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エンジニアよ、ゼネラリストなんて目指すな!―VASILY 金山裕樹のキャリア論[2]

2012-11-29

エンジニアよ、ゼネラリストなんて目指すな!―VASILY 金山裕樹のキャリア論[2]

「優秀な人材に共通するのは、情熱・自主性・地頭の3つの“J”」だと語る、VASILY代表の金山裕樹氏。さらに、エンジニアが数十年先の未来をサヴァイブしていくためには、“ぶっちぎりの技術力”が、必要になるという― 。

イケてる人材は3つの“J”を持っている ―VASILY 金山裕樹のキャリア論[1]から読む

大手企業とスタートアップとの、決定的な違い。

― 金山さんは、大手企業とスタートアップの両方を経験されていますよね。両方で求められる能力に違いは感じますか?


まったく違うと感じます。決定的に違うのは、ビジネスとして「成立させる」フェーズ。そこにくると、必要になるスキルが全然違うんです。

大企業の場合は、すでに独自の強いビジネスモデルってものがあるんですね。すごく雑な言い方をすると、“Yahoo! の強み”って「どんなページを作ったとしても、広告が入って、収益があがる」ところなんです。Yahoo! として広告がガンガンまわっているから、極論、あとは“どれだけ低コストで広告が入るようなページを量産できるか”の勝負なんです。あとは、自分がやりたいことをビジネスモデルに“どうはめるか”だけを考えればいい。

対して、スタートアップの場合は、そもそもお客さんがお金を払ってくれるのか分からないところからのスタートですから、まずはその検証からやる必要がありまよすね。この“ビジネスモデルも創造する”ところが、大企業とはかなり違うと感じます。あと、大企業だったら「部署間の関係調整力」が必須。やるって言ってもなかなか前に進まないのが大企業なので。そこを細かく説得してまわる。これって大企業だと絶対必要なスキルですが、スタートアップには必要ない。むしろ、「やるって言う前に、先に手を動かそうよ」と、そっちのほうが重要だったりします(笑)

コードは汚くていい。「アイツがいれば勝てる」と言わせろ。

― 金山さんが思う「優秀なエンジニア」について、より深くお聞きしたいのですが。


エンジニアってどうしても、“技術ばかりに目が行きがち”だと思うんです。ただどんなに美しいコードが書けて、どんなに速く動いても、それがビジネスとして成り立たなければダメだという前提は、忘れちゃいけないですよね。周りでよく聞くのも「技術を身につけること」をゴールにしちゃうパターン。今だったらRubyやっとけとか、Pythonだろとか、ある意味そんなのはどうでもよくて。

極端な話、コードがもうメチャメチャでも、動いて金が回れば正解なんですよ。「アイツの書くコードは汚いけど、アイツが入ったプロジェクトは絶対勝つよね」ってエンジニアは、絶対に呼ばれます。もう間違いない。少なくとも、僕は欲しいですし。

それが目指すべきエンジニアの姿だと思いますし、技術をあくまで“手段”として使って、チームやプロジェクトの成功を“目的”として追える人と一緒に仕事をしたいですね。それにそれくらい“俯瞰的な視点”で物事を見ることのできる人は、成果も出やすいのではないでしょうか。


― エンジニアも、ひとつ上の「経営」や「ビジネス」の視点を持つべきだと?


いや、それとは少しニュアンスが違います。以前“けんすう”がインタビューで話していたこととは、真逆のことを言っても良いですか(笑)。僕が言いたいのは、エンジニアもプロデューサーになれとか経営を学べとか、そういうことじゃなくって。そもそも「お前は何が得意なの?」って話です。

エンジニアであれば、何が得意って「技術」でしょ。つまり、チームやプロジェクトの成功という目的を達成するために“自分はどうやって貢献するか”と考えると、一番得意なことで貢献するべきじゃないですか。だったら、技術が得意なヤツなら、断然、技術を極めるべきです。エンジニアに営業なんてやらせません。下手ですし。もちろん何でもできるスーパーな人がいれば良いですけど、めったにいませんから、変にゼネラリストを目指すより、ぶっちぎりのスペシャリストであって欲しいです。そして、そのスキルを活かしてチームにどうやって貢献するかが、勝負になってくるんじゃないですかね。


