エンジニアが採用できない…そんな悩みを解決!スタートアップ企業が創業期のエンジニア採用において実践してきたことを大公開。松岡剛志氏(レクター)、柴山直樹氏(プレイド)、三木明氏(Repro)、平栗遵宜氏(freee)が語った。
※2017年3月にコロプラネクスト×ネットジンザイバンクによって開催されたイベント『シード・アーリーフェーズ経験者語る!!"創業時期を支える"採用論』よりお届けします。
スタートアップにおけるエンジニア採用どうしてる?
2人目エンジニアの採用で気をつけるべきことは?
カルチャーフィットは見てる?
こんな悩みを解決するためにCTO・技術責任者たちが集結。エンジニア採用において重要なポイントが共有された。今回、モデレートを担当したのはレクター代表で、元ミクシィCTOの松岡剛志氏。トークセッションは、エンジニア採用に関する課題感からスタートした。
「技術組織をうまく作れないという課題を抱える企業は多い。ノウハウを社会に広く還元していきたい」(松岡氏)
松岡剛志氏
Yahoo! JAPAN 新卒第一期生エンジニアとして、複数プロダクトやセキュリティに関わる。ミクシィでは複数のプロダクトを作成の後、取締役CTO兼人事部長としてターンアラウンドを主導。その後B2Bスタートアップ1社を経て、CTO達による技術と経営をつなぐ会社 rector を創業。技術組織診断やコンサルティングサービス等を提供している。
はじめのテーマは、スタートアップにおける2人目のエンジニアをどう探すか。そのなかで、プレイド 柴山氏は「過酷な職場にいて、燻っている若手エンジニアに声をかける」などのぶっちゃけトークで会場を沸かせた。
より実践的な例としてRepro 三木氏の「エンジニアの人脈をリスト化していく」という方法を紹介しよう。
三木明氏
東京高専卒業後、SI企業にて顧客の新規開拓に携わる。音楽系、メディア系スタートアップでの立ち上げや、EC、物流系企業でのエンジニアマネージャーを経てReproを創業。CVR向上に貢献するアプリ向けマーケティングオートメーションツールを提供している。
三木:
僕が採用でやってきたのは、ひたすら口説き続けるということ。これまで多くのスタートアップの立ち上げてきたのですが、一緒に働きたいエンジニアとの出会いもそれなりにあって。
勉強会に顔を出したり、昔、いっしょにスタートアップをやっていた友人から紹介してもらったり。たまたまフェイスブックで繋がった人もいます。
今まで出会ってきた中で、「この人と一緒に仕事してみたいな」って思った人をExcelにリスト化してあるんです。採用しようとなったら、リストをもとに「ランチをしましょう」と会いに行く。だいたい月に10件くらいランチに行ってます。
あとは「…で、いつ来てくれるんですか?」と直球で誘います。そして、今の仕事に課題はないか聞く。キャリアなのか、働き方なのか、やり甲斐なのか。「課題があるなら、僕が全て潰すので言ってください」と、こんな風に口説きます。自分たちの状況とか、想いを正直に言ったほうが良いですね。
でも、大事なのは、必要以上に誘いすぎないということ。変に焦ってもしょうがない。絶対に来てほしいと自分本位になると、「どう口説こうか?」という発想になりますよね。でも、そうじゃない。どうしたらその人が幸せになるか。その人の幸せを大前提に考えていきます。
続いて話題は「カルチャーフィット」、つまり社風にマッチするかどうか。そもそもカルチャーフィットを重視すべきかどうか?といった部分からさまざまな見解やスタンスが語られた。
柴山直樹氏
東京大学工学部にて神経科学、チューリッヒ工科大学にてロボティクス、東大大学院にて分散環境における機械学習の研究に従事。2009年未踏本体採択。2013年同大学院博士をドロップアウトし、同社CTOとして参画。
柴山:
当社では入社前にカルチャーフィットを見るっていう事をやってます。やり方としては、既存社員の数人が見て判断するっていうところ。加えて、人事だったり、採用担当のエンジニアだったりに早い段階で見極めてもらっていますね。
当然、私が見ている組織なので、私はカルチャーフィットの見極めはできるんですよね。
問題は私以外の社員が採用する時です。たとえば、採用した人が高いパフォーマンスを出したら「よく当てたね」と採用した社員をちゃんと評価するんです。そこから、その採用が上手な社員を、できるだけ面接に割り当てるようにしました。
三木:
私の場合…カルチャーフィットって見ていないんですよね。逆に“技術力以外に何を見るんだろう”という感じ。ただ、それは「テクノロジーで売上を作る会社だから、技術を見る」という前提があります。
もちろん既存の社員が「新しいメンバーは自社のカルチャーにフィットするか」気にするケースはあって。きっちり判断してほしいので、1日、2日のインターンを通して「この人を採用して間違いないよね」という確認はしてもらっています。
