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MAKERムーブメントは明日を拓くか―インターネット・オブ・シングスがもたらすエンジニアの未来[2]

2013-03-22

MAKERムーブメントは明日を拓くか―インターネット・オブ・シングスがもたらすエンジニアの未来[2]

MAKERムーブメントは本当にモノ作りに影響を与えるのか。なぜ「モノ自体」ではなく、モノとネットの繋がりが重要なのか。「消費電力の見える化」を、ハード・ソフトの両面で実現してきた株式会社Sassor代表石橋秀一さんが語る、モノ作りとITエンジニアの未来について。

▼インタビュー第1回はこちら
ソフトとハードの融合はここまで来た―インターネット・オブ・シングスがもたらすエンジニアの未来[1]  から読む

MAKERムーブメントが可能にすること。しないこと。

― Sassorは、いわゆるハードウェアベンチャーとして語られることも多いと思いますので、ぜひ今の「MAKERムーブメント」についてもお伺いしたいと思います。このところ、安価な3Dプリンタやレーザーカッターなどの登場で「モノ作りが変わる」と言われていますが、実際に石橋さんご自身の中で変化はありましたか?


試作品作りに関するハードルは、圧倒的に下がったと言えると思います。製品化するまでには、何度もプロトタイプを作って試行錯誤するわけですが、その工程を行なうための敷居が低くなりましたよね。コスト的にも、工数的にも。

私はハードウェアに関する勉強を始めたのが大学院からですが、まさに「Make文化」の流れに乗ることでここまで来れたといいますか。当時は作ってみようと書籍を開いてみても、内容がものすごく難解で途方に暮れていたんです。

そんなときに、インターネットで『Arduino』のことを知って。まだネット販売もされていなくて、「欲しい人はメールで連絡くれ」みたいなことが書いてあるんですよ。それで本国から取り寄せて。

そのとき購入した製品のシリアルナンバーが500番台でしたから、まだ日本ではほとんど持ってる人はいなかったんじゃないでしょうか。私なんかは、『Arduino』のおかげでモノ作りの世界に漕ぎ出せた、という実感がありますね。


― 今のSassorがあるのは、オープンソースハードウェアのおかげであると。


はい。ただ、一般消費者向けに流通させる民生品を作る、ということを考えると、また違ってくると思うんです。量産工程においては、3Dプリンタやレーザーカッターでは対応できないので。

一般家庭向けのELPツールを製造・販売したとき、モジュールの単価が2万円ぐらいになってしまったんです。一般向けの電気用品を販売するためにはPSE規格というものに適合しなければならないのですが、そのハードルを越えるのが相当難しくて…。結局、PSEを取得しなくても良い方法を見つけ出して、なんとか作れたのが100個でした。単価を下げるためには量産しないといけないわけですが、それには何千万円といった資金調達が必要になりますし、一度に量産すると在庫リスクが発生するわけですよね。だからなかなかお金が集まらない。



それから、アフターフォロー体制なども必要で、そのための人員の問題もあります。実際、Sassorでも販売した100個の商品についてサポートしましたが、設置方法が分からないお客様には直接お宅に伺ったりと、結構大変でした。正直、販売に関してはシロウトみたいなところから始めたので、苦労しましたね。

そんな感じで、技術的にも資金的にも、人的リソースの面でも、ハードウェアベンチャーが超えなければならない壁というのは結構高いんです。


― プロトタイピング以降については、また話は別であると。


よく言われているように、「3Dプリンタで製品製造が簡単になった」というのはちょっと誤解があるかなと。アイデアをどんどん試作品にして煮詰めていくことができる、そのスピード感が革命的だなと思いますね。

それから、今は中国で豊富な部品を安価に揃えたり、短納期・低コストで基盤の組み立てをオーダーできたり、そういう環境もモノ作りの立ち上がりを容易にしてくれています。

なので、既存の大手メーカーさんと組んだりしたら、面白くなるんじゃないかと思いますね。ハードウェアベンチャーにとって圧倒的に難しいのは最終品として形にする部分なので。

実は今、某メーカーさんと一緒に取り組んでいるプロジェクトがあるんです。そのメーカーさんの製品に、電力測定の機能を付加するという企画で。我々はこれまでのノウハウとソフトウェアを提供して、モノ自体はメーカーさんが作る、というカタチです。

モノ自体でなく、ネットとの連携で価値を生む。

― なるほど。ハードウェアベンチャーのモノづくりのあり方、ビジネスのあり方、みたいなもののヒントがあるような気がします。


全てのハードウェアベンチャーがそうあるべき、だとは思いませんが、私たちの考えとしては、“モノそれ自体”に価値を持たせるのではなくて、インターネットとの連携によって価値を生み出せるものを作りたいと考えているんです。それが次の時代のモノづくりの可能性じゃないかと。


― つまり、『グーグル・グラス』のような、それ自体が技術的にイノベーティブなモノではなくて、ということですね。


はい。一部の感度の高いギークと呼ばれるような人たちにウケるものではなく、生活の中に入っていって活用されるような、そういうものです。今はまだ、そこまで必要不可欠になっている存在って無いと思うんです。


― 確かに、単にWEBとガジェットが連携してますよ、という程度のものならありますが、生活必需品のレベルにまで至っている製品は無い気がしますね。


先ほども少しお話ししましたが、「インターネット・オブ・シングス」なんて呼ばれたりするような世界が、遠からず来ると思います。さまざまなモノにセンサーが組み込まれ、そこから集まった膨大なデータをどうマッシュアップして、新しいイノベーションを生み出していくか。



私たちのELPは、今は商用が主体ですが、いずれはコンシューマ向け製品も再び展開できればいいなと思っています。電力の使用状況から分かることというのは、思った以上にいろいろあるので、それらを“ライフログ”として記録し、分析することで、人々の生活に役立てられたら、なんて考えているんです。まだまだ、ブラッシュアップしないといけない点はたくさんありますけれど。


― たとえば?


データマイニングができる人材がもっとたくさん必要ですし、ハード系エンジニアもソフトウェアのエンジニアも足りません。UIなんかも、まだこれからですね。視認性よく表示するだけではなくて、さまざまなアラートを出すとか、分析レポートを出すとか、もっともっと“使える”ようにしたいなと。


― ではITエンジニアが活躍する場所もたくさんある、ということですね?


それはもう。いつでも人材募集中です(笑)WEB系のエンジニアさんは、いま結構ソーシャルゲームのほうに行かれているみたいなんですが、ぜひウチのような企業もご検討いただければ、と(笑)

ハード系のエンジニアの方も、すごい技術を持っている人は、日本には本当にたくさんいるんですよね。東京だと大田区にたくさんの町工場がありますが、本当に技術力が高い。でもそうした人材と、ITやWEB系の人材との出会いの場所は今は皆無です。私たちのようなベンチャー企業を通して、なんとかシナジーが生まれればな、と思っています。


― ハードとソフトの人材が出会うことで、新しいことが起こりそうな予感、しますね。イノベーションが起こる場所としてのSassorを、今後も注目していきたいと思います。
本日はありがとうございました!


ありがとうございました。


(おわり)



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