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ユーザーの行動をコードに変えて|モイ!ツイキャス・赤松洋介に学ぶヒットサービスの要件[前編]

2013-12-06

ユーザーの行動をコードに変えて|モイ!ツイキャス・赤松洋介に学ぶヒットサービスの要件[前編]

400万人を超えるユーザーを獲得しているライブストリーミングサービス《ツイキャス》。このサービスを生み出した赤松洋介氏へのインタビュー第1弾。彼がサービスを開発・運営する上で意識していることとは?

数百万人が利用するサービスを生み出したエンジニア

Twicas_SC

《ツイキャス(TwitCasting)》というサービスをご存知だろうか?誰でも無料で、PCやスマートフォンからライブ配信ができるこのライブストリーミングサービスは、既に400万人を超えるユーザーを獲得している。驚くべきポイントはそのユーザー層だ。国内では、大学生の約半数が使っているというほど、若者に圧倒的な支持を受け、ブラジルや東南アジア諸国でも数多くのユーザーを獲得しているという。

このサービスを生み出したのはモイ株式会社・代表の赤松洋介氏。実はこれまでに、RSSフィードの「人気度」と「更新頻度」を段階表示する『feed meter』を手掛けた人物でもある。

これらはどんな経緯から生まれたものなのか?赤松さんへのロングインタビュー第一弾。まずは彼の手掛けたヒットサービスにみる、その勘所について伺った。


モイ株式会社代表 赤松洋介さん


エンジニアは言語による制限を自ら設けない方がいい?

― ツイキャスのユーザーが400万人を突破したそうですね!おめでとうございます!赤松さんはツイキャス以前にも、個人でサービスを開発されてますよね。最初に作ったサービスは一体どのようなものだったのでしょうか?


最初に開発したのは、サイボウズに在籍していた頃ですね。当時、サイボウズは急激に成長していて、自分はほとんどの時間をプロジェクトとエンジニアのマネジメントに時間を充ており、開発の現場から離れていたんです。そこで、「そろそろ手を動かしたい」という思いが再燃し、こっそり立ち上げたのが、MyRSS.jp(サービス終了)とfeed meterです。

MyRSS.jpは鳴かず飛ばずではあったんですが、かなりマニア向けのサービスでした。feed meterは公開して3日で100万アクセスを頂いて。朝起きたら「さくらインターネット」からアクセス過多のメールがくるほど(笑)。はるかに予想を越えた方に利用していただきました。


― まだソーシャルもない時代としては、かなりインパクトですね。どうしてfeed meterを開発されたんですか?


正直にお答えすると、自分が不便だなと思ってることを解決するためのプロダクトを作っただけなんです。そして、手元に残すだけではなく、ネット上に公開した。

どんなものを作るかも大事ですが、そもそも『公開すること』に意味があると思います。エンジニアにとって、作るのは簡単なんですよ。けれど、作っても公開しないものが多いんですね。


― 公開しない理由は何なんでしょうか?


完成までの最後の数%、例えばデザインやインターフェースに苦手意識があるエンジニアが多い印象です。そのため自信を持って公開できないのではないでしょうか。

私の場合、プロダクトを作る際、サービスの完成形・デザインまで考えてから、やっとコーディングを始めます。公開することを前提にしてサービス開発すると、その質も違ってくるのではないかと思います。


― なるほど。少し話が前後しますが、プロダクト・サービスを「作る」ことは、“簡単”なんですか?


簡単というのは語弊があるかもしれませんね(笑)。しかし、エンジニアならば、作れるかどうかではなく、どうやったら作れるかを考えるべき。言語に関してもそう。どうして○○エンジニアと自分の使用言語を区切るのかよくわかりません。

確かに言語を深堀りして、その分野でスペシャリストを目指すスタイルは大いに有り得ると思います。しかし、その副作用で自分の殻を設定してしまうのは非常にもったいない気がします。

少なくとも自分でサービスを作るならば、それに合わせて言語を選択し、習得すべきだと思います。私自身、まだ勉強を続けていますよ。ツイキャスのiPhoneアプリは、私にとって2本目のiOSアプリの開発。アンドロイド版は初めての開発でした。当然、どちらも公開しています。開発言語にかぎらず、表現に関しても、ActionScriptを超初心者がみる参考書片手に開発合宿で作ったものをそのまま実装して公開しています。

400万ユーザーを獲得したツイキャスはいかにして生まれたか?

