海外では著名なWEBデザインアワードサイト「CSS Design Awards」。「毎日・毎月・毎年」で、最も優れたWEBページを決定するサイトである。2013年1月に認定を受けたのが、レターズのホームページ。メンバー6名のスタートアップながら、海外に通用するクリエイティブを生んだレターズとは。
日本発のポップカルチャーが「Cool Japan」と呼称され、世界へ輸出される。アートやアニメーションなどの分野において、国際的な活躍をしている日本人は、今日、それほど珍しい存在ではない。
では、WEBデザインの世界はどうだろう?
トレンドは日々変わりつづけている。レスポンシブWebデザイン、フラットデザインなど、次々に新たなセオリーが輸入されている。そして、日本のWEBデザインに影響を与えている。
一方で、日本発のデザインセオリーは少ない。いや、皆無といってもいい。世界を相手に勝負できる日本人WEBデザイナーも、まだまだ少ないだろう。
そんななか、世界的なWebデザインアワードである「CSS Design Awards」を受賞したのが、株式会社レターズ(Letters Inc.)のホームページ(※参考:wiki pedia ※参考2:レターズ受賞ページ)。
快挙だと思う反面、疑問も生まれてくる。
なぜ、同社のデザインが海外で評価を受けたのだろうか。海外に目を向けた理由とはなんなのか。同社のように、日本のWEBデザインが海外においても、通用する日がくるのだろうか。
新しいWEBデザインのありかたに挑戦する、株式会社レターズCEOの野間寛貴氏と、デザインを統括するCCOの利倉健太氏にお話を伺った。
― そもそも、最初から海外のWEBデザインアワードに挑戦したいといった気持ちはあったんでしょうか?
利倉:
先鋭的といわれるようなデザインは、海外のサイトが比較的多いかと思います。
日々それこそ300、400もの海外サイトを見て、構造を解析して、また組み直して…。勉強のためにそういったことをしてたので、海外に対する意識は、もともと強かったと思います。
そんなとき、自分が「良いな!」と思った海外のサイトに共通して、おなじマークが表示されているのに気づいたんです。それが海外のアワード系サイトで取り上げられているサイトだと知って。よし、ここは自分も挑戦してみようかと。
そんなきっかけで応募したのですが、思いのほか評価が集まって。多くの方が自分の手がけたデザインを評価してくれるのを見て、「海を越えて戦えるかも…」という手応えを感じました。
そこから、海外に目を向けたサイトづくりを、より一層意識するようになったと思います。
― なるほど。もともと海外志向があったところに、受賞という後押しもあったわけですね。一方で、CEOである野間さんはどうだったんですか?
野間:
僕は日本大好きで、海外志向みたいなものは、まったくと言っていいほどなかったです。それに、僕自身はクリエイティブの素養もなく、デザインもコーディングもできない。正直、専門外の分野だったんですよね(笑)
ただ、そんな僕にも利倉は「このサイトすごいよ」という感じで、海外の様々なサイトを紹介してくれて。で、それらを見ると、素人目からも、確かにデザインが非常に優れてるんですよ。単純に言ってしまえば、見た目がかっこいい。ユーザビリティも優秀。なるほど、日本にはあまりこんなサイトはないな。海外のほうが1歩も2歩も先を行っているな、と実感して。
その頃から積極的に、海外の優れたサイトを見るようになりましたね。同時に、先鋭的なデザインが溢れる海外で勝負したいという気持ちも強くなっていったような感じです。
もちろん、そういったサイトから影響を受けた利倉のつくるサイトも、当然センスが良いわけです。会社の身内である僕が、こんな風に褒めるのも何なんですけど(笑)かっこいいし、見やすいし、使いやすい。
そんな、自分たちが優れていると思うデザインを世の中に広めることが、私の役割だと思っています。顧客の要望をヒアリングしたり、サイトの企画を立てたり。ディレクションやプレゼンテーションなどですね。
― デザイナーと、ディレクター。しっかり役割分担ができているんですね。デザインの方向性などで意見が割れたり、衝突したりといったことはあまりないんでしょうか?
野間:
それはないです。利倉の生み出すデザインには、全幅の信頼を寄せてます。僕がわざわざクチをはさむようなことは必要ないです。
自分が自信を持って「かっこいい」と言えるものが広まって欲しいでしょうし、利倉は僕の期待に必ず応えるものを必ずつくってくれますから。
― そんなお二人が生み出すWebデザインですが、今のところ、注目度としてはどんなものなんでしょう?
野間:
そうですね、徐々にではありますが、国内の企業からお問い合わせをいただく機会も増えています。また、過去にサイトデザインを手がけさせていただいたクライアントが、他の企業様を紹介してくれたり。
海外らしい先鋭的でスマートなクリエイティブは、日本のWebデザインにおいても求められているんだな、と実感しています。
利倉:
海外のアワードに挑戦するようになってから、海外からもたくさん反応があって。
「So crazy ! but I like your design !」とか。突然、メールでサイトの感想を送ってきてくれたり、嬉しいことが続きました。
― 海外へ挑戦する姿勢は、次の仕事へどんな風に結びついていきそうですか?
野間:
現在、ビジネスとして手がけ、収益に繋げられているサイトは国内向けのもの。日本の法人を顧客として、国内用のサイトをつくるというケースがメインです。
ただ、最近は受賞が契機となってか、ご依頼いただける仕事の幅も増えてきました。例えば、日本の企業が海外向けにつくるサイトを手掛けたり、海外で活動されている日本の方のサイトを手掛けたりといったケースですね。海外の企業からの問合せをいただくこともあります。ただ、そういったお仕事をお受けする際に、課題点はあります。
単純なことでいえば言語の問題がある。大きく存在するのは文化の違いだと感じているのですが、やはり母国語でない言語でサイト制作をしていくと、細かなニュアンスでズレが生じてしまったり。プレゼンの場でも、日本の方を相手にするのとは困難さが全く違うと思います。
また、デザイン面においても、言語の違いは課題になるでしょう。レイアウトにしても、導線づくりにしても、日本語と英語では違いが出ますから。
― 海外で戦っていくにあたって、まだまだ解決すべきことは多いですね。つづいて、海外のWEBデザイナーたちを相手に、どうすれば渡り合えるようになるのかなど、もっと詳しいお話を聞かせていただきたいと思います。
(つづく)▼株式会社レターズへのインタビュー第2弾海外から学び、海外とわたり合う決意 | レターズに訊く、日本と海外のWEBデザインの差。
[取材・構成] 城戸内 大介 [文] 白濱 久史
編集 = CAREER HACK
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