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技術の幅が問われる時代、生き残るのはフルスタックエンジニア―nanapi CTO和田修一氏に聞く

2013-08-20

技術の幅が問われる時代、生き残るのはフルスタックエンジニア―nanapi CTO和田修一氏に聞く

経営的な視点から技術部門の文化・組織づくりを行なっているというnanapi CTOの和田修一さん。注目のスタートアップを率いるCTOは、どんなエンジニアに可能性を感じているのだろうか?「必殺技を持つ」「深さより幅で勝負する」など、エンジニアのキャリア形成に対して具体的なアドバイスをいただいた。

▼《nanapi》CTO 和田修一氏へのインタビュー第1弾
エンジニアである前に、仕事のできる人であれ―nanapi 和田修一氏のCTO論。

nanapi CTOが、いま一緒に仕事がしたいエンジニアとは。

日本のスタートアップの中でも、高い注目度を誇るnanapi。そのプロダクト開発を指揮するCTOの和田修一さんは、自らを「役員型CTO」と定義。経営的な視点から、技術部門の組織づくりを行なっており、自身の最も重要な責務の一つとして「エンジニアの採用」を挙げている。

その和田さんが考える、優秀なエンジニアの条件とは、一体どんなものなのだろうか?またこれからのエンジニアのキャリアを、どう考えているのだろうか?

エンジニアとしての“必殺技”を持っているか?

― 和田さんご自身も、エンジニアの採用を重要視していると仰っていますよね。いま、どんなエンジニアを優秀だと感じますか?


nanapiのエンジニアの採用基準でいうと、シンプルに一言。「必殺技を持っている人」です。

何か一つ尖ったものを持っている人であれば、実際に働いている姿を明確にイメージできます。例えば最近、スマートフォンのアプリがめちゃくちゃ得意なエンジニアを採用したんですが、nanapiはこれまでスマートフォン領域にそれほど積極的に取り組んでいなかったので、その部分ですごく加速するなとか、ナレッジが貯まるなとか、はっきりと想像できるんです。


― その必殺技は、オンリーワンのものでないとダメですか?


いえ、希少性は重視していません。「これが一番得意です」と自信を持って言えるものであれば良い。「どの分野でも80点以上出せます」というのも、立派な必殺技だと思います。


― スキル面以外ではいかがでしょう?


会社のビジョンに共感してくれるか、という点はすごく意識しています。弊社の場合、「技術だけをやっていたい」という方はあまりいないんですよね。nanapiというサービスを手がけたい、世の中の役に立つサービスを作りたい、という気持ちをもっている方がほとんどです。


― なるほど、技術志向というより、サービス志向のエンジニアだと。そういったタイプの方に共通するものとは?


うーん、そこまで明確な共通点は感じ取ることはできていないですが、サービスを作りたいという思いから結果的に幅広い興味を持っている方は多いですね。技術にかぎらず、デザインに関わることやUI/UXについてだったり。また、「WEB業界は今後こうなっていくだろう」といった業界の未来像を描くようなメンバーもいたりします。

あと優秀なエンジニア全般に共通することですが、やっぱり何らかのアウトプットを出している方はいいですね。Githubでソースコードを公開していたり、技術系のブログを書いていたり。エディタの設定ファイル1つをとっても、個性がでる。見ているだけでも面白いですよ。


和田さん


― ここでいうアウトプットとは、仕事以外でのアウトプットでしょうか?


極端な話、会社における仕事とは「やらなきゃいけないもの」に過ぎません。それ以外でなにかやっているというのは、そこに強い思い入れがある証だと思っています。

nanapiのメンバーって、みんなWEBが好き、アプリが好き、ガジェットが好き、という人間ばかりなんですよ。新しいアプリがあったらみんなで試してみますし、良いサービスがあれば実際に使ってみます。そのモチベーションは、仕事というよりも趣味として、普段の雑談の中から湧き出てくるものなんですね。

そのような環境を楽しめる人こそ、nanapiのようなWEBサービス会社はフィットするんじゃないかなと思っています。


― そうしたマインドにシフトするには、まず何を意識すべきでしょう?


「なぜエンジニアの仕事をやっているのか」に、立ち返るのが一番いいと思います。「何をやりたいか」よりもう一つ先の「どういったことをしている人になりたいか」を考えてほしいです。

エンジニアの場合、目の前のこの言語を覚えようとか、この技術を身につけようとか、そういった思考になってしまいがちです。でも、それは各論にすぎないんですよね。

抽象的な言い方になってしまいますが、もう少し先の視点を持って、本質的なところを見つめることが、この先の長いキャリアを考える上では一番いいと思っています。

実際に私が後輩のキャリア相談にのる際は、「10年後にどうなっていたいのか」を尋ねるようにしています。どんな小さな話でもいいんです。

こんなポジションでこれくらい部下がほしいというような組織におけるイメージでもいいですし、何らかのオープンソースで活躍するようなエンジニアになりたいとか、こんな家に住んでこんな生活していたいというプライベートなイメージでもいい。

こうした将来のイメージさえあれば、そこからブレイクダウンしていくことで、いま何をするべきかは必ず見えてきます。目の前のことよりもっと視点を広く、高くして考えることで、次にやるべきことが見えてくるんじゃないかと思います。

目指すは、複数領域をカバーする“フルスタックエンジニア”。

― 一方で、これから技術がコモディティ化していくとも言われています。クラウドソーシング等の登場もあって、エンジニア間の競争も激化していく。そこで、エンジニアとして生き残っていくには、何が必要でしょう?


