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CAREER HACK

秩父・横瀬町にWeb業界のクリエイターが集結! 地域がひとつになったクリエイティブソン

2017-05-30

秩父・横瀬町にWeb業界のクリエイターが集結! 地域がひとつになったクリエイティブソン

東京から特急で74分。埼玉県秩父市の隣町に、横瀬(よこぜ)という町があります。人口8500名弱の小さな町で、4月にあるクリエイティブソンが開催されました。集ったのは、都内在住のクリエイターたち。彼らと横瀬町の役場・町民らが手を組んで、横瀬町の抱える課題と向き合いました。

秩父の隣町 横瀬町に集まったクリエイターたち。

埼玉県秩父郡横瀬町。名峰・武甲山が見守るこの町は、ある課題を抱えていました。

「人口流出」。多くの地方自治体で起こっているこの問題。横瀬町も例外ではありませんでした。1996年以、横瀬町の人口は減少の一途を辿るばかり。

「このまま人口が減ってしまうと横瀬町はどうなってしまうのか」。
「この状況を、クリエイティブの力で何とかできないか」。

役場の職員の方たち、町民の多くが漠然とそんなことを考えるようになっていました。

武甲山

埼玉県内最大級の棚田『寺坂棚田』から望む武甲山。


この状況に立ち上がったのが、以前CAREER HACKにも登場したEXIT FILMの映像ディレクター 田村祥宏さん。田村さんは、秩父出身のクリエイター SCHEMAの橋本健太郎さんとともに、親交のある都内のクリエイター複数名に声をかけ、横瀬町の課題解決を目的としたクリエイティブソンと半年間のクリエイティブ教育プログラムを企画しました。

その名も『横瀬クリエイティビティー・クラス』

田村さんの企画に賛同し集ったのは、Web編集者の徳谷柿次郎さん、Garden EightのWebディレクター 野間寛貴さん、クリエイティブカンパニーAID-DCCのプログラマ 鍛治屋敷圭昭さんをはじめとする総勢10名近くのクリエイターたち。そしてついに全員がノンバジェット…つまり自腹で横瀬町まで足を運び、企業や組織の枠組みを越境して、一泊二日のクリエイティブソンが開催されることになったのです。

クリエイティブソンに、CAREER HACK編集部も同行。実際のつくり手であるクリエイターが地方の課題、その当事者たちと直接に向き合うことでどんな化学反応が生まれるのか。そして、彼らは社会とつながりを持つことで何を実現したいのか。

まだ寒さの残る4月。地域の抱える課題とクリエイターたちの想いがぶつかり、横瀬町の気温がグッと上がった2日間の様子をお届けします。きっと地方創生の新たな1ページの始まりを予感させてくれるはずです。


【参加クリエイター】
EXIT FILM 田村祥宏、Garden Eight 野間寛貴、Huuuu 徳谷柿次郎、AID-DCC 鍛治屋敷圭昭、AID-DCC 田渕将吾、SHIFTBRAIN 鈴木慶太朗、ミュージシャン[.que]/nao kakimoto、SCHEMA 橋本健太郎、SCHEMA 河村五月、SCHEMA 岡永梨沙(順不同)

<INDEX>
・秩父の隣町横瀬町に集まったクリエイターたち。
・横瀬町の期待。クリエイターたちのプライド。
・クリエイター、横瀬町民、そして地元の中高生が一丸となって。
・クリエイターの本気を見せてやる!
・みんなの本気がぶつかり合う最終プレゼン!
・クリエイティブソンがもたらしたもの。

横瀬町の期待。クリエイターたちのプライド。

2017年4月22日。

芦ヶ久保小学校の体育館

この日、クリエイターたちは朝から廃校となった芦ヶ久保小学校の体育館に集められました。体育館の重い扉を恐る恐る開けるクリエイターたち。不安な表情を浮かべながら集まっていく様子は、都内での日々のふるまいとは別物。クリエイターたちも少なからず緊張しているようです。そんな彼らを出迎えてくれたのは、横瀬町長の富田能成さんです。

