2013.03.15
トレンドに踊らされるな、技術を掘れ―Origami 野澤貴のキャリア論[2]

トレンドに踊らされるな、技術を掘れ―Origami 野澤貴のキャリア論[2]

今後ますます“サービスをマネジメントする視点”を備えたエンジニアの需要が高まると語る一方で、“技術を極める”という方向にもエンジニアが生き抜く術はあるという野澤さん。果たして、どんな技術を掘り下げていくべきなのか。国内外のさまざまなエンジニアの仕事を間近で見てきた野澤さんが語る、キャリア論第2弾。

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▼インタビュー第1回はこちら
エンジニアは“サービスのマネジメント”を学ぶべし―Origami 野澤貴のキャリア論[1]  から読む

やりながら考えること。「止まる」のが一番ダメ。

― ご自身で立ち上げたネイキッドテクノロジーではもちろん、ミクシィにいらっしゃった際にも、面接官としてエンジニアと接する機会も多かったと思います。日本のエンジニアを見ていて、何か気づいたことなどありますか?


野澤さんA


僕が知っている範囲は限られているので偉そうなことは言えないのですが…

あくまで個人的な印象ではありますが、特に日本人のエンジニアに多い傾向として、“手を動かしながら考える”ことが苦手だと思います。

ネイキッドテクノロジーで面接をしていた際、ホワイトボードを用意して、その場で実際にコードを書いてもらっていたんですね。すると、海外出身のエンジニアはとりあえず常にしゃべりながら、問題が解けなくても何かやろうと試みるんです。でも、日本人は悩みはじめると、そこで止まってしまう。何も書かないし、何も言わなくなる。

「しゃべりながら間違いを書く人」と、「何も言わなずに止まってしまう人」ではたとえ間違っていたとしても、動いている人のほうが評価は高いんです。

もしかしたら、思考の水準は同じくらいなのかもしれません。しかし、何もアウトプットされないと、面接する側としても手の打ちようがない。

実際の仕事の場でも、周囲とコミュニケーションをとりながら、プロダクトの質を高めていくわけですよね。そういう意味でも、正解が分かるまでジッと考え込むよりも、口や手を動かしながら考えるほうが絶対にいいはずです。

好奇心を枯らさない。「分かった」と思うハードルを引き上げる。

― エンジニアも「どのようにサービスが企画されるか」、その仕組みを理解したほうがいいと仰いましたよね。一方で、“とにかく技術を追求したい”というエンジニアもいると思います。そういったタイプのエンジニアだと、どんな方が優秀だと感じますか?


「分かった」と思うまでのハードルがめちゃくちゃ高い人ですね。

例えば、ネイキッドテクノロジーで一緒に働いていたフランス人のエンジニア、彼は抜群に優秀でした。

はじめてAndroidのアプリをつくった時に「Androidって何?」というところから始まり、最終的には日本語入力の仕組みまで理解していましたからね。

このコードって何で動いている?そのコードの成り立ちは?メモリ管理ってどんな仕組み?と、どこまででも掘っていく。

もちろんマネジメントする立場からすると、「時間もないし、そろそろ次に進んでほしい…」と思ったりもします(笑)でも、困難なタスクは、やっぱりそういう人にしか任せられないんですよね。

彼のようなタイプのエンジニアは、正解が見えていないタスクに関しても、どんどん勝手に調べてやってくれます。というより、やらないと気が済まないんです。自然とやってしまう。

一つひとつの仕事で「なぜこうなっているんだ」「どういう仕組みなんだ」と、とことん調べているので、一つの仕事を通じて得る知識量が、圧倒的に多いんだと思います。そしてその積み重ねが、そのままエンジニアとしての力になっているんでしょうね。


野澤さんB


今の時代、ライトなものなら、ググってサンプルコード見つけて、それを貼り付けるだけでも動きますよね。

だから、別に深く知る必要はない、そう考えるエンジニアもいるのではないかと思います。

でも、ググりながらWEBを作る人と、構造から理解している人では圧倒的に違うところがあります。何だか分かりますか?


― うーん…作業するスピードでしょうか?


いえ、むちゃくちゃな球を投げた時に打ち返せるかどうか。アウトプットが出せるか、出せないか。1か0かの違いなんです。

物理法則としても、WEBには不可能な領域はありません。深いところまで理解している人は、限りになく無限にモノを作っていくことができます。

最下層に到達したと思っても、もっと深いところがあるわけで、そこを任せられるのはデカいです。


― その「深く掘る」ために大事なことは?


