2021.07.28
PM1年目で知っておきたい「UXリサーチ」の始め方|メルペイ UXリサーチャー 草野孔希【後編】

PM1年目で知っておきたい「UXリサーチ」の始め方|メルペイ UXリサーチャー 草野孔希【後編】

UXリサーチ、やってみたいけどなかなか踏み出せない...そんな悩める駆け出しPMに向けて、「UXリサーチの始め方」をご紹介。新刊『はじめてのUXリサーチ』著者であり、メルペイでUXリサーチャーとして働く草野孔希さんに解説いただきました。

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▼全2本立てでお送りいたします。
前編:数字だけでは、ユーザーを捉えられない時代へ。UXリサーチ入門
後編:PM1年目で知っておきたい「UXリサーチ」の始め方


【プロフィール】メルペイ UXリサーチャー 草野孔希(くさの・こうき)
電気通信大学大学院修士課程修了後、通信事業会社の研究所に入社し、デザイン方法論の研究および研究知見を活用したコンサルティングに従事。同時に社会人博士として慶應義塾大学院大学システムデザイン・マネジメント研究科にて博士後期課程を修了 博士(SDM学)。2018年11月にUXリサーチャーの一人目としてメルペイに入社し、UXリサーチを活用したサービスデザインに取り組む。

▼ 草野孔希さんが共同執筆した新刊『はじめてのUXリサーチ』はこちら!
2021年8月5日発売予定。現在、予約受付中です!

はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために

「一人、30分話を聞く」から始めよう

ー「UXリサーチは大事」と思ってても、なかなか実践できない...そんなPMもたくさんいると思います。最初の一歩を踏み出すには、どうするとよいのでしょう?

業務が忙しくてなかなか時間が取れなかったり、予算がなかったり...UXリサーチを始められない理由は、きっといろいろありますよね。

でも、じつはそんなにハードルを高く感じる必要は全然なくて。まずは「一人のユーザーに30分話を聞いてみる」でいいと思うんです。たった30分、されど30分。得られる気づきは、きっとたくさんあるはずです。

いまの時代、スマホひとつで誰とでもすぐに繋がれますよね。Zoomもあるし、LINEもある。小さく始めることから最初の一歩を踏み出していきましょう。

ただ、UXリサーチはとても奥の深い分野です。学べば学ぶほど、活かせることがたくさんあります。そのことはきちんと心得ておいたほうがいいと思います。

「UXリサーチ」という言葉はいったん封印。

ー  いざUXリサーチしよう!と思っても、上司や同僚などステークホルダーに理解を得てもらわないといけないですよね...?

上司や同僚から理解を得るためには、「UXリサーチ」という言葉を使わないほうがいい時もあります。

いきなり「UXリサーチをやりたいです!稼働を取ります!」といわれても、「いやいや、ちょっとまって...!」となりますよね。なぜ稼働を取る必要があるのか、どのくらいの予算、工数がかかるのかと、どんどんコミュニケーションコストが上がっていきます。

たとえば、「ユーザー理解を深めたいので、ミーティングの時間で使って、ユーザーの話聞いてきます!」とか。「UXリサーチ」という言葉を封印し、目的とセットで伝えると理解を得やすいです。

あと、「UXリサーチはお金がかかるもの」というイメージをもってる方もいますが、予算をかけずに行う方法はたくさんあります。

たとえば、家族や友人にサービスをつかってもらって感想を聞くこともできますし、SNSで「こんな方いませんか?」と募集をかけるのもひとつです。予算を新たに確保せずとも、まずは自分の手の届く範囲ではじめてみましょう。

一回きりで終わらせず、継続すること

ー  UXリサーチを始めるまでのハードル、だいぶ下げられた気がします。

最初から肩に力を入れてはじめてしまうと、次のリサーチをするときに腰が重くなっちゃって、続けられないことも起こりがちです。

変化の激しい時代において、お客さまの状況もニーズも刻一刻と変化しています。だからこそ、UXリサーチも一回きりで終わらせず、継続することがとても重要です。

たとえば、メルペイが事業ドメインにしているスマホ決済の領域も、この数年で状況が大きく変化しています。3年前まではQRコード決済を使っている人が少なかったけれど、いまはめちゃくちゃ増えていますよね。それなのに、いま「3年前のデータ」をそのまま活用していては、正しい意思決定につながりません。

つまり、UXリサーチを続けないと分からないことがたくさんあります。長い道のりだと捉えて、あんまり気張らずに続けられることが大切だと思います。

UXリサーチの結果を「良し悪し」で判断しない

ー  はじめてUXリサーチを実践するときには、どんなことに心がけておくことが大事ですか?