ひとつひとつのスキルの“深さ”よりも“幅”で勝負するほうが、これからは絶対にレバレッジがきくだろうと思っています。

ただプログラムがかけますというだけでは戦うことが難しい世界になってきています。プログラムは複数言語はかける前提で、サーバ・インフラ周りの知識はあって当然ですし、DBもわからないといけない。その上で技術のトレンドも追わないといけないですし、とにかくやらなければいけない幅が広い。最近ではこれに加えて、サイト設計ができて、デザインやUI/UXに関するスキルを求められたりします。

WEBサイトの設計は、ディレクション業務からエンジニアリング、デザインまで境界がどんどんと薄くなってきています。そこにおける幅を広げていくというのが、最もわかりやすい価値の出し方かなと思います。そのうえで「必殺技」があると、すごい価値を生みだせるエンジニアなんじゃないかなと。

最近は日本でも「フルスタックエンジニア」という言葉が言われるようになりました。未だにバズワード的なものではありますが、“幅広く”という点が重視されている証拠ですね。


― 日本にフルスタックエンジニアが増えているような実感はありますか?


昔よりは増えてきているとは思いますが、まだまだ少ないと思います。ただ、スタートアップにいる人に関して言うと、フルスタックに限りなく近い人が多いかもしれないですね。nanapiのエンジニアも、サーバサイドのプログラミングができる上で、サーバ運用からJavaScriptなどのフロントエンドの技術だけでなく、スマートフォンのネイティブアプリ開発までいけるメンバーが揃っています。社内でつかう管理画面レベルであれば、ディレクション、デザイン、マークアップもすべてエンジニアです。

またデザイナーもフルスタック側に徐々に近づいていますねコマンドラインからgitの操作は当然のこと、コマンドを使った簡単なファイル操作までやっています。また最近では、プログラミングとかも積極的に学んでいます。

結局のところ、単純に良い物をつくりたいから覚えている人が多いですね。何かをつくって1000万人につかってもらいたいと思ったら、とにかく幅広い知識を理解しないといけない。やらざるを得ないんです。

ただ、これは企業の採用目線での話ではありません。あくまでエンジニアが目指すべき理想像の話であって、採用側が「フルスタックエンジニアを募集」なんてやってしまうのは良くないですね。そのあたりの採用活動に関しては、我々も気をつけるようにしています。


和田さん

エンジニア最大のリスクは、自分を特定の企業に最適化してしまうこと。

― スキルの幅を広げようとする場合、やはりベンチャーのように必然的にさまざまな役割が求められる会社を選ぶほうがいいのでしょうか?


そうですね、仕事の幅という意味だとベンチャーほう方が追求できる環境があると思います。逆に、業務の深さだけにフォーカスするのであれば、大企業のほうがいいかもしれません。

あくまで一般論ですが、大企業の場合だと仕事は細分化され、どんどんその環境に最適化されていきます。具体的に言うと、「社内ツールを使った仕事のスピードがあがる」といったことです。こうなってしまうと、用意された枠の中でしかパフォーマンスを発揮できなくなる恐れがあります。


― 大企業で働くリスク、ということですね。


もちろんベンチャーにも、ベンチャーだからこその大変なことやリスクはあります。ただ、大企業で定年まで勤めるという選択肢は、これからの時代、どんどん現実的なものではなくなってくるでしょう。

となると、20年間社内ツールを使った仕事に最適化された人間が、仮に外に出たとして、そこで何ができるのか。このリスクは、どうしても出てきますよね。

わかりやすい構図にするために大企業vsベンチャーという軸でお話ししていますが、もちろん、実際のところはこんなに単純な話ではなかったりします。重要なのは、会社の人材育成観なんです。それよって一番左右される部分なので。

メンバーを会社に最適化させるタイプか、それとも汎用的な人材に育てるタイプか。大企業でも後者のようなタイプもあるし、ベンチャーで前者のタイプもあるでしょう。

nanapiでは、汎用的に活躍できる人材ということを意識しています。この環境だけでなく、他の会社でも通用する一流の社会人になってほしい。このコンセプトは、規模がどれだけ大きくなっても変わらずにやっていきたいですね。


― 就業先の企業規模だけでなく人材育成観を知るべきだという視点は、今後のキャリアを考える上でとても具体的なヒントになりますね。今日は貴重なお話をありがとうございました!


(おわり)


[取材・文]上田恭平 [撮影]梁取義宣



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