単純に知的好奇心がある、ここはマストだと思います。

加えるとしたら、コンピュータサイエンスの修士やマスターまで勉強している人は、技術を深く掘り下げていくための“勘所”を持っていますね。

大学や大学院で学ぶことって、ある意味“目次”のようなものなんです。特定の分野をそこまで深く掘り下げることはありませんが、コンピュータサイエンスのあらゆる分野を、網羅的に押さえていくんですね。

だから新しい技術に出会った時に、たとえそれが自分の専門領域ではなかったとしても、何を学べばいいのかが分かるんです。


野澤さんC

トレンドに踊らされ、可能性を摘み取る必要はない。

― 技術を深掘りするためには、どういった環境が望ましいのでしょうか?


アーリーフェーズのスタートアップだと、技術を極めたい人の活躍の場は、そう多くはないかもしれません。インフラ周りもアプリのこともある程度分かっていて、“とりあえず作ってみる”ことのできる人が求められるからです。

もし、技術を深く掘っていきたいのであれば、外からエンジニアが入って来づらい業界は狙い目かもしれませんね。

たとえば、広告配信エンジン。技術的なチャレンジだらけなので、すごく面白いと思います。ターゲティングしたユーザーに対して、かなり高い精度で適した情報を出していかなければいけないので、技術的なハードルがものすごく高いんです。できる人がほとんどいないから、エンジニアとしての市場価値も高いと思います。

もちろんトレンドを追っていけば、「次にくるのはクラウドだ、データだ…」などという流れがありますが、そのトレンドも結局そのうち移り変わってしまうものです。

だから、キャリアという視点から言えば、トレンドに振り回されるのは得策ではないと考えています。今だけのトレンドにフォーカスし、未来の可能性を摘みとってしまうのはもったいないですよね。


野澤さんD


ビジネス的に言えば、”今はデータまわりがきている”と感じますし、これから狙い目になってくるだろうことは明白です。

でももし、技術を極めようと考えるのであれば、トレンドを追いかけ続けるのではなく、一つひとつの仕事で、とにかく深くまで掘っていく。それが、後々の可能性を広げることにつながる気がしますね。


― なるほど。今後のキャリアを考える上で、とても参考になるお話です。ちなみに、野澤さんご自身も技術を追求したいというタイプなんですか?余談ですが、ぜひエンジニアを目指したきっかけも伺いたいです。


そうですね、もともと小学生くらいのときに家に古いパソコンがあって、それをいじって遊んでいたのがきっかけだと思います。

強烈な印象として残っているのは、初めてやったチャットです。ちょうどインターネットが普及しはじめた時期で、文字を打ったら、離れたところにあるパソコンにメッセージが出てきた。友だちと「うおぉぉ!すげぇぇ!」とすごく興奮して。そのときの興奮が、僕は未だに忘れらないんです。今となっては簡単なチャットなんてすぐに作れるので、仕組みが分かってしまって、ちょっと悲しいんですけどね(笑)


― そんなにはやくからプログラミングを!?


ええ、中学生の頃からプログラミングばかりやってました。でも社会のことを知っているわけではないので、例えばアメリカのIBMとか、そういう名の知れたIT起業に入れたらもうスーパースターだぞ!っていうくらいの気分で(笑)


― でも、実際は就職ではなく、起業の道を選んだわけですよね。


大学院在学中にネイキッドテクノロジーを立ち上げていて、卒業と同時にフルタイムで働くようになった感じですね。

でも、実は卒業前に就職活動もやっていたんです。就活を始めてみて、そこで「インターネット企業って、想像していた世界とどうやら違うみたいだぞ」と、気づくんですね。子どものころに憧れていたような、夢みたいな世界じゃないんだと。それで途方に暮れてしまい、で、何となく“かっこいいらしいよ”と聞いて、コンサルティング会社を志望するようになって(笑)

実際にコンサルタントとして内定も頂いて、コンサルタントとスタートアップのエンジニア、どっちの道を選ぶかでぎりぎりまで悩んでいました。

それで、入社直前になって内定を断ったんです。“今になってそれ言うか”っていうタイミングで、本当に迷惑をかけたと思います。

本当に最後の最後まで、悩みに悩んで決めました。で、決め手になったのは、コンサルになるとテクニカルな部分にはなかなか携われなくなっちゃうなと思ったんです。やっぱり、テクノロジーに対する未練があったんでしょうね。それで最後の最後で、やっぱりちゃんとエンジニアをやりたい、と。

内定を出してくれた企業には迷惑をかける結果になってしまいましたが、あの時、テクノロジーの道を踏み外さなくてよかったなと、今では思ってます。


― 野澤さんの中には、“テクノロジーへの強烈な憧れ”があるんですね。エンジニアとして技術をとことん掘り下げる、という話にもつながる気がします。本日は貴重なお話、ありがとうございました!


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(おわり)

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