2021.10.25
ZOZO、ヤフー、PayPay3社連携を成功させよ。前代未聞のプロジェクトを率いた田村有の新人時代

ZOZO、ヤフー、PayPay3社連携を成功させよ。前代未聞のプロジェクトを率いた田村有の新人時代

ZOZOがZホールディングスのグループ入りして以来、ZOZOの立場からグループ各社のシナジー創出を推進してきた人物が田村有さんだ。現在はPMとして数々の新規事業やプロジェクトの舵取りを担い、社内外から信頼を集める。そんな彼の今の活躍を支える、新人時代に学んだ仕事の基本姿勢とはー。

0 0 4 154

【連載】ぼくらの新人時代
「新人時代をどう過ごしていましたか?」テック業界のトップランナーたちに、こんな質問を投げかけてみる新企画がスタート。その名も、「ぼくらの新人時代」。知識もスキルも経験も、なにもない新人時代。彼ら彼女らは”何者でもない自分”とどう向き合い、いかにして自分の現状と未来を定め、どんなスタンスで学んできたのか。そこには私たちにとって重要な学びが詰まっていた。

お風呂でも競合分析。「誰にも負けない領域」をつくった新人時代

現在、ZOZOでZホールディングスグループ各社*と連携しながら、新規事業や新規プロジェクトの推進を担っている田村さんですが、新卒時代から事業をつくるといったところに強みがあったのでしょうか?

※2019年9月に、ZOZOはヤフーとの資本業務提携の締結決定を発表。2019年11月に、Zホールディングスグループの仲間入りした。

それでいうと全然そんなことはないですね。むしろ「マーケティングに興味がある、一般的な大学生」という感じでした。

今振り返ってみて思うのは、最初から仕事で活かせる自分の強みがなくてもいいということ。「この領域で誰よりも詳しくなりたい」とか、「この領域は好きだなと思える部分を見つける」ところからでもいいと思うんです。

なにかひとつでも「ここだけは負けない」と思えると自信にもつながりますし、うまくいかないときがあったとしても拠り所になるのではないかなと思います。

新卒ではディー・エヌ・エーに入社したのですが、当時、僕が配属されたマーケティング部門は、コンサルやマーケティングに強い外資系メーカーなどで活躍されてきた方がたくさんいる部署でした。当たり前ではあるのですが、自分と周りの先輩や上司の実力差はものすごくあって...。でも、ここで圧倒的に優秀な人たちと働けたことは、今考えても、すごく良かったなって思います。

彼らには前職からの経験値があり、多様な事例を知っていて、無数の引き出しを持っていました。その一方で、僕は経験もなければ、スキルもない。ミーティングをしていても、先輩や上司と対等にディスカッションもできませんでした。

入社して半年くらいの間、自分に存在価値はあるか、給料に見合うバリューを発揮できているか、よく考えていました。

当時、ソーシャルゲームのマーケットリサーチを担当していたのですが、業界動向、競合他社のニュースはもちろん、テレビにかじりついて競合ゲームのTVCMを見て自分なりに分析する。「自分の担当領域に関しては、誰よりも自分が一番詳しくなろう」とひたすらインプットするようにしていました。

帰宅後はずっとテレビをつけっぱなし(笑)初めて見るCMが流れたらスマホにメモ。ひとつも逃すまいとお風呂のときも、扉を開けて入って、CMにアンテナを立てていました。

翌日出社したときに、率先して周りの先輩や上司に「昨日○○社の新CMが流れていました。こんな構成で、主演は誰で、こう感じました。」と話していましたね。意外と新CMに気づいていない人も多くて、だんだん「最新のCMは田村が詳しい」と認知してもらえるようになって。まずは狭い領域ですが、こういったところから少しずつ信頼してもらえるようになった気がします。

+++

「そのアウトプットに責任を持ててる?」

新卒時代、とくに今でも田村さんの仕事に活きているフィードバックなどはありますか?

「アウトプットに責任を持つ」ということですね。上司はもともとコンサル出身で、分析や資料作成のレベルが素晴らしい方でした。

資料を作成して上司にチェックしてもらうときに、いろいろ質問をされても、うまく答えられないことが多々あって。「意図が説明できないってことは、責任を持ててないってことだよね」と言われていました。

細かいのですが、例えば資料の句読点、改行する位置、文字のサイズ、グラフの見せ方、すべてに意図を持てているか。実際に言われたわけではないのですが、「これは君のベストか」「本当に考え抜いたアウトプットか」と常に問うてもらっているような感覚でした。

自分の中のベストは、自分だけに閉じていて生み出せるものではありません。毎回資料をつくるときは、ゼロからつくらず、先輩がつくった過去の資料を探して、クオリティをそろえるように心がけていました。自分の資料と横に並べながら、いったん先輩の資料をトレースする。その上で、自分ならではの付加価値をのせていくようにしていました。

このときに教えてもらった、アウトプットに対して責任を持つ姿勢は、いまでもあらゆる場面に活きています。

ZOZOグループにBizDevとして転職。初の事業の立ち上げに奮闘

マーケターとしてのキャリアを重ねた後、27歳のときに新規事業の開発担当としてZOZOグループに転職したと伺いました。その理由とは?