― なるほど。しかし、技術の追求が目的になってはいけない。


まさに。コードを書くことが目的化しちゃってるとマズイってことです。音楽の例だとすごくわかりやすいんですけど、“ギターの速弾き”ってあるじゃないですか。あれって 完全に手段が目的化しちゃってるんですよ。音楽って、本当は人を感動させたり、CD買ってもらったりが目的なハズなのに、バーーっと「速いことが価値!」みたいになっちゃう。

パンクってのはそのアンチテーゼから生まれてきたものですよね。ロックのミュージシャンが技巧に走っていった時に、「ちょっと違うんじゃねー?」って出てきたもの。「音楽ってテクニックじゃなくてハートだろ」って、3つのコードだけでメチャメチャ沢山の人を動かして、一大ムーブメントを起こすじゃないですか。

やっぱり、パンクのヤツらって音楽の目的とか、自分たちが音楽を奏でる目的ってのが分かってたんだと思います。で、その目的を果たすために、自分たちのできるアプローチを模索するっていう思考プロセスだったんじゃないですかね。そうじゃないと結局、感動してくれる人の総量は減ってしまうものだと思うんですよ。


― つまり、目的を理解したアプローチが大事になる?


そう。サッカーなら完全にインザーギ(フィリッポ・インザーギ|元イタリア代表FW)が良い例ですね。トラップ下手、パスも下手、ゲームを読むチカラもない。でも、出たら絶対に点を取るんですよ。しかも、本当に欲しい瞬間に。あの時に彼に求められていることってアレなんです。だから、逆にゲームメイクなんかしなくて良い。日本で言えば、一昔前ですけど、武田(武田修宏氏)ですかね。もう、ごっつあんゴールでも何でも、ストライカーだから“決めれば良い”。プロフェッショナルって何なんだろうと考えてみると、「自分の得意なことをひとつ持って、それを手段に使って何かの目的を達成する人」のことを、指すんじゃないかなって考えています。

エンジニアの価値は、まだ死なないと思ってます。

― 今後は、世の中の流れとして“技術が一般化・コモディティ化”をすることで、エンジニアの価値が揺らぐと言われたりしていますが、金山さんはどう考えていますか?


技術がコモディティ化するのは、もっと先の話だと思ってます。もちろん、仕事が自動化されていく方向にはあるんですよ。労働集約型で定型の仕事なんかは、どんどんコモディティ化してくと思うんです。ただ僕らみたいに、頭のなかにある新しいビジョンだったり、これから先の未来を想像して創る仕事は、決してコモディティ化しない。

それって、もはや“アートに近い領域”ですよね。だから、それこそ“人間より優秀な知的生命体が出てくる”とかの事態が起こらない限り、価値はなくならないんじゃないですかね。


― エンジニアは、今後もエンジニアとして価値を生みだしていける?


だと、思いますね。新しいものを創りだす時には毎回求められるものが違うから、パターン化できないんじゃないかなと思うんです。プログラミングの手法としては色んなパーツがあってそれを組み合わせていくっていうカタチになっていって、コードを書く量は減るかも知れないですけど。

ただ、そこでも“何を選んで何を組み合わせるのか”みたいな問題は起こってくるので、その選択や組み合わせにも価値が出てくると思います。ヒップホップみたいな感覚ですね。曲のワンフレーズを選んで加工してラップのせて新しい曲をつくる…みたいな。究極言うと、目的達成できるのであればソースのコピペだけでも良いんですよ。何がしたいっていう目的を“3回のコピペ”や“元ネタの一発ループ”で達成できるなら、それで全然オッケー。おれはコードを書きまくりたいんだ!って人には厳しいかも知れませんが、技術を手段として捉え、目的としっかり分けて考えられるエンジニアの価値は、「まだまだ死なないだろ」って思いますね。


― 手段だけで勝負するなよ。って話ですね。


そう。そこは、すごく大事。そこのところがわかってる人と、働きたい。VASILYでもちょうど採用活動をしているので、インザーギみたいなエンジニアがいたら、ぜひ紹介してください(笑)



(おわり)



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