2013.07.23
日本人初の「Dribbble」プレイヤー貫井伸隆氏に聞く、これからのUIデザイナー。

日本人初の「Dribbble」プレイヤー貫井伸隆氏に聞く、これからのUIデザイナー。

UIデザイン会社Goodpatchのチーフデザイナーを務める貫井伸隆氏。彼は招待されたデザイナーのみが参加できるコミュニティサイトDribbbleに、日本人で初めて登録を果たしたデザイナーだ。WEB業界で重要性が高まるUIデザイナー、その活躍の場の広がりについて伺った。

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▼Goodpatch代表・土屋尚史氏へのインタビューはこちら
GunosyのUIを手掛けたデザイン会社《Goodpatch》に学ぶ、デザイナーの育て方。

Goodpatchを支える日本人初の“Dribbbler”。

「Dribbble」というコミュニティサイトをご存知だろうか?

Dribbbleは、完全招待制のデザイナー向けSNS。世界中の著名なデザイナーや、Dropbox、Instagram、Evernoteなど、世界的なスタートアップのデザインチームがアカウントを持ち、自らのデザインを数多く投稿している。


Dribbble


このDribbbleに日本人として初めて招待されたのが、今回お話を伺ったGoodpatchのチーフUIデザイナー・貫井伸隆氏だ。

自らUIデザイナーとしての道を切り開いてきた“Dribbbler”に、UIデザイナーの今後のキャリアの可能性、活躍の場について話を伺った。

UIデザイナーの道を、自ら切り開いてきた。

― まず、貫井さんはどんな経歴からUIデザイナーになられたんですか?


まず印刷会社でキャリアをスタートをして、WEB部門への異動を機にマークアップエンジニアとして勤務していました。

企業で働く傍ら、ソフトウェアのUIが好きだったので、個人的に研究していたんです。当時はUIデザイナーと名乗る人はほとんどいなかったので、実際にコンタクトを取って会いに行き、UIに関する知識を深めていきました。更に個人で、海外の開発者からデザインの仕事の依頼を受けたりして、ソフトウェアデザイナーとしても活動していました。



一度仕事でもUIを手掛けてみたいと思い、あるソフトウェア会社に転職したのですが、その企業はデザインを外注していて(笑)

やはりUIデザインを専門に仕事をしてみたい、と考えていた矢先に代表の土屋に誘ってもらって、UIデザイナーとしてGoodpatchに入社しました。


― Dribbbleに参加するきっかけは何だったんですか?


もともとWEBサービスが好きでいろんなサービスを見ていたのですが、そこでDribbbleを見つけたのがきっかけですね。

憧れのデザイナーたちが作品をアップしていたので、なんとかここに自分の作品もアップできるようになりたいと、Twitterで「Dribbble Invitaion」と検索をかけて、見ず知らずのデザイナーに「招待状ください!」と、ポートフォリオと一緒にDMを送ったりして。

するとすぐに、「面白いな!良いデザインだね」って反応してくれて、無事に招待を受けられたんです。

まだクローズドβ版のような、登録者が300人くらいの小さなコミュニティでした。

UIデザイナーの活躍の場。

― WEBデザイナーの中には、UIデザイナーというキャリアに可能性を感じている方も多くいらっしゃると思います。


僕の認識では、WEBデザイナーも一種のUIデザイナーであると思うんです。つまり、UIデザイナーという枠組みの中にWEBデザイナーやソフトウェアデザイナー、プロダクトデザイナーがいると。

だから、「UIデザイナーとはこういうスキルを持った人である」と定義するのは難しいと思います。


― UIデザインという言葉が世に広く出てきたのは、WEBに留まらず、タッチデバイスが普及してきたという背景もあるのでしょうか?


UIという概念は自体は以前からありましたが、それは間違いないと思いますね。WEB・UIのデザイナーが手掛けることのできる範囲が格段に広がってきており、重要性も高まってきていると思います。


ただデザイナーとして、何を自分の専門領域とするかは単なる名乗り方の違いなのかもしれません。私の場合、GoodpatchではUIデザイナーという肩書きですが、個人での活動はヴィジュアルインターフェース&アイコンデザイナーと名乗っています。設計もやりますが、ヴィジュアルのスペシャリストということを強調したくてそういう肩書きにしているんです。

ヴィジュアルデザインの領域はWEBだけに留まりませんよね。私自身、これから挑戦してみたいのはハードウェアのデザイン。Appleの世界観はハードもソフトもどちらも手掛けているからこそ実現できているものです。それこそAppleのプロダクトデザインを長年務め、iOS7のデザインにも関わったジョナサン・アイブのように幅広く活躍できる可能性も大いにあると思います。

今後はApple以外でも、ハードウェアのUIデザインがもっと活発になってくるでしょう。

Squareなどに代表されるリーダー端末だってそうです。技術的に言えば、カード番号をカメラで読み込んで決済することだってできるはず。なのに、なぜわざわざハードウェアを使う必要があるのか?

大事なのは“触感”です。「触っている」「使っている」と実感できること。モノとして存在する端末に、クレジットカードをスワイプするとスクリーンが反応する。自分の手でモノを操作したことに対してリアクションが出る、というこの感覚が重要なんです。

重要なのは立体感覚を持てるか。

― 最後に、UIデザイナーとして重要なスキルや考え方を教えていただけますか?


WEBサイトやアプリケーションのデザインで言うと、立体感覚を持てるかどうか。フラットな画面に疑似的な奥行きをイメージできるか、だと思います。そのイメージができて初めて、質感表現などのスキルが重要になってくるのではないかと。今後はさらに、デジタルならではのエフェクトなどが重要になると思いますね。

あとは、「全てはエンドユーザーのためのデザインである」ということを忘れないこと。もしクライアントの求めるものとエンドユーザーの求めるものがズレていたら、それを正すのもUIデザイナーの仕事なのではないでしょうか。


― UIデザイナーとして、どれだけ引き出しを持てるかというのも重要になってくる?


そうですね。デザインに正解はありませんし、どうしても流行り廃りがあります。

最新の情報を常にキャッチアップして、デザインできるか。つまり、流行に乗った上でUIを設計・デザインするのか、それともわざと外してみるのか。

また、デザイナーはエンドユーザーのために、コンピュータにも気を使うべきです。コンピュータがいかに快適に動いてくれるかを考えて、設計・デザインする。画像を表示するにしても、PNGを用意するのか、それともCSS3のグラデーションを使ってブラウザに描画させるのか。どちらがコンピュータにストレスをかけないか。そこまで考えることができると、UIデザイナーとして素晴らしいと思いますね。



(おわり)


[取材・文]松尾彰大


編集 = 松尾彰大


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