1300万DLを超え、グローバルフィールドで躍進を遂げるメルカリを影で支えるのはカスタマーサポート(CS)だった。ローンチタイミングからCSの内製を進めてきた背景、CSが担う役割からメルカリのUXに対する考え方に迫ります。
累計DL数が1300万を超え、加速度的な成長を遂げているメルカリ。国内フリマアプリでもトップシェアを誇るサービスの原動力は、なにも「アプリ」内のコミュニケーションだけではない。
今回フォーカスを当てるのは、カスタマーサポート(以下CS)。
アウトソースする企業も少なくない中、メルカリはスタートアップながら、創業期から一貫して自社でカスタマーサポートチームを組成拡充。いまでは東京/仙台の2拠点で80名を超えるメンバーで運用してるという。
お話を伺ったのは、メルカリを支える、もう一人の山田氏、CSグループマネージャーの山田和弘さん。インタビューから見えてきたのは、CSが担う重要な役割、そしてプロダクトが顧客に提供するUXの深さと本質だった。
【Profile】
山田 和弘 Kazuhiro Yamada
株式会社ミクシィのカスタマーサポート部門の責任者として約7年間従事。ソーシャルゲーム業界団体・JASGAの立ち上げ、青少年保護に関わるサービス健全化施策を実施。2014年5月に株式会社メルカリに参画。カスタマーサポート部門のマネージャーに就任し、仙台拠点の立ち上げやカスタマーサポートの業務設計、メンバーの採用・育成を担う。
― アウトソースに出す企業も少なくない中、メルカリはどうしてCSを内製するんでしょうか?
「お客様のリアルな声を自分たちで聞きたい」ということが一番大きいです。メルカリではお客様の反応を見ながらプロダクトの課題を洗い出し、改善を進めています。創業者で代表の山田や経営陣は、サービスの急速な拡大に対して柔軟に対応するためにも、CSの内製化は必須だという意識を、サービスローンチ当初から持っていました。
― 山田さんのメルカリ入社の経緯は?
代表の山田や経営陣から、メルカリの拡大に向けた話、その中でのCSの位置づけについて話を聞いたのが最初のきっかけですね。
メルカリ内のやり取りって、mixi.jpのコミュニティに近く、お客様同士のコミュニケーションが活発なんです。CtoCサービスのメルカリは、モノやお金が動くサービスなので、どれだけスムーズにお取引きできるか、お客様間でやりとりできるかが非常に重要なんですね。そこをアシストし、安心感を提供していくようなCSに新しくチャレンジできることがとても魅力的でした。
― メルカリではメンバーの中でもCSが最も多いそうですね。一方で、特にアプリを手掛けるスタートアップでは「まずは"プロダクト”に集中」と言って、開発にフォーカスを当て続ける事が多い印象です。
メルカリもそうだと思います。ただ、そのプロセスの中に「お客様の意見を取り入れる」というのが、メルカリの場合は強いと思っていて。
ただお客様の声を吸い上げるだけでなく、その声をプロダクト側のメンバーに伝え、フラットに議論できる、そんな組織を作るための内製です。
― CSがどんな役割を担い、お仕事をしているのか、イメージがつかない方もいらっしゃると思います。メンバーの方はどんなことをやられているんですか?
基本的な役割は2つあります。一つはお客様からのお問い合わせに対して、正確に、スムーズに対応すること。本当に多種多様なお問い合わせをいただくのですが、安心してサービスを使っていただくために一つ一つ対応しています。
例えばこれらには、ブランド権利者との連携なども含まれます。お問い合わせを頂いてから動き出すのでは非常に遅いですし、お客様を不安にさせてしまうため、ブランドを持つ企業や権利団体などと業務的な連携を常にとっています。
もう一つは、先ほどもお伝えしたプロダクトへのフィードバックですね。例えば、CSメンバーが毎日書く日報には、その日のお問い合わせで気になる内容、多かった内容が報告されています。それを経営陣やプロデューサーがすべて目を通しています。それだけお客様の声を大事にしている証拠かなと思っています。
エンジニアもCSのメンバーによく話しかけてますね。メルカリのエンジニアは結構年齢層が高めなので、ただ若いメンバーと話したいだけなのかもしれませんが(笑)
僕もよく「最近どんなことでお客様は困ってるの?」「問い合わせ件数は、取り引き数に対してどのくらい?」という質問をエンジニアやプロデューサーたちから受けます。彼らはアプリ上の数字については常日頃から見ていますが、それに加えて生の声をやっぱり強く意識していますね。
― そこまでカスタマーの声、CSを重要視できる背景には、メンバー間で共通の考え方なんかがあるんじゃないかと思います。
メルカリでは、カスタマーサポートでの体験もUXの一つだと強く認識しています。
単にお問い合わせに回答するだけではなく、本質的な課題の解決につなげる。こうした考えを経営陣、メンバーが共通認識として持っていたのも、私がメルカリに惹かれた理由の一つでもあります。
例えば配送に関するご要望は多いのですが、アプリの使い方だけではなく、こういったご要望にも応えていけたら、より素晴らしい体験を提供できるサービスになるんじゃないかと。
― なるほど。まさに先日発表されたヤマト運輸との提携なんかもそうですよね。
※フリマアプリ「メルカリ」とヤマト運輸の提携サービスの開始について
そうですね。メルカリのコアバリューの一つに『Go Bold – 大胆にやろう』というものがあります。スタートアップがいきなり仙台にCSの拠点を構えるようなチャレンジが出来るのも、こうした考えが根底にあるからなのだと思います。
メルカリのミッションは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」です。いまはフリマアプリだけですが、将来的に全く新しい分野のサービスをローンチした時に「メルカリだったら安心だね」とみなさんに言ってもらう礎に、今後CSがなれるようにしていければと思います。
― UXの捉え方からCSの役割、プロダクトに寄与するポイントまで、とても参考になるお話でした。ありがとうございました!
[取材・文] 松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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