スポーツ関連」のプロジェクトが含まれていたことだ(参加者に配布された資料に一部記載)。

スポーツ・音楽事業をはじめ、エンタメ領域は仮想通貨事業と親和性が高い。海外においては「Token Stars」のようなICOプロジェクトが既に存在しており、個人的に注目している。

また、国内においても、株式会社サイバーエージェントが仮想通貨事業に新規参入することを発表。「エンタメ金融」の領域で新規事業を生み出すことを明らかにしている。本領域において、数多くの革新的なプロダクトが現れることを期待している。

最後に

本イベントを通じ、もっとも興味深く感じたことを挙げておこう。

それは、起業家・投資家である木村新司氏が、将来有望な事業領域として、このタイミングで、ICOコンサルティング事業に参入したという事実である。

木村氏はテクノロジーの進化に伴う世の中の構造的な変化を捉えることに卓越した人物。日本を代表する連続起業家かつ個人投資家として知られており、GunosyやWantedly、PKSHA Technologyをはじめ、数多くのスタートアップ企業のIPOに関与した実績を持つ。

現状、ICOには克服すべき数多くの課題が存在すると言われている。しかし、適切に活用することができた場合、ICOは社会を大きく前進させる可能性を秘めた革新的な仕組みであり、グローバルな社会的課題を解決する可能性すら秘めている。

実際、ユニセフがICOを活用し、子どもたちの生活を改善するプロジェクトに取り組む可能性が一部で報道されており、今後、似たような取り組みを国連や世界銀行をはじめとする国際機関が行っていく可能性も十分に考えられる。

一方、海外では、ICOを禁止する動きも存在しており、法規制面については、今後の規制当局の動向をはじめとして、細心の注意を払う必要がある。

いずれにせよ、ブロックチェーン技術を活用したアプリケーションとして大きなポテンシャルを秘めたICOという仕組みは、あらゆるビジネスパーソンにとって無視できない存在となる可能性がある。今後もその動向を注視する必要がありそうだ。

(おわり)



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