富田町長

富田町長自ら、クリエイターたちにメッセージを送ります。


「横瀬は普通の田舎町です。しかし、アクセスの良さを活かし、都心とのハブとしてヒト・モノ・情報が集まる町にしたいと思っています。そして、いずれはクリエイティブな人たちがいつも何かを仕掛けているような場所にしたい。今回はそのための大きな一歩です。今回のクリエイティブソンでどんなアイデアが飛び出すのか。私もワクワクしています」

続いて横瀬町側の仕掛け人としてマイクを握ったのは、横瀬町役場まち経営課の田端将伸さん。今回のクリエイティブソンの目的と熱いメッセージをクリエイターたちに送ります。

田端さん

横瀬町役場 まち経営課の田端さんからも力強いメッセージが。


「今回のクリエイティブソンは、横瀬町が今後波に乗っていけるか、それとも振り落とされてしまうかを占ううえで大きなターニングポイントになると思っています。

今回テーマとして掲げているのは、"もう一度帰ってくる”を後押しすること。たとえば高校を卒業したタイミングで一度町の外に出てしまうのは仕方ない。でも、それから10年後に戻ってきたくなる魅力をつくりたい。今回は、地元の横瀬中学校の生徒をはじめ、高校生、大学生にも参加してもらいます。彼らからのヒアリングを通じて課題を明らかにし、解決方法となるアイデアをカタチにしていきたい。横瀬町役場も全力でバックアップします」

町全体の期待が一気にクリエイターたちに寄せられます。

田村さん

今回の発案者であるEXIT FILMの田村さん。


そして、クリエイターを代表して、「地域のみなさんとひとつのゴールを目指したい。僕たちの課題解決の力に価値を感じてもらえるように」と答える田村さん。それぞれのクリエイターたちがA〜Fの6つのチームに分かれ、いよいよ2日間のクリエイティブソンの幕が切って落とされました。

クリエイター、横瀬町民、そして地元の中高生が一丸となって。

1日目の目標。それは各チームともに「横瀬町の課題を抽出すること」です。横瀬町に"もう一度帰ってくる”を後押しするためには何が足りないのか。それを明らかにするために、町民のみなさんへのヒアリングが行なわれました。

オリエンテーション

横瀬町を代表して3名の町民が各々が感じている課題を提示。


橋本さん

クリエイティブソンのキッカケをつくった横瀬町出身のSCHEMA 橋本健太郎さん。横瀬町の現状に危機感を抱いた彼が田村さんらとディスカッションを重ね、今回のクリエイティブソンが実現しました。ちなみに現在は横瀬町への移住を検討中とか。


おおよその課題感を把握したクリエイターたちは、フィールドワークへ。横瀬町役場職員のみなさんのガイドのもと、飛び出して行きました。

寺坂棚田

柿次郎さん率いるCチームは武甲山を望む『寺坂棚田』へ。


柿次郎さんチーム

横瀬町を語るうえで切り離すことのできないある産業に着目したようです。


田渕さん

AID-DCC 田渕さんらのBチームは町民のご自宅へ。


岡永さん

横瀬での"暮らし”に触れることで、何かのヒントをつかんだようです。


フィールドワークを終えた一行は再び芦ヶ久保小学校の体育館へ。自分で見て、自分で聞いて、自分で感じてきたことを洗い出し、チーム内での方向性を決めます。

そこに、いよいよ今回のクリエイティブソンのキーマンとなる中高生たちが登場。

中高生ズ

「学校のパンフレットを見ておもしろそうだと思って参加しました」、「自分の将来に役立ちそうな気がして…」と、主体的に参加した中高生たち。 しかし、緊張の色は隠せません。


