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エンジニアは“サービスのマネジメント”を学ぶべし―Origami 野澤貴のキャリア論[1]

2013-03-13

エンジニアは“サービスのマネジメント”を学ぶべし―Origami 野澤貴のキャリア論[1]

感度の高いWEB業界人の間で密かに話題を呼んでいる、eコマース系のスタートアップ《Origami》。その技術統括者が野澤貴さん。未踏プロジェクトを経て起業、さらにミクシィでサービス開発戦略の立案・推進に携わるなど、幅広い経験を経験を積んだ野澤さんが見据える、エンジニアの理想的なキャリア像とは?

起業すべきか。大手で働くべきか。両方を知るエンジニアのキャリア論。

2013年3月現在。秘密のベールに包まれたeコマース系スタートアップ《Origami》が静かな話題になっている。明らかなのは『売る、買う、を新しく』というサービスメッセージ。そしてその開発チームが、抜群に優秀なメンバーで構成されていることだけだ。

メンバーの国籍はさまざま。そのプロフィールには、ハーバード大学ビジネススクール修士課程、オックスフォード大学博士課程、といったフレーズが、さも当たり前かのように並んでいる。

同社のFacebookページは、街並みや日常風景の写真が時々アップされるだけにも関わらず、いいね数は4200を突破。eコマースで一体何を仕掛けようというのか―。多くの人がその動向に注目しているのは間違いないだろう。


origami_webpage

Origami公式サイトはとてもきれいなデザイン。Facebookページにアップされる写真も素晴らしいものばかりだ。


この謎のスタートアップ《Origami》で技術統括者を務めているのが、野澤貴さんだ。

野澤さんは、慶應大学大学院でコンピュータサイエンスを学んだエンジニア。在学中にIPA主催の未踏ソフトウェア創造事業に採択され、その成果をもとに、ネイキッドテクノロジーを共同創業した経験を持つ。

ネイキッドテクノロジーにてモバイルアプリ基盤技術を設計・開発した後、会社をミクシィに売却。自身もそのままミクシィに入り、同社データ分析チームの立ち上げと、サービス開発戦略立案・推進に従事。満を持して、Origamiにジョインした。

まだ29歳という若さながら、WEB業界で幅広い経験を積んできた野澤さん。スタートアップと大手サービス企業、両方を経験した彼は、果たして、これからのエンジニアのキャリアをどう捉えているのだろうか?

“サービスの話ができる”エンジニアは価値が高い。

― 野澤さんは、ネイキッドテクノロジーやOrigamiといった小さなチームと、ミクシィのような大きなチームと、両方を経験されていますよね。その経験を踏まえて、どんなエンジニアが優秀だと考えていらっしゃいますか?


あくまでWEB業界に限った話になってしまいますが、エンジニアの理想的なキャリアとしては、サービス開発のマネジメントを志向するマネジメントタイプと、技術を深堀するエンジニアリングタイプの2つに分かれるかと思います。

市場にあまりいないのは、マネジメントタイプ。個人的には、今後おいしいキャリアになっていくと思っています。

どの会社でもそうですけど、エンジニア出身の経営幹部はまだ少ないですよね。経営視点を持ったマーケティングや企画出身の人たちがマネジメントを担うことのほうが圧倒的に多いと思います。

やはりエンジニアの場合、プロダクトについては詳しくても、“サービス”を知らない、ということが多いんですね。

当然ですが、WEBサービスの目的は収益をあげること。エンジニアリングのバックグラウンドを持った上で、サービスの話ができるという人は、今後かなり重宝されるはずです。


― なぜ“サービスの話ができない”エンジニアが多いのでしょう?


