2022.05.25
なぜ、Miroは世界で愛される? CX責任者が語る、グローバルでヒットするプロダクトの考え方

なぜ、Miroは世界で愛される? CX責任者が語る、グローバルでヒットするプロダクトの考え方

サンフランシスコ、アムステルダム、ベルリン、ロンドン等、世界11都市に拠点を置くMiro。2022年5月に日本語版もリリースし、大きな反響が。なぜ、数あるホワイトボードツールのなかでもMiroは世界で愛されるのか? ミロ・ジャパンのカスタマーエクスペリエンス(CX)部門統括責任者、安間太郎さんにお話を伺った。

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提供しているのは、「コラボレーション」

いろいろなツールでホワイトボード機能は出てきていますが、「Miro」はとくに世界でユーザーに愛されていますよね。そのポイントとは?

ツール的な機能価値ではなく、「コラボレーションの場」という体験価値が提供できている。まずここはあると思います。

実際、2022年5月時点で世界3000万人以上にユーザーがいて、顧客満足度94%。ここ2年、グローバルで従業員数も6倍となっています。もちろんコロナ禍で進むリモートワーク/ハイブリッドワークに対するニーズ、追い風もあると思います。

もうひとつ、サービスとしての間口が広く、さらに深くも使える。ここもMiroならではの特徴かもしれません。例えば、初めて使う方でも、ほとんどマニュアルなどを読まずに多少こだわったビジュアルがすぐにつくれます。さらにプロダクトマネージャーやデザイナーなどのみなさんが使い込みたい時にも重宝する。初心者からプロまで広く使っていけるのも、Miroならではだと思います。

これは私個人が思うMiroの魅力、好きなところにもなってしまいますが(笑)愛着が湧いて思わず使いたくなる配色、ちょっとした挙動などにも配慮されていて。これも「ホワイトボード」という機能ではなく、それを活用したコラボレーションにこだわり、突き詰めるなかで生まれてきたものだと思います。

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10年以上もプロダクトを磨き続けてきたパイオニアである「Miro」。視覚的に示す無限のキャンバス、コラボレーション用ホワイトボードプラットフォームとして、世界的に存在感を高めてきた。日本にも既に50万人ほどユーザーがおり、約1年でTOPIX 100構成銘柄の50%がMiroを利用。日本語に対応したことで、より大きな反響を得ている。プランは「Free」「Team」「Business」「Enterprise」の4種類。有料プランにすることで使えるボード数や人数を増やすことができる。

ユーザーの声をすぐ反映していく開発チーム

プロダクトづくりにも何か特徴が?

そうですね。外資系のIT企業ですと、世界中にさまざまなユーザーがいるため、その声はなかなか製品に反映しづらいもの。ですが、Miroで働くメンバーたちは本当にユーザーの声をよく聞く。これまでRed Hat、セールスフォースなどで働いて来ましたが、特にMiroはユーザーファーストで開発が進む点が優れていると思います。

おもしろかったのは、私も左利きなのですが、ユーザーコミュニティ内で「左利きだとApple Pencil(iPad)でMiroが使いづらい」「操作しながら左側のメニューが手にあたってしまう」という声が出て。他の左利きユーザーから共感の声が寄せられ、すぐにメニュー位置が変更できるようになりました。まさにMiroらしいユーザーファーストだなと感じました。

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安間太郎 / Head of Customer Success & Support at Miro Japan
日商エレクトロニクス、BEAシステムズ、Red Hat Japan、セールスフォース・ジャパン(旧セールスフォース・ドットコム)などを経て、ミロ・ジャパンのカスタマーエクスペリエンス(CX)統括責任者へ。ポストセールスであるカスタマーエクスペリエンス(CX)部門(カスタマーサクセス部門とカスタマーサポート部門)の組織構築、日本でのポストセールス業務の立ち上げ、オペレーションを統括する。CX部門は、Miro社が掲げるミッション「empower teams to create the next big thing(次の大きなものを創造するチームを支援する)」のもと、Miroの価値提供を迅速に行い、顧客が次の「大きなこと」を創造する支援するよう伴走していく。趣味は海外国内旅行、ロードバイク、キャンプ、登山、ジョギング等。

可能性が眠っている市場に飛び込んでいく

これまでもRed Hat Japanやセールスフォースにて新規事業、部門立ち上げを牽引してきたと伺いました。そんな安間さんがMiroに惹かれた理由とは?