柿次郎さんチーム

クリエイターたちのプレゼンを聞き、彼らの熱量に触れます。そして少しずつ表情が真剣なものに変わっていきました。


その後、中高生たちもそれぞれのチームへと配属。自分たちが抽出してきた課題と中高生たちの意見とをすり合わせていきます。

田村さんチーム

笑顔でコミュニケーションをとり、心の距離を縮めていくクリエイターたち。


鍜治屋敷さんチーム

リラックスしたのか、中高生たちも徐々に本音を話し始めるように。


1日目のクライマックス。各チームですり合わせた課題を発表します。

Cチーム発表

「横瀬の人は、出身を聞かれたときに”横瀬”ではなく”秩父”と答えてしまう。自信をもって”横瀬出身です”と答えられるようにしたい」とCチーム。


 Eチーム発表

「横瀬町民とフィールドワークしたときに町並みから思い出を抜き出せなかった。気軽に立ち寄れる場所をつくってエピソードが残る場所にしたい」とEチーム。


全チームの発表が終わったところで1日目は終了。

クリエイターたちも朝からのバタバタで疲労困憊…かと思いきや、みなさんが向かったのは横瀬町をあげての大宴会!さすがのタフっぷり…!

当日の様子が放映されたNHKのニュースをみんなで見たり、町民のみなさんからの温かいおもてなしを受けたりで宴会は大盛り上がり!横瀬の夜は賑やかにふけていったのでした。

さぁ、いよいよ翌日はアイデア出し、そして実制作です。

クリエイターの本気を見せてやる!

運命の2日目。若干二日酔いを感じさせるクリエイターもいましたが、全員が時間通りに体育館へ集合。この日は中高生たちも最初から参加。前日設定した課題をもとに、アイデア(課題解決の手法)を出すためのブレストが始まります。

 二日目の朝

個人がそれぞれ持ちよったアイデアをチームで、チームのアイデアを全体で。意見交換しフィードバックを重ねながら、精度を高めていきます。


 野間さん

別のチームであっても関係ない。「横瀬のために」という気持ちを全員が抱いて、アイデアを発展させていきます。


 中高生真剣

中学生も真剣そのもの。


 体育館全景

そのアイデアにリアリティーはあるか、ストーリーはあるか、どんな体験を提供できるのか…そんな議論を繰り返し、各チームのアイデアが決まります。


アイデアが決まった各チームはいよいよ最終プレゼンに向けた実制作へ。ここからクリエイターたちの表情がガラッと変わりました。

 田村さん

限られた時間で撮影を行なう田村さん。


 鍛治屋敷さん

AID-DCC 鍛治屋敷さんも負けずとプログラムを組み始める。


 鈴木さん

SHIFT BRAIN 鈴木さんは何かをデザインしている様子。


 岡永さん

SCHEMA 岡永さんはイラストを制作。


 鈴木さん

ミュージシャン [.que]さんは体育館の隅にあったピアノを引っ張り出し、作曲をスタート。[.que]さんの奏でるメロディが、やさしく体育館を包みます。


 岡永さん

プレゼン資料づくりをディレクションする柿次郎さん。ひとりだけなぜか終始ニヤニヤしていました。


そしていよいよタイムアップ。果たして、どんなアイデアが生まれたのでしょうか。

みんなの本気がぶつかり合う最終プレゼン!

お互いのこれまでの健闘を称え合い、いよいよ最終プレゼンがスタート。今回は6チームのなかでも特にアイデアがユニークだった4つのチームのプレゼンをご紹介します。

トップバッターはAID-DCC 鍜治屋敷さん、SHIFTBRAIN 鈴木さん率いるAチーム。「横瀬町を出た人たちにとっての”つながり”をつくることが大切なのではないか」という仮説のもと企画したのが、ロゴマークの制作と世代を超えた横瀬町独自のSNSです。

 鈴木さんプレゼン

鈴木さんは中学生のアイデアをもとに「YOKOZE」の「Z」をモチーフにしたロゴをデザイン。町民が進学や就職などで横瀬町を出るときに、ロゴデザインの入ったアイテムをプレゼント。「いつか戻ってこよう」という気持ちを継続して抱いてもらうために、その後も定期便を届ける。


 鍛治屋敷さんプレゼン

鍛治屋敷さんは横瀬町民限定のSNSを制作。役場の人たちが公式情報を発信する電子掲示板的な役割を担い、横瀬町を出てからも定期的に横瀬町のことに触れられる場所をつくる。


