人々の行動を変えた結果がイノベーションであり、それを生み出す土壌となるのが「コンプリートコントロール」というコンセプトだと語るのは、オーマイグラス社の六人部さんと白土さん。自社の強みをエンジニアリングに置くことで生まれる可能性、そして今エンジニアに求められる+αの能力について伺った。
▼《オーマイグラス》六人部生馬氏・白土慧氏へのインタビュー第1弾
すべてがテクノロジードリブンで動く組織を―オーマイグラス六人部生馬氏・白土慧氏インタビュー
― オーマイグラス社はサイトの開発から、バイイング、物流、サポートまで自社で手がけられている範囲がとても広いですね。
六人部:
はい。eコマースというモデル上、多くのWEBベンチャーとは異なる組織になっています。
― 外注するという選択を採らない理由は?
白土:
もちろん、いろいろな会社や外部の方々に協力を頂き、一部をお手伝いしていただいてサービスが成り立ってはいますが、僕らとしては「コンプリートコントロール」という概念を大切にしています。文字通り“自社のプロダクトを完全にコントロールしていこう”ということです。
今でこそ当社サービス「Oh My Glasses(以下OMG)」はほぼフルスクラッチで開発していますが、実はサービスリリース当初は、ECのパッケージシステムを使っていました。当時は社内にエンジニアがいない状況で、六人部が手探りでプログラミングをしたりしつつ、何とかやっていたんですね。
そこに僕が関わるようになって、少しシステムを触ってみました。パッケージは汎用的で、いろいろな機能が整っているのですが、メガネという商材にマッチさせようとすると、複雑なシステムを、さらに複雑にすることになってしまう。これは思い通りにならなさそうだと判断し、オープンソースを使ってほぼスクラッチで開発し直しました。そして、この体制を構築できたことで、OMGの強みをテクノロジーに置くことができるようになったんです。
六人部:
うちの場合、自社のビジネスにおけるコアの機能については内製化していることもあり、“できない”ということが少ないんですよね。ECサイトをやっている企業だと、パッケージシステムの仕様や外注を使っているせいで改善のスピードがどうしても遅くなってしまうそうなのですが、僕らはデータを見ながら、素早く、そして頻繁に改善することができます。スタートアップはこの仮説検証のサイクルをどれだけ早く回せるかが勝負です。そのために、基本的には、全部を自分たちでコントロールしていきたいと思っています。そこが会社としての強みであり、経営サイドの人間としては心強さでもあります。
白土:
“できない”ではなく、適宜手を加えて、自分たちが向かう方向に自らエンジニアリングする。これはエンジニアに限ったことではなく、物流やバイイングなど、他の部署に関わるメンバーも同じ考えです。
六人部:
eコマースで上手くいっていたり、収益性の高い企業は、社内にコアのファンクションを抱えて事業展開を行なっているところが多いと思います。楽天やAmazon、ZOZOさんが突き抜けているのは、そのビジネスモデルはさることながら、コアのファンクションを内製化している点が大きいと思います。だからこそ、OMGとしても自社のビジネスにおけるコアのファンクションは内製化し、“コンプリートコントロール”という概念を実現しています。我々のビジネスの場合、それが素晴らしいプロダクトを生み出すために必要不可欠なことだと考えています。
― では、イノベーティブな企業で活躍できるエンジニアとは?
六人部:
シリコンバレーの投資会社 Andreessen Horowitzの方も言っていますが、ベンチャーの経営者は、技術的なバックグラウンドを持っているほうがうまくいく可能性が高いと言われます。技術バックグラウンドで、プロダクトに加えて経営も分かっている人のほうが大成功する企業を生み出す可能性が高いということです。
僕は、エンジニアにも同じことが言えると思います。ただコードを書けるだけで、それを事業の価値に貢献していくことは正直難しい時代です。求められているのは、”エンジニア+α”の能力を備えた人材、自分の技術でビジネス上の問題を解決するための“+α”を持った人材なんです。そしてそれこそが、イノベーションを生む人材だと言えるとも思います。
当社に関してもそうですね。エンジニアそれぞれが身につけている能力は、技術だけにとどまりません。ちなみに白土は、ECの物流の仕組みに関して、世の中のエンジニアの中でもトップクラスに理解している一人だと思います。
物流の専門家だと、たしかに物流のことには詳しいのでしょうが、これまでの成功事例を最適解だと考えてしまい、我々のようなこの世にない新しいプロダクトを創っている場合は上手くフィットしない可能性もあります。全く新しいものを創るときにテクノロジーを理解しているということが、非常に重要なポイントになるんです。
― そうした“+α”は、どのように身につけるものなのでしょうか?
六人部:
自身で学ぶ姿勢を持つことは大前提ですね。僕自身がOMGで心がけていることは、その分野におけるプロフェッショナルとの接点や学びの機会をメンバーに提供することです。
開発やUX、マーケティングからバイイング、物流、商品企画など、各分野におけるトップクラスの専門家を連れてきて、アドバイザーになっていただき、エンジニアに限らず全社員が率先して学べる機会を作るようにしています。
― 今後の成長エンジンとなるエンジニアの採用にも積極的だそうですね。
六人部:
もちろんです。ここは太字でお願いしたいくらいです(笑)
白土:
実際にいろいろなエンジニアの方とお会いする中で改めて感じているのは、職務経歴書だけでエンジニアの能力を判断することはできない、ということです。結局、その人がどれくらい価値を発揮するかどうかは、その人のアウトプットでしか測れないんですよね。だから、とにかく自分のアウトプットを作っていくべきだと思います。
六人部:
今の時代、GitHubをはじめ、エンジニアとしての能力を外部にアピールできるツールやサービスはいくらでもあります。ブログでもいいし、デザイナーならdribbbleなどのサイトを利用するだけでも全く印象が異なります。
白土:
僕自身、自分が優秀かどうか、自分自身では分かっていない人こそ、本当は評価されるべきエンジニアである可能性は高いと思っていて。そんな人こそ、GitHubなどでアウトプットすることで正しい評価を得られるかもしれない。逆に、ある会社の中で優秀とされる人は、あくまでその会社での評価ということなのかもしれない。それを正しく知るためにも、拙いものだとしても何かしら外に出してみたほうがいいと思いますね。そうするとエンジニアとして気づけることもたくさんあるし、新たな成長機会を得ることにもなると思います。
― エンジニアのキャリア構築という点でも参考になるお話ですね。本日はありがとうございました!
(おわり)
[取材]上田恭平 [文]松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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