まず、UXリサーチを「テスト」だと思わないことです。

ユーザーインタビューを実施して陥りがちなのは、「想定していた反応がもらえず、全然ダメだった」と捉えてしまうこと。それだと、辛い気持ちになりますし、UXリサーチを続けるのがしんどくなっちゃいますよね。

UXリサーチで聞けたこと、見えてきたことを、「良し悪し」で判断するのではなく、「今回のリサーチから何が学べる?」と発想していく。

「ああ、お客さまってこういう人なんだ」とわかること自体が大きな学び。ポジティブな反応がもらえなくても、「コストをかけずに直せる方法があるかもしれないから調べてみよう」とか、「ここはスムーズに操作してもらえててよかったよね」とか、チームの中に新たな気づきが生まれたり、次につながるディスカッションができるようになります。

そういう感覚を持てると、UXリサーチに対して「ワクワクする」と思うんですよね。「お客さまのこと知るのって楽しい。だから、もっと学びを得るにはどうしたらいいんだろう?」って、UXリサーチについてより詳しくなりたくなるはずです。

リサーチ自体も、最初から完璧にできる必要は全くありません。むしろ、「リサーチを完璧にすること自体、ほぼ不可能」だと私は捉えています。私自身、毎回何かしら失敗をします。でも、それでも学べることっていっぱいあるんですよね。

ひとつでも学びが得られたら、前進できています。完璧にリサーチができなくても、すぐにサービスに活かせる結果が得られなくても、のちに得られた学びが活かされることが必ずあります。

データを真摯に取り扱う

ー  せっかくUXリサーチしたんだから、なにかしらの形で活かさなくちゃ...!と思いこんじゃってたかもしれません。学びにフォーカスするスタンスが大事ですね。

UXリサーチの結果と向き合うときに、もうひとつとても大切なことがあります。「ユーザーから得られたデータを真摯に取り扱う」というスタンスです。

都合のよい解釈をしたり、恣意的にデータを取り扱ったりすることはカンタンにできてしまいます。量的データも、質的データも、得やすい時代です。さきほどもいった通り、UXリサーチを小さくはじめることもできます。

でも、データの先には「ユーザー」がいるのを忘れてしまっては、いくらデータがあっても効果的な学びは得られないでしょう。

UXリサーチという手段をどのくらい真摯に取り扱えているのか。

ユーザーからいただいたデータに対して、変な思い込みをしていないか。

UXリサーチャーとして常に自分に問い続けるべきだし、一緒にUXリサーチをするメンバー、ステークホルダーに対しても、きちんと伝えるようにしましょう。

より早く、効率的にUXリサーチをするために。

ー そのほか、草野さんがUXリサーチを進める上で、重視していることはなにかありますか?

常にスピード感を重視して、リサーチを組み立てています。とくに私たちの事業は決済領域を取り扱っているので、環境変化も激しい。リサーチ結果のデリバリーの機会を逃すことは、事業にも大きく影響してしまいます。

事業として意思決定するタイミングに、判断材料となるリサーチ結果やデータを間に合わせられるかどうか。そのためのリソースを確保できるかどうかは重視しているポイントです。

ー なるほど、より早く、効率的にUXリサーチを運営していく必要があると。

そうですね。そういった意味でも、UXリサーチチームとして「どのプロジェクトに注力するのか」を決めています。メルペイではOKRを導入しているので、事業的に優先度の高いプロジェクトを選び、そのなかでもUXリサーチが効果的に発揮するものを選んでいます。

注力するべきプロジェクトが決まったら、次に「どういったUXリサーチが必要なのか」を見極めます。UXリサーチといっても調査対象も手法もさまざま。すべてをゼロから企画していては工数がかかりすぎてしまうので、「ゼロからリサーチを企画するもの」と「型をつかうもの」に分けて取り組むようにしています。たとえば、ユーザビリティテストは、実施することで確実に課題が見えてくるものです。企画に工数をかけて実行のハードルを上げるのではなく、定期的に実施できるようにリサーチの「型」をつくり、運用できるようにしています。

リサーチを簡易化する分、もちろんオーダーメイドのリサーチよりも精度が落ちてしまうので、そのリスクであったり、留意するポイントも合わせて、事前にきちんとステークホルダーとすり合わせしておくことも大事にしています。


草野孔希さんが共同執筆した新刊『はじめてのUXリサーチ』はこちら!

2021年8月5日発売予定。現在、予約受付中です!

はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために


取材 / 文 = 野村愛


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