― ツイキャスについて、改めて伺いたいと思います。ツイキャスも赤松さんが感じる不便さから生まれたのでしょうか?


いえ。それが特に何かしらの意図があったわけではなく「こんなものがあったら面白いな」という動機でなんです(笑)それまで、いろんなサービスを作ってきた中でわかったことは、「どんなサービスでも簡単に真似されちゃう」ということなんですよね。WEBサービスというのはもともと参入障壁が低いものなので、一度「Joker Racer」というラジコンにLinuxのボードを載せてウェブカメラ積んで、インターネットで操作できるサービスを作ったんです。

これだったらハードウェアとソフトウェアが融合しているし、参入障壁が高いだろと。で、それは別会社を作ってやったんですが、実はあまりうまくいかなくてやめてしまったんです。でもせっかく映像配信の技術やプログラムしたものを、ココで終わらせるのはあまりにももったいないと。その時、たまたまiPhoneを初めて手にしたんですが、カメラも無線も積んでると。これ全部、今までラジコンでやってたことがiPhoneでできると思ったんです。そこからシステムをアプリに移植してできたのがツイキャスです。

だから細かなビジネスモデルや成長モデルの計画もなく。とにかくシンプルに、まずは小さく作って。


― ツイキャスは既に赤松さんが独立された後のサービスですよね。にも関わらず、ビジネスモデルを考えずにサービスを立ち上げたんですか?


正直、ここまで多くの方に使っていただけるサービスになるとは思っていなかった、ということもあります。でも結局のところ、「儲かるもの」って他の人が必ずやってるんです。技術の世界って、PC一台でも戦えるからこそ、圧倒的低コストで戦えるのが楽しく、痛快さを覚えるところなんです。確実性を求めればそれなりの成長しか得られないけれど、不確実性を秘めていると爆発的な成長が可能になるのではと。

ユーザーの行動をコードに変えて

― 動画配信でも競合は多かったと思います。そんな中でも勝ち残れているわけは?


3年間我慢したということでしょうか(笑)。マーケットの成熟には3年程度を見越していたので。3年後にブレークするサービスってよくありますよね。耐えただけです…。


私自身、ユーザーさんとのコミュニケーションが好きなので、ユーザーが楽しく使っていただけるサービスにすることに集中してきました。コメントや配信も随時チェックして、暴言などを吐く方は注意を促したりアカウントを停止する処置をしたり。


― それは人力で?


最初は人力だったんですが、だんだんパターンが見えてくるんです。「こんな行動をするユーザーは、だいたいこの時間の何回目の配信の時に、こんな予兆があって…」というように。そこをシステム化したり、ユーザーさんから報告が上がってくる仕組みを整えたりしてきましたね。


― 赤松さん自身、今後もツイキャスに携わり続けていくのでしょうか?


そうですね。引き続き、ツイキャスに携わっていきますが、目指しているところは早く軌道に乗せて、自分が携わらなくてもいい体制を整えることです。

これまでのサービス開発を通じて、自分は「ゼロからユーザーを集める」こと、サービスの大きさで言えば「0から100まで」くらいに成長させることが、好きだし得意だと思っているんです。

今の段階で、何かネタがあるというわけではないのですが、これからも新しいユーザーコミュニケーションを生み出せるようなサービスを生み出していきたいと思っています。


― ツイキャスの成長だけでなく、これから生み出されるサービスも楽しみにしています!


(つづく)
▼モイ株式会社・代表の赤松洋介氏へのインタビュー第2弾
先の見えるエンジニア人生を歩みたくなかった|モイ!ツイキャス・赤松洋介のキャリアレポート[後編]


[取材・文] 松尾彰大




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