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GunosyのUIを手掛けたデザイン会社《Goodpatch》に学ぶ、デザイナーの育て方。

2013-07-22

GunosyのUIを手掛けたデザイン会社《Goodpatch》に学ぶ、デザイナーの育て方。

GunosyのWEB・iPhoneデザインを手がけるなど、UIデザイン会社として存在感を発揮するGoodpatch。注目のUIデザイン会社は、どのようにしてメンバーの成長を促しているのか?そのカギは育成体制と特徴的な仕組みにあるという。

注目のUIデザイン会社

Gunosyのサイト・アプリデザインを手掛けたことでも注目を集めるUIデザイン会社《Goodpatch》

彼らはUIデザインに特化したWEB・アプリの受託制作のみならず、自社サービスの開発やWEB/UIデザイナー必見のブログ「MEMOPATCH」も手掛けている。



さぞかし実績のあるデザイナーばかりが揃っているのかと思いきや、実際のところ、同社には未経験で入社したメンバーも少なくないそう。一体、彼らはいかにしてデザイナーの育成を行なっているのか?

代表の土屋尚史氏へのインタビューから、Goodpatchが実践する、育成体制・仕組みづくりを紐解いた。

Gunosyとの出会いが、「UI専業」の道を開いた。

― GoodpatchはUIデザインを専門にされていますね。UIを専門にしている会社はあまり多くないと思うのですが、どうしてUIに特化しようと思われたんですか?


起業する前に、サンフランシスコのbtraxというデザインコンサルティングファームでインターンをした経験がきっかけになっています。当時、シリコンバレーのスタートアップが手がけるWEBサービスを見る機会が多かったんですが、どのサービスもβ版の段階からUIが重要視されていて、質がとても高かったんです。



でも、日本ではまだUIの大切さがあまり理解されておらず、専門の会社も少なくて。そこで、UIに特化した事業には大きな可能性があるんじゃないかと考えました。

といっても、創業当時にはUIデザイン以外のこともやっていたんです。コワーキングスペースのプロデュースや、国内スタートアップの海外進出支援など、3つの事業を同時に進めていました。けれど、なかなか上手くいかず、会社としても立ち行かなくなってしまって。創業から1年くらいは、非常に厳しい環境でなんとかやりくりする状況が続きました。

転機は、事業をUI一本に絞ったことと、Gunosyのデザインを手掛けたこと。Gunosyのデザインを気に入ってくれた方から仕事の依頼が来るようになり、UIに特化した仕事を着実に行なえるようになってきたんです。

そもそもGunosyメンバーと出会ったのはシリコンバレーでした。「シリコンバレーカンファレンス」というイベントで一緒にGoogleなどを見学したメンバーのうちの一人が、「友人たちとGunosyというサービスを作ったので見てくれませんか?」と連絡をくれたんです。内容としては非常に面白いことをやっているのに、「ロゴはPowerPointで作った」なんて言っているし、とにかくUIがひどかった。このままじゃ誰も使わないだろうと思いましたね(笑)



当時は起業したばかりで仕事も少なかったし、うちでUIをやろうか?と提案したことがきっかけで、GunosyのUIを担当することになりました。とはいえ彼らはまだ学生だったのでお金を取る気になれず、無償でデザインをすることにしたんです。


― それは面白い。無償で引き受けた仕事が、結果的にGoodpatchの将来を切り開いたわけですね。

チャレンジングな受託案件に積極的に取り組む。

― Goodpatchはかなり短い期間で、UI分野での存在感を高めていますね。腕利きの、経験豊富なスタッフばかりが集まっているイメージもあります。


もちろん経験豊富なスタッフもいますが、実は未経験の人材もこれまでに何人か採用してきています。最近は経験のあるスタッフが入ってきてくれるようになりましたが、一年前は名前もまだ知られてない会社でまともな給料も払えなかったので、経験豊富な人材ばかりを取るのは難しかったんです。

それでも、面接した中で未経験でもやる気とセンスと情報感度が高い人材は自分が育てると決めて採用してきました。その未経験から入社したメンバー達はこの数カ月で驚くほどの成長を見せ、今やグッドパッチの中心的なメンバーになっています。

その理由の1つは、チャレンジングな受託案件に積極的に取り組んでいるからです。



GoodpatchはUIデザイン専門を謳っていることもあり、他社ではなかなか受けられないような魅力的な案件がどんどんやってきます。受託の仕事には当然ながら納期があるし、 クライアントの期待値のハードルを超えて、ユーザーに気持ちよく使ってもらえるアウトプットを出す必要があります。そんな強いプレッシャーのもとにデザイナー置くことによって、半ば強制的にでも成長させる環境を作っているんです。


― 経験の浅いデザイナーをチャレンジングな環境に飛び込ませると。それだと委縮してしまうこともあるのでは?