私は世の中に対し、より大きなインパクトを与えることがやりたいんですよね。とくにまだどうなるかわからないけど、可能性が眠っている市場に対し、自ら飛び込み、市場そのものを作っていく。ここにワクワクするんです。

Red Hatで働き始めた当時は、オープンソースのソリューションは「質が低い」と見られていた時代。「必ずデフォルトになる」と考えて飛び込みました。セールスフォースもクラウドで顧客情報が管理、共有されることのビジネスインパクトが日本で過小評価されるなか、部門の立ち上げを担ってきて。今まさにMiroでも似た状況がある。答えはなく、自分たち次第。何を自分が信じるか。お客様やメンバーに語り、一緒に事業をつくっていける。

5年後、振り返ってみて、コロナで大変だったけど、日本のあらゆる企業でビジュアルコラボレーションが当たり前になり、すごくクリエイティブな会議をしたり、質の高いアウトプットを出したりする。そういった世界をつくれたら最高にエキサイティングですし、モノづくり大国として日本も再興していくはず。ここを叶えたいと思い、Miroに加わりました。

また、これまでの経験から仕事で感じていた課題にもすごくフィットして。リモートによるリーダーシップで自組織が同じ方向を向く、その上で最適なソリューションがMiroだと感じたんですよね。

過去10年以上にわたって海外拠点を含む組織の立ち上げをリモートで経験してきたのですが、組織のミッションやOKR策定、個人キャリア育成、メンタリング、コーチング、リーダーシップ、心理的安全性の醸成…と、非常に難易度は高い。業界トップレベルのITスキルを持つメンバーを束ね、高い実績を出してきた自負がありますが、毎日頭を抱えながら研鑽してきました。

「ビジュアルによるコラボレーション」の必要性が、自分の痛みとしても感じていましたし、場所を選ばず、社内外で緩やかに分散したチームで働くこれからの時代はもっと求められていくはず。生産性の高いコラボレーション、迅速かつ質の高いアイデアの創造、意思決定にとって、よりMiroは欠かせないものになっていくはずです。

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「グローバルですでに実績とブランドがある。その日本事業の立ち上げに関わることはとてもおもしろい」と安間さん。「カスタマーエクスペリエンス(CX)一つとっても、国によってやるべきことが全く違う。最適解を自分たちで見つけていく。とくにMiroはPLG(Product-Led Growth)*と呼ばれる戦略を取ってきましたが、私が強みとしてきたハイタッチの部分、CX活動をハイブリッドして顧客に価値を提供していける。日本でベストプラクティスを生み出し、グローバルへと逆に展開したい。これも密かな私の野望です」*プロダクトのなかにマーケティング・営業活動を取り込み、いわばプロダクト自体がプロダクトを売る状態「Product sells itself」を目指す戦略。セールスがプロダクトを売る状態「Sales sells product」を目指す「Sales-Led Growth(SLG)」と区別する上で用いられる。

隠れた才能と出会い、伸ばしていくために

最後に伺いたいのですが、安間さんご自身における仕事のモチベーション、大切にしていることとは?

私は、自分のまわりの人が活躍し、成功していくのを見るのが好きなんです。これまで若くて有能な方、ポテンシャルのある方に出会ってきました。そういった人たちをどうにか成功させたい。これはお客様に対しても同じ。いかにポテンシャルを最大限引き出していけるか。素晴らしいリーダーシップのある人がいれば、その人のもとに素晴らしい人たちが集まり、素晴らしい仕事が生まれていく。そうすれば、世の中が良くなっていくはず。その人も、まわりの人も幸福になりますし、会社も幸福になる。そんな思いを叶えていくのが私にとっての仕事なのかなと思います。

じつは過去のチームで、とある若いイタリア人のエンジニアを東京で採用したことがあって。イタリア現地で日本語を学び、ITの業務経験ゼロで日本に来てフロントエンドのエンジニアをやっていました。ただ、私が当時探していたのは、クラウド製品のサポートエンジニア。バックエンドに強い人しか採用していませんでした。そこに彼が応募してきたわけです。

誰がどう見てもスキルだけなら不採用。ですが、彼は「本気でクラウドがやりたい」という熱意がすごくて。聞けば、わずか数ヶ月で日本語をマスターしたと。

日本語を学び、来日して働き始めるまでの期間が異常に短かった。それだけ学習意欲が高いということ。なので、私はまわりの大反対を押し切って、「この人は必ず伸びるから大丈夫です」とポテンシャルを信じて採用しました。メンターをつけ、学習進捗を聞いて、フォローし続けた。すると、本当に半年くらいでどんどん頭角を現し、逸材に成長してくれて。チームの中でいきいきと働く彼を見て「どこででも活躍していけるな」と感慨深くなりました。これは私にとってすごく貴重な経験でした。

今持っている経験、スキルはもちろん重要です。ただ、それ以上に「これからの成長」に全力で投資したい。まわりに反対されても「見てろよ」と(笑)そういった隠れた才能と出会い、伸ばしていく。これも役割だと思っていますし、そういった人を一人でも多く輩出していくことは、私なりの志ですし、仕事を通じて実現したいことですね。


取材 / 編集 = 白石勝也


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