サービスを企画する側、つまりマネジメントレイヤーの仕事を、エンジニアが理解できていないからだと思います。


野澤さんA


”プロダクトをつくる”という視点で働いてきたエンジニアは、採算度外視で物事を考えたり、マーケットが見えていなかったりしがちです。

マネジメントをする側からすると、エンジニアが発する”作り手の発想”での意見は、非常に理解しづらい。極端に言えば「何語で話しているんだろう?」というくらいに思われていて、そのため「サービスのことが分かっていない」と早々にふるい落とされてしまいます。

例えば、サービスローンチの前後ってエンジニア視点で言えば、追加したい機能が山のようにありますよね。しかし、「どんなマイルストーンを置くか」「いかに実装スケジュールを組むか」当然ながらそこまで考えられていない限り、いくら意見を発しても通ることはない。

もちろんファシリテーションはマネジメント側の仕事なので、すべてのエンジニアがそれを理解する義務はありません。ですが、一つ上を目指すのだとすれば、『サービスを立ち上げて運用し、利益をあげる』この“肌感”がすごく大事になってくると思います。


― 「プロダクトを作る側」から「サービスを企画する側」へと視点をシフトするのは難しい気もします。


そう、本当に難しいんですよ。ビジネス書を読むと、経営が分かった気分になるんですけどね。なかなかできないです(笑)

Origamiは非常に小さいチームなので、僕自身もマネジメントをしながら、自分でコーディングもしているのですが、マネジメントとエンジニアリングでは思考のモードが違い過ぎます。

サービスをいつまでにローンチするか?利益をどう生み出すか?こんなことを考えながらコーディングなんて、なかなかできないですよ。

物理的にも、”利益”のことより”開発”について考える時間のほうが多いです。もしかしたら、エンジニアは組織の上に行くには向いていない職業なのかもしれません。だからこそ、できる人の市場価値が高いんですけどね。

“サービス提供者の視点”を手に入れるためにやるべきこと。

― 「サービスの話ができるようになるべき」とお話されていましたが、どうすればサービス提供者としての視点が身につくのでしょう?


たとえ小さいチームであっても、プロダクトをゼロから育てたことのある人には、”サービス提供者の視点”がきちんと備わっている気がします。

ユーザーはどういった人で、どんなシチュエーションで使われるか。ROIは何で、KPIがどこに置かれているのか。チームの中で自然とコミュニケーションが生まれ、全員がサービスのこともプロダクトのことも、理解できる状況だからだと思います。

もし、大手でコーディングばかりしているのだとしたら、その中でサービスを企画する側の人と話をするだけでも、全然違うと思いますよ。

大きな会社だといろんなセクションがあって、それぞれが持っている情報が違うことも多いですよね。たとえば、サービス企画側の意図や戦略をプロダクトを作る側が理解していないこともあります。そこを理解するために自分から話しかけていく。こういうアクションをとれるかどうかで、変わってくるんじゃないかな。


野澤さんB


― 「サービス提供者の視点」を具体的に言うと?


サービスを成長させていく時に何が必要か、という視点ですね。グロースハッカーという言葉が最近バズワード的に流行っていますが、その能力に近いと思います。

WEBの世界には流行りすたりがありますが、”サービスを立ち上げる”という行為自体はなくなりません。どのようなサービスであってもマネジメントできれば、必然的に市場価値は上がります。WEB業界のトレンドに左右されることもないでしょう。

一方で、「コーディングができる」という能力だけで勝負しようとすれば、必然的にトレンドに振り回される可能性が高くなるだろうと、個人的には思います。

もし、そういったパターンでいくのなら、世界的なトレンドをいち早くキャッチできるコミュニティに属して、その流れを追いかけるのがマストになるんでしょうね。

サービスをエンジニアリングする、という楽しみ方。

ー「サービスの視点」を持つことは、エンジニアにとって面白みが感じられるものなのでしょうか?


どんなエンジニアを目指すかにもよりますが、僕自身に関して言えば、データを見ることが好きなので、ものすごく面白いですね。mixiのような大規模なサービスだと、1000万人規模でのユーザーの動きが統計的に見れるわけです。

少ないサンプル数では統計的に意味を成しませんが、大きなサンプル数であれば、予測可能な数字になってきます。そういった数字を分析して、サービスや機能で変えるポイントを定めていく。試してみて「本当に数字が上がった!」となるのはめちゃくちゃ楽しいです。

緻密にコードを組んで、自分が思い描いた通りにシステムが動くのは、ワクワクしますよね。これは「サービスを上手くまわして、利益を出す」ことも同じです。システムではなく、サービスをエンジニアリングする。こういう観点で見れば、エンジニアとしてもきっと楽しめるところだと思います。


origamiステッカー


(つづく)
▼インタビュー第2回はこちら
トレンドに踊らされるな、技術を掘れ―Origami 野澤貴のキャリア論[2]




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