平栗:
うちは、そこまで技術力しか見ないっていう会社ではないですね。freeeのカルチャーを良く理解してる人が面接に入り、1時間話してその人が働きたいと思うかどうか、定性的に判断してます。カルチャーフィットを見る役割としては、だいたい3人ぐらい、ローテーションでやっていました。あと社会人でもインターンが可能な人には、インターンしてもらったり。まぁ…やっぱり正直入社してみないと、本当にフィットをしているのかどうかは分かんないなっていうところはありますが、あまり外さないです(笑)
「カルチャーフィットの見極め」という話から派生して展開されたのが、「技術力をどう見ていくか」という部分。freeeの平栗氏からは「テックトークの仕方」が共有された。
平栗遵宜氏
10年間の流浪の末、2012年にfreee入社。ソフトウェアエンジニアとして会計freee・給与計算freeeをリリースし、現在は開発本部長としてプロダクト開発全般を担当。ユーザーに価値を届けるために必要なのは技術力と気合。東京大学法学部、千葉大学専門法務研究科卒。法務博士。
平栗:
技術力をどう見ていたか?前は「コードを書かせる」みたいなのは、試していました。ただ、効率があまり良くない。なので、今は「どれだけテックトークができるか」で判断するようになりました。
たとえば、「この課題があった時、あなたならどういう風に解決しますか」と聞いて、それに対して2・3個解決策を提示できるとすごくいいですね。
あとは「いまの会社でどういう技術を使っているか。その技術の選択理由はなんですか?」と聞いた時に、しっかりと目的を持って選べているか。新しい技術について語ってくれる人なんかは、他の技術も幅広く見ながら、最新の情報をキャッチアップできてるなって思います。
創業当初は、元々エンジニアではない人が来ることも結構あって。そういう人に対しては、その熱意をかって、とりあえずインターンしてもらったこともありました。それこそ、税理士さん出身で、僕はエンジニアになりたいんですみたいな気合十分みたいな人もいましたね。
最後にお届けするのは、共有された“エンジニア採用における秘儀”。まず大前提として、必ず採用ができるといった絶対の答えはないということ。その上で共通していたのは“採用する相手のことを第一に考える”ということだった。
柴山:
採用において一番大事なのは、採用したい相手のことを、とことん好きになるっていうことですかね。相手の悪いところを探すのではなくて、いいところを探す。誰でも分かるような、良いところをピックアップするだけでいいんですよ。ひたすら相手のことを考えるっていうのが重要ですね。
面接の時間はすくないので、会ってから判断するというのは、正直、かなり難しいと思うんですよね。だから、事前に「入社したら何を任せられるかな」「どんなパフォーマンスをだしてくれるかな」という想像を徹底的にしておく。
あと、私たちは、サービスがあまり知られてないので、サービスの話もします。内容は、コーポレートサイトや、メディアにのってない話。そうすると、「そんなこともやってるんだ」っていうギャップで好感をもってくれたりします。
平栗:
採用する、オファーを出すって決めた瞬間から、チーム全員、全身全霊で採る事に集中する。ここは心がけていますね。
最近、ちょっとハマってるのは、直接、電話してしまうっていう方法です。急に掛ける事もある。やっぱ何かに、迷っているときって、決め手がほしいじゃないですか。なかなか連絡がこないな、と思ったら「どうですか、まだ迷ってますか?」と電話をしてみる。そういう細かい気遣いみたいなものが決め手になってもらえばいいなって思うんです。
電話ってかける側もドキドキするんですけど、掛けたら掛けたで喜んでくれるので。
三木:
僕は、夢を抱いてくれることを言う。むしろそれしか言わないですね。創業メンバーというのもあって、一緒に夢を追う仲間をずっと探しています。
ただ、夢だけを語って、相手が不安がったり、変なギャップが生まれたりしても嫌なんです。なので「これは僕の夢です」と正直に言った上で、それでも来てほしいと伝えるようにしてます。
もちろん、口説くときも「夢を語る」という以外のアプローチもあります。これが決め手というのはありません。相手に合わせて打ち出すポイントは変わります。テクノロジー1つをとってもたくさん種類がある。データボリュームだったり、トラフィックだったり、アーキテクチャーだったり。なので、いくつかパターンを持っておくのがいい。そのパターンの中から、相手はどこに感動するのかを探していく。ポイントの探り方は、どれだけ相手を理解できるかということだと思いますね。
(おわり)
文 = CAREER HACK
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