続いてはAID-DCC 田渕さん、SCHEMA 河村さん、岡永さん率いるBチーム。横瀬町の抱える課題として職業の選択肢が少ないことを設定していました。そこで、「たとえばクリエイティブな仕事との精神的な距離を縮めるきっかけをつくることができれば、横瀬町に新たな選択肢をもたらすことができるのではないか」と考え、企画したのが音楽、アート、工芸のフェス『YOKOZE CREATIVE WEEK』です。

 田渕さんプレゼン

「世の中にはどんな仕事があるのか」、「あこがれた仕事に自分も就けるのか」、「そもそも食べていけるのか」…そんな不安を解消したい。


 岡永さんイラスト

Bチームが考案した『YOKOZE CREATIVE WEEK』。かわいいイラストは、SCHEMA 岡永さんによるもの。


次はHuuuuの徳谷柿次郎さん率いるCチーム。「自信をもって”横瀬出身です”と言えないのは、圧倒的な名物がないからではないか」という仮説から生まれたのが『ダイナマイトごはん』。…一体どういうことなのでしょう?

 柿次郎さんプレゼン

「私たちのチームが注目したのが武甲山のセメント産業です。ダイナマイトで発破し、石灰岩を採掘しているというお話をうかがい、横瀬町ならではの風景だと感じました」。


 富田町長ニッコリ

かやくご飯からインスパイアされて考案したのが、横瀬町名物『ダイナマイトごはん』。インパクトのあるネーミングとわかりやすいコンセプトに、思わず町長もニッコリ(?)。


 柿次郎さんニッコリ

そして柿次郎さんもニッコリ。


最後は今回のクリエイティブソンを発起人である田村さんと彼と何度もコンビを組んできた野間さんが率いるEチーム。町並みに思い出をつくるために考案したのが『横瀬帰り道ドラマジェネレーター』。下校ルートに紐付いた映像がジェネレート(生成)されるというツールです。

 野間さんプレゼン

「町並みから思い出が抜き出せない」。そんな課題を解決するために考案したのが、『横瀬帰り道ドラマジェネレーター』。


 田村さん映像

サンプルとなる映像は田村さんが制作。[.que]さんが作曲した音楽を乗せる。まるでドキュメンタリームービーのような仕上がりに思わず感嘆の声が。


以上で最終プレゼンは終了。

ご紹介したのは4つのチームでしたが、他にもクリエイターの強みや個性が存分に反映されたアイデアが次々に飛び出しました。たった2日間でアイデアを生み出す力、カタチにしてしまう力、そして何より課題を解決する力に中高生はもとより横瀬町民のみなさんも圧倒された様子でした。

特に柿次郎さんのチームが考案した『ダイナマイトごはん』には町長も好感触。すでに商品化に向けて動き出しているとか(いないとか)。

クリエイティブソンがもたらしたもの。

これから半年間をめどに、今回発案されたアイデアをカタチにしていく取り組みがスタートします。今回のアイデアのなかから横瀬町に新たなムーブメントを巻き起こす何かが誕生する日ももうすぐです。

特に印象的だったのが、クリエイティブソンに参加した中高生たちの変化です。今回のクリエイターたちの仕事ぶりを間近で見て、音楽を勉強する意思を固めたり、「東京の職場を見てみたい」と直談判したり…なかにはクリエイター宛に2日間の感謝の気持ちをビデオレターにしたためた中学生もいました。一番楽しんでいたのは東京から参加したクリエイターたちだったのかもしれません。

 集合写真

さて、もちろんこれからも横瀬町とクリエイターたちとの関わりは続いていきます。今回のクリエイティブソンは、長い物語のプロローグにすぎません。半年間にわたるクリエイティブ教育プログラムの準備も着々と進んでいます。これからもCAREER HACKは横瀬町とクリエイターたちの取り組みを追いかけ続けたいと思います。そしていつか今回クリエイティブソンに参加した中高生のなかから未来のクリエイターが誕生する日を夢見て。

最後に、2日間のクリエイティブソンの様子をムービーでご紹介します。

YOKOZE CREATIVETHON − Yokoze Creativity Class

[撮影]Kenichi Aikawa、なかむらしんたろう
[映像]西澤英樹



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