責任は持たせますが、経験を積んだデザイナーが見守っているので、いつでもアドバイスをもらえます。他にも全社員参加のデザインレビューを行うので、たくさんのフィードバックを得られる環境を用意しています。

リリースする前に、デザイナー、エンジニア、インターンなど肩書きに関係なく、全社員でデザインをチェックするんです。一般的には先輩が後輩のデザインをチェックして徒弟制度のように教育していくかと思いますが、そうすると全てが先輩基準になってしまいますよね。教育する先輩ひとりの力量によって、後輩の成長が大きく左右されてしまいます。

でもデザインの良し悪しって、デザイナーではなく、それを使ってくれるユーザーが決めることですよね。そういう考えがあって、色んな立場の人から意見がもらえるように全社員参加型のデザインレビューを行なっています。


WEB・UIデザイナーの地位を必ず上げていく。

― Goodpatchのおもしろい取り組みの一つにMEMOPATCHも挙げられますね。


流れの速いIT業界では、常に最先端の情報をキャッチしていなければなりません。そのため、WEB・UIデザインのトレンドや新しい技術、面白いサービスなどをいつも社内で共有し合っていますし、それらをまとめてMEMOPATCHで記事にしたりしています。

僕はデザインの価値を多くの人に知ってほしいし、デザイナーの地位を向上させていきたいと思っているんです。というのも、日本のWEB・UIデザイナーの地位や待遇って、海外に比べて非常に低いんですね。労働環境が悪かったり、それこそ賃金が低かったり。海外ではエンジニアと同様に重宝されているのですが、日本ではまだまだです。だからMEMOPATCHを通じて、多くのデザイナーに有益な情報を届け、スキルアップやインプットの機会を提供していく。そしてそれがデザイン力の底上げに繋がり、結果としてデザイナーの地位も上がっていくのではないかと。

今年の年末は、メンバー全員でシリコンバレーへ旅行に行きます。やはりシリコンバレーというのはこの業界の最先端ですし、実際に現地へ行って得られるものはとても大きい。僕自身、サンフランシスコ・シリコンバレーでインターンをした経験がなければ、今の自分はありませんでした。この社員旅行は、今後もシリコンバレーという場所に限らず毎年必ず実行していきたいですね。メンバーが何かしらの刺激を受けられる機会を、用意しつづけたいと思います。


― デザイナーにとって非常にいい環境ですね。一方、あらゆるデザイナーがこのような恵まれた環境に身をおけるわけでもないと思います。そんな中、デザイナーが自身のキャリアを考える上で必ずやっておくべきこととは?


まず、デザインに関わるサービスが提供されるコンテクストをちゃんと理解すること。ターゲットは誰なのか?どんなシチュエーションで利用されるのか?何がゴールなのか?デザインに入る前にサービスが提供される背景を理解するという癖を必ず付けるべきです。当たり前の事ですが出来てないデザイナーが多いので。

あとは「情報感度を高める努力」は必ず必要だと思います。デザイントレンドに限らず、世界でどんなサービスが流行っているのか、使われているのか、次のトレンドとなるモノはどんなモノなのか。「そのトレンドを自分の仕事・作品に取り入れてみたことがある」と、きちんと言えるような経験を何度も積み重ねることが大切です。それを積み重ねることによりUIの引き出しが多くなります。もちろんトレンドに踊らされて本来の目的を見誤る事はないようにしないといけませんが。

そしてサービスの上流工程からユーザーに提供される部分まで全体を把握できることも重要です。その上で、大きな一歩を踏み出す時には、何かひとつの領域にフォーカスして、自分の強みを出していくようにすると良いでしょう。グラフィックの綺麗さでもいいし、JavaScriptの細かな動きでもいい。

UIも含めデザインというのはWEBサイトやプロダクトにおいて決して主役となる存在ではありません。 例えばユーザーにとってGunosyの魅力は、自分の好みに合わせた記事を配信してくれることであり、サービスの裏にあるアルゴリズムです。デザインはあくまでそれを引き立たせるためのものに過ぎない。デザインの役割をきちんと認識して、ユーザーに寄り添うこと。デザイナーがやるべきことは、やっぱりそこに尽きると思いますね。


(つづく)
▼Goodpatch チーフUIデザイナー・貫井伸隆氏へのインタビューはコチラ
日本人初の「Dribbble」プレイヤー貫井伸隆氏に聞く、これからのUIデザイナー。


[取材・文]松尾彰大



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