「事業をつくる経験」がしたかった、というのが大きいですね。ですので、職種としても、マーケターからBizDevになって。社会人6年目、27歳の時にキャリアチェンジをしました。

基本的にマーケターは、事業やサービスとユーザーの間に立って、橋渡しをする役割だと捉えているのですが、ユーザーの声や反応を見ながら「もっとサービスをこうしたいな」「事業をこうしていきたいな」と思う機会が積み重なって。「自ら事業をつくることにチャレンジしてみたい」と思ったことがキャリアチェンジの一番のきっかけです。

転職後はどういった仕事を?

入社後はまず、いわゆる「広告事業」の立ち上げを担うことになりました。まだ、なにも形になっていない状態だったので、実際にどう進めていくのか、全く決まっていないところから関わることができて、すごく勉強になりました。

僕自身、はじめての事業立ち上げなので、本当に右も左もわからない状態で...。社内外問わず、とにかくたくさんの方に会って、ヒアリングをすることからはじめました。

会社としていまどんなプロダクトがあるのか、広告を入れるとしたらどういう形になるのか、社内のプロダクトチームとコミュニケーションをとってキャッチアップしたり。広告事業をしている他社の方にも、いままでの人脈の中からアポを取りまくって、数十人に話を聞きにいったと思います。

時間も限られていたので、一秒でも早くキャッチアップして、一日でも早く事業を立ち上げようと思っていました。リリースが早くなれば、売上も早く立ちます。最短距離で最善の事業をつくるには、どうするべきか、常に考えて動いていました。

前職と比較したときの難しさなども?

そうですね。広告主側の立場だった時は、決まった予算のなかで、どの媒体にいくら使うのか決めることができました。一方、現在のメディア側の立場からすると広告主側の選択肢にいかに入り込めるかが重要です。つまり、どうしたら選んでいただけるのか、喜んでいただけるのか。クライアントはもちろん一社だけではないので、カスタマイズしすぎてもダメですし、できるだけたくさんのクライアントにより多くの価値を提供できる広告を模索しました。

+++

ZOZO、ヤフー、PayPay、3社連携の推進役として

とくにZOZO入社後で、自身にとって印象的だった仕事はありますか?

広告事業を立ち上げ、引き継いだ後はPM的な役割が増えていったのですが、2年目に入ってZホールディングスグループ各社と当社のグループシナジーを生み出す推進役を任せてもらって。もう少し具体的に言うと、例えば、ZOZOTOWNにPayPay決済を導入するプロジェクトを担当していました。プレッシャーも大きかったですが、声がかかってうれしかったですね。

当社としては「ZOZOTOWN」にPayPayを導入するのははじめてですし、ヤフーさんも自社のシステムを自社プロダクト以外で使うのがはじめてで。3社にとって、前代未聞のチャレンジ。

決済システムを導入することは、一見カンタンなように思えるかもしれないのですが、じつはシステム構造がとても複雑で。今回のケースだと、ユーザーのID状況によって導線を変えなくてはならず、一つひとつ整理していく必要がありました。

それに、決済はバグが発生したり、システムが落ちることが絶対に許されない重要なところ。非常に難易度の高いプロジェクトで、正直、大変な場面も多かったですね。

どうすれば、ZOZO、ヤフーさん、PayPayさんの3社連携がうまくいくか。

まず各社の描いていることや懸念点をお互いが理解するべきだと考えました。

当初は各社から約15名がオンラインで集まり、基本的には僕らがたたき台としての案を作って、それをもとに進行していきました。ただ、オンラインで15名程も集まると全員が話すのは難しい。質問や意見もなかなか出てこなかったんですよね。

このままいくと、事故が起こりかねない。早い段階で、皆さんに「一度リアルで集まり、ディスカッションしませんか?」と提案をしました。まだコロナ禍になる前だったので、集まりやすかったのも幸いでした。

当時、当社は幕張にオフィスを構えていたのですが、わざわざ皆さんに足を運んでいただいて。夕方から夜まで、時間をたっぷりととって、お互いの懸念点や疑問点を話し合う場を設けました。

今振り返ると、これをやったことが、その後のプロジェクトを前に進めていく上でとても大きかったですね。自分自身の人となりも、直接会うことでわかっていただけた気がしていて、互いに質問をしやすい関係性がつくれたのではないかと思います。

マーケターからPM、新規事業の立ち上げなど、さまざまな職種・仕事を経験してきた田村さんですが、幅を広げていく上で大切だと思うことがあれば教えて下さい。

それでいうと、一度マーケターという肩書を手放し、さまざまな新規事業やプロジェクトに携わるなかで、職種や肩書にそこまで囚われる必要はないなと思うようになったかもしれません。

ZOZOグループに入るまで自分は「マーケター」だと思って過ごしていましたし、ZOZOグループに入社した当初もこれまでの経験から「マーケティングに強みがある」と思っていました。ただ、そこに固執する必要はないのかなと。

いまは「PM」という職種ではあるのですが、事業やプロジェクトを成功に導くためのすべてが責任範囲になりますし、マーケティング戦略を考える場合もあります。

マーケターも、ある意味でPMとしての役割を担っているとも考えられますよね。予算のなかで、いかに効果的な広告戦略を立てるか、集客をしていくか。ですので、あまり肩書や職種に囚われずに、どんどん自分の責任範囲を拡げて、新しいミッションにチャレンジしていくと、おのずと自分のキャリアも広がっていくと思います。

僕の所属するグループ事業戦略本部でも、さまざまなスキル・経験を持った人が働いています。事業拡大中につき採用も募集していますので、もし興味のある方がいらっしゃいましたら、ご一緒できるとうれしいです。

+++

(おわり)

画像提供:ZOZO


取材 / 文 = 野村愛


関連記事

特集記事

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから